魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル
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DUEL18 再戦、加藤桐谷
前書き
少々遅れました………
GWが明日からとなった。
「まあこんなものね」
今日まで毎日の様に付き合ってもらった四菜には感謝している。ゲームセンターでの特訓は案外効果があり、射撃精度は日に日に上達していった。………それでもドローン相手に止まってる状態で70%とまだまだではあるが。
「今日までありがとう」
「前も言ったけどね対価は貰ってるからお礼は良いわ。それよりも………必ず勝ちなさい。私がここまで付き合ってやったんだから負けたら許さないわよ」
「ああ、絶対負けない」
そう四菜に誓い、研究所へと帰った…………
さて、そんな切羽詰まった状況ではあるが、別に相手は時間を指定したわけでは無く、いつ来るかも分からない。そして明日からGW。
「………って事で明日友達が2人研究所に来る予定なんですけど………」
夕食後、GWの初日に神崎と黒崎がグランツ研究所に行きたいと言う話を報告した。
『ずっと行きたかったんだよ。だってランキングのトップの実力者がいる場所でしょ!?放課後じゃ少し遠すぎるしGWのタイミングはちょうど良いと思ってたんだよ!!』
『俺も行った事無かったし良い機会かもな』
『だろ!!』
と言った具合にピョンピョン拍子に話が決まっていき、初日に来る事になったのだ。
「流石に事情を説明する訳にも行かなかったし、拒否する理由も思いつかなかったから断るに断れなくて………」
「ふむ、お客か………昼食、もしくは夕食の準備もした方が良いか?」
「流石に遠慮すると思うけど………取り敢えずいいや」
ただでさえ、俺で余計な負担を掛けているのにこれ以上ディアに負担は掛けたくない。
「了解した」
「ねえねえ、ブレイブデュエル強い人いる?」
「ああ。フェンサータイプで生粋の剣士がいるぞ」
「うわぁ……戦ってみたいなぁ………」
獲物を見つけた様な顔で笑みを浮かべるレヴィ。まるで野獣だ。
「私も相手しましょうか?」
「初心者が1人いるから手強く教えてやってくれ」
「分かりました」
初心者とは当然神崎である。一度シュテルにこってりと絞られて最近デカい態度が多いので、収まればいいのだが………
「博士、そう言う事で………」
「まあ仕方がないね。それに初日から仕掛けてくるとは限らないし、あまり気にする事でもないだろう。兎に角、GW中はみんな忙しくなるから協力よろしく頼むよ」
「初日は私とキリエがお客さんの対応です」
「気張らないとね………イベントもあるし頑張らないと」
「ユーリは私の手伝いを頼むよ」
「了解です!」
と敬礼して答えるユーリ。
「さあ、みんな明日から頑張ろう!!」
そう博士が締めくくり、GWの話はそこで終わった………
「命中は全体で60%ですか………まあ上出来だと思います」
最後のブレイブデュエルによる射撃訓練。完璧とはいかないものの、動きながらでも大体5割から6割は動く的にも当てられる様になった。
最後は皆俺の様子を見に来てくれた。シュテル、ディア、レヴィは日替わりで交代しながら協力してくれたので俺の成長具合は分かっているが、アミタ達から見たらかなり成長したように見えた様だ。
「あんなにノーコンだったのに………」
「まだ六割だけどな」
「レイ頑張りましたね!!」
「ありがとうユーリ」
誉めてくれたユーリの頭を撫でながらそう答える。
「本来ならもっとスピードを上げていき、難易度を上げるべきなんでしょうけど、相手は突貫力に優れているだけで動きに関しては遅い方。充分勝負出来ると思います」
「そうだといいんだけど………」
シュテルは励ましてくれるが正直なところ、ダメージが通るのかもまだ分かってないのだ。
「まあ今更変えようとしてももう遅いし、他に手なんて無いからな」
「そうですね。腹を括ってください」
と軽く言われてしまったが、確かにそれしか無いのだ。
「レイ、ファイトだよ!」
「ああ!!」
そして翌日……・…
「零治!!」
「おう黒崎、………で神崎は何でそんなにヘロヘロなんだ?」
「こんなに登るなんて……聞いて……ない………」
研究所前で待っていると約束の時間よりも少し早目に2人はやって来た。
「うん?やけに静かだけどお客はいないのか?」
「まだ開店前だからな。後1時間もすればこぞって人が集まるよ」
「それって迷惑じゃ………」
「許可は貰ってるから問題ないよ」
そう言いながら2人を案内する。
「うわぁ………」
「なるほど………」
色とりどりの花が咲く花壇に挟まれた道を進み研究所の前まで来た。
研究所は如何にも一般人お断りな雰囲気があるが、営業時間内になればそれも無くなる。
「あっ、いらっしゃい。黒崎君と………君が神崎君ね」
「こんにちは」
「よ、よろしくお願いします!!」
一度顔を見たことある黒崎は普通だが、神崎はガチガチだった。
「お前なぁ………」
「だって学園のマドンナが目の前に………」
気持ちは分からないでもないが、今こんな状態で大丈夫なのだろうか………?
