英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第55話
―――創立記念祭 4日目―――
翌日、ロイド達は頭を切り替えて今までのように手分けして支援要請を片付けて行った。そしてしばらくするとロイドのエニグマにフランからハロルドがロイド達に自分達の子供が迷子になったので、一緒に捜す手伝いをしてほしいという連絡があり、ロイド達はハロルドに詳しい事情を聞く為にハロルドがいる行政区に向かった。
~行政区~
「皆さん………!」
「あ………!」
自分達に近づいてきたロイド達を見たハロルドとハロルドの妻、ソフィアはロイド達を見つめた。
「どうもお久しぶりです。その、パレードを見物していたらお子さんとはぐれてしまったとか?」
「そ、そうなんです………!私がしっかりしていなかったからあの子が………コリンが………!」
「ソフィア、落ち着きなさい。―――すみません、皆さん。息子とはぐれたのは3時間ほど前………この広場でパレードが通過するのをちょうど見物している最中でした。すぐに妻が気付いて、2人でこのあたりを一通り捜したんですが見つからなくて……思い余って………警察を頼らせていただきました。」
悲痛そうな表情になっているソフィアを宥めたハロルドはロイド達に事情を説明した。
「いえ、よく相談してくれました。―――どうやら私達で手分けして捜した方がよさそうね?」
「ああ、巡回中の警官も今日ばかりは忙しそうだしな。そうなると………割り振りを考える必要がありそうだ。」
「そうですね………」
「ま、別々に探して通信で連絡を取るのが一番だろ。」
「わ、私もお手伝いさせてください!でないとあの子が……コリンが……」
ロイド達が話し合っているとソフィアが真剣な表情で申し出たが
「……落ち着きなさい。皆さん、私達はいったん、住宅街にある自宅に戻ります。その近辺の捜索は私の方で一通り行いますので。」
ハロルドが宥め、ロイド達に提案した。
「なるほど………その方が効率的でしょうね。自分達は手分けして他の街区を一通り捜してみます。それから………息子さんの手掛かりになるものを何かお持ちではないですか?写真があれば一番ですけど。」
「!ああ、ちょうと記念祭で撮った写真を現像してもらってたんです!えっと、確かここに………」
ハロルドは懐から写真の入った封筒を取り出し
「………これです!」
自分達の子供―――コリンが移った写真を3枚ロイド達に渡した。
「可愛い………」
「男の子なのに美人さんですね。」
写真に写る少年を見たエリィとティオはそれぞれ微笑んだ。
「ううっ………コリン………」
「ほら、いったん家に戻ってコリンが帰ってくるのを待とう。ひょっとしたら家の方に戻ってくるかもしれないし………」
「でも………でも……!あの時みたいな事があったら………!」
「大丈夫だ………!もう絶対にあんなことは………!」
(あの時………?)
(何か事情があるみたいね………)
真剣な表情で言い合っている2人を見たロイドは首を傾げ、エリィは辛そうな表情で見つめていた。
「………すみません、取り乱してしまって。その………ちょっと事情がありまして………」
「いや、気にしないでください。そうだ………写真の他に普段コリン君が持っているような品物はお持ちではないですか?うちには警察犬もいますので匂いで辿れるかもしれません。」
「おお………!」
「じゃ、じゃあこれを………!あの子の持っていたぬいぐるみです!」
ロイドの話を聞いたハロルドは声を上げ、ソフィアは必死の表情でロイドにぬいぐるみを渡した。
「あ………”みっしぃ”のぬいぐるみですか。」
「それではお借りしておきます。」
「ま、焦ったって仕方ねぇ。街の中にいる限りは安全だろうし俺達にドンと任せてくださいよ。」
「は、はい。ありがとうございます。それでは皆さん………息子をよろしくお願いします。」
そしてハロルドとソフィアはロイド達から去って行った。
「さてと………どう手分けするかだけど。その前に……」
「………はい。呼んでみます。……思念波増幅……ツァイト……来て……!」
