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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第64話



ロイド達が研究棟内に入ると謎のモヤが棟内を包み込んでいた。



~ウルスラ病院・研究棟~



「なんだ、このモヤは………」

「な、なんだか空気が淀んでるような……」

「これは………!」

モヤを見たロイドとエリィは戸惑い、ルフィナは驚き

「おいおい、まさか危険なガスとかじゃねえだろうな?」

「いえ………人体に影響するものではなさそうですが………精神には影響がありそうですね………」

「恐らく邪気や瘴気の類だろう。クク、どうやら思っていた以上に厄介な相手がいるらしいな。」

目を細めて呟いたランディの言葉に銀はティオと共に答えた後、不敵な笑みを浮かべた。



「くっ、いったい誰が………」

「まあ、少なくてもこんな真似ができるという事は”教団”の関係者でしょうね。」

唇を噛みしめたロイドの疑問にレンが答えたその時先程ルフィナ達を襲った得体のしれない魔獣達が現れた!

「ま、また……!」

「片付けるぞ。」

そしてロイド達は魔獣達を協力して撃破した。



「やはり普通の魔獣とは違う………”塔”や”僧院”、それに”影の国”で戦ったのと似ているような………」

「上位三属性は働いていませんがわたしも同感です………ひょっとしたら………」

「マフィア達と同じく例の”グノーシス”なる魔薬が投与された可能性がある……つまり、そういう事だな?」

ティオの説明の続きを推測した銀はティオに確認した。

「………はい。」

「チッ、そういう事かよ。」

「手強いのも頷けるわね……」

「……”教団”も考えているわね。」

「ええ………でも、一体何の為に病院を占領しているのかしら……?」

得体のしれない魔獣達にも”グノーシス”が投与されている事に仲間達が表情を引き締めている中、静かな表情で呟いたレンの言葉に頷いたルフィナは真剣な表情で”教団”の真意を考えていた。



「……とにかく探索を始めよう。セシル姉によれば、まだ教授達が取り残されている可能性が高い。ヨアヒム先生共々、見つけ出すんだ。」

「ええ……!」

「手遅れになる前に急ぐ必要がありそうだな………!」

その後ロイド達は研究棟内の探索を開始し、時折襲ってくる得体のしれない魔獣達を撃退しながら、ある部屋に入った。



「き、来ました~!」

ロイド達が部屋に入ると女性の声が聞こえ

「ええい、これでも喰らえ!」

「くたばれ、化物があっ!」

さらに男性達の声が聞こえてきた。

「え…………」

声を聞いたロイドが呆けたその時、白衣を纏った男性達が物陰から跳躍して何かをロイド達に投擲し、投擲された物に気付いたロイド達は散開した。すると何かはロイド達がいた所に落ちた後、煙を上げた!

「うおっ………!?」

「あ、危な………!」

それを見たランディは驚き、エリィは呟いた。

「馬鹿者、何を外しておるか!まったくこれだから無能な外科医師はっ………!」

「そういうアンタこそ思いっきり外しただろうが!これだから内科医師は口先ばかりで使えんのだ!」

一方男性達の罵り合う会話が聞こえ

「あのぉ………先生方。なんか魔獣じゃなかったみたいですけど。」

さらに男性達の会話をいさめるかのように女性が男性達に話しかける声が聞こえた。そして女性の話を聞いた男性達は女性と共に物陰から現れた。



「おお、君達は………!?」

「たしかクロスベル警察の……!」

男性―――ウルスラ病院の教授達はロイド達に気づくと驚いたり明るい表情をした。

「………特務支援課の者です。皆さん、ご無事みたいですね。」

「やれやれ………まさか薬品を投げられるとは思いもしなかったぜ。」

「うふふ、中々たくましい考えをしているわね♪」

「まあ、”窮鼠猫を噛む”という諺があるくらいだからね………」

「これ、酸か何かですか?」

教授達に話しかけられたロイドとランディは苦笑し、からかいの表情で呟いたレンの指摘に同意するかのようにルフィナは苦笑しながら答え、ティオは小さな爆発によって煙を上げている地面の部分に視線を向けた後ジト目で訊ねた。



「す、すまん……実験用の酸化液なんだが。」

「た、多少刺激は強いが毒性はないから安心してくれ。」

「まったくお二人とも。軽はずみはいけませんよ~。」

「『来ました』と言ったのはアーシェラ君じゃないか!?」

「酸化液のビンを見つけたのも君だったと思うが……?」

ティオの指摘を聞いて謝罪していた教授達だったが女性の教授の指摘を聞くと顔に青筋を立てて、女性の教授を睨み

「あれれ、そうでしたっけ?」

睨まれた女性は呑気そうに呟き、ロイド達を脱力させた。

「と、とにかく内部はまだ魔獣が徘徊しています。」

「護衛しますのでいったんここから出ましょう。」

その後ロイド達は教授達を研究棟の外まで護衛して研究棟の状況を聞いた。



「―――では、ヨアヒム先生は全く見かけていないんですね?」

状況を聞いたロイドは真剣な表情で尋ねた。

「うむ、例の黒服たちが研究棟に乗り込んできた時にはすでに見かけなかったな………」

「てっきり夜釣りにでも行ったのかと思ったが………」

「………そうですか。」

「残念ですが……現時点で相当疑わしいですね。」

「そうね………」

教授達の話を聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐き、ティオは静かに呟き、エリィは静かに頷いた。



