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ぶそうぐらし!

作者:かやちゃ
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第22話「りょこう」

 
前書き
ワンワン放送局の人を助けるにはご都合主義しかないのか...。
...この小説ではワクチンが完全に効いているのでなんとかなりますけど。

ちなみに、この時点で原作よりも時期は早いです。(遅くでも大体9月始め)
 

 




       =遼side=



「....っと、今日はここまでだな。」

「なかなか進めないなぁ...。」

  コンビニの駐車場に車を止め、今日はここで一泊する事にする。

  “卒業”してから大学に向かっているのだが、瓦礫とかで中々進めない。

「じゃあ、俺と蘭と先生と胡桃でローテーションだな。」

「ああ。異論はないぜ。」

「...私としては、皆にも休んでもらいたいのだけど...。」

  見張りとして、俺たちは交代しながら寝る事にしている。
  悠里は少し反対してるけど、安全のためだししょうがない。

「じゃあ、俺と蘭で中を見てくる。」

「ああ、任せた。」

  他の皆に車を任せ、コンビニの中へ入ろうとする。

「あっ、私も行くよ!」

  すると、そこで由紀も名乗り出た。

「皆にばっかり負担を掛けさせないからね!」

「...分かった。なら頼むよ。」

  今の由紀は現実逃避してる訳ではない。
  だから、これからも現実と向き合うためにも、経験は必要だろう。
  そう思って、俺は由紀も連れて行くことにした。



「....ふむ、店内は何もいないな。」

「コンビニとは言え、夜だと奴らもあまり出てこないからね。」

  店内を探索するが、奴らはおらず、だいぶ荒らされた状態なだけだった。

「(...いくつもの空けられたカップ麺....何人かはここに避難してたんだな。)」

  割りばしが入ったままの空のカップ麺を見て、俺はそう思う。

「(血がほとんど見られない、食品がほとんどない所を見るに、場所を替えたのか。)」

  まだ誰かが生きている可能性があると、俺は推測する。
  ...だけど、その可能性は低すぎるな...。

「じゃ、俺は裏を見てくるから。」

「あ、じゃあ私は掃除しとくね。」

  蘭と由紀を置いて行き、俺は裏を見に行く。
  奴らの習性を見るに、生前の夜にバイトしてた奴は...。

「...一体だけいた...か。」

  一体だけ裏でごそごそしていたので、裏口まで引きずってから潰しておく。

「...よし、これだけか。」

  すぐに店内に戻る。
  すると、由紀は掃除していて、蘭はまだ使えそうな品を物色していた。

「あ、どうだった?」

「一体だけ。結構安全だな。」

「オッケー。伝えに行っとくね。」

  そう言って蘭は皆に伝えに行く。

「ふぃー、掃除終わったよー。」

「お、サンキューな。じゃ、俺たちも寝具取りに行くか。」

  俺たちも皆の所へ行き、寝るのに必要な道具を取りに行く。





「やっぱお布団はいいねぇ...。」

「車中泊って結構きついですよね。」

  中からそんな会話が聞こえる。...確かにのびのびと寝れないよな。

「(屋根に登った方が見渡しやすいよな...。よし...。)」

  一方、俺は見張りのために屋根に登ろうと、梯子を運んでいた。

「....明かりなんてない...か。」

  見渡す限り暗闇。街灯でさえ点いていない。
  ...辛うじて、月明かりとコンビニ内のランタンの明かりで周囲は見えるけど。

「光の届かない...この住宅街の向こうに、誰か生きていればいいが...。」

  母さんもそっちの方にいるはず。
  ...だけど、一度でも噛まれれば母さんでも死ぬ。その可能性はゼロじゃない。

「...ま、信じるしかないんだよなぁ...。」

  仮にも父さんに鍛えられた身。そう簡単に死ぬはずはない。
  ...俺の場合も、風邪をぶり返したからだし...。

「(...夜空は綺麗だな...。)」

  晴れ渡り、星が綺麗な空が、今の現状と無関係で、少し羨ましく思えた。

「...っと、ダメだダメだ。見張り見張りっと。」

  幸い、今の所奴らの影は見ない。やはり夜は少ないようだ。

「(...母さん...。)」

  ...なんだかんだ言って、俺も母さんが心配なんだな...。

  ...親父?...あの人は戦争に行って普通に帰ってくる人だし...。









「それじゃあ、出発するぞー。」

  翌日、俺たちは荷物を纏め、車に乗って再出発した。
  ちなみに、今日は美紀と胡桃、圭と悠里を入れ替えての出発だ。

「ふわぁ....。」

「...どうした悠里、眠れなかったのか?」

  運転中、隣に座っている悠里があくびをする。

「...それを言うなら、見張りしてた遼君の方が眠れてないでしょ。」

「じゃあ、言い方変える。...疲れが取れてないのか?」

  どう見ても悠里は疲労していた。それは胡桃にも分かっていたみたいだ。

「...ええ、正直、ずっと眠りは浅いわ...。」

「どこかで二、三泊しようにも水がもったいないし、かと言って車中泊じゃ、疲れは取れないしなぁ...。どうするか...。」

  俺と蘭...後ギリギリ胡桃は体が鍛えられてるから大丈夫だけど、他はか弱いしな...。
  皆、結構疲労が溜まっているはずだ。

「...最悪、別の大きな車を探すか...。国道辺りなら乗り捨てられてるだろ。」

「ううん、いいわ。それよりも大学に急ぎましょう?」

  ...急いで、もし大学がダメだったら危険なんだが...。

「...いや、一時的にでも安全な場所を探して、一度ゆっくり休むべきだ。」

「え、で、でも...。」

「...体調を崩せば、いざというとき大変だぞ。」

  危険を考慮して、仮拠点を探す事にする。
  とりあえず、コンビニで一時休憩した時に向こう側にも伝えておくか。







「...よっと...。」

「こんなもんだな。」

  と、言う訳で、どこかの二階建ての住宅にお邪魔させてもらう。
  二階に上がり、階段を上れないように壊しておけば安全だ。
  降りる時は梯子があったからそれでベランダから降りればいい。

