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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#19
  戦慄の暗殺者Ⅴ ~Heat Capacity~

【1】


「でやああああああああぁぁぁぁぁぁ―――――――――ッッッッ!!!!」
 紅い弾丸のような突貫で巻き起こる気流に黒衣を靡かせながら
空間を疾駆するシャナ。
 そして大上段に構えた戦慄の美を流す白刃が唸りをあげて
サムシング・ブルーのウェディングドレスを纏った武装燐子の
頭蓋に向けて振り降ろされる。
 ギィィィィィィィンッッッ!!!
「!!」
 しかし今度呼び出された武装燐子は先刻のモノをより強力に
改 造(カスタム)したモノのようだった。
 高速で繰り出されるシャナの斬撃に反応した、
その持ち手も反射的に防いだのではなく守りと()なしに従事した構えである。
 大刀と細 剣(サーベル)とがブツかり合い金属の軋る音が空間に鳴り響く。
 だが。
「だああああああああああああああああああッッッッ!!!!」
 即座にシャナは打ち落としの斬撃を武器破壊の斬撃へと変換し、
全身の膂力を総動員して搾力を刀身へと捻じ込む。
 その影響で強度で劣る燐子の白刃はバラバラになって砕け散る。
 すぐさまにヴェールを被った無防備の頭蓋に贄殿遮那の本刃が叩き込まれた。
 音もなく斬り裂かれていく身体内部で斬撃が音速に達した為、
次の刹那衝撃波が巻き起こり真っ二つに両断された燐子が爆風で跡形もなく吹き飛ぶ。
 その後に到来した炸裂の破壊音が、壮麗なる紅世の王 “狩人” フリアグネが
言う処の 「戦闘組曲第二楽章」 開幕のベルだった。
 大刀を振り下ろしたままの体勢で俯くシャナの背後から、
すぐさまに様々な色彩のウェディング・ドレスを纏った燐子7体が
細 剣(サーベル)を振り上げて彼女に襲いかかる。
 ガギィィィィィィィィィ!!!!
 今度はシャナが背後から襲いかかる無数の剣林を
彼女(?)らには背を向けたまま左手を大刀の峰に押し当て
全て受け止める。
 そして。
「ぜえぇぇぇぇぇぇッッッッ!!!!」
 息吹と共に全身の筋力と更に内腑(うち)のソレまで使って生み出された、
その小さな躰からは想像もつかない強烈な灼熱の 「剣気」 が
贄殿遮那の刀身から喚き起こる。 
 吼えるフレイムヘイズ “炎髪灼眼の討ち手”
その灼熱の剣気を手にした武器を透してクローム樹脂の身体に叩き込まれた
武装燐子の群は、まるで破壊振動波を喰らったかのような衝撃を身に受け
全て後方へと弾き飛ばされた。
 すぐさまに後方へ向き直ったシャナは、
右手の柄頭を基点に大刀を円環状に廻転させ
周囲に遍く無数の剣輪を波紋の如く生み出した。
 鋭い白刃の旋風が巻き起こり、その動作を警戒した
強化型武装燐子達が二の足を踏む。
 敵に対する威嚇と同時に廻転運動によって生まれた遠心力を、
シャナは肩と肘とに集束させ、素早く大刀を返して揺らめく炎髪と共に背へ流す。
 そして執るその 「構え」 は、
左肩をやや前面に押しだし後ろ足を斬撃と同時に送り出す、
古流剣術で言う処の 「(くるま)の構え」
 ソレを己の超人的な身体能力に合わせて特 化(カスタマイズ)した、
フレイムヘイズ “炎髪灼眼の討ち手” 専用 「斬刀術」
「ッッだあぁぁぁぁッッッッ!!!!」
 鋭い掛け声と共にシャナは瞬時に足下のコンクリートを踏み割り
半月状の足痕を残して、背後に跳ね飛ばされた武装燐子達の脇を
彼女 (?) 達が着地するより素疾く駆け抜ける。
 舞い上がる黒衣、火の粉撒く炎髪。 
 まるでDVDのコマ送りのように不穏な動作一つなく前方で
一時停止したシャナの手の内で、大刀は既に全力で振り切られていた。 
 彼女の背後で、7体の燐子が空間に疾走った斬閃に因って左斜めに両断され、
空中で割かれた上半身をコンクリートの上に落下させる。
 ソノ斬刀の余りの疾さ故に、
血の代わりに吹き出す白い炎の間歇泉までもが一刹那遅れた。
 疾風烈迅。断空の穿牙。
『贄殿遮那・火車(かしゃ)ノ太刀』
遣い手-空条 シャナ
破壊力-A スピード-A 射程距離-B(最大25メートル)
持続力-E 精密動作性-B 成長性-B



