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魔法少女リリカルなのは ~黒衣の魔導剣士~

作者:月神
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sts 24 「地上本部襲撃」

 明朝、俺達も地上本部へと赴き警備を開始した。
 フェイトやはやて、シグナムといった隊長陣はなのはと同様に内部の警備に。俺はなのはが内部警備に移ってふたりになっていたスバルとギンガに合流し、ヴィータと残りのフォワード達とは別グループで警備に入っている。

「何ていうか新鮮な組み合わせですね」

 唐突にスバルがそう口にしたが、まあ彼女の気持ちも分からなくはない。こちらのメンバーとしては先に警備に着いていたスバルとギンガ、そこになのはの代わりとして合流した俺。そして、俺の相棒達であるファラとセイなのだから。

「スバル、今は警備中なんだから無駄口叩かないの」
「まあまあギンガちゃん、別に何か起きてるわけじゃないんだし。それにあんまり気を張り詰め過ぎたままだと、いざという時に動けなくなるよ。抜ける時は抜いておかなくちゃ。ね、セイ?」
「そうですね。抜き過ぎるのは良くないですが」

 ファラに返事をするとセイはすぐさま周囲へ意識を向け直す。そんなにセイにファラはむすっとしか顔を浮かべるが、つれない妹に思うところでもあるのだろう。
 六課に居る時も基本的にファラはフォワード達の訓練データのまとめとかやって、セイはデバイス関連の仕事をやってたからな。まったく顔を合わせないとか会話がないということはなかったけど、割とすれ違いの毎日とも言える。
 まあそれは今に始まったことではないのだが。六課に来る以前はファラはシュテル、セイはユーリの手伝いで離れている時も度々あったのだから。故にファラとしてはその部分も少しでも埋めたいのだろう。セイにもその気持ちはあるとは思うが……性格的に仕事中は仕事を優先してしまうだろう。

「ファラさん達はスバルに少し甘いと思います」
「そうかもしれないけど、みんながみんな厳しかったらスバルちゃんも参っちゃうだろうし。それに……なのはちゃんの教導を見てると甘やかしたくもなるよ」
「ファラ、あまりそのようなことを言うべきではありませんよ。彼女のメニューは実に無駄のない内容なのですから……まああなたの気持ちも分からなくはないですが」

 デバイス達にさえこのように言わせるなのははある意味教導官の中の教導官なのかもしれない。今の話が彼女の耳に入れば、彼女はファラ達に文句を言ったりするだろうが。
 もしくは……俺に笑ってない笑みを浮かべて詰め寄ってくるかもしれない。そうなったら実に面倒である。あいつは俺のことをいじわるだとか強引だとか言うが、俺に対しても似たような言動をしているのだからお互い様なのではないだろうか。

「ショウさん、こんな感じで警備して大丈夫でしょうか?」
「まあ周囲への警戒はちゃんと持ってるみたいだし、多少のことは目を瞑るさ。さすがに会話に夢中になったら止めるが」

 エリオやキャロの方は一緒に居るのがヴィータなだけに油断せずに警備に集中しろとか言われてるだろうが、こちらに居るスバルとギンガは年齢的にあれこれ言わなくても問題ないだろう。
 まあギンガはともかく、スバルはずっと堅苦しい空気にしておくと空回りするというか逆に何かやらかしそうというのもあるのだが。
 とはいえ、このようなことを口にしてスバルのやる気が下がるのも困る。六課の方で和やかに過ごしている時ならば笑いの種になるだろうが……なんだかんだで何も言われなくても周囲への警戒を強めるあたり心配することもあるまい。そのように思った直後、ヴィータからの念話が聞こえてきた。

〔それにしてもだ……いまいち分からねぇ。予言どおり事が起こるとして内部のクーデターって線は薄いんだろ?〕
〔うん、アコース査察官が調査してくれた範囲ではね〕
〔そうなると外部からのテロだ。ただそうすると目的は何だよ?〕
〔うーん……〕

 念話をしてきたヴィータと彼女に返事をしたなのは以外の声が聞こえないあたり、どうやら今繋がっているのは俺を含めて3人だけらしい。
 他の隊長陣も混ぜたほうが良い気もするが、ヴィータが個人的に気になっていることについて話したいだけとも取れる。会話をする中で必要なものが出てくれば報告する方向性で考えておこう。

