ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第10話 小猫涙の悲願、グレモリー眷属修行開始します!前編
side;イッセー
よっ、皆。イッセーだ。俺は今松田、元浜、桐生、そしてアーシアの5人で学園の屋上にいた。松田達とは前の一件で親しくなりこうやってよくつるむ様になった。
「所でよイッセー」
「ん、何だ松田」
「最近小猫ちゃんを見かけないけど何かあったのか?」
松田はゲーム機をピコピコと操作しながら俺にそう聞いてきた、因みに松田と元浜は俺をイッセーと呼ぶようになった、桐生にもイッセーでいいと言ったが彼女は何故か兵藤呼びがいいらしい。
「ああ、最近は部活が忙しいらしいからこっちには来てないな」
「かぁー、お前といれば小猫ちゃんに会えると思った当てが外れたな……」
「是非とも小猫ちゃんとお近づきになりたかったんだがな」
松田と元浜がそんな事を言い出した、おいおい、俺とつるむ様になったのは小猫ちゃんとお近づきになりたかったからか?
「ちょっとアンタ達、こんな綺麗な美少女二人を捕まえておいてよくそんなことが言えるもんね」
「はあ?アーシアちゃんはともかくお前は美少女じゃないだろう」
「せめてもう少し胸が大きくなってからそう言ってほしいものだな」
「む、胸は関係ないでしょ!?」
やれやれまた始まったか、この三人集まると大抵こういう言い争いになるからな。どうしたものか……
「あ、あのイッセーさん」
「ん、何だアーシア?」
アーシアが俺の制服の裾を引っ張って何やら思いつめたような表情を浮かべている。
「イッセーさんはおっぱいの大きな女性が好みなんですか……?」
「ぶっ!?」
アーシアがとんでもない事を聞いてきたぞ!誰の仕業だ、桐生か、それとも松田か元浜か!
「何でいきなりそんなことを?」
「その……クラスの女子の方達が男は巨乳の方が好きだって言っていたので、気になっちゃって……」
寄りによってクラスの女子かよ、年頃だから仕方ないとは思うが純真なアーシアの前でそんな話はしないでほしいぜ。
「俺はアーシアちゃんのおっぱいはいいと思います!」
「そもそもアーシアちゃんは貧乳ではなく美乳の分類に入ってると俺のスリーサイズカウンターが反応したぞ」
「アンタ達には聞いてないわよ……でどうなの兵藤?アンタって女っ気が全くないから気になるのよね?この際だから言っちゃいなさいよ」
ぐっ、言い争っていた三人もここぞとばかりに話に入ってくるし……助けてくれドライグ!
『知らん、別に隠す事でもないだろうし言ってしまえばいいだろうが』
相棒にも見捨てられてしまいいよいよ跡が無くなってしまった。
「お、俺は別に胸の大きさで女性の良さは出していない、一緒にいて楽しいとかこの人となら一緒に頑張っていけるとか……そういった気持ちが一番重要だと思うぞ……うん」
くそっ、恥ずかしい……俺がそう思ってると松田達は何やら温かい眼差しを送ってきた。
「何だよその目は……」
「いやー、兵藤って意外とピュアよね」
「はあ?」
「うむ、何だかおっぱいおっぱい言ってる我々が凄く恥ずかしく思える位だ」
「なんつーか、一途って言う奴だな」
「イッセーさんはとっても綺麗な心を持っているんですね!」
『クククッ、何だ、普段はあんなこっぱずかしい口説き文句を言うくせに純真なんだな』
おい止めろって、なんだその視線は!ドライグまで一緒にからかってきやがって!俺は恥ずかしくなって顔を逸らした。
「……イッセー先輩」
不意に俺を呼ぶ声が聞こえたのでそっちを振り返ってみると……
「小猫ちゃん?」
白髪が特徴的な俺の後輩である塔城小猫ちゃんが屋上の入り口に立っていた、だがその表情はとても暗かった。
「こ、小猫ちゃん!?本物の小猫ちゃんだ!」
「これがイッセーの加護なのか!まさか本当に小猫たんに会えるなんて!」
小猫ちゃんを見た瞬間松田と元浜が騒ぎ出した、特に元浜のテンションは鰻登りになっている、ロリコンだって聞いていたがここまでとは……
