転生者の珍妙な冒険
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この世界で1番、負けられない戦い ―決着―
前書き
大変長らくお待たせしました、申し訳ございません。
そろそろ闘技場編も完結です。
「な、何故・・・・。」
あまりの衝撃に、呆然と呟くサリナ。その声を上書きするかのように、司会者の絶叫が会場に響き渡った。
『ぶ、無事だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 信じられない現実っ、目を疑うような真実っ!! あれほどの攻撃を受け、凄まじい勢いで武舞台に叩きつけられたヨシュア選手がっ、今っ、平然と立ち上がったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
その叫びと、観客からの悲鳴にも近い歓声を一身に浴び、サリナの前に立ちはだかる夜集阿。その体にはクレイジーダイヤモンドに殴られた時に血を吹いたのであろう、口元に付着した血と、擦り剥けた右の拳以外に目立った傷は無く、ほぼ無傷と言ってもいい状態であった。
「・・・・・不思議か?」
そう問いかける声は、戦っている最中とは思えない程に穏やかで、それがより一層の不安をサリナに抱かせた。
「な、何故・・・・・。あんな勢いで武舞台に叩きつけられたら、全身の骨がバラバラに壊れるはず・・・・。」
回復魔法で傷を癒し、剣を構えるも、未だに信じられずに思わず問いかけるサリナ。
そんな彼女を嘲笑うでもなく、ただ穏やかに笑んで夜集阿は口を開く。
「そうだな。マトモに叩きつけられたら、そうなってただろう。だが、俺は叫んだろう? 『星の白金』と。お前のクレイジーダイヤモンドに壊れたものを治す力があるように、俺の星の白金にも特殊な力がある。」
「っ、なっ!?」
黙って聞いていたサリナは、今起こった現象が信じられず、慌てて後ろを向いた。
先ほどまで自身の前で喋っていた夜集阿。彼が自身のスタンドの名を呼んだ瞬間、彼の声が後ろから聞こえ、そして振り向いた先には平然と話を続ける夜集阿がいたのだ。
「大体分かったろう? 星の白金の能力は、瞬き程の時間だけ、時を止められる能力だ。それだけでは無いけどな。そうやって止めた世界の中で、俺は宙を蹴って落下の速度を早め、地面を星の白金で殴って衝撃を和らげ、砂埃の中で砕いてたお前の兜を拾い、銀の戦車を発現して剣身を飛ばしてお前の肩を貫いたって寸法だ。まぁ、途中で時間停止は当然解除されてたから、砂埃が舞ってて助かったけどな。」
そう苦笑すると、「さて」と言葉を続ける夜集阿。
「ところで、良いのか? 俺をこんなに接近させて防御が間に合うか?」
「っ!? クレイジーd「星の白金!!!!」 グフッ!!!」
夜集阿の言葉にハッとなり、スタンドで防御しようとしたサリナを嘲笑うかのように、彼女の腹に星の白金の拳を叩き込み、吹き飛ばす。
「そのまま時を止めて一気に仕留めても良いが、それじゃサリナは俺の実力を認めんよなぁ! 来いよ、聖騎士の剣技ってのを俺に見せてみろ!!!」
その言葉と共に突貫する夜集阿、素早く受身を取って体勢を立て直していたサリナはショートソードを、普段のミスリルの剣に持ち直す。
「その言葉を後悔させてみせます! 水晶殿!!」
その刃から放たれるのは、聖なる力を込めた無数の斬撃。まるでその名の示すとおり宮殿を築かんとばかりに何度も屈折し、不規則に飛来する斬撃が夜集阿を襲った。
『なんと美しいっ、無数の煌く斬撃がまるで星屑のようですっ!!』
「確かに目には美しいですが、アレは強力ですよ。動きが不規則で避けにくい上に1発1発が岩を両断する斬撃。聖騎士の技の中でも上位に位置されるスキルですからね。」
『成程っ、まさに斬撃の雨っ! ヨシュア選手はどう切り抜けるのでしょうかっ!?』
「雨・・・・、雨ねぇ・・・。」
司会者達の声を小耳に挟みつつ、夜集阿は笑う。
「確か、漫画にあったよなぁ、刺付き鉄球の雨を一切傷つかずに進み戦士・・・・。銀の戦車!!」
未だ手にしていたサリナの兜の破片をスタントに変じ、そのレイピアで己に迫る斬撃を弾き、突き進む。その姿は、確かに彼が口にしていた戦士のようであった。
『な、なんという凄まじい防御っ、彼は雨の中でも濡れずに歩けると言うのかぁ!!?』
そんな司会者の叫びを背に、夜集阿は斬撃を弾き続けてサリナに迫る。
「くっ、スタンドにはスタンドで応えるのみ。クレイジーダイヤモンド!!」
『ドララララァァァッ!!!!』
負けじとサリナの出したクレイジーダイヤモンドの高スピードラッシュが、銀の戦車の体を正確に打ち抜く。しかし・・・・
「効かんねぇ・・・・。甲冑脱衣っ!」
大きくへこんだ銀の戦車の防御甲冑が外れ、次の瞬間には夜集阿の姿が掻き消える。
(これは・・・・。あのスタンドの時と違い、訳が分からないうちに移動されてるのではない、気配は追える・・・・・上ッ!)