 大刀を振り下ろしたままの体勢で足を止めたシャナの背後から、
一呼吸の間も置かず3体の燐子が組になって襲いかかる。
「ッッシィッッ!!」
 白い(うなじ) が微かに覗く程度に首を動かし、
流し目で燐子を睨め付けたシャナの交差した右手の隙間から瞬速で放たれた、
紅蓮の刃が人体の急所に当たる燐子達の喉元と眉間に突き刺さり
その着弾箇所周辺を燃え上がらせた。
 炎髪の撒く炎気を、指の透き間で手裏剣状に変化させ敵の急所に撃ち込む。 
 穿たれた紅蓮の硝刃は、対象に喰い込んで尚燃え続け標的を内部から蝕む。
 華麗さと凄絶さ、二つの顔を併せ持つ
フレイムヘイズ対中間距離用 「打剣術」
蓮華(れんか)
遣い手-空条 シャナ
破壊力-C スピード-シャナ次第 射程距離-シャナ次第
持続力-A 精密動作性-シャナ次第 成長性-A



 顔面と喉元を焼かれた燐子3体が力無くその場に崩れ落ちるよりも速く、
シャナは既にそこから躰を90°反転させ真横に飛び去っていた。
 高速で黒衣をはためかせながら鋭く中空を翔る紅の少女は、
光彩を無くした無明の双眸を瞠りながら全身から際限なく湧き上がってくる
未だ嘗てない力の奔流に身を奮わせていた。
(スゴイ……ッ! 理由は解らないけど、躰がスゴク軽い……ッ!
それに、信じられないくらいよく旋廻(まわ)る……!!
「今」ならきっと……! 誰にも負けない……!
アイツにも……! アノ男にも……ッ! 誰にも……ッッ!!)
 その少女の昂りへ呼応するかのように、全身から鳳凰の羽根吹雪の如く発せられた
紅蓮の火の粉が空間を灼き焦がす。
(今ならきっと……“アレ” が出来る……!
一度修得しようとして出来なかった “アレ” が……ッ!)
 脳裏に浮かび上がる新たな炎刃の戦形(カタチ)を想い浮かべながら、
シャナは斬撃で開いた隙間より包囲網を抜け出した。
 着地と同時に、革靴の裏がキュッと鳴る。
 その前方から関節を軋ませつつ迫ってくる、
個々の力では太刀打ち出来ないと判断し人海戦術に撃って出た
武装燐子の大群に向けて少女は不敵な笑みを刻む。
「無駄よッ!」
 凛々しく清廉な掛け声。
「はああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 大刀の腹を真横にして、中段に構えた刀身内部へ左手を (あてが) って炎気を込め、
更に柄を握る右手からも波長の違う炎気を送り込む。
 やがて贄殿遮那の内部にて波及効果を起こした炎気がその全体に拡散していき、
刀身が真紅の火の粉を振り撒きながらまるで烈火に()べられた
溶鉄の如き形象に変わっていく。
「りゃああああああああああああああああッッッッ!!!!」
 叫びと共に大きく振りかぶった焼紅の大刀を、勢いよく前方に撃ち出すシャナ。 
 その高速で振り抜かれた刀身から、具現化した紅い斬撃が追進して勢いよく飛び出した。
 余波である直線状の火走りをコンクリートの上に噴き上がらせ、
高速射出された実体の在る斬撃の紅い牙が進撃してくる
武装燐子達を持っている武器ごと斜めに寸断し、
更にその背後の青いフェンスまでも突き破って彼方へと消える。
 掌に集束した炎気の塊を贄殿遮那を通して増大させ、
カマイタチ状に変化させて射出するフレイムヘイズ専用 「斬撃術」
 斬光裂閃。紅蓮の闘刃。
『贄殿遮那・炎妙(えんみょう)ノ太刀』
遣い手-空条 シャナ
破壊力-B スピード-B 射程距離-B(最大30m。以降は全ての能力が著しく低下)
持続力-B 精密動作性-B 成長性-B




 たったの一撃で、十数体の武装燐子を武器ごと斬り飛ばした少女を懼れた他の燐子達は、
すぐさまに動きを止めて左右に方向転換し始め、
遠距離攻撃を警戒してか今度は広域に散開して飛び上がり頭上から急襲した。
 しかし、これまでの長い戦いで培われた状況判断力を有する少女は、
すぐさまにその事態へと対応する。
「馬鹿ねッ! それじゃあわざわざ自分で逃げ場を(せば)めたのと同じ事よ!」
 そう叫んで両手に構えた大刀を、高々と頭上へ掲げた。
 手の平から湧き上がる無数の火の粉を刀身内部に送り込みながら。
「やああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!!!」
 喊声(かんせい)と共に贄殿遮那の中央部が赤く発光し、
刀身から圧搾された炎塊が弾けて放射線状に変異、
その周囲全方位に向けて隈無く疾駆する。
 張り詰めた鋼線のような灼熱の光が、上空の重力に縛られた回避不能の燐子達、
そのありとあらゆる箇所に着弾して全身を貫いた。
 その一発一発の威力は低いが、
広範囲を一度に攻撃出来る炎の戦闘自在法。
 光塵乱舞。閃華の赤裂。
『贄殿遮那・火足(ひたり)ノ太刀』
遣い手-空条 シャナ
破壊力-C スピード-C 射程距離-C(半径15メートル)
持続力-C 精密動作性-C 成長性-A



