IS~夢を追い求める者~
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第2章:異分子の排除
第33話「秋十ペアVSユーリペア」
前書き
リリなの要素は原作よりもinnocentより....つまり、なのはは...?
ちなみになのはが使っているISは打鉄です。
=out side=
「いよいよか...。」
「き、緊張するなぁ...。」
試合直前、控室で秋十と静寐はそう呟く。
「そう気負わなくていいさ。練習通りにやればいい。」
「そ、そうだよね...。」
緊張している静寐を、秋十は何とか落ち着かせる。
「...まぁ、向こうも向こうで緊張してるだろうな。」
「そうなの?」
「...ユーリ、人見知りだからこういう公の試合は...。」
「あー...。」
何度か会った事のある静寐も、思い当たる節があるようだ。
...と、そこでアナウンスで二人が呼ばれる。
「....じゃ、行くか。」
「...そうだね。」
意を決し、二人は初戦へと臨んだ。
「.....すぅー...はぁー....。」
「落ち着いた?ユーリ。」
「は、はい...何とか...。」
一方、ユーリの方では秋十の予想通りユーリが緊張していた。
「なのはさんは大丈夫なんですか?」
「私も緊張してるよー。でも、それでも全力全開なのは変わらないから。」
ユーリのペアである高町なのははそういう。
「...そうですね。やるからには、全力でないとっ!」
「うん。その意気だよ。...じゃあ、行こうか。」
「はいっ!」
ちょうどアナウンスも入ったので控室から二人は移動する。
「....さて、ユーリとの戦績はどうだったっけな...。」
「36戦中16勝16敗4分です。」
「そうだったな。」
試合開始前、アリーナに出た二人はそんな会話をする。
「互いに元落ちこぼれ同士..相手にとって不足なし。」
「...負けませんよ?」
先ほどまでの緊張がまるでなかったかのように、二人は闘志を滾らせる。
元々、蔑ろにされていた者同士なので、ついでにライバル関係にもなっていたのだ。
「....なんか、割り込めない雰囲気...。」
「緊張するよりはマシだから私は別にいいんだけどね...。」
静寐となのはは互いに苦笑いしながらその様子を眺める。
「こっちもこっちで、よろしくね?私は高町なのは。」
「あっ、私は鷹月静寐。...負けるつもりはないよ。」
「それはこっちのセリフだよ。」
二人も互いに挨拶を交わし、ついに試合が始まる。
「(まずは先手必勝...!)」
試合が始まった瞬間、静寐がライフルを展開し、牽制の射撃を放つ。
「(篠咲君はエーベルヴァインさんを相手にするって言っていた。そこで私がやるのは牽制の射撃を放つ事で相手にチームワークを取らせない事...。大丈夫、上手くやれる...!)」
試合前に決めていた作戦を上手く実行に移す静寐。
しかし、相手も黙って喰らう訳ではない。
「っと...。」
「バルフィニカス!」
なのはは華麗に回避し、ユーリに至ってはそのうえ秋十に接近していた。
「(っ、足止めにもならない...!高町さん、空中での操作が上手い...!)」
「今度はこっちの...番だよ!!」
「っ....!」
さらになのははライフルを展開して反撃の射撃を繰り出した。
正確な軌道で迫るその射撃を、静寐は何とか躱す。
「はぁっ!」
「っ!」
ギィイイン!
少し離れた所で、秋十とユーリもぶつかり合う。
二人の力は互角...つまり、静寐かなのはが相手を出し抜いて援護した方が有利だ。
それを二人も理解しているため、互いに動きを読もうとする。
「(高町さんは一体どれだけISを使いこなせるかによって、私の戦い方も変わる...。なら、最初は...。)」
様子見として静寐はライフルで再度攻撃する。
もちろん、そんな見え見えの攻撃をなのはは躱す。
「(避けた...その先に!)」
だが、静寐はさらに避けた所を狙って撃つ。
「危ないっ!?」
「(これも躱された!高町さん、本当に空中機動が凄い...!)」
螺旋を描くような軌道で射撃を避けるなのはに、静寐も感心してしまう。
しかし、その感心はすぐに驚愕へと変わる。
「....なのはさん!少しの間頼みます!」
「任せてっ!」
「なにっ!?」
あろうことか、なのははブレードを展開し、秋十の相手をしだしたのだ。
もちろん、手が空いたユーリはその間に静寐を狙う。
「これっ、は....!?」
「私の家って剣の道場があるんだよ。...そこで私も習ってるんだよ!」
ッギィイン!!