動いた気配を辿り、己の真上を見上げたサリナの視界に写ったのは、凄まじい速度で跳び上がった銀の戦車に体を持ち上げられた夜集阿。
「へぇ、動きが分かったか。凄いが、だからって次のは防げるか?」
その言葉と共に浮かべられた夜集阿の笑みに悪寒が走り、咄嗟に盾を構えたサリナ。
結果としてそれは悪手だった。
「波紋乱渦疾走ッ!!!!」
ドリルのように回転しながら、夜集阿がサリナめがけて放つ蹴り、それを防いだサリナの盾が大きくねじれ、そして・・・。
「っ、ぐぅあぁっ・・・・・!!」
盾を突き抜けて飛来した波紋エネルギーに吹き飛ばされ、サリナは地を舐めることになる。
その後も、波紋エネルギーによって体が痺れ動かないのか、立ち上がろうとして倒れることを繰り返すサリナ。そんな彼女のもとに、夜集阿が歩み寄る。
「もう諦めろよサリナ。お前は立てんって。」
どこか憐れみすら含まれるその声に、体を震わせながらも睨みつけるサリナ。
「何故、だ・・・・。確実にガードは・・・した・・・。」
「お前の盾が生物素材だったからな。」
事も無げに答え、夜集阿は更に言葉を重ねていく。
「お前の鎧はミスリルか何かで作られた金属鎧だ。それによく似てるから分かりづらいが、盾だけはミスリルリザードだな。大して強く無いが逃げ足と頑丈さが一級品だから、盾にできるほど素材集めるのは高ランクの冒険者でも難しいらしいが、兎も角、ソイツの素材だ。」
「っ!? 何故見抜ける!? 1度も目の前で盾を出したことは無かった!!」
「だって、選手控え室からはお前の背中がよく見えてたもん。必然的に、ずっと背中から抜かれる事のなかった盾は見えるし、素材を考える時間も山ほどあったさ。で、種明かしすると、俺の波紋は生物を流れる。だから生物素材のその盾を流れ、貫通してお前に当たったって訳だ。」
ニッ、と笑ってそう言った夜集阿は、一転して表情を曇らせる。
「さ、話してもらうぞ? 俺を殺そうとした奴は誰で、どこにいる? そもそもこの闘技場では致死の傷は回復するから死なない。それを知らないところを見ると、外部の人間か?」
「甘い、ですね・・・・。」
口元を笑いの形に歪め、言葉を紡ぐサリナ。その目は笑っておらず、かと言って敗北からの絶望感も無く、未だに殺意と闘志が宿っていた。
「『あの方』にかかれば、そんな不殺の魔法、容易く解けますよ・・・・。」
「何? どういう事だ、ソイツは誰なんだよ。」
思わず、といった風に屈んで問いただそうとする夜集阿、それを見てますます笑みを濃くしたサリナは。
「それほどの力を持ったお方、ということですよ・・・・。そして忘れたんですか? 私の魔法は回復系統ですよ?」
「なっ、お前まだ・・・・!!?」
「もう遅い! 聖槍!!」
会話の間に、無詠唱の回復魔法で己の傷を癒したサリナが一瞬のうちに自身の剣での刺突を夜集阿に放つ。
屈んでいた姿勢の夜集阿には避けられるはずもなく、そのまま刃は彼の心臓部へと吸い込まれていった。
「・・・・・・・勝っ・・・・・・た?」
嬉しさはなく、どこか思いつめた表情で勝利を宣言しようとしたサリナの顔が、疑問に染まる。
(・・・・・・おかしい。手応えが無さすぎる・・・・。人体を貫いた感覚が一切ない・・・?)