 シャナの周囲、円周上にスクラップとジャンクの残骸が白い火花を伴って
五月雨(さみだれ)のように舞い落ちる。
「……」
 その様子を給水塔で立ち上がったフリアグネは両腕を組み、
純白の長衣とパールグレーの髪を封絶の放つ気流に靡かせながら
先刻とはまるで違う、引き締めた表情で戦況を見つめていた。
(強い……先刻の 「常用型」 の量産タイプとは違う、
“フレイムヘイズ討滅” を目的に創り上げた
この私秘蔵の強化型武装燐子達を、
こうもあっさりとはな……)
 状況的に追い込まれたわけではないが、愛着の深い秘蔵のコレクション達が
その価値の解らない者に身も蓋もなくバラバラにされていくのを目の当たりにし、
偏 狂 人 形 師(カルトモデラー)の誇りが著しく傷つけられる。
(流石はアラストール秘蔵のフレイムヘイズといった処か……
単純な戦闘能力だけなら “彼” を倒した 『星の白金』 以上、か……?)
 フリアグネは様々な宝具の検分によって研ぎ澄まされた審理眼で
冷静に状況を分析しながらも、そこで初めて耽美的な美貌を(かげ)らせた。
 脳裏に甦る、一人の人間。
 その瞬間引き締められた表情が自覚のないままに、
ふ、と切なげなモノへと変化する。
 気流に消え去る声で、ただ一言大丈夫と呟いたフリアグネは、
再び見開いたパールグレーの双眸を尖らせると、
勇猛な闘いを繰り広げた少女を傲然と見下ろした。
「どうしたの? あまりの事に声も出ない? 
おまえの大切な 『お人形達』 はもう半分以下になったわ。
何か自在法で援護をするなら今の内よ。
次の一合で全滅させるつもりだから」
 紅い無明の双眸でシャナはフリアグネを捉え、
危うく揺れる微笑を浮かべる。
 己の勝利を信じて疑わない、確乎たる意志を持って。
「勇猛果敢な事だね。お嬢さん。
確かに “戦闘能力だけなら” 君はこの私すらも凌ぐだろう」
「ハッ、まさか此の期に及んで命乞い? 聞く気はないけど」
「フッ、コトは君が想っているほど単純ではないという事さ。
古来より 「戦果」 とは、 「武力」 の大きさだけで決するモノではないのだよ」
 そう俯いて、自嘲気味に微笑むフリアグネ。
「その事実。この私が教えて差し上げよう。
アノ御方の忠実なる (しもべ) !!
紅世の王! この “狩人” フリアグネがなッッ!!」
 叫びながら長衣を翻し、鮮烈な声で宣告する白色の貴公子。
「だったらとっととそこから降りて来なさい!
ザコが何匹集まっても私には通用しないわ!」
 叫ぶシャナにフリアグネは、
「イヤ、“その必要はない” 」
と静かに告げた。
「ッッ!?」
 意外な応えに瞳を丸くするシャナに、次の瞬間、
フリアグネはその耽美的な美貌を何よりも邪悪に歪ませた。
 まるで己が仕える主の 空身(うつせみ)であるかのように。
「何故なら……君は……」
 ゾッとするほど静かな声で、フリアグネは冷酷な微笑を浮かべつつシャナを見下ろす。
「もう! 私の能力でッ! “討滅されてしまっているのだからッッ!!”」
「!!」
 そう叫んだフリアグネが、邪悪な表情のまま純白の長衣を素早く
弧を引いて撃ち放つと同時に、シャナの周囲で無造作に転がっていた
夥しい数の残骸が蠢き、ソレが次々と宙に浮かび上がり全方位から襲いかかってきた。
「――――――――――ッッッッ!?」
 驚愕の事実にシャナの反応が一瞬遅れる。
 ソレがもう、既にして致命的損失。
 しかし、少女を責めるのは酷というモノであろう。
 動く 「残骸」 の大群は、周囲360°全てから微塵の隙間もなくシャナに、
文字通り嵐のように降り注がれたのだから。
 どんな強者も、降り落ちる雨の雫を全て避ける事など、絶対に不可能なのだから。
「な!?」
 たったいま自分が斬り倒した、夥しい燐子の手が、足が、胴体が、そして首が、
シャナの黒衣を掴み、或いは接着し、更に首が裾に噛みついて全身を覆っていく。
「くぅッッ!! ナメるな!! こんなものォォォォォォォッッ!!」
 体内の中心部に炎気を集め、一気に爆裂させてまとわりついた
残骸を吹き飛ばそうとシャナは全細胞の力を限界まで引き絞る。
 しかし。
「え!?」 
 いきなり片膝の力が抜けて、コンクリートの上へコトリと落ちた。
 自身の躰の、予期せぬ突然の造反にシャナの頭の中は一瞬蒼白となる。
 そこに降り注ぐ “狩人” の声。
「フッ……! 当然だろう! お嬢さんッ!
ソレだけの 「力」 を回復もせず、セーブもせずに常時全開放して、
全力の攻撃を繰り出し続けていれば力尽きるのは当たり前さ!
熱に浮かされて自覚は無いようだがな!!」
 フリアグネはそう叫び、既に勝ち誇った表情でシャナを見下ろす。
「だからッ! 次の私の攻撃を! 防ぐことも不可能だッッ!!」
 再び弧を描いて純白の長衣が前方に撃ち出されると、
中に編み込まれた “操作系自在法” が発動して奇怪な紋様が
シルクの表面に浮かび上がり、そして発光した。
 ソレと同時に周囲13体の燐子、そのクローム樹脂の表面にも
奇怪な紋様が(まだら)のように浮かび上がり、遠隔操作を受けた人形達は
手にした武器を投げ出して次々とシャナに抱きついていく。
 群がるその重量に、シャナは無理矢理引き吊り倒された。
「あうぅッッ!!」
 コンクリートの地面に強く頭を打ちつけられ、
ボヤける視界のまま封絶の空を仰ぐ形となったシャナの眼前に、
無数の燐子の顔があった。
 その(かお)は、敬愛するべき主に身を捧げることを至上の悦びとする
狂気の笑みで覆われていた。
「……ッッ!!」
 全身に走る、穢れた、しかし圧倒的な数の力で
存在を蹂躙される、原始的な恐怖。
 その先で、敗者見下ろす冷たい視線で、シャナを睨め付ける紅世の王。
「どうもありがとう。 “爆発させやすくしてくれて”」
「!!」
 邪悪そのものの声だった。
 しかし、信じ難いほど甘い響きがそこにあった。
 その狂気にギラついた視線を受けながら、
シャナは自分が完全に “狩人” の (てのひら) で踊らされていた事に気づいた。
 必要以上にアラストールを侮蔑したのも、自分を挑発し続けたのも、
全ては怒りで 「我」 を喪失(うしな)わさせ、そして力尽きさせる為の 「布石」 だったのだ。
 更に、今自分の内から湧き上がるこの新たな能力(チカラ)さえも、
この 「結果」 の為の 「伏線」
 自分を捕らえる 「罠」 を、自分で周囲にバラ撒いていたのだ。
 意気揚々と、得意気に、微塵の疑いすら抱くことなく。 
 憎むべき相手の謀略を、自ら掻き抱いていた。
 その残酷な 「事実」 が、優秀な戦士である少女の 「誇り」 を
一片の容赦も無くズタズタに引き千切る。
 そこに間髪いれず、“狩人” の言葉が舞い降りた。
「さあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!! いまこそ()せてあげようッ!
アノ御方の忠実なる 「暗殺者」 !!
この “狩人” フリアグネ最大最強焔儀をッッ!!」
 そう言って長衣が艶めかしく絡み合った両腕を逆十字型に交差し、
指先に不可思議な自在式印を結んで王は “流 式(りゅうしき)” の構えを執る。
 そのフリアグネの右手には、いつの間にか神秘的な輝きを放つ
麗美なハンドベルが握られていた。
 ソレは、己の使役する燐子を 「爆弾」 に変えて 「自爆」 させる事の出来る
「能力」 を持つ背徳の魔鐘。
“紅世の宝具” 『ダンスパーティー』
 その能力と己が自在法とを結合して編み出された、
「宝具」と “自在法” の高等融合焔術儀。
「くらえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!! フレイムヘイズ!! 炎髪灼眼ッッ!!」
 その “流式” の魔名が、耽美的な口唇から高々とシャナに向けて宣告される。
 魔焔鏖殺。寂滅の煉劾。
「簒奪」の流式(ムーヴ)。 
邪 裂 爆 霊 傀 儡 殺(スレイヴィング・エクス・マリオネーション)ッッッッ!!!!』
流式者名-“狩人” フリアグネ
破壊力-A(燐子の数により無限に増大) スピード-A 
射程距離-A(燐子の数により無限に増大) 持続力-A(燐子の数により無限に増大)
精密動作性-A 成長性-A(燐子の数により無限に増大)



「さああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!! 弾ッッッけろォォォォォォォォッッ!!
アアアァァァ――――――ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
 狂ったように嗤いその全身から纏っている長衣よりも白い
存在のオーラを立ち昇らせながら、フリアグネの右手に握られたハンドベルが
緩やかに空間を流れ、そして清らかな音色がを奏でられる。
 その音に同 調(シンクロ)して、まとわりついた残骸と抱きついて拘束する
武装燐子全てがその身を歪ませて凝縮し始めた。
「むうぅッッ!! イカンッッ!!」
 瞬間、胸元のアラストールが深紅に発光する。
 その時、シャナは、眼前に迫る破滅よりもまるで別の事を考えていた。
 たったいまフリアグネが言い放った、たった一つ言葉を。



“弾けろ”
 確か、自分が言った、言葉だ。
 いつ、だったか?
 そう、だ。
 アノ時、だ。
 アノ時、自分が、言った、言葉、だ。
『誰』、に?
 そして、「その後」、どう、なった?
 脳裏に、一人の男の姿が浮かぶ。
 黄金に輝く、この世の、何よりも、ドス黒い、闇黒の、瞳。
 そして。
 そし、て……
「ジョ……」
 その言葉が口唇から紡ぎ出される前に、シャナの視界が白く染まった。




 ヴァッッッッグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ
ォォォォォォォォ――――――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!!!