「……」
「桐生さん?」
桐生だけは何か神妙そうな表情で小猫ちゃんを見ていた、そんな桐生を見てアーシアも首を傾げる。
「あの小猫ちゃん、俺松田って言うんだ!良かったら一枚写真を……いてぇ!?」
「こ、小猫たん!俺は元浜といいます、前からお近づきになりたかった……ぐぉ!?」
桐生が立ち上がり松田と元浜の耳を引っ張る。
「な、何すんだよ桐生!?」
「はいはいそこまでよ、見たところ塔城さんは兵藤に用があるみたいだし私達は退散するわよ」
「そうはいくか!ようやく小猫たんと話せるチャンスが……!」
桐生は文句を言う二人を連れて屋上から去っていった。
「あの先輩、今の方達は……」
「いや何というか気を使わせてしまったみたいだな」
今度桐生には何かお礼をしないといけないな。
「で小猫ちゃんは俺に用かい?何やら深刻そうな話みたいだが」
「えっと、私もいないほうがいいですか?」
「いえ、アーシアさんもいてください、悪魔についての話ですから……」
「分かった、話してくれ」
俺とアーシアは二人で小猫ちゃんの話を聞くことにした。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
「……という訳なんです」
「なるほどな」
小猫ちゃんから聞いた話を纏めるとグレモリー先輩が自らの許嫁であるライザー・フェニックスとの婚約を破棄したいらしくレーティングゲームとやらに参加することになった、そして小猫ちゃん達はライザーに勝つべく修行を明日から始めるらしいが小猫ちゃんは唯の修行では勝てないと思い俺に相談してきた、という訳だ。
「つまり小猫ちゃんは俺にグレモリー眷属の特訓のコーチをしてほしいって事か」
「……はい」
事情は分かったがこれは俺には手が余りそうだな、今までは何とか誤魔化してきたがグレモリー先輩と直に接触したら赤龍帝の籠手がバレるかも知れない。
いや籠手がバレなくても俺の強さを知ったら眷属に勧誘してくる可能性だってある、自慢じゃないが俺は素の状態でも並みの中級悪魔なら相手できる、それを知れば先輩が勧誘してくるかも知れない。
小猫ちゃんの話ではグレモリー先輩は無理やり眷属にしようとはしないらしいが他の悪魔に知られたら厄介な事になりそうだ。
「イッセーさん、何とか力になれないでしょうか?」
「ううん……」
アーシアもそう言うがこれは大きな起点になりそうだ。もし先輩と関われば悪魔の事情に深く突っ込む事になる、先輩の兄は魔王らしいから何らかの方法で俺を知る可能性だって十分ある。そうなればこっちでの生活も難しくなるな……さてどうしたものか……
「……ごめんなさい先輩」
俺が考え込んでると小猫ちゃんが頭を下げてきた。
「小猫ちゃん、一体どうしたんだ?」
「先輩の事情は分かっています、それなのに無理なことを言ってしまって……今言った事は忘れてください……それでは」
そう言って屋上から去ろうとする小猫ちゃんは……泣いていた。
「待ってくれ小猫ちゃん!」
俺は小猫ちゃんの手を掴んで小猫ちゃんを引き留めた。
「先輩……?」
「小猫ちゃん、本当はまだ言ってないことがあるんじゃないか?」
「……そんなことは」
「嘘だ、だったらどうしてそんな涙を浮かべるんだ?自分の主が望まない結婚をさせられようとしてそれを何とかしたいのは理解できた、でも小猫ちゃんが泣くのを見て思ったんだ、小猫ちゃんは俺に何かを隠してるって、他に何か言えないことがあるって思ったんだ」
「…………」
「話してくれないか、俺は小猫ちゃんが泣く姿は見たくない」
「私も小猫ちゃんの力になりたいです」
「イッセー先輩……アーシアさん……」
そして小猫ちゃんは話してくれた、負ければグレモリー先輩だけじゃなく自分もライザーの女にされると……
「先輩、私嫌です……部長を苦しめるような奴と結ばれたくないです……でもライザーは私達より強いのが本能的に分かって……どうすればいいのか分からなくて……」
「…………」
