魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者
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第十話 正しいデバイスの選び方
訓練で安定の撃沈数を誇るアスカ。
必死でやっているが、それでも落ちてしまう。
そこでシグナムの提案は……
魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。
outside
ちゅどどーん!
「どあぁぁぁぁ!」
ずどどーん!
「であぁぁぁぁぁ!」
ばばばーん!
「のあぁぁぁぁぁ!」
今日も元気に撃沈しまくるアスカ。
「……真剣にやっているのは分かるが、少しばかりやられ過ぎではないか?」
訓練の様子を見ていたシグナムが呆れて額を押える。
「ええ、そこでシグナムさんに御相談と言う訳なんです。どうしたらいいでしょうか?」
今日はなのはもヴィータもいない為にシグナムが訓練を見る事となったのだが、アスカの潔い撃沈にその長い眉を顰めていた。
「デバイスだな」
シャーリーの相談に、シグナムが即答する。
「デバイス?」
「ああ。アスカは自分に適合してないデバイスを使用している。近代ベルカ式のヤツがミッド式のデバイスを使用しても、力は発揮できまい?」
「確かにそうなんですけどねぇ、あのデバイスってアスカの持ち込みなんですよ」
「簡易デバイスでも組んでみてはどうだ?そういうのは得意だろ、シャーリー?」
シグナムの提案に、シャーリーがフムと考える。
「本人の希望を聞いてみますか。シグナムさんも協力してくださいね?」
とりあえずシグナムの意見を取り入れてみようと考えるシャーリー。
時間が来て、シャーリーが訓練の終了を知らせる合図を送った。
アスカside。
今日は高町隊長がいないんで、訓練は午前中だけ。午後から書類仕事をやる予定だったけど、オレだけシャーリーに呼び出された。
「デバイスが適合してない?」
シャーリーがいる六課内にあるラボに行って、オレはそんな話を聞かされる。
「うん。それがシグナムさんの意見で、私もそう思ったの。だから、簡易アームドデバイスを組んでみようと思うんだけど、どうかな?」
「どうって言われてもな……別に不便は感じてないし、やらなくてもいいんじゃない?」
下手にデバイスを変えると色々メンドクサそうだし、使い慣れているのが一番だと思ってオレは断った。
カードリッジシステムとインテリが入るんなら話は別だけど、バカ高い値段だし、いくら六課でもそこまで金が使えないだろ?
そう思ってたら、貧血になった時みたいにシャーリーが額を手で押さえてた。
なんだよ、その本人に自覚が無いのが一番問題ってみたいな態度は。
「えーとね。アスカの戦闘スタイルって近代ベルカじゃない?でも使っているのはミッド式のストレージデバイスでしょ。せめてアームドデバイスに変えれば、攻防の幅が広がると思うんだけど?」
そんなもんかねぇ?
「うーん、そうかなあ?」
気のない返事をするオレ。
ぶっちゃけた話、書類仕事を放っぽってきたから早く戻りたいんだよね。あんま遅くなるとティアナが怒るし。
でも、シャーリーは引き下がらない。
「気に入らなければ今のままでいいから、見るだけでもね?」
結局、シャーリーに押し切られる形で、オレはデバイスを見る事になった。
そんで、午前中に使用した訓練スペースに来た訳なんだけど、よくもまあ集めたもんだ。
そこには、山ほどアームドデバイスの素体が積み上げられてあった。
剣が多い感じがするけど、問題はそこじゃない。
山と積まれたデバイスの側に、なぜか佇むシグナム副隊長。
「来たか。早速やるとしよう」
訳の分からない事を言って、副隊長は愛用デバイス、レヴァンティンさんを起動させ……
って、ええええ!
「はい?やるって何をですか!」
超驚いて裏返った声でオレは聞き返してしまった。
「決まっている。デバイスを選ぶのだから、試し斬りが必要になるだろう。私が相手になってやろうと言うのだ」
「「ファッ!!」」
思わず声を上げるオレとシャーリー。この展開はシャーリーにも予想外だったらしい。
「シ、シグナムさん?アスカのデバイス選びのアドバイスをって頼んだんですけどお?」
シャーリーが慌ててシグナム副隊長に言う。よし、負けるなシャーリー!
だが……
「なら、尚のこと相手をしなくてはなるまい?素振りや言葉だけで己の命を預ける相棒を選べる筈がないだろう。とことん使ってみる。それが正しいデバイスの選び方だ」
さも当然、と言い切る副隊長。マズイマズイマズイ!
「い、いやあ、副隊長のお手を煩わせる訳にもいかないでしょう?」
なんの死亡フラグだよ!変な汗がダラダラ出てきたよ!ヤバイよ!
なんとか遠慮しようとしたが、シグナム副隊長は全く動じない。
「気にするな。最近は対人訓練も少なくなっていた所だ。丁度良い」
対人戦闘訓練じゃないですから!デバイス選びですから!
そんなオレの心の声など微塵も気づかずに、ブンブンとレヴァンティンさんを振るシグナム副隊長。
すると、
パンッ!!!!
いきなり破裂するような音と同時に、体感できる程の衝撃が周囲に走る!
