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真田十勇士

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巻ノ四十七 瀬戸内その六

「そしてな」
「そのうえで、ですな」
「天下は統一される」
「そしてその統一の後ですか」
「問題は」
「果たしてどうなるかじゃ」
 幸村は遠い目になって述べた。
「羽柴家によき跡継ぎ、柱となられる方がな」
「共にですか」
「備わっているか」
「関白様の後に」
「それが問題ですか」
「跡継ぎには秀次公がおられるが」
 ここで幸村は彼の名を出した。
「甥御のな」
「ですな、あの方ですか」
「ご子息の捨丸様もおられますし」
「どなたかがですな」
「跡継ぎですな」
「捨丸様はご幼少」 
 幸村はこのことを指摘した。
「幼子は何時とうなるかわからぬ」
「七つまでは特に」
「危ういですな」
「昨日元気だったのにはあります」
「それもよく」 
 十勇士達もそれぞれ言った。
「では、ですな」
「捨丸様はわからぬ」
「それでは秀次公か」
「あの方もですか」
「少なくとも秀次公がおられれば」
 彼が健在なら、というのだ。
「まずは安心出来る、そしてな」
「柱ですか」
「そうなられる方もですか」
「これはお二人おられる」
 それだけというのだ。
「羽柴家にはな」
「弟君の中納言様ですな」
「そして利休殿ですな」
「そうじゃ、お二人じゃ」
 まさにその彼等だというのだ。
「羽柴家の両輪じゃ」
「政のですな」
「それですな」
「お二人がおられれば」
「柱も健在ですな」
「お二人に勝る柱はない」
 羽柴家にとってというのだ。
「関白様の両腕じゃ、特にな」
「弟君のですな」
「中納言様ですな」
「あの方ですな」
「そうじゃ、あの方がおられれば」
 まさにというのだ。
「利休殿も万全、まさにな」
「あの方が第一の柱ですか」
「関白様にとっても天下にとっても」
「そうなのですな」
「拙者はそう見る」 
 これが幸村の見ることだった、あらゆることの。
「その中で当家はどうしていくか」
「それが問題ですな」
「どうしても」
「天下の動きの中で」
「落ち着いていればな」
 そうであればとも言うのだった。
「よいがな」
「落ち着いていれば、ですな」
「我等も落ち着いてよい」
「だからですな」
「それに越したことはない、しかしまた乱れれば」 
 終わりかけている戦国の世が再びそうなってしまえばというと。 
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