「先輩……助けてください……」
俺は小猫ちゃんの涙を見て決心した、さっきまでウジウジと考えていたがもう決めた。
『おいイッセー、お前まさか……』
「ああ、俺は腹を括ったよドライグ」
『本当にいいのか?ドラゴンは力を引き寄せる、つまり赤龍帝であるお前がグレモリーと関われば間違いなくお前は力に引き付けられてそちら側に引き込まれるぞ』
「構わん、思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日だ。それに……」
『それに……何だ?』
「大事な後輩の涙見て動かなきゃ先輩じゃないだろう?」
『お前と言う奴は……』
俺はドライグにそう言って小猫ちゃんの目に溜まった涙を指で優しく拭い取った。
「先輩……?」
「小猫ちゃん、俺がどこまで力になれるかは分からないが俺に任せてくれないか?」
「いいんですか?だって先輩は……」
「いいんだよ、俺は大事な後輩が泣いてるのを黙ってみてるほど薄情な奴じゃない」
「先輩……!ありがとうございます!」
小猫ちゃんが嬉しそうに笑う、うんうん、やっぱり小猫ちゃんは笑顔が一番だな。
「まあ最悪面倒なことになったらアーシアを連れてグルメ界に逃げちまえばいいんだしな」
俺が冗談でそう言うと小猫ちゃんは何やら不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「アーシアさんだけですか……?」
「えっ……?」
「ズルいです、私だって先輩と一緒にいたいです……私は連れて行ってくれないんですか……?」
「小猫ちゃん、今のは冗談だぞ?」
「嫌です、一緒にいてください……」
うーん、これは変なスイッチを入れてしまったか?小猫ちゃんの様子がおかしくなってしまったぞ……
『普段の行いが悪いからだ』
うるせーぞドライグ、とにかく今は話を先に進めよう。
「小猫ちゃん、取りあえずまずは先にグレモリー先輩に話をしにいかないか、彼女から了承を得なきゃ結局意味がないからな」
「あ、確かにそうですね。部長はまだ旧校舎にいるはずです」
「よし、全は急げだ、話をしに行こうぜ」
『おいイッセー』
俺達が旧校舎に向かおうとするとドライグが話しかけてきた。
「何だよドライグ、止めてももう行くぞ」
『もうそれについては諦めたからいい、俺が言いたいのはやはり赤龍帝だというのはバレないほうがいいという事だ、俺は三大勢力の戦争に乱入してかなりの悪魔達を殺したから恨みも買っているからバレたら色々不味いだろう』
「それはお前のせいじゃねえか」
『うっ、あの時は俺も若かったんだ。とにかく俺に案がある」
「何だ案って?」
『それはーーー』
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
俺達はグレモリー先輩がいる旧校舎にやってきた。ていうか旧校舎に来るのは初めてだな。
「こっちです」
小猫ちゃんに案内されて旧校舎の中を進んでいく、そして普段小猫ちゃんたちが部室として使っている部屋の前まで来た。
「失礼します」
俺はノックして中に入る、中にはグレモリー先輩、姫島先輩、そして同じ学年の木場がいた。丁度全員そろっているみたいだな。
「あら小猫どうしたのって貴方達は兵藤君に確か少し前に転入してきたアルジェントさん?」
「初めましてグレモリー先輩、兵藤一誠といいます」
「アーシア・アルジェントです」
「ご丁寧にありがとう、私はリアス・グレモリーよ」
「姫島朱乃です」
「木場祐斗だよ、こうやって話すのは初めてだね、兵藤君」
「そうだな」
取りあえず挨拶を交わす、互いに見た事はあってもこうやって話すのは初めてだからな。
「それで兵藤君、一体何をしに来たのかしら?一応ここは私達オカルト研究部しか入れないのだけど……」
「すいません、実はグレモリー先輩に話がありまして……」
「私に……?」
「いや正しく言えば……『悪魔』の貴方達に話があります」
俺がそう言った瞬間木場が剣を出して姫島先輩が手に雷を放ちだした。