素人にはあり得ない程綺麗なフォームでブレードが振るわれる。
秋十はその技量に驚きつつも、経験のおかげでなんなく防ぐ。
「....なっ!?」
「でもまぁ...これをISに応用するのは苦労したなぁ。」
「なんで...SEが...!?」
ブレードは確かに防いだ。しかし、それでも秋十のISのSEは削られていた。
まるで、防御を通り抜けたかのように。
「くっ....!」
「逃がしませんよ~!」
そして、その間にも静寐はユーリに追い詰められていく。
むしろ、秋十との特訓のおかげでまだ持っているレベルだ。
「(今までにない攻撃の仕方...!桜さんなら余裕で対処できるだろうけど、俺には...!)」
「ISだと安定しないけど...もう一度!」
「っ...!」
もう一度振るわれるブレードを、今度は受けずに避ける秋十。
不用意に受け止めると、またSEを減らされると思ったからだ。
「(考えろ!あの攻撃は普通の攻撃と何が違った!?)」
いつまでも彼女を相手にはしていられない。
そう思った秋十は急ぎながらも冷静に分析する。
「(攻撃はきっちりと防いだ。ブレードもなんら普通のブレード...だとすれば、ブレードの振り方に何か....!)」
再度振るわれるブレードを躱しつつ、秋十はなのはの手元を見る。
「っ....!その振るい方は...!」
「っ...!?」
そして、ある事に気づく。
振るう瞬間、適度に力を抜き、衝撃を徹すようになっている。
「知っているの...?」
「...これでも剣を何度も振るった事のある身だ。...その剣術は知らないけど、どういうモノかはわかる...。」
今まで培ってきた経験で、秋十はなのはの扱う剣術の特徴を見抜いた。
....そう、ただの剣術ではないと、秋十は気づいたのだ。
「“心に水を宿す”...!」
「っ...はぁっ!」
―――御神流“徹”
衝撃を徹し、防御の上からダメージを与えるその一振りを、秋十は逸らす。
勢いを阻害せず、ただ軌道をずらす事で、その剣術の効果を受けずに済んだ。
「見切られた!?なら...!」
―――御神流“貫”
「っ、なっ!?」
“水”の動きをした秋十を、ブレードの穂先が掠める。
たった一撃で、“水”の動きを捉えかけたのだ。
「これも躱される...ならっ!」
「まだ...あるのか!!」
―――“御神流裏奥義之参・射抜”
咄嗟に“風”を宿し、回避しようとする秋十に対し、なのはは突きを放った。
「―――ガッ...!?」
まさに刹那の如く。超高速で放たれた刺突を、秋十は躱しきれなかった。
...いや、かろうじて直撃を避けれたようで、そこまで大きくSEは削られなかった。
「(っ....攻めて攻撃を止めなければ....!)」
“風”と“水”を宿しても躱しきれない。
間違いなく剣の腕は相手の方が上だと判断し、攻撃させないように動く。
「は、ぁっ!!」
「っ....!」
ギィイイン!!
“風”の動きで一気に間合いを詰め、ブレードを振るう。
それにより、なのはに攻撃をさせないように防御させる。
「ちょっとショックだぜ...!今まで努力してきた剣の技術じゃなくて、ISの操作性でしか上回れないなんて...!」
「えっと...なんかごめんね?お父さんもお兄ちゃんも厳しいから...。」
「おまけに良い師もいたのか....ならしょうがない、なっ!」
ISの技術はなのはよりも断然秋十の方が上だ。専用機持ちだから当たり前だが。
それによって、なのはの剣を封じながら立ち回る。
「(鷹月さんは....まだ、無事か....!)」
動き回りながらも、秋十は静寐の方を見る。
そこでは、必死になりながらも、何とか凌いでいる静寐の姿があった。
「“パイロシューター”!」
「っ、また...!」
放たれる炎弾を、大きく旋回しながら躱す。
躱しきれないのはライフルでなんとか撃ち落として凌ぐ。
「はぁっ!」
「っ....!ぐっ...!」
ギィイイン!