「あっ、来た!!」
俺達の姿を見てレヴィ達が駆け寄る。
案内した場所は夜、シュテル達と訓練しているシミュレータールーム。ここは一般には開放していないのである意味自由に使う事が出来る。
なのでこういう時には便利なのだ。ただ簡易的な物なのでステージ数も少ないので、そこが少々残念なところだ。
「ねえねえ、どっちが黒崎?」
「レヴィ、先輩ですよ!!」
「あっ、そっか!すいません………」
と即座に謝るレヴィ。
「別に敬語とか良いぞ?話しやすい話し方で良い」
「そうか、済まぬな。自己紹介だが……我はディアーチェ・K・クローディア」
「ボクはレヴィ・ラッセル!」
「私はシュテル・スタークスです。そしてあちらで機械を操作しているのがユーリ・エーベルヴァインです」
シュテルの説明にユーリが小さく会釈した。
「後、妹のキリエがいますが知ってますよね?」
「はい。お二人は1年の中でも有名ですから。………それじゃあこちらも。黒崎一心です。有名なダークマテリアルズに会えて光栄です。今日はよろしく」
「か、か、か、神崎、だ、大悟です!!」
やはりパニックになりつつある。
「大丈夫ですか……?」
「美女に囲まれて上がってるんだろ………まあ大丈夫だ」
「び、美女だなんて………」
と俺の言葉に照れながら呟くシュテル。
「レイ!ボクは!!」
「普通に皆もだよ。………だからここに住んでるって事はなるべく教えたくないんだよ」
「ん?何故だ?」
「それは………」
「零治ーーーー!!!」
先程までちゃんと喋ることも出来なかった神崎が人が変わった様に俺の名前を呼び、胸ぐらを掴んできた。
「お前は、何て、羨ましい目に………!!謝れ、謝れーーー!!!あぐっ!?」
黒崎に首にチョップを入れられ、意識を失う神崎。
「………まあ一部の男子が発狂して零治を襲いかねないからな。あまり広げない様に」
黒崎の言葉に納得した様で皆それぞれ苦笑いしながら頷いた。
「ん?先輩は零治に嫉妬しないのですか?」
「俺は……」
「黒崎には憧れ恋抱く人物がいるからそんな風に思わないよ」
ブレイブデュエル並みの速さで俺に拳が向かってくるが、予め予測していたので掌で受け止めた。
「零治……余計なこと言う必要無いだろ……?」
「事実なんだし仕方ないだろ………?」
「あのな………」
ため息を吐きつつ、黒崎はシュテル達を見た。
「えっ………?」
シュテル達はキラキラした目で、とても聞きたそうな顔で黒崎を見ていた。
「あの………皆さん………?」
「黒崎君、詳しく話してくれないかしら?」
「出会いからちゃんとお願いしますね!!」
「キリエ先輩とアミタ先輩まで………?」
先輩である2人に興味がある顔で言われ、黒崎に焦りが出てきた。
「零治に直接聞かないだけ良いと思わない?」
「いや、零治は詳しくは知らないから………」
「じゃあボクとブレイブデュエルしようよ!!それで勝ったら教えて!!」
「えっ!?」
突然の提案に黒崎は驚く。
「いいですね、以前からレヴィに黒崎先輩の相手をしてもらうと思ってましたから」
「レヴィ、負けるでないぞ」
「任せて!!全力で戦うから!!」
「いや、ランカーだよね!?零治からも言えよ!!」
「さて、諦めて話したらどうだ?」
「ふざけるなあああああああ!!」
『強いね!!もっと速く行くよ!!』
『絶対に負けてたまるか!!』
「思った以上に善戦してますね」
「脅した影響で黒崎も必死だな。………意地でも話したくないんだろ」
「ええ~どうせ相手分からないんだし、いいじゃない………」
と文句を言うキリエだが、俺が黒崎の立場だったらキリエにだけは絶対に言いたくない。
「さて、もう開店時間ですね」
「私達は手伝いだから表に行くわね。後でちゃんと教えてよ」
「ああ、頑張れ」
俺の言葉を聞いて、2人は部屋を出た。
