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スペインの真実

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第五章

「この国の左派政権は」
「そうかもな」
「バチカンみたいに権力闘争があってな」
「そして内部でいがみ合っていてな」
「不穏分子の粛清だ」
「それをやっているんだ」
「そんなことをしている場合か」
 こうも言ったフィッシャーだった。
「今は」
「そう思うんだが」
「右派に勝たないとだ」
「革命も何もない」
「共産主義も」
「そうだ、只でさえ押されているというのに」
 戦局がわかっているからこそだ、フィッシャーは言うのだった。
「そんなことをしていいのか」
「内部分裂に粛清」
「そちらの方に忙しい」
「これでは負けるぞ」
「どうしようもない」
「相手にはドイツやイタリアがついているんだ」
 このことが余計にだ、フィッシャーを焦らせていた。
「馬鹿な話だ」
「何とかしたいが」
「政権を説得したいが」
「聞く耳を持たない」
「彼等の言う革命に必死だ」
「共産主義に敵う者はいないというのに」
 フィッシャーはこうも言った。
「人類に永遠の平和をもたらす思想なのだぞ」
「しかしその思想もだ」
「このままではだ」
「スペインでは根付かない」
「それでもいいのか」
 他の義勇兵達も焦燥を強く感じていた、しかし。
 左派政権の行動はあらたまらない、内部分裂に粛清にとだ。
 相次ぐ争いが続いてだ、戦局は悪化する一方であるが。
 右派政権に押されてばかりだ、その中で。
 フィッシャーはこのことも聞いてだ、共に苦しい戦いを続けている義勇兵達に問うた。彼等も次第にその数を減らしている。
「革命を誘発していっているそうだな」
「ソ連がか」
「あちこちの国でか」
「それは本当か」 
 このことを確認したのだ。
「このことは」
「各国の共産主義者達に武器を渡してな」
「テロ等を誘発してな」
「社会不安を煽り」
「内戦も起こす」
「そしてだな」
 義勇兵達も言っていく。
「各国で革命を起こしてだ」
「共産主義国を作ろうとしている」
「そしてだな」
「その中で人民に犠牲が出ても意に介していない」
「そのことだな」
「まさかと思うが」
 いぶかしんでいる顔だがだ、完全に否定しきれていない顔だった。
「本当のことか」
「このスペインが証拠じゃないのか」
「まさにな」
「実際に内戦が起こっていてだ」
「ソ連も援助している」
「思想を浸透させるよりもだ」
「武器を送っているだろ」
 こうフィッシャーに言うのだった、彼等も。
「それを見るとだ」
「その話も事実ってわかるな」
「平和にことを進めずにだ」
「戦乱を起こさせてだ」
 そのうえでというのだ。
「乱してそこからだ」
「ことを進めていく」
「それが共産主義だな」
「革命を起こすんじゃない」
「起こさせるんだな」
 フィッシャーは苦い顔で言った。 
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