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真田十勇士

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巻ノ四十七 瀬戸内その八

「あっという間に着くからな」
「博多までだな」
「そうさ、あんた達は寝ていてもいいからな」
「では全て任せたい」
「そういうことでな」
 こうした話をしてだった、主従は船に乗ってだった。朝早くに博多へと出港した。
 船は先に先にと進む、十勇士達はその青い海を見て口々に言った。
「海に出るのは久しいな」
「相模以来じゃな」
「あの時よりもな」
「ずっと長く海におることになる」
「酔わぬか不安じゃ」
「それが問題じゃな」
「ははは、それはな」
 船酔いについてもだ、先程の船頭が話した。
「慣れだな」
「慣れか」
「慣れればか」
「もう酔わぬ」
「そうなるのか」
「そうさ、何度も吐いてな」 
 そしてというのだ。
「揺れに慣れるとな」
「もう酔わぬ」
「そうなるのか」
「何度も吐けば」
「それでか」
「わしにしてもな」
 船頭は自分を親指で指し示しつつ話した。
「ガキの頃は何度も吐いたさ」
「そうしてか」
「船に慣れたのか」
「その揺れに」
「そうさ」
 まさにという言葉だった。
「だからあんた達もな」
「酔いは慣れろ」
「吐いてか」
「そうしてか」
「そうだ、まあわしの見たところ」
 こうも言った船頭だった。
「あんた達は大丈夫だな」
「酔わぬか」
「船の揺れにも」
「そうなのか」
「そんな感じだな、というかな」
 主従全員を見ての言葉だ。
「あんた達は船酔い以上のことをしてきただろ」
「昔からか」
「そう言うのか」
「だからか」
「ああ、酔う位じゃな」
 船でだ。
「潰れてたな」
「まあ確かにな」
「修行はしてきた」
「相当な、な」
「繰り返してはきた」
 こう言うのだった、彼等も。
「海の揺れもか」
「何もないか」
「そうであればいいな」
「ははは、確かに瀬戸内の海は荒れる時は凄まじいが」
 しかしとだ、船頭は彼等に笑って言った。
「御前さん達なら大丈夫じゃ」
「ではその時は」
「船の旅を楽しむか」
「博多までのそれを」
「そうするか」
「まあ御前さん達は博多に出るまではな」
 それこそというのだ。 
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