「さて………」
実はこの部屋でブレイブデュエルをしているのにはもう1つ理由があった。
それは加藤桐谷との戦いでここを使う為である。
キルモード対策もあるが、以前みたいにお客が居る前であのような戦闘をすればまたブレイブデュエルを勘違いさせてしまうかもしれない。親の想いを知った今、それだけは絶対に避けなければならない。
「あいつは来ているんだろうか………」
来ていればスタッフがここへ案内してくれる。後は正々堂々と加藤桐谷に挑めばいい。
キルモードがあろうとなかろうと関係無く絶対に勝つ。
(そのための訓練はしてきた。………みんな頼むぞ)
言葉に出さず、心の中で願う。それでも俺の相棒達には伝わっている気がした。
「!!レイ………」
ふとユーリが不安そうな声で俺の名前を呼んだ。
それ以上続きを言わなくても分かる。
「加藤桐谷が来たか………」
「………あんな事があったのに俺を受け入れるんですね」
「受け入れた訳では無いです。でもあなたと戦う事を零治君も望んでいます」
スタッフが加藤桐谷を見つけ、その対応はアミタが行う事になっていた。
と言っても案内するだけだが、それでも加藤桐谷の雰囲気にアミタは思わず後ずさりしそうになった。
(何て恐い目………)
元々イケメンの顔でつり目に近い桐谷だが、その目が更に鋭く、冷え切っているのをアミタは感じた。
(今度こそ零治君を確実に殺すつもりだ………)
零治を信じていないわけでは無い。だが桐谷を見て、不安が一気に膨れ上がった。
「零治君を殺す為にきたんですか………?」
恐る恐る質問するアミタだが、桐谷は特に嫌な顔をせず、最初に見た顔のまま答えた。
「そうだ。あいつを殺さなければ何も始められない」
「そんなの意味が分からないですし、おかしいです………」
「そうだな………」
「えっ!?」
予想外の答えに思わず大きめの声が出る。
「だったら……」
「だからと言って止める気は無い。俺にも譲れないものがあるんだ」
見た目は変わっていないが、アミタには先ほどの恐いと感じた印象が苦しくも一生懸命我慢して何かに耐えている様に思えた。
(零治君………負けちゃダメだよ………)
零治を心配する皆の為、そして1人苦しんでいるであろう加藤桐谷を救う為………アミタはそう願いつつ案内するのだった………
「あっ………」
「あいつは………!!」
桐谷の姿を見たレヴィは、今にも襲いかかろうとする様な形相で桐谷を睨んでいる。
「有栖零治は?」
「今、他の人とデュエル中だ………」
今零治は、気がついた神崎とレヴィが飽きるまで逃げ切った黒崎と共に3人でブレイブデュエルをしていた。
「好都合だな。これなら逃げられない」
「レイは逃げません」
「レイを舐めるな!レイは前とは別人なんだぞ!!」
「それは俺も同じだ」
レヴィの言葉にそう答え、さっさと進む桐谷。
「1つだけ注意しておく。もし、万が一レイに勝ったならば次は我等だ。無事で済むと思うなよ?」
「ああ、構わん。それでいい………」
「………?」
桐谷の答えに違和感を感じたディアだが、問い詰める前に桐谷はゲームの中へと入って行った………
「良いじゃん、狙いが定まってきてるぞ」
「本当か!?」
荒野のステージに俺と黒崎と神崎が居た。神崎が練習したいと言ったのでシュテル達にも手伝ってもらうはずが、緊張してまともに動けんかったので男3人だけなのだ。
「もう少しだな………遠くから攻撃出来るし一番使い易いからもっと上手くなりたいんだけど………」
神崎の双銃。
高魔力を生かしての射撃は1発の威力が高い。戦闘スタイルが多い神崎の場合、スキルカードは多く持てない。それゆえ、戦いはスキルを使わない基本的な攻撃が重要になってくるのだ。
