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剣(ブレイド)外伝-仮面ライダーギルティ-~失格者の罪と罰~

作者:蜥蜴石
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楽園に舞い降りた罪の怪物と罰の戦士その3

この地球上において世界ではある一つの戦いの儀式が行われていた。その名も『聖戦(バトルファイト)』、今から一万年前にこの戦いが始まり、地球上のありとあらゆる動植物の祖たる不死生物(アンデッド)が種の繁栄と存続を賭け、全部で53種類のアンデッド達が死闘を繰り広げていた。最後まで勝ち抜いた者には地球上での支配者への権利が与えられる…最終的には人間の祖・ヒューマンアンデッドが勝ち残り、現在最も繁栄し、生き永らえている種族たる人間が地球上の支配者となったのだ。

しかし、後に新たに判明したことだがバトルファイトにおいて一つの疑問がアンデッドとバトルファイトの歴史を研究するとある機関に所属する学者によってそれが提唱された。



何故、53種類『だけ』なのだ?と、地球上のどの生物にも該当しない『ジョーカー』と呼ばれる特殊な存在を除いても52種類だ。種の繁栄と生存権を賭けて戦う戦いにしては些か参加者が少ないし、偏りが目立ち過ぎるのでは…?と。


そして、それに気づいたときには最早手遅れであった…バトルファイトに参加しなかった、否、参加する権利さえ与えられなかった種族のアンデッド達は実在していたのだ。

その名も『失格者』、全員共通して身体のどこか一ヶ所とベルトのバックルに赤い×印の『失格の烙印』がなされており、その数は百を越えていた…バトルファイトの表舞台に立つことすら許されない彼らはそのまま封印され、歴史の闇に消えるはずだったが…最悪なことに封印は解かれ、この世に全ての失格者のアンデッド達が解き放たれてしまったのだ。

人類はコレに対抗すべく様々な銃火器・兵器を投入したが、彼らは死の概念から完全に隔離された生命体…故に不死(UN-DEAD)、首をはねられようが、手足がもがれようが、内臓がはみ出ようが、爆発で木っ端微塵に吹き飛ばされようが死なない、この不死身の怪物に押し切られた人類は完全敗北を喫し、文明社会は全てアンデッド達の手により崩壊した。

…しかし、人類もまた、反撃のチャンスを伺い、ついに完成させた。アンデッドは殺せはしないが代わりにラウズカードに封印することで無力化することが出来るという唯一の弱点を元に、アンデッド封印のために戦え、尚且つアンデッドを封じたことにより多彩な能力を発揮できるラウズカードを行使することが出来る仮面の戦士『仮面ライダー』を生み出したのだ。

「…失格者共を封印するために生み出された人類最後の希望たる仮面ライダー第一号、コードネーム・ギルティ…それがこの私、雷峰詠鶴だ。」

「そんな、そんなことって…あるのかよ…?」

全ての説明をし切った詠鶴の話を聞き、情報量の多さもあって鱗は思わず目眩がした…。

「私はアンデッドが出現したという報告を受けて奴等を追っていたが戦いの最中に船を沈められていてな、シスターと鱗にそこを助けられたのだ。今封印した奴は恐らくこの島の近辺での船の水難事故を起こした犯人だろうな。」

「おい、待てよ!!じゃあ、俺の親父もあいつらに殺されたってことか!?」

「…そう、なるな…」

「畜生!畜生ォォオオー!!なんでそんなことをするんだよ!?なんで、なんで、こいつらは…!!」

「アンデッドは一部を除いて知能など殆んど皆無の野生動物そのものだ。本能の思うままに喰らい、殺すだけ、ただそれだけだ」

鱗はその話を聞いて慟哭した…島民が皆殺しにされただけでなく、漁師である自分の父親が海で死んだ原因もアンデッドの仕業だと、そしてアンデッドが人を襲い、殺してるのも動物としての本能でしかないと、ならば島の皆は彼らの弱肉強食に敗れて死んだだけなのかと、そんな理不尽なことが納得出来なかったのだ。

「で、でも…あいつは封じこめちゃったんだろ?ならもう…」

「いや、私の追っていたアンデッドは一匹じゃない…もう一匹いたんだ。」

「なっ!!?」

シーキュカンバーアンデッドを封印してもう安心かと思った矢先、詠鶴はなんともう一匹のアンデッドとも出くわしていたのだ。その事実に凍りつき、鱗は驚愕した。確かにアンデッドは強力無比な異形の怪物だ、だからといって果たしてシーキュカンバーアンデッド一匹だけでここまでの惨劇が出来たであろうか?