 鼓膜を劈くような、大爆裂音。
 巻き起こった真空波の影響で校舎の窓ガラスが全階まとめて砕け散る。
 そして給水塔の上で静かに佇む殺戮の “狩人” フリアグネの眼前で、
爆破炎蒸する巨大な垂直ドーム状の火柱。
 激しく渦巻く白い爆炎の中心部に浮かび上がる少女のシルエット。 
 スパークする爆炎光に全身を白く染められながら。
REQUIEM……FINALE(討 滅 完 了)……」
 主譲りの、悪の華のように危険な微笑みを浮かべた口唇を、
フリアグネは長衣で覆いながら呟いた。






【2】

「さぁ? お祈りの時間だぜ? マリアンヌ」
 鋭く構えた逆水平の指先で自分を差し、やや気怠げな口調で零れた甘い声が
マリアンヌの躰に恐怖と陶酔の入り交じった体感を駆け巡らせる。
(ま、まだ、何か手があるはず……! 高速接近してくる 『星の白金』 に
巧く 『バブルルート』 を合わせられれば……ッ!
「金貨」の状態で指先から弾けば……!
その死角から空条 承太郎 「本体」 を攻撃出来る……ッ!)
「せめて苦しまねぇように、一瞬で終わらせてやるぜ」
 承太郎の甘い言葉と共に白金に煌めく 「幽 波 紋 光(スタンドパワー)」 が
スタープラチナの右手に集束していった。
(勝負は……一瞬よッ! マリアンヌ!)
 強く己を鼓舞してマリアンヌは、交差法(カウンター)に備え
長 衣(ストール)を梳き流しながらやや前傾姿勢の構えを執る。
 だが、このとき、マリアンヌは、
目の前の承太郎へ意識がいき過ぎていた為に気づいていなかった。
 その白金色に煌めく 「幽 波 紋 光(スタンドパワー)」 が、
スタープラチナのケリ足である “スタンド右脚部にも集束していた” 事を。
 その次の瞬間、目の前の 「スタンド」 スタープラチナは、
「本体」 である空条 承太郎と共に音もなく消え去っていた。




「―――――――――ッッッッラァァァァァァァッッッッ!!!!」



「!?」
 気がついたのは、その声の「後」だった。
 視線の先、20メートル辺りの位置で、砕けたリノリウムの破片が中空に舞っている。
 そして、マリアンヌの可憐な容貌と細身の躰にはややアンバランスな、
美しい造形のふくよかな左胸にスタープラチナの寸撃(すんげき)がいつのまにか叩き込まれていた。
 防御と回避を犠牲にし、代わりに破壊力とスピードを極限にまで
高めた必殺のスタンド攻撃。
 強靱無双。戦慄の轟撃。
 流星の流法(モード)
『流 星 爆 裂 弾《スター・ブレイカー》』
流法者名-空条 承太郎
破壊力-A スピード-A 射程距離-B(最大25メートル)
持続力-D 精密動作性-B 成長性-A



