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青砥縞花紅彩画

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17部分:雪の下浜松屋の場その二


雪の下浜松屋の場その二

幸兵「(駄右衛門の顔を見て)執権様へのお進物だとか」
日本「(それに頷いて)うむ」
忠信「何かいいものはないかのう」
幸兵「左様でございますか」
日本「そうじゃ。何かよいものはあるか」
幸兵「それでしたら幸い今朝京より届いた品がありますが」
忠信「おお、上方からか」
幸兵「はい、値ははりますがかなりよいものが入っておりまするぞ」
忠信「値は心配しなくともよい。早速見せてくれぬか」
日本「是非頼む」
幸兵「わかりました。(小僧に顔を向け)これ」
小僧「はい」
幸兵「今朝届いたものをこちらへ。よいな」
小僧「畏まりました」
 小僧左手へ消えていく。
幸兵「では暫しお待ち下さいませ」
日本「うむ」
幸兵「その間茶でも如何でしょうか。着物と合わせて下りものの玉露がございまして」
日本「いや、それには及ばぬ。あつかましい真似はしたくはない故」
幸兵「いやいや、そう仰らずに」
日本「しかしのう」
幸兵「混みます故。如何でしょうか」
日本「そうするかのう。(忠信に顔を向けて)これ」
忠信「はい」
日本「上がろうぞ。折角の好意じゃ」
忠信「わかり申した。それでは」
日本「よいかな」
幸兵「勿論でございます。(赤星に顔を向けて)この御二人を奥の間へ」
赤星「わかり申した。(二人を案内して)ささ。こちらへ」
日本「うむ」
忠信「頼むぞ」
 ここで三人は目で合図をする。だが誰もそれに気付かない。そして三人は奥へ下がる。左手へ消える。
 入れ替わりに二人の目立つ客が右手からやって来る。一人は振袖を着た高髷の島田の女装をした弁天小僧、そしてもう一人は侍の格好をした南郷力丸である。
弁天「(南郷に顔を向けて)これ四十八」
南郷「へい」
弁天「浜松屋というのはここでよいのか」
南郷「はい、こちらでございます」
弁天「左様か。しかしのう(少し恥ずかしそうに)」
南郷「如何なされました」
弁天「いやのう、婚礼の支度と言うてよいものかどうか」
南郷「ははは、御心配には及びませぬ」
弁天「何故じゃ」
南郷「それ位で今頃誰も気にしたりは致しませぬぞ」
弁天「そうであろうか」
南郷「はい。それではお入り下さい」
弁天「(やはり恥ずかしそうに)いや、そなたが先に」
南郷「そうですか。それではそれがしが先に」
弁天「すまぬのう」
南郷「いえいえ、それでは参りましょうぞ」
弁天「うむ」
 こうして二人は暖簾をくぐる。そして店に入る。
与九「いらっしゃいませ」
南郷「うむ」
与九「おお、これはお美しいお嬢様で。(弁天に目をやって)まずはお上がり下さい」
南郷「そうさせてもらおうか。(弁天に顔をやり)さあお嬢様も」
弁天「上がってもよいのかのう」
南郷「よろしゅうございますとも。(与九に顔をやり)これ」
与九「はい」
南郷「悪いが履物を頼むぞ」
与九「わかりました。(小僧に声をかける)これ」
小僧「へい」
与九「こちらのお客様の履物を」
小僧「わかりました」 
 小僧履物をなおす。そして与九の側に戻る。その間に弁天と南郷は中央に案内される。
 丁度赤星も戻って来る。そして与九の側に控える。
与九「それではまずお茶でも。下りものの玉露でも」
南郷「もらおうか」
与九「わかりました。(また小僧に顔を向けて)玉露を」
小僧「はい」
 小僧左手へ消える。そして与九はあらためて弁天と南郷に顔を向ける。
与九「今日は何をお求めでしょうか」
南郷「うむ、京染めのお振袖に毛織錦の帯地の類、お襦袢になる緋縮緬緋鹿子等をな」
与九「畏まりました。(別の使用人に対して)これ、それ等を持って来るように」
丁稚「わかりました」
 赤星と丁稚が左手に消える。そして与九は二人に顔を向ける。
 
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