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真田十勇士

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巻ノ四十五 故郷に戻りその十二

「それぞれの場で違うな」
「味がですな」
「まことにそれぞれの地域で、です」
「味が違いますな」
「酒と同じく」
「全くじゃ、その味の違いをな」
 それをというのだ。
「比べるのも楽しいのう」
「上方はです」
 ここでこうした言葉が出た。
「水も美味かったですな」
「確かにな」
「都も大坂も」
「そうであったな」
「尾張等も」
「うむ、しかし関東はな」
 ここでだ、幸村はこの地のことを言ったのだった。
「水はな」
「はい、どうにもですな」
「あちらの水はです」
「よくありませんでしたな」
「どうにも」
「塩辛かったですな」
「特に武蔵、江戸の辺りはな」
 その辺りの水はというのだ。
「よくなかった」
「どうにもです」
「あの地は水もよくなく」
「治めるにはです」
「どうにもと思うのですが」
「いや、水は悪いが」
 それでもと言う幸村だった。
「あの地はな」
「治めるのにですな」
「よいと」
「そう言われますか」
「四神相応の地じゃ」
 江戸はというのだ。
「だからな、あの地から天下を治めることもな」
「出来る」
「そうとですか」
「言われますか」
「うむ」
 その通りという返事だった。
「拙者はそう見ておる」
「ですか」
「あの地は」
「そこまでの地ですか」
「そう思う」
江戸のことをこう話すのだった。
「必ずな、水が悪くともな」
「それでもですな」
「あの地はそうした地になりますか」
 十勇士達は幸村のその言葉に頷いくのだった、そうして彼等もだった。
 幸村の婚礼の用意の最後の締めを行っていた、彼の婚礼の時は今まさにという時を迎えようとしていた。


巻ノ四十五   完


                        2016・2・15 
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