「あっ……?」
 痛みも衝撃もまるで感じず、一切の 「過程」 を消し飛ばして
その 「結果」 だけがいきなり現れたかのようだった。
 貫通はさせずその驀進(ばくしん)突撃の威力が、
スタンドパワーで覆われた右拳を透して
全てマリアンヌの躰内部に叩き込まれた為、
内部で凄まじいまでの破壊衝撃波が夥しい 「波紋」 を引き起こし
滅砕振動波と化した攻撃エネルギーが裡を音速で駆け巡った。
 まるで、全身の血液が沸騰したかのような異常な感覚。
 同時に超高圧の電流が全身を駆け廻ったかの如き強烈な体感。
 その二つの衝撃が声を上げる間もなく、マリアンヌの全身で激しく渦巻く。
 次の刹那、マリアンヌの躰はそのダメージにより存在の形を維持出来なくなったのか、
白い人型の炎の塊と化しまるで宵闇前の夜霧のように空間へと散華した。
 残された純白の長 衣(ストール)が宙に靡き、
一枚の金貨がリノリウムの上に落ちて澄んだ音を立てる。
「フッ……やっぱ “ハリボテ” かよ?」
幽 波 紋 流 法(スタンド・モード)』 を放つ前から、
その 「結果」 を予測していた承太郎は微笑を浮かべ
洞察の正しさを実感する。
「くぅぅぅッッ!!」
 霧散する白炎に巻かれながら本当に悔しそうな声をあげて、
宙に浮いた一体の 「人形」 がバランスを崩した軌道で飛び出した。
「おっと!」
 周囲に立ちこめる残り火の中、
死角からからいきなり伸びてきた 「人間」 の腕が、
肌色フェルトの躰を素早い手捌きで掴んだ。
「なぁッ!?」
 予想外の事態にその 「人形」
先刻までの美少女 “マリアンヌ” は驚愕の声をあげる。
「この空条 承太郎に、同じ 「手」 が二度通用するなんて思い上がるのは、
十年早いンじゃあねーか? マリアンヌ?」
 口元に不敵な微笑を浮かべて、承太郎はすっぽりと手の中に収まる
マリアンヌの顔をライトグリーンの瞳で覗き込む。
「こ、この! 離しなさいッ! 空条 承太郎!」
「フッ……!」
 口調と声色は変わっていないが、
何分 「見た目」 が随分可愛らしくなっているので
意図せず承太郎の口から笑みが零れる。
「わりーがそいつぁ出来ねー相談だな。
このままオメーを連れて屋上に行き、
それをダシにオメーのご主人様とやらには
無条件降伏と洒落込ませてもらうぜ」
「な!?」
 再び手の中でマリアンヌは、その愛くるしい表情は変えないままで声をあげる。
「あんまり気が進まねー 「手」 だが、
他の生徒やセンコー共の生命(いのち)には代えられねーんでな。
ま、堪えてくれ」
 承太郎は怜悧な美貌に少しだけ (よこしま) な笑み浮かべながら、
マリアンヌにそう告げた。
「ひ、卑怯よッ! 空条 承太郎!
男なら正々堂々、私のご主人様と勝負なさい!」
 激高したマリアンヌがその (本当に) 小さな躰を動かしながら抗議の声をあげる。
「ハッ、紅世の徒(テメーら)には死んでも言われたくねぇ台詞(セリフ)だな?」
 事実上、もうこの戦いは「結末」を迎えたも同然なので、
やや気分が弛緩した承太郎は左手で煙草を取り出し器用に銜える。
「まぁ安心しな。命までは取らねーよ。
その代わりメキシコに在る、SPW財団秘匿の 「地下隔離施設」 で
『柱の男』 と一生仲良く暮らして貰うがな」
「?」
 銜え煙草のニヒルな口調で語られた承太郎の、
その言葉の意味がまるで理解不能だった為
手の中で抗議の声をあげていたマリアンヌは唐突に押し黙る。
紅世の徒(テメーら)に人間の 「法律」 は通用しねぇし、
かといって黙って放置しとくにゃ危険過ぎる存在だぜ。
紅世の徒(テメーら)はよ 」
 (かしず)いたスタープラチナに火を点けてもらいながら、
承太郎は銜え煙草のままそう告げる。
「その紅世の徒とやらも、
“アラストール” みてぇなヤツばっかなら話もラクなんだがよ。
ホントままならねーモンだぜ、現実ってヤツはよ」 
「……い、一体、何を、言ってるの、かしら?
アナタ、解らないわ……」
 赤い大きなリボンのついた毛糸の髪に、
大粒の汗玉を浮かべながらマリアンヌは絶句する。
 いきなり押し黙ってしまったマリアンヌに、
承太郎はその人形を掴んだ右手を軽く揺すってみる。
「よぉ? どうした? 起きてッか? マリアンヌ?」
「!!」
 その呼びかけにハッ、と我を取り戻したマリアンヌは、
「こ、この! 離せ! 離せ! エイ! エイッ!」
手のないフェルトの腕で薄く血管の浮いた右手をポカスカやり始めるが、
無論象と蟻の戦力差なのでまるでお話にならない。
「この! 卑怯者ッ! 離せ! 離せ! 離せェェェッ!」
「あぁ~あ、うるせぇうるせぇうるせぇ」
 この2日間、野別幕(のべつまく)なしで本当に 「うるさい」 ほど聞かされた為に、
いつのまにか移ってしまった口調でボヤきながら
承太郎は屋上に向けて歩き出した。
 彼の脳裏で、台詞の張本人は 「なによッ」 という表情でムクれていた。
 その、刹那だった。
 清らかな鐘の音色が、忽然と空間を流れた。
 次の瞬間、いきなり周囲に散乱していた武装燐子達の残骸が、
いきなり膨張して犇めき合い事態を認識する間もなく無数の爆発が巻き起こった。




 ズァッッッッガァァァァァァァ―――――――ッッッッッ!!!!!