しかし、凌ぎきった瞬間をバルフィニカスで斬りかかられ、静寐は吹き飛ばされる。
なんとか展開が間に合ったブレードで防いでいるが、SEは削られている。
「(ダメ...!私じゃあ、防御してても敵わない...!)」
攻撃どころか、防御もままならない状況に、静寐は焦る。
「....秋十さんと特訓してただけあって、なかなか倒せませんね...。」
「(...ライフル代わりの杖と、近接用の大鎌にも変形する斧....秋十君が言うには、どちらもSEを消費する武装らしいけど....!)」
放たれる炎弾は僅か3発ほどで、バルフィニカスもスライサーフォームには変形していない....つまり、SEをあまり使わずにユーリは戦っているため、防御していてもほぼ確実に勝てない状況なのだ。
「そう易々と倒されちゃ、篠咲君に申し訳ないから...ねっ!」
「そうっ、ですか...!」
振りかぶられたバルフィニカスを、ブレードで防ぐ。
「それよりも、いいの?篠咲君の相手を貴女がしなくて?」
「...しばらくは持ちますよ。...もしかしたら、倒してしまうかもしれませんね。」
「え.....?」
自信に満ちたユーリの言葉に、チラリと静寐は秋十の方へ視線を向ける。
...そこには、互角に近い戦いを繰り広げている二人がいた。
「嘘...!?」
「どこにでもいるものですよ。...隠れた実力者と言う者は!」
そう、いつもはのほほんとしている本音のように。
専用機を持っていなく、何かしらの肩書きがある訳でもない生徒でも実力者はいる。
それの代表的な存在が、なのはだったのだ。
「(...私が、状況を変えないと...!)」
このままだとジリ貧。そう思った静寐は行動を起こす。
...今まで防戦だったのに、いきなり攻勢に出たのだ。
「何を....?」
「(私は篠咲君のように経験が豊富じゃないし、桜さんのように才能に溢れている訳でもない。...そんな私がエーベルヴァインさん相手に打てる手は...!)」
一度離していた間合いを詰めようと動く静寐。
もちろん、そんなのはいい的になるだけなので、ユーリは炎弾を放つ。
「(チャンスは一回!炎弾が私とエーベルヴァインさんの直線上にない位置から...跳ぶ!)」
“イメージは重要”。そう秋十に言われた静寐は、“飛んで”速く移動するのよりも、“跳んで”速く移動するのを選んだ。そちらの方がイメージしやすかったからだ。
そして、その動きは....。
「....えっ...?」
「(間髪入れずに、篠咲君に...!)」
ユーリに対処の暇を与えず、直撃ではないとはいえ、一撃を入れた。
“瞬時加速”を発動した静寐は、ただ愚直に加速した。
ただ真っすぐに加速したその速度は、一時的とはいえユーリの反応を上回った。
そして、すれ違いざまに少しだけ斬り、そのまま秋十の方へと向かう。
「ぁああああああっ!!」
「っ....!?」
ッギィイイン!!
