艦隊コレクション 天を眺め続けた駆逐艦
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第五海
「滑沢姉さん、綾川姉さんの居場所がわかりましたよ」
見渡す限り島らしきものがない海域で四人の少女が海上を航行していた。
行く末には何もなく、ただ、航海しているような感じであった。
「まったく、世話のかかる姉貴たちだ」
一旦、その場に止まった少女は五月雨ほどではないが髪がそこそこ長いのに、口調に関しては若干、男みたいであった。
そして、少し遅れて隣にやって来た少女は髪は長くないが、性格事態はもう一人の少女とはまったく違う雰囲気を出していた。
「とっとと行くぞ!」
彼女たちはひとつの手がかりで自分達の姉を探すために航海をしている。
その二人を連れ戻すために‥‥‥‥
第五海 艦娘査察隊 前編
「う~ん、川上」
「なんですか?」
「あいつらがあんなに楽しそうなのを始めてみた気がする」
「そうですね」
私とあやねぇは鷺と雁が演習をしているのを見て、二人の生き生きしている姿を見ることができたのが、なぜか嬉しかったのです。
私たちは生まれたときから多くの任務が言い渡されていた。
一つは、各鎮守府からの解体要請のあった艦娘と演習を行い、要請のあった艦娘を轟沈すること。
一つは、脱走した艦娘の処分。
一つは、上層部に異を唱える提督の抹殺。
その他にもたくさんあった。
どれもこれも仲間を殺めるものばかり。
そんなことをしているうちに私たちは、上司を、人を信じられなくなっていったのです。
これは私たちだけではなく、私の姉妹たちのも言えることです。
私たちは姉妹は全員が同じことをやって来ているので、私たち同様に人という存在をよくは思っていないのです。
「川上。演習ってこんなに楽しそうなものだったんだね」
「あやねぇ・・・」
「私たちも今度やりたいね。姉妹全員で楽しくさ」
あやねぇ、それはきっと叶わないよ。
あやねぇの妹たちなら叶うけど、おねぇたちは無理だと。
綾川の瞳はどこか寂し気なところからして、川上同様に願いはかなうことがないと理解しているのだろう。
それでも願わずにはいられないところがあるのはきっと、綾川には妹たちがいるからだと考えられる。
執務室
綾川ちゃんと川上ちゃんは演習を見ていることですし、今のうちに彼女たちについて司令官さんにお伝えするのです。
それに、執務室には暁ちゃんたちも待っているのですし、急がないとなのです。
「司令官さん。電なのです」
いつもならここまで大きく感じないのですが、今日のこのドアはとても大きく感じるのです。
きっと、先ほどの綾川ちゃんもこんな感じだったのに違いないのです。
「入っていいぞ」
「失礼します、なのです」
あれ?
なんで司令官さんと暁ちゃんたち以外に艦娘査察隊の朝潮さんと満潮さんがいるのですか?
私たち特に問題になることした覚えはないんですけど?
一体なんのようなのです?
「電さん、お久しぶりです」
「お久しぶりなのです。たしかトラックにいたとき以来なのです」
そうなのです。
朝潮さんは査察隊としてトラックに駐屯していたのです。
「それで、こちらに元第四査察隊の駆逐艦、綾川と川上がいると言うのは本当ですか?」
えっ?
綾川ちゃんたちが査察隊?