「ッッ!!?」
 同時に頭上からも、途轍もない大音響の爆裂が鳴り渡り、
衝撃の伝播で蛍光灯が次々に割れ周囲にガラスの豪雨が降り注ぎ
更に破壊の轟音と爆炎の嵐で承太郎の周囲30メートルは
瞬く間に白が司る頽廃の 「地獄」 と化した。
「チィッ!」
 咄嗟にスタンドを出現させ、反射的に足下の床を爆砕させて踏み抜き
ソレによって生まれた運動エネルギーによって防御体勢を執ったまま
素早く後方へと飛び巣去り白炎の爆破圏内から脱出を試みる承太郎。
「クッ!」
 しかしその規模が余りにも巨大過ぎた為
彼の執った行動は 「直撃」 を避けるだけに終わり
結果激しい衝撃と爆風、その他諸々の余波によって承太郎は
スタープラチナと共に大きく上空へと弾き飛ばされ、
天井の板をその身で深々と打ち砕き更に内部に組み込まれていた鉄筋に
背からブチ当たってようやくその軌道を変え、
斜めに急速落下しながら焼けたリノリウムの上へ大の字で叩きつけられた。
「がはぁッッ!!」
 全身を劈くほどの落下衝撃。
 気が緩んでいた時に到来したまさかの惨劇に、
さしもの承太郎からも苦悶の叫びが生温い鮮血と共に吐き出される。
「ぐっ……うぅ……な……何……だ……?
今の…… 「爆弾」 みてぇな……モノ凄ぇ 『能力』 は……ッ!」
 血の伝う側頭部を右手で押さえ、グラつく視界を精神で強引に繋ぎ直しながら、
承太郎はよろよろと身を起こす。
 その表情は不意打ちを喰った事に対する己への戒めと、
愛用の学ランがボロボロにされた事に対する両方の怒りで歪んでいた。
(クソッタレが……ッ! アバラが何本かイッちまったかもしれねぇ……!
オマケに大事な制服までズタボロにしてくれやがって……ッ!
やってくれたな……! “ご主人様” よ……ッッ!!)
 その彼の周囲は、先刻の大爆発現象の爪痕である白い炎があちこちで燃え上がり、
通常の物理法則を無視して至る処に類焼していた。
(マリアンヌの仕業じゃあねぇ。
もしこんな芸当が出来るンならさっきとっくに使っていた筈だ。
コレがそのご主人様とか抜かす紅世の徒
“フリアグネ” とかいうヤツの真の 『能力』 か?
確かに花京院のスタンド能力 『エメラルド・スプラッシュ』
と較べてもまるで引けを取らねぇ、恐ッそろしい能力だぜ)
 心の中で能力の解析を終えた承太郎は、裂傷によって口内に溜まった血を吐き捨てる。
 ビシャッッ!! と白い光で染められた廊下が無頼の貴公子の鮮血で染まった。
「ッッマリアンヌ!?」
 承太郎は咄嗟に自分の右手へ視線を送った。
 先刻、しっかりとその手に握っていたはずのフェルト人形が、
いつのまにかなくなっていた。
 突然の爆発で想わず離してしまったのだろうか?
 [“だとしたら” アノ白炎が渦巻く焦熱地獄の中に放り出してしまった事になる。
「……ッ!」
 寒気に似た体感が、承太郎の背に走った。
「クッ……! マズったか……! 命まで取る気はなかったんだがな……
しかし……いくら敵とはいえその相手を味方もろとも 「始末」 しようなんざぁ
全くとんでもねぇ下衆(ゲス)ヤローだな……! そのフリアグネとかいうヤローはよ……ッ!」
 敵とはいえ、正々堂々勝負を挑んできたマリアンヌの、
その悲劇的な最後に承太郎は苦々しく口元を軋らせる。 
「仇は取ってやるぜ。マリアンヌ……!」
 そう強く心に誓い、胸の前で強く拳を握った承太郎の前方から
唐突に聞き慣れた声が返ってきた。
「私のご主人様を悪く言わないでッッ!! それと勝手に殺さないで!!」
“誰もいない空間から”、清廉な少女の声だけが木霊する。 
 そして。
 その何もない空間にいきなり純白の長 衣(ストール)がフワリと弧を翻らせて出現し、
中から人形姿のマリアンヌが姿を現した。
「私は無事よッ! 掠り傷一つ負ってない! 
ご主人様が現在お持ちの最大 「宝具」 “ダンスパーティー” を発動なされた時には
“最優先で私を護るように” “ホワイトブレス” の中に自在法を編み込んで下されていたの!
この戦いが始まるよりも、もっとずっと 「前」 からね!!」
 そう叫んで敏腕弁護士宛らに、最愛の主を擁護するマリアンヌ。
「それに大体今の 「爆発」 は “アナタを狙ったモノ” じゃないッ!
だからご主人様が私を巻き込んでアナタを「討滅」するなんてコト自体が
ありえないのよッ!」
 目の前で愛狂しい表情を崩さないまま、
ヒステリックな口調で怒鳴り続ける人形。
「……」
 彼女(?)の無事に承太郎は複雑な感情を抱きながらも疑問を投げかけた。
「今のが、オレを狙った 「遠隔能力」 じゃあねぇとするなら、一体何だってんだ?
もしかしてシャナのヤツが、もうオメーのご主人様をヤっちまったのか?」
「縁起でもない事言わないで!
今のはおそらく “炎髪灼眼” に向けて放った
ご主人様最大焔儀に対する単なる余波よッ!」
「何ッ!?」
 心に走った衝撃により、頭蓋へのダメージで鈍っていた思考回路がようやく
その機能を回復し始める。
 そうだ。
 何故 「その事」 を考えなかった?
 先程、マリアンヌに問いかけた疑問とは「逆」の事実を。
「!!」
 その、あまりに強烈過ぎる存在感から思考の盲点になっていたのか?
 いくら強力な戦闘能力をその身に宿していたとしても、
まだ年端もいかない 「少女」 である事には何ら変わりがないというのに。
「覚えておきなさい! 空条 承太郎ッ!
アナタなんか! アナタなんかッ!
私のご主人様には 「絶対」 に敵わないんだからァァァァァ―――――――ッッ!!」
 涙ぐんだ声で強烈な捨て台詞を残しながら、
マリアンヌは中身が空になった“ホワイトブレス” を残し、
妖精のような白い燐光を靡かせて
割れた窓ガラスから外に飛び出し上へと消えていった。
 大事な 「人質」 にまんまと逃げられてしまったが、
承太郎の思考はいま “そんな事” とはまるで別の方向、
否、正確には脳裏を駆け巡った衝撃により停止状態に陥っていた。
 そして、耳障りなほどに激しく脈打つ心臓の鼓動と共に、一つの言葉が甦ってくる。