勢いのままに秋十の下へ向かい、静寐はなのはに斬りかかる。
不意を突いた攻撃に、なのははまともに受ける事となり、防御の上からSEを大きく削られる事となった。
「篠咲君!」
「助かった...!...気を付けろ。まともに剣を受ければすぐやられる。」
「...なんとか、してみせるよ...!」
短く会話を終わらせ、相手を切り替える。
すぐに秋十は動き出し、ライフルで飛んできていたユーリの炎弾を撃ち落とす。
「...待たせたな...。」
「...作戦では、先に鷹月さんを倒しておくつもりでしたが....。」
「...正直何者だよ高町さん...。なんか剣術やってるのは分かったけど。」
改めてユーリと対峙する秋十は、思わずそう呟く。
「凄いですよなのはさんは。スプーンで紙コップに綺麗な穴を穿つんですから。」
「....は?」
まるで桜のような事をやってのけたと言うユーリに、秋十は呆けてしまう。
...瞬間、多数の炎弾が秋十を襲った。
「やべっ!」
「はぁっ!」
「させるか!」
炎弾を対処している所にユーリはバルフィニカスで斬りかかり、それを秋十はもう一つのブレードを展開して防ぐ。
「これはどう防ぎますか!?」
「っ....!」
ユーリはすぐさま秋十から離れ、ルシフェリオンから炎弾を大量に繰り出し、秋十に襲わせる。さらに、ルシフェリオンは上に投げて置き、バルフィニカスで斬りかかる。
「シュテルに制御を任せて接近戦か...!
炎弾とバルフィニカスの同時攻撃を、秋十は二振りのブレードで防ぐ。
どちらもまともに受ければもう片方に瞬く間にやられるので、“水”の力を使いつつ、舞うように攻撃を凌いでいく。
ギィイイン!!
「はぁああああ.....っ!?」
「“ブラストファイアー”!!」
炎弾を切り裂き、バルフィニカスを押し切ってユーリを後退させる。
そのまま攻めようとして....放たれた砲撃をギリギリで躱す。
「っ...!危、ねぇ....!!」
「まず、一撃...!」
「ぐっ...!!」
体勢が崩れた所をユーリがバルフィニカスで斬りかかり、秋十は防御の上から地面に叩き落されてしまう。
幸い、防御していたので大したダメージにはならなかった。
「(近づかせないように...!)」
「(っ...近づきづらい...!なら、私も...!)」
その一方で、静寐となのはの戦いも激化していた。
剣が危険だと言われた静寐は、必死にライフルでなのはを牽制。
対してなのはも剣だとISの場合近づきづらいのでライフルで応戦する。
銃と銃の戦いが繰り広げられる事となった。
「(...篠咲君を上回る剣に、この射撃の上手さ....!もしかして代表候補生だったりしないよね!?高町さん!?)」
「(攻めきれないなぁ...。ユーリの言ってた通り、篠咲君と一緒に特訓してただけあるなぁ...。)」
お互いがお互いに、量産機でありながらの腕前に感心する。
「(押されてる...!篠咲君もさっきので削られてるみたい...!)」
「(高町さんに削られた状態でユーリに勝つには骨が折れる...。それに、例え鷹月さんでも一人だと高町さん相手に勝てない...!)」
秋十と静寐は押されながらも同じような事を考える。
「「(だったら....!)」」
秋十はユーリの攻撃を凌ぎながら、静寐はなのはに牽制しつつ、互いに近づく。
ダン!ダンダン!!ギギィイン!
