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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~碧の御子と大魔導師の邂逅~

~トールズ士官学院・屋上~



「フフ、わかってはいたけどリィンって、凄いわね……クレアさんと愛し合ったばかりなのに、私にもあんなに何度も出したのだから。」

「う”っ。そ、その……―――ゲルド。オズボーン元宰相との決戦を終えて、状況が落ち着いたらアリサ達にゲルドの事を報告してもいいか?」

”行為”を終えた後服を着たゲルドに図星を突かれたリィンは表情を引き攣らせたがすぐに気を取り直して尋ねた。

「私は別にいいけど……リィンはいいの?アリサ達、また怒ると思うけど。」

「ハハ……まあそうなるだろうけど、だからと言って責任を取らないなんて、男として最低な事をするつもりはないよ。……というかむしろゲルドの事で責任を取らなかった方が怒られる気がするしな……ハハ……」

「フフ、そうかもしれないわね。……それじゃあリィンが学院を辞めた時は私もリィンの奥さんの一人になるのかしら?」

冷や汗をかいて苦笑するリィンの推測にゲルドは微笑みながらリィンを見つめて問いかけた。



「え、え~と……あ、ああ。エイドスさんとの約束を守る為にもゲルドとも籍を入れるよ。」

「よかった……その言葉を聞けて。お蔭でエイドスに貰った指輪をエイドスに返さずに済んだわ。」

「へ……って、まさかゲルド、アリサ達みたいにエイドスさんから……!」

「うん、リィンがアルフィンと結婚した翌日にこっそりエイドスに私がリィンの事が好きな事を話したら『それなら是非、この指輪を貰って下さい♪ゲルドさんの気持ちを知ったら、リィンさんなら絶対に責任を取りますので♪というかもし断ったら、アリサさん達にリィンさんに振られた事を説明すればアリサさん達がリィンさんにゲルドさんの事も責任を取るように説得するでしょうから絶対大丈夫です♪』って言って、私にこの指輪をくれたの。」

「………………」

懐から取りだした指輪を手に語られたゲルドの話を聞いた瞬間、エイドスが意気揚々とゲルドに指輪を手渡している様子を思い浮かべた。



「え、えっと……―――そうだ。ゲルド、オズボーン元宰相との決戦の後にする事はまだ決まっていないんだよな?」

「?うん。」

「それなら状況が落ち着いた後でいいから、トリスタやトールズ士官学院を俺と一緒に見て回らないか?前々からゲルドにもトリスタや学院の事を知って欲しいと思っていたんだ。」

「リィン………………―――フフ、それってもしかしてデートのお誘いなのかしら?」

リィンの話を聞いて目を丸くしたゲルドはからかいの表情でリィンを見つめて問いかけた。



「へっ………………――――あ。」

「その様子だと気付いていなかったみたいね。だからみんなによく”鈍感”って言われて怒られたり呆れられたりしているのよ?」

「め、面目ない……」

ゲルドに指摘されたリィンは疲れた表情で肩を落とした。

「まあそこも含めて私はリィンの事を好きになったのだけどね……けど、デートか……アリサ達ともした事があるリィンならエスコートも上手なんでしょうね。」

「へ。」

「?どうしたの、リィン?」

自分の言葉に呆けた声を出したリィンが気になったゲルドは不思議そうな表情でリィンを見つめ

「…………えっと、よくよく思い返してみたらアリサ達と今までデートをした事がないんだ……学院に通っていた頃はそれぞれ用事とかで無理だったし、内戦の時はそんな暇もなかったし……」

「え。」

(あ、言われてみればそうよね♪)

(デートの代わりにたくさん愛し合っていたけどね。)

(ふふふ、まあある意味そちらの方が効果的でしょうけどね。)

(……普通の男女交際による順序を飛ばして淫らな毎日を送る事でアルフィン様達と夫婦の関係になるとはさすがは性欲旺盛な不埒過ぎるマスターですね。)

(す、すみませんリィン様……全く反論できませんわ……)

リィンの答えを聞いたゲルドが目を丸くして呆けている中、ベルフェゴール達の念話を聞いたメサイアは疲れた表情で肩を落としていた。



「フフ、それじゃあ私はリィンの初めてのデートの相手って事になるのかしら?」

「え、え~と……そうなるな。その、初めてだから色々拙い所があるかもしれないけど、できれば大目に見てくれると助かるんだが……」

「それはリィン次第ね。――――私にリィン達がお世話になっているトリスタや学院を案内してくれるという私との”約束”、期待して待っているわね。」

「あ、あまり期待して貰っても困るんだが……―――それじゃあ俺は先に学生寮に戻って休んでいるよ。」

「うん。私はもう少しだけ景色を見ているわね。」

「わかった。―――お休み、ゲルド。」

「お休みなさい、リィン。」

そしてリィンはその場から去って行き、ゲルドは去って行くリィンの背中を見守っていた。



「―――ありがとう、リィン。こんな私を愛してくれて。お蔭で覚悟、決まったよ。」

リィンが去った後ゲルドは全てを受け入れたかのような穏やかな微笑みを浮かべていたが

「…………あ、れ……どう、して……涙が…………以前決めた時は涙なんて、出なかった、のに……うっ、ひっく…………死にたく、ないよ……もっとリィンや、みんなと一緒にいたいよ………ひっく……ううっ………」

すぐに涙を流し始め、顔を俯かせて身体を震わせながらその場で崩れ落ちて声を押し殺して泣き始めた。



「………………(心の奥底で求めていた自分を受け入れてくれる”絆”を手に入れた事や一人の少女として異性に恋をし、そしてその恋が叶った事で、”死への恐怖”と同時に”生への執着心”がようやく芽生えたのでしょうね…………)」