「……貴方、私達の事を……」
「ええ知ってますよ、貴方達が悪魔だって事を、そして三大勢力や裏の事情もね……」
俺はアーシアを背中に隠しながら話を進めていく。
「取りあえず先ずは話し合いをしませんか、俺の事をどうこうするかはその後に決めればいいでしょう」
「……分かったわ、朱乃、祐斗、武器を下ろしなさい」
先輩がそう言うと姫島先輩と木場はそれぞれの武器をしまう。さてここからだ、どうやって話をもっていこうか。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
「紅茶です」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
ソファーに座った俺とアーシアに姫島先輩が紅茶を出してくれた、お、これは美味いな。
「それで兵藤君、貴方は何が目的なの?」
「そうですね、俺がここに来た理由はしいて言うなら後輩を助けるためですかね」
「後輩を?もしかして小猫の事かしら?」
「ええ」
俺は小猫ちゃんにライザーとの件について聞いたことを話した。
「小猫、貴方部外者にこのことを話したの!?それは……」
「おっと小猫ちゃんを責めないでください、俺が無理を言って聞き出したんですよ」
「先輩……」
小猫ちゃんが先輩に叱られそうになったのでフォローを出した。
「……まあいいわ、それで兵藤君、貴方は何がしたいの?」
「単刀直入で言えば先輩達の修行のコーチをしたいかなって」
「……はい?」
グレモリー先輩が間の抜けたような表情を浮かべた、姫島先輩や木場も同じような表情を浮かべている。
「貴方が私達のコーチ?本気なの?」
「本気ですよ、俺は唯の人間じゃないですからね」
俺はそう言って左腕に赤龍帝の籠手を出した……緑の宝玉部分を隠しながら。
「それは『龍の手』……やはり神器所持者だったのね」
よし、先輩は赤龍帝の籠手を龍の手と勘違いしたな、ドライグがさっき言ったのは宝玉部分を隠して見せれば龍の手と思わせる事が出来るんじゃないか、ということだ。龍の手は赤龍帝の籠手とよく似ているからな、これで倍加にさえ気を付ければ問題はないだろう。
「でも貴方が神器所持者だとしても私達は悪魔よ、人間の貴方より強いからコーチなんて無理よ」
「へえ、つまり先輩は俺より強いと言いたいんですか、なら試してみましょうか」
「試す?」
「俺と貴方の眷属の誰かとで模擬戦でもしましょうよ、そうすれば互いの実力がはっきりと分かりますよ、なんなら全員で来ても構いません」
「全員って……それこそ無謀だわ」
「いいじゃないですか部長」
俺とグレモリー先輩の会話に木場が入ってきた。
「祐斗?」
「僕はそれでいいと思います、彼は隠してるようですが前々から兵藤君の目からは師匠のような達人を感じさせる何かを感じていたんです」
「へえ……しっかりと隠していたつもりだったがよく分かったな」
「君は有名人だからね、知らずと目に入ってたんだ」
「それはお互いさまだろう」
普段は自分の力を一般人並みに抑え込んでるが木場は若干ながらも俺の隠していた力を感じ取っていたのか。
「部長、駄目でしょうか?」
「……分かったわ、最初から無理無駄と決めつけるのは良くないわね、ならこうしましょう。貴方は祐斗と戦って勝てたらコーチを頼む、後何かお願い事を聞いてあげるわ。でも貴方が負けたら……」
「負けたら?」
「私の眷属になってもらうわよ」
「いいですよ、こっちから無理を言ってるしそれでかまいません」
「祐斗もそれでいいかしら?」
「はい」
こうして俺と木場の模擬戦が始まることになった。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
sedi:祐斗
僕達は旧校舎の前にある広場に立っている、ここで僕と兵藤君が戦うんだ、因みにこっちに人が来ないように姫島先輩が結界を貼ったので気兼ねなく戦える。