「っ....!」
「隙、ありっ!!」
適当に、牽制として静寐が二人に射撃を繰り出し、それを躱して斬りかかってくるのを秋十が二振りのブレードで両方とも防ぐ。
そこへさらに静寐が攻撃し、SEを削る。
「一対一で不利でも、二体二なら...!」
「連携...!」
静寐が後衛、秋十が前衛として二人と対峙する。
「っ...なのはさん!鷹月さんを頼みます!」
「分かったよ!」
「させるか!」
再度一対一に持ち込もうとする二人に静寐が射撃、そして秋十が道を阻む、
「...鷹月さんを倒したいのなら、まず俺を倒していくんだな。」
「っ...私たちが連携しづらいのを見越してですか...。」
「薄々思っていた程度だがな。」
なのはもユーリも、連携ができるほどサポートに向いた戦い方はあまりできない。
援護などはできるが、合間を縫った連携などはできないのだ。
「さぁ、行くぞ!」
“風”と“水”を宿し、翻弄するように斬りかかる。
秋十が斬りかかった後に静寐の射撃も飛来し、上手く連携を取っていく。
「私が相殺します!」
「分かった!」
そこでユーリが静寐の射撃を相殺しようと動き出す。
だが、それを読んでいたかのように秋十はユーリを追いかける。
「させるかよっ!」
「っ、行かせ....っ!?」
もちろん、なのははそれを逃すまいと止めようとするが、静寐に止められる。
「はっ!」
「くっ....!えっ!?」
秋十の一閃をユーリは防ぎ、とりあえずなのはに静寐を倒してもらおうと考える。
しかし、秋十はすぐになのはの方へ戻り、ユーリには静寐の射撃が飛来する。
「(射撃と剣撃の連携がまるで一連の流れのよう...!このままだと...!)」
秋十が縦横無尽に駆け回り、二人をヒット&アウェイで攻撃する。
そして、反撃に出られないように静寐が射撃で援護をする。
阿吽の呼吸のような連携に、二人とも上手く動けずにいた。
「(こうなったら...一か八かです!)【なのはさん!】」
「【...わかったよ!自分で何とかしてみる!】」
プライベートチャンネルで会話した二人の取った行動とは....ごり押しだった。
SEを気にして戦っていては、連携を破れないと判断したようだ。
「スプライトフォーム....!」
「御神流...舐めないでね!」
二人は大きく間合いを離して逃げ回る。
そして、大きく旋回してからユーリは秋十に、なのはは静寐へと迫る。
「っ...!突っ切ってくる...!?」
「まずい...!鷹月さん!」
ライフルによる弾幕を突っ切ってくる二人に、さすがの秋十も妨害しきれない。
そのままユーリの相手をし、なのはは見逃してしまう羽目になった。
「(スプライトフォームであるならば、防御は0に等しいが...高町さんを見逃してしまったのはきつい...!このままだと、鷹月さんが...!)」
超高速なユーリの連撃を、“風”と“水”を宿し、二振りのブレードで何とか凌ぐ。
その間にも、秋十は静寐がピンチだと焦る。
「くぅぅ....!」
「っ、っと、はぁっ!」
―――御神流“徹”
「きゃぁっ!?」
ライフルで牽制しても、なのははごり押しで接近してくる。
間合いに入られた瞬間、咄嗟にブレードを展開して防ぐが、衝撃がそのまま響き、SEに大きなダメージを与える。
「防げ...ないならっ!!」
「っ...!」
しかし、そのまま静寐は無理矢理なのはのブレードを弾き、一閃を入れる。
なのはのSEを大きく削るが、それ以上に静寐のSEが削れる。
「くぅっ....!」
「この...ままっ!!」
弾き飛ばしたなのはを静寐は追いかけ、背後に回り込んで一閃しようとする。
「っ、がっ....!?」
「....後、一歩だったね...!」
―――御神流奥義之歩法“神速”
...しかし、その攻撃は一瞬で躱され、さらに反撃を受けてしまった。
そのままSEはゼロとなり、静寐はここで戦闘不能になった。
「....ライフル?」
「...狙いは...高町さんじゃないよ...!」
そこでようやく静寐が展開していた武器に気づく。
ブレードではなくてライフルなのだ。しかも、なのはを狙ってはいなかった。
「【...助かったよ。鷹月さん。】」
「【...後は任せたよ。】」
プライベートチャンネルで秋十はそう言い、静寐は後を託す。
そんな秋十の前には...。
「...してやられましたね...。」
「せめて、スプライトフォームでなければ耐えれただろうな。」
...SEを失ったユーリが佇んでいた。
「最後の最後で秋十さんを援護するとは...。」
「元々こういう作戦だったからな。」
そう。静寐がライフルを展開していたのは、秋十を援護するためだった。
自分ではなのはに勝てないと思い、せめてユーリを倒す布石を打っておいたのだ。
「残るは....。」
「......。」
互いにブレードを構え、そのまま動かなくなる。
「(...諦めるつもりはない...か。当然だな。あれほどの剣の腕だ。ただ諦めるのはもったいなさすぎる。)」
「(篠咲君...相当努力を積んだんだね...。...なら、私も全力で....!)」
見合い、間合いを計り、最初に動き出したのはなのはだった。
「っ、せぁっ!!」
「っ!くっ...!」
ギィイイン!!