「そういえば、研究棟内の魔獣達はどこから現れたのですか?………ルバーチェのマフィア達が軍用犬と共に連れて来たのでしょうか?」

「いや、どこからともなく現れたという感じだったが………」

「私も見かけていないな………」

ルフィナの質問を聞いた男性達の教授達はそれぞれ首を傾げていたが

「あれれ、あの魔獣達だったら変な人が連れていたような………黒い服じゃなかったからマフィアの人には見えませんでしたけど。」

女性の教授は不思議そうな表情で意外な事を答えた。



「それって……」

「熊みたいな大男とか、ハゲた小太りの人ですか?」

「いえいえ。何だか普通の人でしたけど。エレベーターで4階の方に上がって行っちゃいました。」

「4階………教授達の研究室のあるフロアですか。」

「な、何者なのかしら………」

「ええ………一体どうしてこんな事をしたんでしょうか………」

「まあ、考えられるとしたらその人は”教団”の関係者で、”教団”の指示で動いている可能性が一番高いわね。」

女性の話を聞いたロイドとエリィは真剣な表情で呟き、不安そうな表情をしているティオの疑問にレンは静かな表情で答えた。

「ふむ………中を調べるのならくれぐれも気をつけるがいい。」

「私達は、病棟の空き部屋にひとまず避難していよう。」

「何か困ったことがあればいつでも来て下さいねぇ。」

そして教授達は病棟の方に向かって去って行った。



「魔獣達を率いた謎の男か………お前達、心当たりはあるか?」

教授達が去った後、銀はロイド達に尋ね

「いや………現時点ではさっぱりだ。どうやらヨアヒム先生とは別人みたいだけど………」

尋ねられたロイドは首を横に振って答えた後考え込んだ。

「何者かは知らねぇが………とッ捕まえる必要があるな。何とか4階に上がってみようぜ。」

「ああ………!」

その後ロイド達は探索してエレベーターの解除キーを見つけ、エレベーターを動かして4階に上がり、さまざまな部屋を探索していて、ある部屋―――ヨアヒムがいた部屋に入ると聞き覚えのある青年の声が聞こえた。



「クク、存外早かったものだ。」

「あなたは………!」

「ア、アーネストさん!?」

聞き覚えのある声を聞いて驚いたロイド達が声が聞こえた方向に視線を向けると何とそこには市長暗殺未遂の犯人、アーネストが窓の外を見つめ、自分に近づいて来るロイド達に気づくと振り向いて不敵な笑みを浮かべて声をかけた。

「やあ、エリィ……2ヵ月ぶりになるかな?まだ宵の口だが、月の綺麗な晩じゃないか。」

「アーネストさん………その瞳の色は………!?」

「フン………どうやら魔性に墜ちたらしいな。」

「ええ………みんな、気を付けて。彼は”グノーシス”を投与したマフィア達とは”格”が違うわ……!」

アーネストの紅い瞳にエリィが驚いている中アーネストに何が起こっているのかを察した銀の推測に頷いたルフィナはロイド達に警告した。



「ほう、これは………噂の”(イン)”殿もご一緒だったか。君が余計な事を吹き込まなければ私の立場も安泰だったろうに………どうやらお礼をする機会が巡ってきれてくれたようだね。」