その中で、他の大剣、ライフルと違ってある程度どの距離でも対応出来、尚且つ連射出来るこの双銃を神崎は一番多く練習していた。ガードが出来ないと言うデメリットもあるが、本人はまだ気にするレベルまで使いこなせていないので、攻撃だけ焦点を置いている。
「だけどドローンに対してだからまだまだだな。実際に動く人間はドローンの様には動いてくれないんだ。それをちゃんと頭の隅に置いとけ」
「分かってるよ………」
「耳が痛い………」
黒崎の言葉は俺にも該当するので耳が痛い。だが実際その通りである。
「さて神崎、次は……って乱入者?」
不意に警告文が出現し、現れたのはあのとき戦った相手だった。
そして以前と同じ様に『キルモード』が表示される。
「来たか………」
「零治……?」
ニヤリと笑みを浮かべる零治。それと同じくして神崎が相手の顔を見て固まった。
「黒崎、神崎、あいつの目的は俺だ。俺もあいつと戦う日を待っていた。だから手は出さないでくれ」
「おい零治、何を………」
だが零治の顔を見て黒崎はそれ以上何も言わなかった。
「………終わったら詳しく話を聞かせてもらうからな」
「ああ」
そう返事をし、黒崎達は後方へ下がった。
「………友達も一緒でも良いぞ?」
「要らないよ、俺1人で充分だ」
余裕とも取れる零治の言葉に桐谷は眉を吊り上げるが、零治の顔は穏やかだった。
「………何故そんな顔をする?俺を殺す秘策でもあるのか?」
「殺す?………だよな、お前は結局ブレイブデュエルを何も分かってない。だからこそ勝てない」
そう言って零治は姿を変える。赤いラインの入った白銀の騎士。
「それは………!!」
「加藤桐谷、お前をそこまで追い詰めているものが俺には分からない。加奈の為に俺を殺す………それが何故加奈の為になるのかも分からない。分からない事だらけだ」
「お前が知る必要は無い」
「でも俺は知りたい。お前を追い詰めているものから救い、そして加奈を救い、誰もが皆笑ってブレイブデュエルを出来る様に………」
「それは………絶対に訪れない未来だ。どちらかが死にどちらかが生きる。それは決まった………」
「俺は頑固だし、俺の両親の意志を継いでこのゲームを作ってくれた開発者のど根性を舐めるな。相当しつこいし、簡単に挫ける物だと思うなよ桐谷!!」
パルチザンランチャーを発射し、最初に戦闘の口火を切った。
「………いいだろう。だったら俺が勝ち、俺の言ったことを証明してやる。そして今度こそ加奈をアイツから解放する!!」
桐谷は赤い装甲に包まれた姿で攻撃を防いだ。
『アルトアイゼン………』
「それがあの鎧の名前か?」
『ええ。………まさか互いに敵として向かう合う事になるんてね………』
アーベントが気になる事を呟いたが、聞いている余裕は無い。
「今度はこちらから行かせてもらう!!」
バーニアが火を噴き、一気に加速してこちらに近づいてくる。
「速いが………アーベントはその上を行く!!」
桐谷に背を向け、此方も動く。いくら突貫力があっても元のスピードではかなりの差がある。
「くっ………!!」
アルトアイゼンのステークは空を切り、再び桐谷と距離が出来た。
「Bモード!!」
振り返り、すかさず連続射撃の可能なBモードで桐谷を攻撃した。
「射撃武器か………!!」
だが桐谷は重い身体ながら横にステップしたり、回転したりと無駄な動きを省きつつ、攻撃を回避する。
『アーマーの熟練度は彼の方が上ね。アルトアイゼンはかなりクセがあるからあんな動きをさせるには相当の訓練が必要だと思うけど………これはかなりの強敵ね』
「前戦った時から分かってたさ!!だからって俺も引く気は無い!!!」
Bモードを引き続き連射し、桐谷に攻撃を続ける。
「………今!!Eモード!!」
銃筒を回転させ、銃弾を換装。Eモードは直射砲の砲撃、威力はBモードよりも落ち、連射も出来ないが、広範囲に攻撃出来るのでBモードよりは命中が見込める。