ハロルド達が去った後ロイドに視線を向けられたティオは導力杖を構えて何かをした。すると
「グルル………」
ツァイトがロイド達に近くにどこからともなく現れた。
「ツァイト、来てくれたか。」
「ふふ、お疲れ様。」
「グルルル……ウォン。………グルルル………」
「『自分が来たからには大船に乗った気分でいるといい。その幼子の匂いは完璧に嗅ぎ当ててみせよう。』―――だそうです。」
「た、助かるよ。っていうか、来たばかりなのになんでそんなに詳しいんだ………?」
「やれやれ。相変わらずとんでもねぇヤツだな。」
ツァイトの言葉を伝えたティオの話を聞いたロイドとランディは苦笑していた。
「まあ、それはともかく。セティちゃん達やルファディエルさん達にも手伝ってもらった方がいいのじゃないのかしら?」
「そうだな………人手は多い方がいいし、何より空からの捜索は見つけやすいだろうしな。俺はルファ姉に連絡するから、エリィはセティに連絡してくれ。」
「わかったわ。」
そしてロイドとエリィはエニグマを通信モードにして、それぞれの相手にかけた。
「あ、ルファ姉?」
「ロイド?一体どうしたの?」
通信が繋がったルファディエルにロイドは事情を説明した。
「そう………ただ、こちらも古戦場に行った観光客達を今からメヒーシ達や依頼が被った遊撃士と一緒に探す所でね。悪いけど、こちらも緊急性が高いからそちらを手伝っている時間はないわ。」
「そうか………わかった。そっちも無事見つけられるように頑張って。」
「ええ、貴方もね。」
そしてロイドは通信を止めた。
「ルファディエル姐さん達はどうだって?」
「………支援要請にあった観光客達の捜索を受けてて、観光客達を捜索する為に、今古戦場で捜索しているらしく、こちらに向かう時間はないって。エリィ、そっちはどうだ?」
ランディに尋ねられたロイドは答えた後、エリィに視線を向け
「………駄目。3人共、繋がらないわ。話し中か導力波が届かない場所にいるみたい………」
視線を向けられたエリィは首を横に振ってエニグマをしまった。
「そういえばセティさん達はグレイスさんの依頼にあった風景のマインツ方面の写真を撮りに行くついでに、マインツの町長さんからの依頼にあった鉱山に出た魔獣達の退治を請け負う為にマインツ方面に行きましたよね?………多分、鉱山の中だと繋がりませんよ。」
「そうなると私達だけで捜さないとね………この広いクロスベル………どう分担して捜索しましょうか?」
ティオの話を聞いたエリィは頷いた後、ロイドを見て尋ねた。
「わたしはツァイトに同行します。彼の言葉をわかる人間が付いていた方がいいでしょう。」
「そうだな………だったらティオにはこのぬいぐるみを渡しておく。ツァイトにコリン君の匂いを探ってもらってくれ。」
「………了解です。」
「俺達3人は手分けして街区を担当しよう。俺は歓楽街から裏通り、中央広場、駅前通り、それから西通り。ランディは東通りと旧市街全般。エリィは行政区と、港湾区全般。―――そんな分担でどうかな?」
「あら、あなたの担当だけ相当広い気がするけど………?」
ロイドの提案を聞いたエリィは意外そうな表情で尋ねた。
「いや、行政区も港湾区も広いし、旧市街だって入り組んでいる。その点、俺の担当はよく通る場所ばかりだから丁度いいバランスのはずだよ。」
「なるほど………」
「ま、とりあえずその分担で始めてみようぜ。進展があったらお互い通信で連絡を取ればいいんだな?」
「ああ、そうしよう。」
「それではコリン君の捜索、ミッションスタートですね。」
その後ロイドは歓楽街を捜索し、裏通りも捜索し終えて中央広場に向かおうとした所、ある人物に声をかけられた。
~裏通り~
「うふふ………お兄さん、お久ぶりね。」
「え………」
自分に声をかける声を聞いたロイドが驚いて振り向くとレンがロイドに近づいてきた。
「やあ、レンちゃんか。」
「ごきげんよう、お兄さん。ふふっ、1ヵ月ぶりかしら?」
「ああ、それくらいになるかな?また一人でアンティークショップに遊びに来たのかい?」
「ええ、それとお祭りの見物もね。パレードがあったけどお兄さんも見物したのかしら?」