「川が近くにあるから、明日はそこで服を洗おうか。」

「...そろそろ服の着替えもありませんしね...。というか、体洗いたいです。」

  美紀が自分の服や臭いを気にしながらそう言う。

「とりあえず、今日はゆっくりと、しっかり疲れを取るように眠ってくれ。奴らは二階には上がってこれないはずだからな。」

「あいつらが遼や私みたいな身体能力を持ってるのなら別だけどね。」

「そんなのいてたまるか!?」

  ...まぁ、階段を壊す際の音で何体かおびき寄せてしまったけど...問題ないか。

「...根を詰め過ぎるとそれこそ助からない。...だからちゃんと休めよ。」

「....ええ。」

  悠里に念を押すように言う。
  ...この中で一番疲れてるだろうしな...。

「じゃあ、お休みー。」

「...遼君達も、しっかり休んでね。」

「分かってますよ先生。...今日は、俺達もぐっすり眠れそうです。」

  今晩は見張る必要がない。
  だから、俺達もしっかり眠れるって訳だ。







「お着替え完了!いっくよー!」

「おう!」

  わー!と、由紀と胡桃が川に向かって水着姿で走って行く。

「...洗濯しにきたの忘れてないか?」

「まぁ、元気がいいのは良い事よ。」

「そうだけどさ...。」

  “せっかくだから川で遊びたい”って...。

「...まぁ、まだ暑い日があるし、ちょうどいいか。」

「けど、洗濯も手伝ってもらわないと困りますよ。」

「結構、服がありますもんね。しかも手洗い...。」

  俺がそう言うと、美紀と圭が大量の洗濯物を持ちながらそう言う。

「...俺、立場的にお前らの上着くらいしか洗えないんだが...。」

  俺は男。他は全員女性。...まぁ、一応下着以外は大丈夫だけどさ...。
  なんというか、肩身狭いなぁ...。

「...前から思いますけど、遼先輩って多芸ですよね。」

「親父からなんでもかんでも叩き込まれたからな。...何度か死ぬかと思ったぜ。」

「一体何があったんですか...。」

  早速洗い始めながら、美紀とそんな会話をする。

「山のけもの道を走って登るとかはザラだったな。」

「は、走ってですか...。」

「最初の頃は足を挫くはそこらじゅう傷だらけになったな。」

  服の染みをこすって落としながらそう言う。
  ...木の枝とかにめちゃくちゃ引っかかるんだよな。けもの道だし。

「...ところで蘭先輩は?あの人も遼先輩と同じように色々叩き込まれたんじゃぁ...。」

「あー、あいつが叩き込まれたのは専ら戦闘関連だ。護身も兼ねてな。...だから、所謂“女子力”ってのは俺よりも劣るって蘭本人が言ってた。」

  ちなみに当の本人は車の傍で見張りをしている。

「....で、だ。そろそろお前らも手伝えよー!!」

「えー!もうちょっと遊びたいよー!」

「そうだそうだー!」

  いや、元々洗濯のために来たんだろうが...。
  俺は思わず由紀と胡桃にそう突っ込まざるを得なかった...。







「....それじゃあ、出発するぞー。忘れ物はないな?」

「オッケーだよ!」

  洗濯の次の日。しっかりと休養も取った俺達は大学に向けて再出発した。
  ちなみに車に乗る面子は前と一緒だ。



「...あ、ここって...。」

「ん?...あー、なんか見覚えがあると思ったら...。」