「ハッ!?エレ姉ぇ!!エレ姉ぇが危ないよ!!」

「しまった…!!鱗!!急ぐぞ!!」

未だ見ぬもう一体のアンデッドは必ずこの島のどこかに上陸しているだろう、教会に置いたままのエレノアにも危険が及ぶ前に二人は一気に教会まで走り出す。



その頃、教会では…。



「…うっ…ぐすっ…鱗君…」

礼拝堂にて一人、エレノアは静かに涙を雫していた。この一ヶ月、いくら怪我人の療養のためとはいえ鱗のことを構って上げられず、そのことで彼は詠鶴、ひいては自分のことを怒ったのだと思い、悲しみに打ちひしがれていた。

エレノアはこの島に初めて来たときのことを思い出した。今でこそ島の皆から好かれてはいるが…一昔前は自分が外国人ということと日本語も今ほど上手くしゃべれたわけでもなかったのが災いし、誰も彼女に進んで近寄る者が居らず、毎日毎日孤独な日々を過ごしては泣いていた。

そんなある日、砂浜で特になんの目的もなくボーッとしていた時、偶然にも鱗と出会った…どうせ話しかけたところでまた避けられ、除け者にされるだけのみじめな思いをするだけだと、諦め混じりにその場から離れようとしたが…彼だけは違った。子供故の純粋な好奇心もあってか、怖がらずに彼女に近づき、海で一緒に泳がないかと誘ってくれたのだ。

臆せず自分に唯一接してくれた鱗との交流の日々はここから始まった。自ら閉ざした心の氷は日が経つにつれて徐々に溶けてゆき、自分を姉の様に慕う鱗に対して彼女は弟のように可愛がっていったが、それはいつしか特別な感情へと変化していったのだ。

だがその感情だけはどうしても隠さなければいけないし、ましてやそれは決して鱗に対して抱いてはいけない感情だった。

「鱗君…嫌、嫌だよ…嫌わないで…私をまた一人にしないで…」

エレノアは彼に恋していたのだ…だが、彼女の不幸は鱗があまりにも幼さ過ぎる年齢の少年だったことだ。それこそ本当に年の離れた姉弟程の差があるではないか…こんなこといくら世界が崩壊し、一般常識など通用しない世の中に変化しているとはいえ、周囲が認める訳がないしそもそも誰かに…ましてや、鱗本人に打ち明かすことが出来るわけがない。だからこの想いは閉まったまま、彼と楽しい日々を一緒に過ごせればそれだけで充分だったが…今回のことが切っ掛けでもしかしたら鱗はもう自分のところへ来なくなってしまうのでは?もう自分のことを嫌いになってしまったのでは?そう思うだけで不安と悲しみは加速し、涙が止まらなくなってくる…。

そんな彼女に追い討ちをかけるかのように魔の手は既に迫っていた。

「シュー…ハーッ…シュー…ハーッ…シャアァアアア!!」

「!?」

爬虫類の威嚇に似た低い唸り声を上げながら、頭部に魚のような鰭を何故か生やしている蛇にも似た険しい顔つきの黒い髑髏状の仮面を顔に張り付け、ただでさえ大きく裂けた口の右端は赤い×印の刻印によって更に大きく裂けており、右肩には稲妻状にジグザグに曲がりくねった蛇の骨格ような黒いオブジェが生えており、左手には蛇の胴体の様な細長い触手が指の代わりに五本垂れ下がり、右半身は蛇の鱗を思わせる黒い紋様が走る黄色い表皮に覆われ、残りの左半身は黒い表皮に覆われ、身体の至るところには外科手術の縫合を思わせる糸が縫い付けられているというおぞましい外見をしたアンデッドは教会の窓を荒々しくブチ破り、驚くエレノアを手にかけんと襲いかかった。