そして更にBモードで攻撃している内に、桐谷の回避パターンを把握し、タイミングを見計らって発射したのだ。
「何!?くっ………」
流石の桐谷もその攻撃は対応できず避けられなかった。
アルトアイゼンの腕を前で交差し防御する。
「よし、足を止めた!!」
Eモードが終わった後、すかさずBモードに変更し発射。
足を止めた今こそ大きなチャンスだ。
「ぐうっ!?」
怒涛の連続攻撃に桐谷は逃げることが出来ず、そのまま守りに入る。だがBモードはEモードとは違い威力がある。
1撃1撃受ける毎にハンマーで殴られた様な衝撃が桐谷を襲う。
「このおおおおおおお!!」
それでもバーニアを噴かし強引に前に向かう。
「これだけ受けても前から来るか………!!」
攻撃を受けているからこそ、桐谷はスピードに乗れず受ける度にブレーキをかけた様に止まりながらも向かってくる。
対して俺は射撃を撃ちながら後方へ下がっていく。一撃でも外せば一気に迫ってくるだろう。
『いっそ逃げたらどう?』
「2度も上手くいくとは思えないな……!!」
それにダメージも通っているのだ、これがずっと続くとは思えない。
「っ!!」
1発外してしまい更に距離が縮まってしまった。
(これは時間の問題か………)
連射しているため魔力消費も激しい。対して相手はダメージは蓄積されているだろうが魔力はほぼ消費していない。
このままでは俺の方が不利のまま相の得意な距離になってしまうだろう。
『アルトアイゼンの防御力侮ってたわね』
「いや、ここまでで充分削れている筈だ」
後少しなのだ。後少しで………
『!?マスター!!』
「やっちまった!!」
距離が縮まるという事は、こちらとしても狙いが定まりやすい。その筈だった………
「もらった!!」
だがまだアーベントを使い始めてそれほど経っていない俺にとっては関係ない。
徐々に迫るアルトアイゼンに焦って照準がブレてしまい、連続して砲撃を外してしまった。
それを見逃す桐谷では無い、一気に加速し、俺に迫って来る。
「一か八かだ!!」
ステークを構え、向かってくるアルトアイゼンにむしろこちらから突っ込んだ。
「なっ!?」
流石にこの行動は予想できなかった様だ。
しかしそれでも距離は相手の方が有利。
「舐めるな!!」
直ぐに向かってくる俺に合わせてステークで貫きにくる。
「だよな……今!!」
胸めがけて向かってくる杭の下をくぐる様に体を潜り込ませ、パルチザンランチャーを腹部にくっつけた。
「全弾、もってけ!!」
そこから零距離でBモードを連射した。
「ぐううっ…………!!」
流石に近距離からの砲撃には耐えきれないのか強固だった鎧が砕けていく。
「行ける!!」
『マスター!!』
アーベントに言われるが既に遅かった。
「スクエア、クレイモア………!!」
攻撃を受けながらも両肩のホルスターが開いていた。
「マジか!?」
あの攻撃を受ければとても耐えきれない。かといって今から逃げてもあの大量の魔力弾の雨から逃れられないだろう。
「だったら!!」
やる事は決まっていた。相手の攻撃前にアルトアイゼンを解除させてしまえば良い。
「いけえええええええ!!」
しかし俺の作戦は虚しく、クレイモアは発射され、魔力弾の雨をもろに喰らう。
「はああああああああああ!!」
それでも撃ち続ける。
「あああああああああああ!!」
絶叫と共に同時に攻撃が止んだ。いや、魔力弾も銃筒も消えたのだ。
「間に合った………?」
全弾喰らう前に何とか相手のアーマーを解除する事に成功した様だ。
その代わり、こちらもダメージとアーベントが使用不可になってしまったが………
「このっ………!!」
だが、一番厄介なアルトアイゼンを使用不可に出来たのは大きい。
「さあ、仕切り直しと行くか?」