  しばらく走り、ちょっと休憩がてら外に出て、改めて景色を見て俺達はそう言った。

「ん?りーさん、遼、知ってるのか?」

「え、ええ...ちょっとね...。」

「俺はあまり来た事はないけどな...。母さんの勤め先の近くだ。」

  そう、そこは母さんと悠里の妹が行っている鞣河小学校近くの街並みだった。
  ...まぁ、もう見る影もないけどな...。

「...行くか?」

「行くって....まさか...。」

  胡桃が俺の言おうとしている事に察する。
  悠里も、それが分かっているのか、少し考えてから...。

「....ええ。行くわ。」

  そう、決断した。

「...なら、善は急げだ!皆、車に乗ってくれ!行き先は鞣河小学校!もしかしたら生存者がいる可能性がある!急げ!」

  皆に聞こえる程度の声量でそう言う。
  休憩をすぐ切り上げる事になったけど、元々大した休憩のつもりはなかったしな。

「....悠里、案内を頼む。」

「分かったわ。」

  悠里はいつもより真剣だった。
  当然だ。妹の事が心配なのだから、真剣にならない方がおかしい。

「(...だが....。)」

  しかし、それ以上に、悠里の精神状況が不安だった。

  ただでさえ、拠り所の学校を失ったのだ。
  パンデミックが起きて、今まで精神に負担が掛からなかった事はない。
  表面上は大丈夫に見えても、内面は一体どうなっているのか...。

「(...その妹が、生きていればいいんだが...。)」

  俺は運転しながらも、そう思わずにはいられなかった。







「....ここか...。」

「まだ夕方辺りだぞ?助かるけど、数が少ないな...。」

  鞣河小学校に着き、俺達は車を降りる。
  ...確かに、胡桃の言うとおり奴らの数が少ないな...。

「ねぇ、今日って何曜日だったっけ?」

「なんでこのタイミングで曜日を...って、そうか!」

  由紀の言葉に俺は気づく。

「今日は一応日曜日。学校は休みだから、習慣に沿った動きをしている奴らはいないんだ。」

「なるほど。確かに、日曜に小学校に来るのなんて教員ぐらいだよな。」

  危ない危ない...。一日遅かったら、大量の子供ゾンビを薙ぎ倒す羽目になってたのか。

「....さて、行くぞ。美紀と圭、先生はここを見張っていてくれ。」

「分かったわ。気を付けてね。」

  太郎丸と命も当然置いて行き、俺達は小学校の中に入ろうとする。

「.......っ。」

「...悠里。」

「っ、え、ええ。今行くわ...。」

  ...やはり、危ういな...。だけど、だからってどうしようも...。





「....ところで由紀。そのぬいぐるみはなんだ?」

  校舎に入り、少し進んだ所で由紀に聞く。
  ...腕の中には、クマのぬいぐるみがあった。

「ふふーん。これはね、ぬいぐるみのグーマちゃん!子供はぬいぐるみが大好きだからね!この子でモテモテになるのだ!」

「あのな...。」

「...なんて言うのは建前で、これで少しは安心させられたらなって...。」

  “そんなしょうもない理由で”と言おうとして、由紀が改めてそう言う。

「...そうか。...その時は、任せたぞ。」

「任されたよ!」

  ...こういうのは、由紀の方が得意だろう。
  .....別に、精神年齢が近く思えるからじゃないぞ?