“フリアグネの必勝の秘密は彼の持っている「銃」にある ”



 先刻の、花京院の言葉。


“その銃で撃たれた “フレイムヘイズ” は、
全身が己の炎に包まれて灰燼と化すらしい”


 今のが、その銃に装填された 「弾丸」 がシャナに着弾した結果
起こった現象なのか?
 それとも、仲間であった花京院すら知らない全く別の 『能力』
 (いず)れにしても、あの「爆発」の後では、
余波ですらアノ凄まじいまでの破壊力を引き起こす
能力の 「直撃」 を受けてしまっては。
 もう。
 もう……
 最悪の事象が、思考の中で形造られていった。
 しかし意識は、頑強にその形成に叛逆した。
 そんな筈は、ない。
 そんな筈はないッ!
 今朝まで、否、ついさっきまで、自分の 「傍」 でやかましく騒いでいたのだ。
 まだ年端もいかない、身に不釣り合いな凛々しい瞳と艶やかな黒髪を携えた
“フレイムヘイズ” の少女が。
 この世ならざる空間、 “封絶”
 その中で、今日まで勇敢に戦い続け数多くの生命を護ってきた
紅い髪と瞳の少女。
 誰に称えられる事なく、誉められる事もなく、
人外のバケモノ達を相手に血塗れで闘ってきた筈の少女。
 何れその命尽きる時も、誰に知られる事もなく
戦場の荒野で散っていく事のみを定めづけられた、悲憐の存在。
 その事自体に自分が言う事は何もない、
ソレはきっと、少女が自分で決意した事なのだから。
 少女が自分で選び取った己の 「戦場」 なのだから。
 その事に、自分が何も言える筈はない。
 だが。
 そんな戦の申し子のような暮らしを続ける修羅の少女にも、
微かではあるがようやく 「救い」 が訪れる筈だったのだ。
 戦い続ける運命(さだめ)は変わらないだろう。
 これからも少女は、戦場で血を流し続けるのだろう。 
 でもそんな少女にもようやく 『帰るべき場所』 が出来る筈だったのだ。
 心も躰も傷だらけでも、
その身を癒す場所とその心を包んでくれる者達が居る処、
“家族” の居る場所が。
 自分の祖父、 “ジョセフ・ジョースター” との出逢いによって……ッ!
 闘う以外、何も知らない少女。
 本来闘いに向かない 「女」 であるのに、
自ら “フレイムヘイズ” という過酷な道を選んだ少女。
 でもようやく、これから始まる筈だったのだ。
 少女の、シャナの、 “人” としての 「生」 が。
 それが。
 それ、が。
 こんな、こんな死に方。
 在り得る筈がない。
 在って良い筈が、ない!



『何人もの人間の生命を救っておきながら、
自分自身は最後まで救われない結末など!』



「シャ……ナ……」
 口唇から、意図せずに少女の名が零れる。
 そう、少女には、祖父と出逢うまで、
自分の 「名前」 すら無かったのだ。
「シャナァァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!」
 封絶で覆われた空間に、彼女を呼ぶ叫号が響き渡った。
 50年前、祖父が友の名を叫んだ時と同じように。
 けれども、還ってきたのは、残酷な静寂のみだった。

←To Be Continued……

 
 

 
後書き

はいどうもこんにちは。
何も解ってないガキが未熟なのにも関わらず、
“自分のモノでもないのに”「力」を得てチョーシこくと
手痛いしっぺ返しが待っているという「教訓」の話です。
(小藪 千豊の話に似てるナ・・・・
('A`)つ ttps://www.youtube.com/watch?v=i7LrjTdOUcU)

何より「原作」のシャナが「弱い」ので、
その「呪い」が解けてない段階では必然の成り行きというのもありますが、
(毎回毎回莫迦の一つ覚えのように真正面から飛び込むだけでは、
小学生の格ゲーでもカウンター取られます)
ソレでも色々「技」を使わせて頑張らせたのは「作品として」
弱いままでは描写出来ないからです。
何より『STARDUST∮FLAMEHAZE』と銘打っている以上、
「原作の」フレイムヘイズが幾らアレでも、
ジョジョの『スタンド使い』と「対等の立場」にしなければならないため、
「本当に」『強く気高い存在』にしなければならないのです。
(だからなんでワタシが・・・・('A`) 原作でちゃんとヤっといてくれよ・・・・
そーゆー「設定」にしたのオ○エだろ・・・・・)

その為の「通過儀礼」或いは「破瓜」の暗喩(メタファー)とも言えますが
ダメなモノは『一度全部ブッ壊さない』と、新たなモノは『創造』出来ないのです。
故に彼女には戒めの意味も込めて、
一度しっかり「完全敗北」を喫してもらいました。
元が「○タレのご都合主義だらけのサポート」が無いと
敵に勝てない実力だけに
(ソレの一体どこが「偉大なる者」なんだか・・・・('A`)
いつから「偉大」の意味は「莫迦」と同義になったンだ・・・・)
余計なモノ全部洗い流す(浄める)必要があったからです。
ゼロまで落ちた以上あとは「上がる」しかありません。
多分この辺からワタシは彼女が好きになっていったンでしょうネ。
ソレでは。ノシ 
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