「な、何!?今のは??」
驚いたシャーリーがオレに聞いてくる。
「……レヴァンティンさんの切っ先が、音速を超えた時の烈破音だよ」
たぶん、オレは青ざめているんだと思う。死刑執行前の囚人ってこんな心境なのかな?
「…………ゴメン、アスカ。相談する人、間違えたわ」
シャーリーが、メガネの奥の目を点にして謝ってきた。
「その間違いのせいで、明日の日の目を見れないかもしれないんだぞ?」
責める訳じゃないけど、こんな言葉が出たオレは悪くないよな?
「でも、もう逃げられる雰囲気じゃないよね?」
生き生きと剣を振るシグナム副隊長を見て、シャーリーが言う。
「そうね……とりあえず、シャマル先生はキープしておいて……手遅れにならないようにな」
おかしい。
ただのデバイス選びの筈なのに、なんでオレ、こんなに悲壮感出してんだ?
「ではそろそろやるか。アスカ、まずはこの剣だ」
嬉々として、シグナム副隊長が剣型デバイスを取り出してオレに握らせる。
「えーと、オレの希望は……」
「では行くぞ!」
「ちょ~!!!」
意見もクソもない!
なし崩し的に模擬戦もどきのデバイス選びの模擬戦が……ぎゃあああああ!
シャーリーside
アスカのデバイス選びと言う名の模擬戦が始まって、しばらくしてティアナが怒り顔で現れた。
たぶん、書類仕事をほったらかしにしたアスカに腹を立てて探しにきたんだろうけど……
シグナムさんにボコられ、いや、デバイス選びを手伝ってもらっているアスカを見て、気の毒そうな顔をして何も言わずに立ち去って行った。
まあ、責められないわよね~、私もシグナムさんを止められないんだから。
outside
3時間後、アスカは地面に突っ伏して、息も絶え絶えになっていた。
「ウム、次はどれがいいかな?」
シグナムがデバイスの山を眺めながら呟く。
その横で、シャーリーが倒れているアスカを介抱していた。
「アスカ、大丈夫?」
伸びているアスカの汗をタオルで拭くシャーリー。
「これが大丈夫に見えるかぁ?模擬戦の方がまだマシだ……」
アスカが力なく答える。
身体中アザだらけ、スリ傷だらけの泥だらけである。
「これもいいが、こっちもいいな。いや、これも変わってていいかもな」
ウィンドショッピングを楽しむようにシグナムが呟く。
これで手にしているのがデバイスでなければ微笑ましい一面なのだが。
「何か、決めないと終われなさそうだな」
アスカがゲッソリする。
「さっきからシグナムさんが決めてばかりだからアスカが決めてみたら?どのみち叩き潰されちゃうと思うけど」
「思っていてもそーいう事、言わない」
アスカはムクリと起きあがってデバイスの山に近づく。
言われてみれば、確かに自分ではいなかった。
「選ぶって言ってもなぁ……ん?」
数々のデバイスの中から、アスカは一対のデバイスに目を奪われた。
聖王教会の聖王騎士団で正式採用されている双剣型のデバイスを手にするアスカ。
「これは……」
双剣をゆっくりと振ってみた。妙にしっくりと手応えを感じる。
「ほう、面白いデバイスを選んだな」
シグナムが再びレヴァンティンを構える。
「え?いや、ちょっと待って!」
アスカが言うよりも早くシグナムが動く。迫り来るレヴァンティン!
だが!
ギン!
「ぐっ!」
金属音がして、アスカが右の双剣でレヴァンティンを受け止める。そして、左の双剣でシグナムに反撃した。
「ほう、初めて防御し、反撃に移れたか」
嬉しそうにシグナムが間合いを空けてアスカの反撃を避ける。
「え?あれ?オレ、反撃できた?」
意識しないでの行動だったのか、アスカはポカンとして手にした双剣を見た。
「アスカ!やったじゃない!」
シャーリーも嬉しそうにアスカに駆け寄る。
「決まりだよね、この子で組もう、ね?」
「ああ、そうだな。双剣なら、もしかしたら使いこなせるかもしれない」
疲れ切ったようにアスカが呟く。とにかく終わった事に安堵するアスカだったが、次のシグナムの言葉が彼に冷や水を浴びせる事になる。
「ふふっ、デバイスを組んだら、また私が相手をしてやろう」
「……お手柔らかにお願いします」
引きつった顔をして、アスカは答えた。
その日の夕食時に合流してきた満身創痍のアスカを見て、フォワードのみんなは優しく労ってくれたそうな。
「ってかさ!訓練の方が数倍楽だったよ!」
食堂にアスカの絶叫が響いたのは、言うまでもない。
後書き
いつも閲覧いただき、ありがとうございます。
思った以上に閲覧していただいて、非常に嬉しく思います。
ドベな文章で申し訳ありません。中々上達しませんね (´;ω;`)
さて、今回はアスカのデバイス変更イベントとして、シグナムさんに御登場してもらいました。
バトルマニアらしいですが、今の状態でそこまでの実力は出せませんね。
出したらアスカが死んじゃうし…
この先、アスカはシグナムさんや、シスターシャッハにボコられ…いえ、厳しく鍛えられていく予定です。
今回は短めにできて、ホッとしてます。だって、次回から長いから…
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