〔犯人は例のレリック集めてる連中……スカリエッティ一味だっけか?〕
〔うん〕
〔奴らだとしたらさらに目的が分からねぇ。局を襲って何の得がある……〕

 確かにスカリエッティ一味のこれまでの動きはレリックの収集が主だった。今回の公開意見陳述会にレリックが関連しているならばまだ分かる。が、今回話し合われることはレリックに関連した事件のことではなく、以前から本局と地上本部で論争が起きていた兵器アインヘリアルについてだ。

〔その疑問は最もだが……スカリエッティは兵器開発者でもある。自分の兵器の威力証明をしたいと思う可能性はゼロじゃない〕
〔確かに……管理局の本部を壊滅させられる兵器や戦力を用意できると証明できれば、欲しがる人はいっぱいいるだろうし〕
〔でもよ、威力証明なら証明できる場所はいくらでもある。わざわざここを狙うのはリスクが高すぎるだろ〕

 そう……スカリエッティは無策で事を進めるようなタイプではない。もしもそのようなタイプであるならば、奴はすでに身柄を拘束されているはずだ。わざわざここを狙う理由……あえて強大な戦力のある場所を狙うことで威力証明をしたいとは考えにくいだけに考えが読めない。

〔……まあ正直考えていても埒が明かない。俺達には奴らの情報が不足し過ぎてる〕
〔そうだね。今は私達に出来ることは信頼できる上司の命令をきちんと全うすること。余計なことか考えないで動こう〕
〔そうだな〕

 ヴィータの返事を機に念話は終了する。
 そのあとは俺達はそれぞれの担当になっている警備区域を巡回。何も起こることはなく時間は過ぎていき、気が付けば公開意見陳述会が開始されてから4時間ほどが経過していた。青かった空も今では赤く染まりつつある。俺を含めた外部警備担当の六課メンバーは集合し、同じ場所を警備していた。

「開始から4時間ちょっと……中の方もそろそろ終わりね」
「最後まで気を抜かずにしっかりやろう!」

 スバルの言葉にエリオにキャロ、フリードは元気に返事をする。その様子を俺は少し離れたところからヴィータ達と見ているわけだが、フォワード達に緩みはないようなのでこのまま行けば無事に警備は終わるだろう。

「そういえば……さっきからギンガの姿が見えないですけど、どこに行ったんですか?」
「ギンガなら北エントランスに報告に行ってるはずだ」
「まああいつなら心配いらねぇだろ。スバルだったなら話は別だけどな」
「ヴィータ副隊長、何もこっちを見ながら言うことないじゃないですか。確かにお姉ちゃんは私よりもしっかりしてますけど、私だって報告くらいできますよ!」
「うるせぇ、最後まで気を抜かずにやるんだろうが。しゃべってないで警備しやがれ」

 何とも切断力の高い言葉である。普段はスバルに厳しいティアナでさえ、落ち込んだ素振りを見せるスバルの肩にそっと手を置いている。スターズは何とも厳しい隊長達を持ったものだ。まあ厳しいのはそれだけ愛情があるわけだが。

「んだよ、その目は?」
「別に。お前の副隊長らしさを感じてただけだ」
「どういう意味だそれ。もしかして……あたしの見た目的に普段は副隊長らしくねぇって言いてぇのか?」
「誰もそんなことは言ってないだろ。今目の前に居るのが10年くらい前のお前だったら話は違ってくるけどな」
「うっせぇ、いつまでも子ども扱いするんじゃねぇよ」

 お前よりあたしの方が生きてる時間は長いっつうの、とでも言いたげな視線を向けられるが、フォワード達がいないときは割りかし子供っぽい言動をしている気がするので説得力に欠けてしまう。
 そもそも、はやてと長い付き合うのある俺からすれば、ヴィータははやてと同じように妹のような存在だ。それは今も昔も変わらない。子ども扱いするつもりはないが、可愛がりたい気持ちがあるのは仕方がないことだろう。
 茜色に染まった空を見上げながら一瞬ばかりの精神的休憩を取った時、まるでそこを狙い澄ましたかのようにこの場に流れる空気は急激に変化する。
 距離はあるが確実に爆発が起きていると断定できる音が響いてきたのだ。
 それに続いて、警備に着いていた局員達の悲鳴に等しい声が聞こえてくる。どうやらガシェットが突如現れたらしい。おそらく前と同じように召喚魔法で転移されてきたのだろう。
 これだけでも局員達の精神を揺さぶるには十分だと思われるが、敵は更なる一手に打って出る。地上本部に目掛けて砲撃を放ってきたのだ。さすがに地上本部だけあって1回の砲撃で崩壊するような柔な造りにはなっていないが、本部だけあって相応の局員が働いている。それだけに死傷者は間違いなく出ているはずだ。