ダメージもあり、苦しい筈なのだが、笑みが零れる。この戦いを楽しんでいた。
「何を笑っている………?」
「楽しいからに決まってるだろ?こんなにも熱い戦いをしてるんだ。お前はどうだ加藤桐谷?」
「楽しいだと………分かっているのか?これはキルモードによる殺し合い。俺もお前も!負ければ死ぬんだぞ!!」
「いいや、そうはいかないさ。さっきもいったがブレイブデュエルに携わったみんなの力を舐めるな」
そう言われ、桐谷は慌てて現在の状態を調べた。
「ダメージが軽い………?だが表示は………まさか!!」
そう、キルモードと表示はされているものの、実際はいつものブレイブデュエルと変わらない。相手に対策をさせず、対処される前に倒す。これが博士の考えた作戦。キルモードを防ぐことは出来るだろうが、相手も対策は考えている筈。
そう考えた結果だった。
「行くぞ焔!!」
『任せて!!』
刀を抜き、油断している桐谷に迫る。
「くっ、だが負けなければ………」
「そんな後ろ向きな気持ちで勝てると思うな!!砕氷刃!!」
氷を纏った刃が桐谷のブレードに当たる。
「ちっ!!」
受け止めて凍り始めたブレードに気が付き、零治を蹴飛ばし、一旦距離を取ろうとするが、零治は引かない。
「葬刃!!」
魔力を溜めず、即座に放つ葬刃。威力はかなり下がるが、桐谷に守らせる隙を作らず、斜めに斬り裂く。
「がっ!?」
「これで!!」
とどめと言わんばかりに刀を突き出す。
(ふざけるな!!負けるわけにはいかない。例え殺せなくてもせめて勝たなければ加奈は!!)
「!?」
零治は突き出した刀を下げ、咄嗟に後ろにステップした。その瞬間、零治の居た場所に魔力が込められた手で捕まえようとした桐谷の手が空を切った。
「加藤桐谷、入ったな………」
以前のもう1人の自分。そう表現した同じ様な状態の桐谷が目の前に居た。
『マスター………』
「大丈夫だ、前みたいにはならないさ。………」
そう言って目を瞑る。あの感覚は今までは自分の意志では出来なかったが、何となく感覚は掴んでいた。
(大丈夫、自分でも驚くほど落ち着いている、周りも見えている………)
「ふぅ………」
小さく息を吐く。目を開けると先ほどとは映る世界が違っている様に見える。
「アーベントはゾーンって言ってたっけ?まあいい………」
ホルダーの中に光るカードが見える。
「桐谷来いよ。前のようにはいかないぜ」
そう言って刀を鞘に仕舞って構えた………
「零治、何か雰囲気が………」
「零治お前………」
零治の持つ雰囲気、それは本気になったシグナムにも負けないほどの静かな威圧感を持っていた。
「これが零治の本気なのか………?」
黒崎は自然と拳を握りしめていた………
「流石に対策はしてきたか」
『ダミーの情報を流し、あたかも起動している様に見せかけるとはね………粋な真似をするねグランツ博士は。さてどうするんだい?』
映像の相手にそう言われ、男は隣で椅子に少女を見た。
「最早待てん。桐谷が駄目なら2人共一緒にあのブレイブデュエルの世界で死んでもらう」
『やはりやるつもりなんだね謙蔵………』
「何を今更………貴様には感謝している。安心しろ、秘密は喋らん。………もっとも邪魔をしなければの話だからな」
そう言って通信を切る。
「さあ、加奈。生まれ変わる時だ。あの忌々しい2人と、そしてあの男が残し、他のバカな科学者が作り出したこのゲームを地の底に落とす時が来た」
反応が無い加奈にそう言って、謙蔵は加奈の頭と同じくらいの大きさのメットをかぶせた。
「さあ、起動しろ暴食の蛇『ウロボロス』。全てを喰らい、狂わせ、そして加奈を生まれ変わらせろ。リライズアップ」
そして事態は一気に豹変する………
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