「シャアァアアアァアアア!!」

「あぁっ…ん、くっ…!?」

蛇…否、ウツボの祖たるモーレイアンデッドは左手の五本の触手を伸ばして逃げようとしたエレノアを拘束…細長いながらも強靭な触手は彼女の身体を容赦なく縛り上げてそのまま乱暴に自分の下へと手繰り寄せた。

「きゃあっ!!?や、やめてください…う、くっ…!!」

必死に拘束から逃れようと身体を揺するもビクともせず、むしろ抵抗するごとにキツく締まってしまい、逆効果であった。

「シャガァァアアァ!!」

モーレイアンデッドは大きく裂けた口をガバッと開き、エレノアを丸呑みにせんと首をろくろ首のように伸ばす…。

(神よ、これは罰なのですか…?私が、何も知らない鱗君に対して抱いてはいけない感情を抱いたから、こんな…)

諦めたようにエレノアはそのまま餌食にされてしまうかと思われた時だった。

[Edge]

「させるかぁあぁーっ!!」

電光石火の速さで乱入してきた一人の戦士によってそれは阻止された。×2の燕の絵と赤い×印の刻印が刻まれたカード『×2 EDGE SWALLOW』の力を発動させて触手を全て断ち斬り、エレノアを素早く回収して離脱する。

「大丈夫か!?エレノア!!」

「その声…詠鶴、さん…?」

「この場は私に任せて鱗と避難するんだ!!」

「は、はい…!!」

謎の仮面の戦士、否、仮面ライダーギルティと化した詠鶴の姿や謎の怪物・アンデッドの襲撃に困惑しつつも、エレノアは彼の言うことを素直に聞き、急いで外へと逃げ出した。

「どこまで奪おうとすれば気が済むんだよ、お前らは!!」

ギルティは憤慨していた。一人の少年から父親を含め、島民達などの繋がりある人間全ての命を奪った挙げ句に、ついさっきまで鱗の最愛の女性であるエレノアまで手にかけようとしていた…これが人として、人を護る仮面ライダーとして許せるはずが無かったのだ。

「シギャアアアアッ!!」

「黙れ。」

[Spike]

「ゴブッ!?ゲボァーッ!!」

ハリネズミと赤い×印の描かれた[×5 SPIKE HEDGEHOG]のカードによる突き刺す様な鋭い蹴りの一撃をモーレイアンデッドに叩き込んだ。

「グルルル…シャオァアアアー!!」

「うおッ!?」

モーレイアンデッドは右肩のオブジェを伸ばしてギルティ目掛けて噛み付き攻撃を放つも、ギルティは間一髪かわした…だが、背後にあった椅子が音を立ててドロドロの紫色の液体と化して溶けてしまった…どうやらあれには強力極まりない猛毒があるようだ。

「それで私を止められると思うなよ!!」

[Boulder]

[Straight]

[Boulder-Stroke]

「オラァアアアッ!!」

「シャギャアアアア!!ガバァ!!?」

ギルティは例え相手が自分を殺せる程の猛毒の持ち主であると知っても尚怯まず、すかさずギルトラウザーのトレイを展開して[×6 BOULDER KOMODO-DRAGON]とクマの絵と赤い×印の描かれた3のカード[×3 STRAIGHT BEAR] のカードの力を発動、石礫を右腕全体を覆うように纏うとその拳を振るってモーレイアンデッドを攻撃する。モーレイアンデッドも負けじとオブジェを伸ばして毒牙にかけようとしたが岩の塊と化したギルティの腕に噛みつけるわけもなく、逆にオブジェは砕け散り、そのまま勢いを殺すことなくギルティの必殺技・ボールダーストロークはモーレイアンデッドの顔面にクリーンヒットした。

「ブギャアアアアア!!ア、ア…!!」

窓ガラスをド派手にブチ破りながら外へと放り出されたモーレイアンデッドは間も無く動かなくなり、ベルトのバックルが展開するなりギルティはカードを投げつけて封印、カードは『×10 HOMING MORAY』に変化した。

「カードの中で一生、犯した罪を償い続けろ…それが私が下した罰だ。」

カードを憎々しげに見据えながら収納し、変身を解除すると 詠鶴は避難させた二人の下へと向かった…。



 
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