「...二階もなにもなし...か。」

  二階も探索したが、数体の奴ら(子供もいた)がいただけだった。

「...だが、確実に誰かがいる。」

「足跡があったもんね...。」

  二階に上がる時、何度も行き来した足跡があった。
  よく見れば、それは大人と子供のもので、もしかしたら生きているかもしれない。

「...三階だ。おそらく、そこにいるはず...。」

  蘭に後ろの警戒を任せ、俺は前を、胡桃たちには何かないか色んな所を見てもらった。
  そして、三階に着く。

「...!ここか....。」

  窓の部分には大量に板が打ちつけられている教室。
  おそらく、そこが籠城している場所だろう。
  ....だが....。

「...静か...だな。」

「...静かすぎるよ...。」

  明らかに物音を立てていた。だけど、この中からは物音一つしなかった。

「とりあえず、中を見てみようぜ。」

「ああ。...っと、机のバリケードか。」

  扉を開けると、机によって奴らは通れないようになっていた。
  辛うじて人間は潜れるので、潜ってみたが...。

「....どうだった?」

「....もぬけの殻だ。人っ子一人いない。」

「そんな...!?」

  中の様子を伝えると、悠里が今にも崩れ落ちそうな程ショックを受けた。

「...まだ、死んだと決まった訳じゃない。ここを脱出して、どこか違う場所に隠れているだけかもしれない。」

「.....で、でも....。」

  俺がそう言っても、悠里は下唇を噛み締め、認めたくないような表情をしていた。
  ...悠里がだいぶやばいな...。

「だ、大丈夫だよ悠里ちゃん!ほら、まだ教室はあるし!」

  蘭が誤魔化すように隣の部屋の扉を開ける。
  ..って、そんな不用意に開けたら...!

「っ、うっ....!?」

「見るな由紀!」

「蘭!」

「分かってる!ごめん!」

  ...中には、多数の死体が折り重なっていた。
  血みどろで、子供が多数を占めていた。あまりにも見たくない部屋だった。
  ...共通していたのは、全員が頭を潰されていた所だ。
  おそらく、誰かが倒したのをそこに仕舞ったのだろう。

  ...どの道、由紀はあまりのグロさに気分が悪くなってしまった。
  悠里も、危険な精神状態に変わりない。

「(一瞬だったが、かなりの手際だ。倒したのは相当な実力者...おそらく母さんだな。)」

  あれほどの事ができる者で、ここに潜んでいたとなると母さん以外思いつかない。

「....戻るぞ。...ここには、もう誰もいない...。」

「..あ、ああ...。」

  誰もいなさそうなので、俺達はここを後にする。
  ...悠里の精神状態がやばいから長居したくないのもあったが。

「....っ、せめて....。」

「由紀?」

  気分を悪そうにしていた由紀が、いきなりぬいぐるみを死体だらけの部屋の前に置き、祈るように手を合わせる。

「....行くぞ?」

「...うん。」

  誰も生存者はいなかった。それは悲しい事だが、いなかっただけで、どこかに逃げ延びているかもしれない。俺は、そう思う事にした。

「っ.....。」

「(....本当に、まずいな...。)」

  これ以上、悠里に負担はかけられない。
  どこかで、休めさせなければな。





「...そう、誰もいなかったのね...。」

「はい。ただ、逃げ延びている可能性も十分にあります。」

  車に戻り、とりあえず先生に情報を伝えておく。

「...けど、悠里の精神状態を考えると、今から移動はやめておいた方がいいです。」

「そうよね...。どこで休めば...。」

「近くの家を借りましょう。シャッターさえ無事なら何とかなります。」

  シャッターと玄関が無事なら、侵入しようとする際の音で俺と蘭が気づける。
  シャッターのない小さな窓は侵入自体無理だから大丈夫だろう。

「一番近い所だとあそこね...。」

「なら、あそこにしましょう。皆、行くぞー!」

  皆に声を掛け、そっちへと移動する。








「皆、ちゃんと疲れを取っておけよ。」

「はーい!」

「じゃあ、お休み。」

  近場の家を借り、俺達は眠る。
  ...生存者が見つからなかったのは残念だが、俺達は前に進むしかない...。

「(...とりあえず、予定通り大学へ向かおう...。)」

  車に積んだ食料も多くない。急がないとな...。















「....いる。きっと、いるはずよ...。」

  この時、俺は詰めを誤っていた。

「きっと、見落としただけ...。いるのよ...絶対...。」

  悠里が、どれだけ精神を追い詰められてたのかを。

「....待ってて。お姉ちゃんが今、行くから....!」





   ―――悠里が単独で学校に向かったのに気付いたのは、夜中に起きた時だった。











 
 

 
後書き
....え?放送局の人やラジオはどうしたって?...し、知らんな(震え声)

...えっと、まだ原作よりも時期が早く、薬もちゃんと効いているので、放送をまだしてないor放送で住所を知らせる必要がないという理由で出番が消えました。
車がそのままですが、そこは遼のサバイバル知識で補います。

悠里がるーちゃんについて覚えていますが、以前に遼に家族について話したのと、環境が少し違った事から少し余裕があって覚えていました。(精神は不安定なままだけど。)

それと、小学校についてですが、原作では二階ですけど、遼の母親の考えで三階にバリケードが作られています。(高い所の方が安全だと思ったから。) 
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