「いや、仕事を片付けているうちに見逃しちゃってさ。(しかし困ったな………一人にするのもなんだし、用事がなければ人形工房まで送っていくところなんだけど………)」
レンに尋ねられたロイドは苦笑した後、レンを見つめて考え込んでいた。
「???ところでお兄さん、一人で何をしてるの?また誰かとかくれんぼをしてるのかしら?」
「いや………実は迷子を捜していてさ。今日のパレードではぐれちゃったらしいんだけど、まだ見つかっていないんだ。」
「ふぅん、そうだったの。写真かなにか持っている?レンが知ってるかもしれないわ。」
「そうだな………一応、見てもらえるかな?」
ロイドはコリンの写真をレンに見せた。
「……………………え…………………」
写真を見た一瞬固まった後レンは呆けた声を出した。
「どうした?ひょっとして見覚えがる子だったか?」
「―――ううん。レン、こんな子、見覚えないわ。」
そしてロイドに尋ねられたレンは俯いて答えた。
「そうか…………」
一方レンの様子に気付いていないロイドは残念そうな表情で溜息を吐いた。
「でも………可愛い男の子ね。お兄さんは………この子を捜しているのかしら?」
「ああ、仲間と手分けしてね。早く捜して、ご両親の元へ帰してあげたいんだけど………」
「ふふっ………だったら、レンもこの子を捜すのを手伝ってあげるわ。」
「え………」
レンの提案を聞いたロイドは驚きの表情でレンを見つめた。
「前に言ったでしょう?レンはかくれんぼが得意だって。この子がどこにいるか多分、突き止められると思うわ。」
「いや、でも………(この子を一人にするのも何だしとりあえず一緒にいてもらうか………いざとなったら支援課で待っててもらってもいいし………)―――わかった。それじゃあよろしく頼むよ。しばらくお兄さんと一緒に付いて来てくれるか?」
「うふふ、いいわ。よろしくね、ロイドお兄さん。」
「ああ、こちらこそ。」
その後レンと一緒にコリンを探し回ったロイドは時折仲間達からかかってくるエニグマで情報を共有しながら探し回り、中央広場、駅前通りを終え、そして西通りも終えるとエニグマが鳴りはじめ、エニグマを手に取ったロイドは通信を開始した。
~西通り~
「はい、ロイドです。」
「エリィです。気になることがあったので報告するわね。今ちょうど、ティオちゃんと一緒にいるんだけど………」
「どうも、ロイドさん。」
「ああ、合流したのか。それで、どうしたんだ?」
「コリン君だけど、桟橋の所で水上バスを眺めていたらしいわ。その後、どこに行ったのかわからなかったんだけど……」
「そこでツァイトに頼んで匂いを探ってもらったんです。そしたら………桟橋から階段を登ったところで突然、匂いが途切れたそうです。」
「匂いが途切れた………?」
ティオの話を聞いたロイドは眉を顰めた。
「ええ、港湾区の南東の端だけど………これってどういう事なのかしら?」
「……もしかして………ある程度密閉され、匂いが外に漏れない場所………何らかの車両に乗り込んだ可能性があるかもしれないな。」
「あ………」
「なるほど………それなら納得ですね。」
「ええ、レンも同意見よ。そうなると、どこの車両に乗り込んだかが問題になるわね。」
「ところで………誰か他にそこにいるの?」
「どこかで聞いたような女の子の声がしますけど………」
自分達の会話に割り込んできたレンの声を聞いたエリィとティオはロイドに尋ねた。
「いや、色々あってさ。とにかく、いったん集まって状況を整理した方が―――」
尋ねられたロイドが答えた後、提案しかけたその時
「―――ねえ、お兄さん。支援課の端末、貸してもらうわね。」
「へっ………」
レンが支援課のビルに向かって行った。
「ちょ、ちょっと待った!―――エリィ、ティオ!ランディにも連絡していったん支援課に戻ってくれ!その時に一通り説明するから!」
「え、ええ……わかったわ。」
「よくわかりませんが了解です。」
レンの行動を見たロイドは慌てた様子でエリィ達に指示をした後、レンを追った……………
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