兵藤一誠君……この駒王学園では知らない人はいない有名人だ、最も部長達みたいに好意的なものじゃなくて厄介者みたいな意味でだけど。
兵藤君とは今日まで明確な関わりがあった訳じゃない、でも僕は前から兵藤君はただものじゃないって感じていたんだ。切っ掛けは去年の球技大会で兵藤君とサッカーの試合をした時だ。彼は他の競技でほとんど一人で自身のチームを勝たせていた、そしてサッカーの試合で僕のクラスと対戦することになったんだ。あの頃は小猫ちゃんはまだ入学してなかったっけ。で試合が始まり兵藤君が攻めてきたので僕が彼と対峙した。
正直最初は悪魔の力を少し抑えていたんだ、普通にやったら一般人に怪我をさせてしまうかも知れないからね、最初は互いにいい勝負が出来ていたとおもったんだけど途中で兵藤君の動きが変わったんだ、気が付いたら僕は抜かれていて彼がゴールを決めていた。その時は驚いたよ、騎士の駒を持つ僕はスピードにはかなり慣れていた、その僕が全く反応できなかったんだ、いくら力を抑えていたとしても油断はしていなかった。僕は次の対決でちょっと本気になった、大人げないとおもったけど悪魔の力を出して再度対峙した、でも兵藤君は僕をあっさりと抜いてしまった。僕は思ったよ、彼は唯の人間じゃないって……
その日から何かと兵藤君の事を目で追っていた。彼を見ている内に段々と分かってきたんだ、兵藤君は本来持っている力を抑えている事に……
そして一年が立ち兵藤君は小猫ちゃんと知り合った。そして彼と出会ってから小猫ちゃんの実力が上がっている事に気が付いた。部長達は気付いてないようだけど前に模擬戦をした時に明らかに動きが良くなっていたんだ。僕は思った、もしかして兵藤君が関係してるのかなって……
そして今日僕は彼の正体を知った、彼は神器所有者で僕達悪魔や三大勢力の事を知っているようだった、そして何の因果かこうして彼と決闘をすることになった。
まさか今日いきなりこうなるとは思っていなかったけど正直ワクワクしているんだ、彼の本当の実力を知ることが出来るかも知れないしね。
「それじゃあそろそろ始めるとしようぜ」
兵藤君は左腕から神器を出して構える、僕も剣を出してそれを持ち構えた。
「木場も神器所持者なんだな、剣を生み出す神器か?」
「うん、僕の神器は『魔剣創造(ソード・バース)』……僕は任意に魔剣を創り出せるんだ」
互いの手のひらを明かして戦闘態勢に入る、そして兵藤君が動いた。
「ナイフッ!!」
速い!それが僕が最初に思った事だった。距離をあっという間に詰めて左腕で手刀を放ってきた。僕は体をそらすことでギリギリそれを回避した。そしてがら空きになった兵藤君の脇腹に剣を振るうが彼は跳躍してそれを避けた。
「行くぜ!」
そして上空から僕目がけてパンチを放ってきた、咄嗟に剣で防ごうとするが剣が砕かれてしまい僕は彼の攻撃を受けて吹き飛んだ。
「祐斗っ!?」
「大丈夫よリアス、祐斗君は兵藤君のパンチが当たる瞬間自分から後ろに飛んで衝撃を分散していたわ」
部長の心配そうな声が聞こえる、僕は咄嗟に受け身をとって体制を立て直した。
「凄いね兵藤君、この剣はそれなりに耐久があるって思ってたのにまるで紙屑みたいに砕かれちゃうなんて……」
「へへっ、鍛えてるからな。それで木場、どうするんだ?武器を失ったみたいだが?」
「言ったでしょ、僕の魔剣創造はあらゆる魔剣を創り出せるって……壊れたならまた創ればいい」
僕は右手に炎の魔剣、左手に氷の魔剣を生み出して構えた。
「二刀流か、それも炎と氷と来たもんだ。いいねぇ、中二心をくすぐられるぜ」
「あはは、もしかして兵藤君もそういうのが好きなの?魔剣を創り出すイメージトレーニングに役立つから結構アニメとか見てるんだ」
「そうなのか、俺も好きだぜ」
「趣味が合うんだ、何だか嬉しいね」
互いに軽口を言いながら再度構え僕は兵藤君に向かっていった。
「はぁぁぁっ!!」
右上、斜め左、振り下ろしと連続して兵藤君に攻撃する、兵藤君は籠手でいなしたり体をそらしてかわしていく。なら……!