「我が存在は影………人の身で騙るは叶わぬと知れ。たとえ魔性に墜ちようともな。」

「というか幾ら”グノーシス”を投与しているとはいえ、この人数を相手に勝てると思っているのかしら?」

「クク………言ってくれる。」

銀とレンの挑発とも取れる言葉を聞いたアーネストは不気味な笑みを浮かべていた。

「………どうやらあなたが、魔獣や悪魔を率いていたようですね。」

「それ以前に、どうしてあなたがこんな場所にいる!?拘置所にいるはずのあなたが!?」

不気味な笑みを浮かべているアーネストをティオは真剣な表情で睨んで呟き、ロイドはアーネストを睨みながら叫んだ。

「クク、拘置所か………あの建物なら、この病院と同じく既に”我等”の手に落ちている。」

「なに……!?」

「拘置所の警備はベルガード門の警備隊が担当しているはずだ………そんな場所をマフィアが襲ったってのか!?」

アーネストが不気味な笑みを浮かべて語った驚愕の事実を聞いたロイドは驚き、ランディはアーネストを睨んで尋ねた。



「フフ………そういう訳ではないんだが。ちなみにルバーチェごときを我等と同じに見ないでくれたまえ。彼らは単なる傀儡さ。我等の計画を成就するためのね。」

「やはりそうか………”グノーシス”を服用した者を何らかの方法で操っているんだな?」

「フフ、その通り……………全ては偉大なる我等が”同志”の計画によるもの。大いなる儀式を遂行するための”駒”に過ぎないというわけさ!」

「偉大なる同志…………」

「”D∴G教団”の残党にしてマフィアの背後に潜んでいた人物……つまり――――この部屋の主というわけか。」

「………………」

不敵な笑みを浮かべて語るアーネストの話を聞いたエリィは真剣な表情で呟き、ロイドはアーネストを睨みながら推測し、レンは厳しい表情でアーネストを睨んでいた。

「ククク………ハハハハハハハッ………!!」

そしてアーネストが不気味な笑みを浮かべて大声で笑った後、身体中に凄まじい瘴気を纏って剣を構えるとアーネストの周囲に装甲を纏った軍用犬達が突然姿を現した!



「なっ………」

「この鬼気は………!」

「上位三属性の気配……!?」

「どうやら完全に”魔人”になっちゃったみたいね………」

「ええ……ただ、”ロッジ”で戦った時と違って異形化はしていないようだけど……」

アーネストからさらけ出されている瘴気にロイド達が驚いている中レンの推測に頷いたルフィナはアーネストを警戒していた。

「――――それを確かめたければ私を退けてみるがいい………”同志”の導きによって”真なる叡智(グノーシス)”に至った私をなァ………!」

「………っ!」

「来るぞ……ッ!」

そしてロイド達はアーネスト達との戦闘を開始した!何者かによって操られているマフィア達と違い、自分の意識を保って”グノーシス”を投与した身体能力を使いこなすアーネストや病院を徘徊していた軍用犬達より数倍の強さを持つ軍用犬達は手強かったがロイド達の今まで培った経験、更に銀にルフィナ、レンと言った武術の腕前が相当な仲間の協力のお陰で苦戦することなく協力して軍用犬達を撃破し、アーネストを戦闘不能に陥らせた!



「クク……ここまで食い下がるとは。正直、予想外だったぞ。」

追い詰められた立場であるにも関わらずアーネストは不気味な笑みを浮かべていた。

「アーネストさん……!……どうしてそんな………!おじいさまを裏切って邪悪な教団の走狗になって……どうしてそこまで堕ちてしまったんですか!?」

「堕ちた……?いや、真実に目覚めただけさ。そう……今ならわかる。このクロスベルという地がどんな意味を持っているのか………理屈抜きで”判る”んだよ!」

悲痛そうな表情をしているエリィの叫びに対して心外そうな様子で答えたアーネストは不気味な笑みを浮かべて答えた。



「な………」

「意味不明です……」

「まあ、薬物の中毒者の主張なんてそんなもんよ。」

「完全にイっちまってるな………」

「―――ただの戯言よ。耳を貸す必要はないわ。」

アーネストの叫びにエリィは絶句し、疲れた表情で呟いたティオにレンは呆れた表情で指摘し、ランディは真剣な表情でアーネストを睨み、ルフィナはエリィ達に忠告した。

「―――戯言はそのくらいにしてもらう。元市長秘書、アーネスト・ライズ。自治州法に基づき、傷害、騒乱、不法占拠、薬物使用、拘置所脱走などの容疑で現行犯逮捕する。大人しく捕まってもらうぞ!」

「クク………そう焦る事はない………まだ夜は始まったばかり………”同志”の趣向はこれからだ。そちらに招待状があるからせいぜい目を通しておくといい。」

「なに……」

「あれは……」

そしてアーネストの言葉を聞いたロイドは驚いて仲間達と共に机の上に置かれてあるファイルに視線を向け、ファイルに気づいたエリィは呆けた声を出し

「はは、それではまた会おう!君達がこの先の死地を見事切り抜けられたらな………!」

ロイド達の注意が逸れた瞬間アーネストは窓から飛び降りた!



「しまった……!」

「くっ……」

「逃がすか……!」

アーネストの行動に気づいたロイド達がアーネストが飛び降りた窓に駆け寄ったその時アーネストは落下した後、突如やって来た竜のような姿をした飛行型の魔獣の足に掴まって、去って行った!

「……な……」

「い、今のは……」

「”星見の塔”にもいた太古の翼竜………」

「おいおい………メチャクチャすぎんだろ。」

「まあ、”結社”の”蛇の使徒”や”執行者”の常識外れな所と比べればかわいいものよ。」

「”執行者”達もレンちゃんにだけはそんな事を言われる筋合いはないと思うでしょうね………」

ロイド達がそれぞれ驚いている中レンの指摘を聞いたルフィナは呆れた表情で溜息を吐いた。

「フン……さすがに追うのは無理か。―――時が惜しい。とっとと目を通すとしよう。その”同志”とやらが用意した招待状とやらをな。」

「あ………―――ああ、そうだな。」

銀の指摘で我に返ったロイドはすぐに優先すべき事を思い出して頷いた。



その後ロイド達は机に置いてあるファイルに目を通し始めた――――


 
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