「――っ、来やがったか!」
「内部に居るはやてちゃん達と連絡が取れないです!」
「落ち着け、連絡が取れないのはおそらく大量のガシェットによって高濃度のAMFが発生しているからだ」

 公開意見陳述会は本部でも安全性の高い場所で行われている。先ほどの攻撃ではやて達に被害が出ているとは考えにくい。
 が、内部警備に着いていたはやて達はデバイスを俺達に預けている。デバイスがなくてもある程度の魔法は使用できる人物達ではあるが、AMFで本部が覆われていることを考えると壁を破壊したりできるほどの威力は出すことが出来ないだろう。
 また局員達に指示が何も飛んでこないことを考えると、通信系がやられている可能性が高い。となると独自で判断して行動する他にないだろう。ならば……

「ここに居ても意味がない。まずは本部に向かうぞ」
「ああ、爆発の規模からしてかなり広範囲で色々と起きてやがる。なのは達にデバイスを渡して戦力を整えねぇと対応が追い付かねぇ。フォワード、急いで向かうぞ!」
「「「「――はい!」」」」

 俺にヴィータ、リインにセイはそれぞれバリアジャケットを纏う。フォワード達もそれに一瞬遅れる形ではあるが、それぞれデバイスを起動させてバリアジャケットを纏った。臆している様子はないので十分に動くことは可能だろう。
 本部の方へ向かう中、地面に倒れている局員達を度々見かける。ただ外傷らしい外傷は確認できない。どうやら気を失っているだけのようだ。

「解析してみたところ、どうやら皆さんはガスによってやられたみたいです。ですがガスは致死性じゃなくて麻痺性、これならバリアジャケットに術式を施せば防げます。今すぐ皆さんに術式を施します」
「頼んだ。……しかし、敵は何を考えてやがんだ。本部の無力化が狙いか?」
「それだけが狙いとは考えにくい。おそらく他にも目的があるはずだ」

 それが何なのかまでは現状では予想が付かない。いや、予想できることはあるが決定的な理由に欠けてしまっているというべきか。それだけに迂闊に動くわけにもいかず、また様々な状況に対応するための人材が必要になる。やはりまずはなのは達にデバイスを渡さなければ……。

「ちっ……近づいてんのに内部との通信妨害はひでぇままだ。ロングアーチ、そっちで何か分かるか?」
『外の攻撃は止まっていますが、中の様子は不明です! ……本部に向かって航空戦力?』
『速い!? ランク……推定オーバーS!』

 オーバーSランクの魔導師……この状況で許可のない飛行で本部に向かっているあたり、敵勢力と考えるのが普通だろう。故に俺達はそれの対応をしなければならない。ここで問題になるのは誰がその対応に当たるかだ。
 まずフォワード達には無理だ。空中戦に不向きというのも理由ではあるが、リミッターの掛かった状態のなのは達にさえ勝つことができないこいつらでは、オーバーSの相手をさせても一瞬にして蹴散らされるだけだろう。順当なのは俺かヴィータか……

「そっちはあたしとリインが上がる」
「大丈夫か?」
「伊達にオーバーSの近くで過ごしてきてねぇよ。あたし達に任せな」

 その代わりお前はちゃんとフォワード達の面倒となのは達にデバイスを届けろよ、と言わんばかりにヴィータははやてとシグナムから預かっていたデバイスをこちらに渡してきた。
 なのはのデバイスであるレイジングハートはスバルが預かっていると聞いているし、フェイトのデバイスであるバルディッシュは俺が預かっている。隊長陣に渡すべきデバイスはこれで揃ったことになる。

「お前ら、無茶だけはするんじゃねぇぞ。リイン、ユニゾン行くぞ!」
「はい!」

 ヴィータとリインは高く飛翔しながらユニゾンし、空の彼方へ向かった。
 相手がオーバーSということを考えると不安を覚えてしまうが、ヴィータの実力も確かなものだ。取得しているランクは空戦AAA+であるが、オーバーSであるなのは達とも十分に戦える力を持っている。今はただ彼女を信じて成すべきことを成すのが最善だろう。

「俺達も急いで向かうぞ。気を抜くな!」
「「「「――はい!」」」」


 
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