僕は一旦距離をとって炎の魔剣を地面に刺した、すると兵藤君の周りに炎の渦が生まれて彼を飲み込んだ、そして氷の魔剣を振るい炎ごと氷漬けにする。
「イッセーさんっ!!」
だが氷は直に割れて中から無傷の兵藤君が飛び出してきた。
「フォークッ!!」
そして左指をまるで食器のフォークのようにそろえて刺突を放ってきた。僕は地面から剣を出してそれを防ぐ、そして両手の魔剣を捨てて新たに雷の魔剣を生み出した。
「兵藤君、この攻撃はどう対処するかな?」
僕は雷を纏った斬撃を縦横無尽に兵藤君目がけて放つ。
「斬撃勝負か、面白い!!」
『Boost!』
兵藤君は左腕の籠手に力を込めて手刀を放つ、あれは龍の手の力である力を二倍にする能力のはずだ。先ほどよりも大きく威力が上がったその一撃は僕の斬撃を飲み込み打ち消した、更にその攻撃の余波で僕の体も吹き飛んでしまう。
「うわっ!?」
「まだまだいくぜ!」
体制が崩れるのを何とかこらえて地面から魔剣を出して兵藤君に攻撃する、だけど兵藤君は魔剣を手刀や刺突で砕いて接近していく。
「ならこれでどうかな!」
僕は左手に重力を操る魔剣を創り兵藤君の周りの重力を重くする。
「ぐっ、厄介だな。その神器……!」
流石に重力には抗えないのか兵藤君はその場に膝をついた。
「だがこの程度の逆境は乗り越えてきた……うぉぉぉぉっ!!」
『Bosst!』
兵藤君は再び力を二倍にして無理やり重力の波を打ち消した。
「木場、正直予想以上だ。お前強いじゃねえか」
「兵藤君だって凄いよ……ここまでワクワクするのは初めてだよ」
互いに息も切れて疲労が見えてきた。でも僕が思った通りだ、兵藤君は強い。小手先の技術じゃ勝てないだろう、なら……
僕は左手に魔剣を創る、能力はなく切れ味を高めた魔剣、ここからは僕の本当の力で挑ませてもらうよ!
「はあっ!!」
僕は自身が持つ騎士の駒の特性である速さを最大限まで発揮して兵藤君に攻撃する。
「!?ッ」
兵藤君は僕の攻撃をかわすがさっきまでと違い余裕がない表情だった。立て続けに兵藤君に攻撃を放っていく、そして僕の攻撃の一つが兵藤君に掠った。
「……なるほど、それがお前の本当の武器か」
「うん、魔剣創造はあくまでも僕が持つ力の一つ、僕の本来の武器は騎士の駒の特性である速さを生かした戦いさ。といってもここまで本気を出したのは君が初めてだけどね」
「そりゃ光栄だな」
「だからもっと見せてよ、君の実力を!」
僕は更に速さのギアを上げて兵藤君の周りを縦横無尽に駆け回る。
「速い!祐斗の本気は初めてみたけどここまでだなんて……!」
「私ではもう目で追えませんわ、祐斗君、凄い……」
これが今の僕が出せる全力だ、さあ行くよ兵藤君!
僕は背後から兵藤君目がけて全力で剣を振るった、彼は反応できていない、貰った!
「おりゃあっ!!」
ドゴンッ!!
兵藤君が地面を思いっきり殴って地面をえぐる、その時に出た土埃や岩の破片で視界を遮られて一瞬動きが止まってしまった。
「チェックメイトだ」
そして次に目を開けると背後から兵藤君が僕の首に手刀を当てていた。
「速さは大したもんだったが咄嗟の状況に弱かったな。それでどうする、まだ続けるか?」
「……いや、この状況から抜け出す方法が思いつかない。僕の負けだよ」
もしこれが実戦だったら僕は今頃やられていただろう、でも負けた悔しさもあったけどそれ以上に楽しかった。ここまで全力で戦えたのは初めてだったからだ。
こうして僕と兵藤君の模擬戦が終わった。
side:イッセー
今回は俺が勝ったが木場の底力には正直驚かされたな。戦闘だけで言えば小猫ちゃん以上の才能を持っていると思う、グレモリー眷属でも一番強いだろう。
「楽しかったぜ木場、また戦いたいな」
「あはは、だったら僕はもっと強くならないとね。じゃなければ君には到底追いつけそうもない」
「お前なら直に強くなれると思うぜ」
「ありがとう、兵藤君」
俺は右手を差し出し木場と握手を交わす。
「驚いたわ、まさか人間の身でありながら悪魔に勝ってしまうなんて……」
するとグレモリー先輩達がこちらに向かってきた。
「祐斗は私の眷属の中でも一番強い子だったんだけど……貴方一体何者なの?」
「俺ははぐれ悪魔や堕天使などを狩るバンティングハンターをしてるんですよ。それなりに修羅場は潜り抜けてきたつもりです」
これは嘘だ、美食屋の事を話す訳にもいかないのでそれらしい話を作った。