そんなのおかしいのです。
元々査察隊は各司令部に一小隊おかれているものであるため、数字で呼ばれることはないはずなのです。
「まずは、旧査察隊について説明した方が良さそうですね」
「旧査察隊は第一査察隊から第五査察隊までありました」
少ないのです。私たち艦娘の所属する鎮守府や泊地がたった五つの艦隊で見ることはできないはずなのです。
そもそも、査察隊の編成が今と変わらないとすれば、横須賀や佐世保、呉、舞鶴といった大艦隊を持つ鎮守府には査察隊として機能できないかもしれない。
「旧査察隊は同型艦のみで構成されていました」
「同型艦。つまり有間型ということかい?」
有間型駆逐艦とは戦時建造艦であり甲型駆逐艦の完成系。
島風型駆逐艦と同等の速力を持ち、火力は長良型軽巡洋艦より若干高い。
そのためか、装甲は若干薄く、戦艦や重巡洋艦などの砲撃を食らってしまえば、一発大破もあり得なくはないのである。
だが、先も言ったが速力はあるため回避率も高く、相手戦艦や重巡洋艦の攻撃が当たることが少ないのである。
だからこそ彼女たちが査察隊に選ばれ、その任務を行っていたのである。
「旧査察隊は艦娘査察艦隊と呼ばれていたわ。そしてこの艦隊の旗艦にいたのが、駆逐艦有間よ」
「有間さんが着任してからの検挙率はそれまでの比ではなかったそうです」
そう簡単に検挙率が上がるわけがないのです。
艦娘査察艦隊は海軍でも貴重な諜報機関及び独立行動権を持つ艦隊。
海軍省直属と言っても、行動に制限がないのは事実なのです。
この時点で海軍省の考え方がおかしいと思うのです。
「その代わりに、有間さんは人を信用できなくなっていきました」
「あいつは「本来守るはずの艦娘を裁き始めた」‥‥‥‥‥‥‥‥あんた、よくのこのこと顔を出せたわね」
「なんで勝手に入ってきちゃったのです?」
綾川ちゃんも川上ちゃんも自由過ぎるのです。
それに、話を聞かれていたのですか?
と言うことは綾川ちゃんも有間ちゃんと共に行動していたかもしれないのですか?
「艦長に会うのに、一々ノックしないといけないのか?」
「当たり前よ」
「当たり前だよ」
「当たり前だわ」
「当たり前なのです!」
あやねぇ、素性がバレたと言うのに、よく平然としていられますよ。
私なんて、いつかバレることだとは分かっていましたが、こんなに早くもばれるとは思っていませんでした。
でも、ばれてしまったなら仕方がありません。
すべて話しましょう。
「私たち、元艦娘査察艦隊は独立権限を持ちながら職務に当たっていました」
「でも、上層部はそれを快く思ってなかった」
私たちは規律違反した提督を監視して、その鎮守府に査察に入って、そこの提督の素性を暴いていたんだけど、中にはそんな提督の味方をする艦娘が現れてしまったため、総旗艦であるありまねぇと打ち合わせをしているときに上層部はその艦娘たちを裁くよう指示してきたのです。
はじめは、どこの査察隊も抵抗があったのですが、回数をこなしていくうちに本来裁くべきである提督を裁かずに艦娘を主で裁くようになっていたのです。
その後、艦隊の異変に気付いた元第三査察隊旗艦の湯川ねぇは姿をくらまし、数週間後には艦娘査察艦隊所属の私たちは脱走しました。
「だからこそ私たちに嫌な役割を押し付けてきたんだよ」
「その後、私たちは南西諸島海域にて湯川ねぇの手掛かりと設計図を求めて探索を行っていたんだ」
でも結局のところはなにも見つかることなくここに引き取られてしまったんだけどね。
でも、なんだろうね。
今まで私を縛っていた何かがとれた気がするよ。
「それより、駆逐艦綾川、及び川上。二人を横須賀まで連行します」
どういうことなのです?
確かに一度は軍から離れていたかもしれないのです。
でも綾川ちゃんは現に私たちのもとに来てくれたのです。
そして、今は電たちと同じ艦隊に所属する仲間なのです。
そんな二人が連行されるのを黙って見ているわけがないのです。
「へぇ、あなたたちが私を連行するんだ。あなたたちでは無理だと思うけどねぇ」
「あ、あやねぇ!」
ダメなのです。
ここで朝潮ちゃんたちに手をあげてしまうと、どうにもできなくなってしまうのです。
それくらい査察隊にいた綾川ちゃんもわかっているはずなのです!
何が目的なのですか?
綾川は満潮を嘲笑うかのように言葉を告げると、その発言に提督以外が何らかの反応をしていた。
「幌筵にいたやつは強かったけど、お前たちはどうなのかな?」
たしか幌筵泊地の査察隊は朝潮さんたちの姉妹である荒潮さんと大潮さんだったはずなのです。
その二人と戦っていたなんて、綾川ちゃんはなにを考えているのです?
「川上ちゃん。綾川ちゃんの話は本当なのですか?」
それは.....
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