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油断したら

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2部分:第二章


第二章

「やっぱりな。楽しまないとな」
「そうよね。素朴で空気もよくて」
 マーガレットはにこにことしながら話す。
「おまけに食べ物も美味しいしね」
「人情もあるってか?」
「ええ、それもね」
 つまり何処までも田舎の素朴さがあるということだった。
「いい感じよね」
「羊や山羊はどうだい?」
 オスカーは屈託のない顔で彼女に尋ねてきた。彼はマーガレットと同じく牧草を掻き分けていた。その動きは彼女よりも素早く力強い。手馴れたものがそこにあった。
「あの連中は気に入ってもらえたか?」
「ええ、あの子達もね」
 当然ながら羊や山羊達も気に入らない筈がなかった。
「皆いい子よね」
「そうか、いい子達かい」
「素直で素朴で」
 満面の笑顔での言葉である。
「おまけに素直でね。いい子達よね」
「だろ?ただし気をつけなよ」
 しかしオスカーはここでふと言葉を変えてきたのだった。
「あれで結構悪戯好きだからな」
「羊や山羊が悪戯するの?」
「するんだよ、これが」
 オスカーは話すのだった。
「それもタチの悪いことをな。するからな」
「羊や山羊が悪戯するって」
 それを聞いても信じることのできないマーガレットだった。
「嘘でしょ」
「嘘じゃないんだよ、これが」
 しかしオスカーは牧草を掻き分け続けながら話すのだった。
「かなりタチが悪いんだよ、本当に」
「あんなにいい子達が」
「素直で優しい子供でも悪戯をするものさ」
 オスカーの言葉は続く。
「思いついたらね」
「何かの間違いでしょ」
 そう言われても信じないマーガレットだった。
「そんなことするわけないじゃない、あの子達が」
「信じないのならいいさ」
 オスカーはそんな彼女にまた言ってきた。
「まあ一つ忠告はしておくぜ」
「忠告って?」
「後ろには気をつけるんだ」
 こうマーガレットに告げるのだった。
「後ろにはな。背中にも注意しておくんだぜ」
「背中?」
「そうさ。いきなり来るからな」
 何故か少し楽しそうに話すオスカーだった。
「注意するんだぜ。充分にな」
「何か信じられないけれど一応覚えておくわ」
 とは言ってもそんな筈がないと思っているマーガレットだった。その時はそのまま牧草を掻き分けていた。こうしたことを続ける彼女にとっては楽しい日々が続きこの日もであった。マーガレットは羊達を連れて彼等を放牧していた。オスカーも一緒だ。
「なあマーガレット」
「何?」
「羊達に水を飲ませないか?」
 広い草原で羊達を放牧させながら彼女に言ってきたのだった。今羊達は広く拡がりそれぞれ草を食べている。周りにはコリー達がいて見張りをしている。
「水を。どうだい?」
「そうね」
 マーガレットも彼の言葉に応えて頷く。
「いい頃合いね。じゃあお池に行って」
「飲ませようぜ」
 こうして羊達を池にやっていく。マーガレットはそんな羊達を見守っていた。しかしここで羊達のうちの一匹がふとオスカーの後ろに位置したのだった。
 
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