ゴメス
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第二章
「まだな」
「何だ、まだか」
「ああ、まだだよ」
実際にという言葉だった。
「誰もな」
「何だ、つまらないな」
「っていっても俺まだ子供だよ」
「子供でも今からな」
それこそとだ、祖父は孫にこれまで以上に強く言った。
「誰か好きになってな」
「結婚か」
「それをしろ」
絶対にというのだ。
「わかったな」
「わかったって言われてもな」
「好きな人を見付けろ、いいな」
「無理にでもか」
「無理にでもだ、好きな人と会ってな」
「結婚か」
ミガは実感の湧かない声で言った。
「それをか」
「そうしろ、何があってもな」
「祖父ちゃんみたいにかよ」
「そうだ」
まさにという返事だった。
「わかったな」
「わかったって答えなかったら駄目か」
「そうだよ、いいな」
「それじゃあな」
ミガは頷くしかなかった、そしてだった。
彼は祖父の言葉を記憶に留めたまま成長していっただった、大学まで進んだ。
だがこれといって恋愛はなくだ、年老いても矍鑠たる祖父に実家に帰った時に言われた。
「まだか」
「まだだよ」
憮然として返す。
「好きな人はな」
「出来ないか」
「どうも忙しくてな」
それでというのだ。
「恋愛とかはな」
「する時間はないか」
「ないよ、俺は医者になるんだ」
そう思っていて医学部に入っている。
「だからな」
「勉強で忙しいか」
「そうなんだよ」
「それは逃げなんだよ」
「逃げ?」
「幾ら忙しくてもな」
それでもというのだ。
「結婚は出来るしな」
「恋愛もかよ」
「そうだよ、出来るんだよ」
こう言うのだった。
「だから俺も祖母さんと結婚してだ」
「親父とお袋もか」
「そうだよ」
だからだというのだ。
「御前もな」
「じゃあそうした人をか」
「早く見付けろ、それか神様にお願いしてな」
そしてというのだ。
「会うんだよ」
「神様か」
「こうした時の神様だ、わかったな」
「とにかくなんだな」
「結婚は絶対にしろ」
大学生になった孫に今も言う。
「わかったな」
「じゃあ神様にお願いするな」
「そうしろ」
アゴムは目を険しくさせてミガに言った、そして。
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