ゴメス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五章
「俺もブガンダ族だ」
「そうなんですね」
「教育学部にもいるとはな」
「思わない出会いですね」
「そうだな、それで名前は」
「ライ=カルメです」
こう名乗った。
「宜しくお願いします」
「カルメさんか」
「はい、今年入学しました」
「じゃあ俺の一つ下か」
「あっ、そうですか。じゃあご出身は」
「それはな」
二人で会話を進めていった、このコンパをはじまりとして二人は友人同士となりそこからさらに発展してだった。
ミガが医師免許を習得し大学病院での勤務が決定した時にだ。彼は実家に戻って今も健在の祖父に報告した。
「そういうことでな」
「よし、よくやった」
アゴムは孫のその言葉を聞いて笑顔で応えた。
「じゃあ後はだ」
「子供だな」
「頑張って作れ、しかしな」
「しかし。何だ?」
「同じブガンダ族の娘さんか」
「ああ、そうだ」
「それはいい縁だな」
こう言うのだった、孫の話を聞いたうえで孫本人に。
「ゴメスを着ていてか」
「それでわかってな」
「そういうことだな、話を聞いたが」
「家も決まった」
二人が住むその家もというのだ。
「そこで二人で住むさ」
「そこから三人四人と増やしていけよ」
「そうしていくな、このこと王様にお話すべきか」
「ああ、そうしろ」
実はブルンガ族は王制だ、二十一世紀になって復活したのだ。かのアミン大統領が廃止させたがそれが儀礼的な存在として復活したのだ。
「折角だからな」
「それじゃあな」
「それでだ」
祖父は孫にさらに話した。
「御前のその話が王様のお耳に入ったらな」
「それがか」
「ひょっとして王室付きの典医になるかもな」
「それはないだろ」
「わからないぞ、王室も医者が必要だからな」
「もういるだろ」
「だからわからないぞ、とにかくよくやった」
孫の結婚を心から喜んでいる言葉だった。
「絶対に幸せになれよ」
「ああ、そうなるな」
ミガも確かな顔で頷いた、それまで恋愛にも縁がなかったが結婚にまで至った。そしてそのきっかけとなったゴメスを妻に贈りもした。二人が知り合うきっかけになってくれたことに感謝して。
ゴメス 完
2016・5・29
ページ上へ戻る