ゲルドが崩れ落ちて泣き始めたその時、ゲルドの傍に落ちていたゲルドの杖が淡い光を放った後ローブ姿で杖を持った男性の姿をした霊体がゲルドの背後に現れ、自分の登場に気付かず声を押し殺して泣き続けているゲルドを辛そうな表情で見つめていた。

(……”大魔導師”と称えられた男が情けないですね……かつてゲルドが己の魂を自身の杖に宿したように、私自身の魂をゲルドの杖に宿す事ができても、結局私達の世界を救った優しき少女の悲しき運命を救う方法が思いつかないのですから………………――――待てよ。ゲルドの運命を改変した”彼女”ならば……!この手段だけは正直取りたくありませんでしたが、ゲルドを救う為には手段を選んでいられませんね。)

泣き続けているゲルドを身体を震わせて無念そうな表情で見つめていた男性はある事を思いつき、決意の表情になった後転移魔術でその場から消えた。





同日、21:50―――――



~クロスベル帝国・帝都クロスベル・特務支援課~



「……………………」

”六銃士”によって建国され、メンフィルと共に2大国に戦争を仕掛けた事で広大な領地を手に入れて大国へと成り上がったクロスベル。かつて”六銃士”のヴァイスとアルが所属していた”特務支援課”のビルの屋上でロイド達”特務支援課”と共に”真・煌魔城”に突入する事になっているロイド達の”協力者”の一人である未来のキーアは一人静かな表情で夜景を見つめていた。

「…………――――そろそろ来る頃だと思っていたよ、ミッシェル。」

夜景を見つめていたキーアが静かな口調で呟いて背後へと振り向くと、ゲルドの杖から現れた男性の霊体がキーアを見つめていた。



「私の事もご存知でしたか。まあ今から10年後の存在である貴女なら知っていてもおかしく―――いえ、”ゲルドの杖に自身の魂を残せる程の魔力を残させた私に死後自身の魂をゲルドの杖に宿し、並行世界の貴女の”奇蹟”によって魂が消滅したはずのゲルドを蘇らせ、私が宿ったゲルドの杖と共にゼムリア大陸に現させる因果へと改変したのですから、ゲルドの決意を知った私がゲルドを救う為に貴女を尋ねて来るのも()っていた”のですから、これも貴女が改変した”因果”の通りと言った所ですか。」

「……………………”今のキーア”がミッシェルと会うのはこれが”初めて”だよ。―――初めまして、ミッシェル。キーアの名前はキーア・バニングス。キーアはイーリュン教の司祭の一人を務めているよ。」

霊体の男性の推測に対しキーアは反論する事なく、静かな表情で男性を見つめた後やがて口を開き、軽い自己紹介をした。

「これはどうも御丁寧に。貴女なら私の事もご存知でしょうが、名乗られたからには私も名乗らないと失礼ですね。――――私の名はミッシェル・ド・ラップ・ヘブン。かつて”大魔導師オルテガ”と呼ばれた者。あの娘を……ゲルドの運命を改変してくれた上、ゲルドの杖に宿った私にゼムリア大陸に来てからのゲルドを見守らせてくれた因果へと改変した事……今でも感謝しています。」

「……キーアを訊ねたのはゲルドの”今後”の事でしょう?」

霊体の男性――――ミッシェルにキーアは静かな表情で問いかけた。



「はい。……本来”未来”を知る事は”禁忌”とされますが、それでも私は知りたい。あの娘の未来が幸ある未来であるのかを。そしてもしあの娘の未来が”かつてと同じ”なのならば、何とか救ってあげたいのです。」

「―――大丈夫だよ。キーアの時代のゲルドは勿論生きているし、結婚もしていて子供だっているよ。」

「!!……そうですか……それはよかった…………しかしどうやって”ラウアールの波”を?まさか”空の女神”と異世界の神々が協力してあれを消し去ったのですか?」

キーアの口から語られたゲルドの未来を知ったミッシェルは目を見開いた後安堵の溜息を吐いたが、すぐに表情を戻して真剣な表情でキーアに問いかけた。

「…………うん。でもみんなの協力があったからこそ、成し遂げる事ができたんだ。」

「そうですか…………――――ありがとうございます。お蔭で肩の荷が降りました。」

「ううん。キーアはミッシェルにできる”償い”をしただけ。」

「?私に対する”償い”……?―――――!なるほど。私は”死の運命”から解放されたゲルドの未来を見る事はできないのですね?だからこそゲルドの未来を躊躇う事無く教えてくれたのですね?」

辛そうな表情をしているキーアの言葉に不思議そうな表情をしたミッシェルだったが、すぐに察しがついて静かな表情で問いかけた。



「うん…………ミッシェルはゲルドやみんなを助ける為に…………」

「―――そうですか。貴女は私に対して罪悪感を持っているようですが、私は貴女に感謝していますので、私が消えても私に対して罪悪感を持つ必要はありませんよ。」

「……自分が消える事に怖くはないの……?」

穏やかな表情で語るミッシェルにキーアは悲痛そうな表情で問いかけた。

「私は既に生を終えた身。あの娘やあの娘を受け入れてくれた若者達を救う為にこの魂を犠牲にするのならば本望です。それでは私はやる事がありますので失礼します。―――――また会えるといいですね。」

「……………………」

穏やかな笑みを浮かべるミッシェルはキーアの返事を待たず、転移魔術によってその場から消え、その後目的を果たし、ゲルドの杖に戻った。 
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