ただ真っすぐに加速し、突き出される突き。
それを、ただタイミングだけを経験と勘から当て、そのまま上手く逸らす秋十。
「(やはり...見切れない....!)」
「(直感で防いだ!?でも...!)」
逸らされ、反撃を受ける前になのははもう一つ...短めのブレードを取り出して離れる。
「ふっ!」
「っと...!」
ギィン!
間合いを一度離し、なのははさっきまで使っていたブレードを秋十に投げる。
当然、秋十はそれを難なく弾いて防ぐ。....が。
「っ....!?」
「.....遅いよ。」
―――御神流奥義之壱“虎切”
ギィイイン!!
一瞬で間合いを詰められ、鞘走りの要領で展開されたもう一本のブレードが横薙ぎに振るわれる。
「ぐっ.....!?」
咄嗟に抜刀の構えを認識し、横薙ぎの可能性が高いと思い、防ぐ事に成功する。
「まだ!」
―――御神流奥義之弐“虎乱”
「なっ....!?」
だが、攻撃はそれで終わりではなかった。
攻撃が防がれた...つまり、密着状態のままから二刀による乱撃が繰り出される。
それに対し、秋十は“風”“水”“土”で対処するが...。
ギィイイン!!
「ぐぅっ...!押し負けた...!?」
「...そう言いながら、防ぎきってるよね?」
それでも、衝撃が届いていたのかSEが削れている。
「.....小太刀...それも二刀流か...。」
「そうだよ。...尤も、うちの流派って生身の限界を引き出すみたいで、パワードスーツであるISとは相性が悪いみたい。」
「それで相性が悪いのか...。」
つくづく化け物染みた剣術だと秋十は戦慄する。
「(専用機による機能差とISの経験差でISの動きでは勝っている。だけど、それを補うほどの剣術...そんじょそこらの代表候補生より厄介じゃないか...!)」
「(....ホントに相性悪いなぁ...。SEが勝手に削れてる...。)」
なのはが想像以上の脅威だと思う秋十だが、なのはもなのはで自身の不利さにどうするべきか悩んでいた。
「(...剣術では上回っている。神速も後二回はできる。...なら...!)」
「(...来る...!)」
互いに精神を極限まで研ぎ澄ませ、そして同時に動き出す。
「お兄ちゃん直伝...!これが私の...全力全開!!」
―――御神流奥義之歩法“神速”
―――御神流奥義之六“薙旋”
「積み重ねた努力...今こそ見せる!!」
―――“四重之閃”
互いに不可視レベルの四連撃の高速な斬撃を繰り出す。
ぶつかり合ったのは一瞬。制したのは....。
「....負けちゃった...。」
「危...ねぇ....!」
...秋十だった。
決着がついた。その瞬間にブレードに罅が入る。
どちらも奥義となる攻撃を放ったのだ。相応の負担がかかったのだろう。
―――ワァアアアアアアアア!!!
「っ!?な、なんだ!?」
試合終了し、試合を見ていた観客が一斉に歓声を上げる。
「あ、あはは...自分で言うのもアレだけど、レベルの高い剣技だったからじゃない?」
「...それでか...。」
ISの恩恵を使わずとも繰り広げられた高度な剣技による戦闘。
やはり、そういうのもなかなかに興奮するものだったようだ。
「...いい戦いだった。...同じ打鉄だったら負けてたな。」
「そうかなー?篠咲君なら、それでも勝ちに来てたと思うけど...。」
そんな会話をしながら、二人は試合会場を後にした。
後書き
中途半端ですがここで終わりです。
...なのは魔改造しちゃった...。まぁ、innocentなのはなら御神流使えるし...。(震え声)
そして剣であっさりと秋十を上回る...。まぁ、限界を引き出してるからしょうがないかな。
次回はようやく主人公(笑)な一夏(中身転生者)が出せます。
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