「堕天使……まさか前の堕天使達も貴方が?」
「ああ、あいつらはアーシアを利用してよからぬ事をしようとしたのでちょっとね」
「アーシアってアルジェントさんの事?まさか堕天使の仲間じゃ……」
「アーシアは奴らに利用されていただけです、申し訳ありませんがアーシアに手を出すつもりなら黙ってはいませんよ?」
俺は語尾を強めてそう話した。
「まあその件については終わった事だからいいわ。貴方を敵に回すのは得策じゃないしね」
「おや、さっきまでと言ってることが違うようですが?」
「これでもこの子達の主をしている身よ、さっきの祐斗との模擬戦で貴方が私達より強いのはよく分かったわ。現にこの眷属で一番強い祐斗が負けたんですもの」
俺はグレモリー先輩の言葉に素直に感心した、自分の弱さを認めて相手の強さを理解するのは中々難しい、特にプライドの高い悪魔は人間に負けた事なんて認めようともしないだろう。どうやら他の悪魔みたいに人間を徹底的に見下している訳じゃないんだな。
「……なるほど、小猫ちゃんの言っていた通り他の悪魔とは違うようだ、さっきまでの無礼を許してください」
「私も貴方に失礼なことを言ってしまったし気にしないでちょうだい」
「なら今回はお互いさまということでいいですか?」
「ええ」
良かった、グレモリー先輩は悪魔の中でもかなり話が分かる人みたいだ。
「それで俺が貴方方のコーチをするって話ですが……」
「そうね、正直普通に修行してもライザーに勝てるか不安だったから私としては構わないけど……」
「けど、というと何か不安でも?」
「ひとつだけいいかしら、貴方が小猫に近づいたのは何のため?利用しようとかそういう事じゃないわよね?」
そうか、この人は俺がバンティングハンターをしていると言ったから自分の眷属である小猫ちゃんに何か悪意を持って接していたんじゃないかと思ったんだな。
「最初は先輩達が悪魔と分かっても関わるつもりはありませんでした。バンティングハンターをしてると言っても自分に降りかかる火の粉を払うみたいなものだったし面倒ごとは嫌いなのでそのまま関わらずにいようと思ってました」
「…………」
「でも入学式があった日に小猫ちゃんと出会ってから彼女は何かと俺に会いに来てくれました。最初は何か企んでいるんじゃないかとも思いましたが小猫ちゃんが俺の作った料理を美味しそうに食べているのを見ていたらそんな事どうでもよくなってしまいました。今ではこうして自分から厄介ごとに首をつっこみたくなるくらい大事な後輩です」
「先輩……」
俺の言葉に小猫ちゃんがちょっと顔を赤らめながら嬉しそうに笑った。
「……なるほどね、貴方がどういう人か少し分かったわ。小猫が懐いたのも頷ける」
「と言いますと?」
「学園では厄介者として嫌われてるけど実際に話したら唯のお人よしだったって訳ね」
お人よしって……褒め言葉なのか?
『こうやって自ら厄介ごとに首をつっこむような奴はバカかお人よしくらいだろう』
ドライグが脳内にそう語りかけてきた、いやもうちょっと言い方があるだろうに……
「小猫、貴方中々いい人見つけたじゃない。私は応援するわよ」
「そ、そんなんじゃありませんから!」
グレモリー先輩と小猫ちゃんが何か話していたがドライグとの会話で聞こえなかった。
「それで先輩、俺が先輩達のコーチをするって言う話はいいですか?」
「ええ、こちらからお願いしたいくらいよ。ライザーに勝つために貴方の力を貸してちょうだい、兵藤君」
「なら俺の事はイッセーと呼んでください、その方が気楽ですから」
「分かったわ、なら私達の事も名前で呼んでちょうだい、これで対等でしょ?」
「分かりましたリアス先輩、明日からみっちりと鍛えこんでいきますから覚悟していてくださいね?」
「勿論よ!」
こうして俺はグレモリー眷属の修行の為のコーチになった。色々面倒ごとが起きそうだがまあ何とかなるだろう。
後書き
初めまして木場祐斗です。今回は僕が後書きを担当するね。え、小猫ちゃんが良かった?あはは、期待している人には申し訳ないけど今回は我慢してね。
次回は僕達グレモリー眷属の修行だよ、兵藤君の修行は今までしてきた特訓がお遊びに思えるほどかなり厳しいものだった。でも弱音は吐けないよね、僕だって強くなってみせるんだ!
次回『小猫涙の悲願、グレモリー眷属修行開始します!後編』でまた会おうね。え、まさかの『彼女』が出るんだって?これはどうなるか楽しみだね。
ページ上へ戻る