そして後ろを向いたサリナの表情が、疑問から驚愕へと変貌する。
その視線の先には、夜集阿が立っていた。
凄まじい大音量で響く歓声を浴びながら、2人は対峙する。
「いやぁ、危なかったな。高速移動が出来るチャリオッツが無けりゃ今ので死んでた。」
「・・・・・成程、どうりで手応えがない。先程のは残像でしたか・・・。」
「そーゆーこと。チャリオッツに引っ張ってもらったのさ。さて、決着つけようぜ。」
何気ない調子で放たれたその言葉と共に駆け出す両者、そしてその距離が2メートル程にまで縮まった時。
「星の白金!!!」
『オラアァァァァァァ!!!!』
「クレイジーダイヤモンド!!!」
『ドラァァァァァ!!!!!』
同時に放たれる両者のスタンド。
射程距離も、速度も互角。同時に双方の顔面に拳がめり込むと・・・
少なくとも、サリナはそう思っていた。
「星の白金。」
夜集阿が再び、自身のスタンドの名を言った。そう思った。
次の瞬間には、サリナの目の前には、クレイジーダイヤモンドよりコンマ数秒分先に伸びた拳があり、サリナは敗北を認めた。
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアァァァァァ!!!!!!』
『き、決まったあぁぁぁぁぁ!!!! 今度の今度は確実でしょうっ!! 滅多打ちにされたスミス選手の体が、力なく宙を舞うっ!! 大会の優勝はっ、何とっ、「無名騎士」すら下してっ、セイト・ヨシュアに決定だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
司会者のそんな叫びを聞いた、ような気がする。
意識を失う直前、サリナはそんなことを思い、そして彼女は武舞台に力なく横たわった。
後書き
夜集阿 聖斗:『格闘家』『奇術師』:ランクA+
・波紋の呼吸法【レベル2】
波紋ズームパンチ
波紋疾走
波紋カッター
仙道・波紋疾走
銀色の波紋疾走
生命磁気の波紋疾走
波紋乱渦疾走
山吹色の波紋疾走
稲妻十字空烈刃
クラッカーボレイ
波紋肘支疾走
我流・冷酷な怒りの波紋疾走
深仙脈疾走
・スタンド「タロット大アルカナ」【レベル2】【現在固定:星の白金】
0番『愚者』の暗示する「愚者」
1番『魔術師』の暗示する「魔術師の赤」
4番『皇帝』の暗示する「皇帝」
6番『恋人』の暗示する「恋人」
7番『戦車』の暗示する「銀の戦車」
8番『正義』の暗示する「正義」
9番『隠者』の暗示する「隠者の紫」
10番『運命の車輪』の暗示する「運命の車輪」
15番『悪魔』の暗示する「悪魔」
17番『星』の暗示する「星の白金」
21番『世界』の暗示する「世界」
レオパルド・ジーク(神風 零弥):『格闘家』:ランクS-
・神砂嵐の流法【レベルMAX】
真空竜巻
闘技・神砂嵐
・漢武夷流柔術【初期レベルMAX】
神砂の拳
セーナ・フォクス:『格闘家』:ランクB
・イヌ科の嗅覚【初期レベルMAX】
・イヌ科の聴覚【初期レベルMAX】
・波紋の呼吸法
ネーナ・チュミン:『アーチャー』『補助魔術師』:ランクA
・魔導弓【レベル2】
回復型
威力型
速度型
(上から順に使用頻度の高さ順)
・補助魔法
ヒール(極小回復)
ホイミヒール(小回復)
ケンロ(防御小アップ)
ムッキ(攻撃力小アップ)
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