孤立無援
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6部分:第六章
第六章
「それで何で数が減らないんだよ。何か死んだ奴もいないしな」
「だから。向こうは数が違うだろ」
「交代でそういうことはやってるんだよ」
「だから向こうは何でもないんだよ」
「ちっ、戦争は数なんだな」
仲間達の話を聞いてだ。ジョーンズは舌打ちした。そのうえでだ。
彼は弾丸を装填しながらだ。また言ったのである。
「本当にそうなんだな」
「そうだよ。数が少ない方が負けるんだよ」
「それと地の利のない方がな」
「そうなるんだよ」
「じゃあ俺達負けるな」
数と地の利がないことはわかる。それでだ。
ジョーンズは苦笑いと舌打ちを同時にしながらだ。そして言ったのである。
「それじゃあな」
「負けるにしてもな」
だが、だとだ。バーグマンが返してきた。
「精々あがこうぜ」
「最後の最後まで戦うってことかよ」
「ああ、そうだよ」
まさにだ。その通りだというのだ。
「海兵隊らしくな」
「海兵隊は真っ先に飛び込んで最後の最後まで戦う」
「それが海兵隊っていうんだな」
「俺達だってんだな」
「ああ、そうだよ」
バーグマンが言いたいことはだ。このことだった。
「それでだよ。最後の一人まで戦おうな」
「何か悲壮な感じになってきたな」
「だよな」
「いや、悲壮じゃないぜ」
バーグマンは仲間達にだ。不敵な笑みでこうも言ってみせた。
「デビー=クロケットになるんだからな」
「おいおい、それじゃあ死ぬだよ」
「アラモかよ、この洞窟は」
「ヒーローになるんだよ」
バーグマンはまた言った。
「だから悲壮じゃないだろ」
「いや、それは悲壮だろ」
「そうだろ」
「そうか?格好いいと思うんだがな」
バーグマンの感覚ではだ。そうなるというのだ。
そしてだ。M16を放ちながらだ。さらに戦うのだった。
この日も戦闘が続く。そして夕方になるとだ。ベトコン達はまた去っていった。それを見てだ。
バルボンはだ。仲間達と夕食を食いながらだ。こう彼等に話した。
「これはな」
「ああ、何だ?」
「何かわかったのかよ」
「俺達のことがわかってるな、奴等はな」
そのだ。ベトコン達がだというのだ。
「俺達が四人しかなくてな」
「飯や銃弾に限りがある」
「このことがだってんだな」
「ああ、わかってるな」
その読みをだ。バルボンは仲間達に話すのだった。
「どうやらな」
「それでか。確かに激しく攻めてきてもか」
「絶対に突撃してこないのは」
「それでだったんだな」
「ああ、奴等は待ってるんだよ」
バルボンは鋭い目になってだ。仲間達にまた話した。
「俺達の飯に銃弾がなくなるのをな」
「どっちかがなくなったら終わりだな」
「そうだな」
マニエルとジョーンズがこう言った。
「もうそれで戦えなくなるからな」
「後はマジで銃剣しかないからな」
これでは勝負が見えていた。言うまでもなくだ。
それでだ。バルボンは言うのだった。
「連中はそれを待ってるんだよ」
「へっ、頭がいいもんだな」
ジョーンズはバルボンの話を聞いてだ。減らず口めいて言った。
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