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迷信

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2部分:第二章


第二章

「それって」
「おかしいかい?」
「何で歯磨き粉が身体に悪いのよ」
 彼女はまた言った。
「確かに研磨剤だけれど消毒もしてくれるし」
「だからいいっていうのかい?」
「そうよ。そんなおかしな話聞いたことないわよ」
 こう話すのだった。
「そんなのってね」
「そうなのか?」
「おかしな話ね。止めた方がいいじゃないの?」
 怪訝な顔で夫に告げた。
「それは」
「そうかな。おかしいかな」
「私はそう思うわ」
 また夫に述べた。
「それはね」
「まあ色々と細かく書いてあったしおかしな話じゃないだろ」
 その雑誌には学者が出て来て話をしていた。学者という権威を無意識のうちに信じてだ。彼はそのうえで決めたのである。
「だからやってみるよ」
「そうするのね」
「うん、だからね」
 また話す彼だった。
「やってみるよ」
「何ともなければいいけれどね」
 典子はかなり懐疑的な顔であった。しかし秀吉はそれを続けた。しかしであった。
 まずはだ。バイトの女子高生からこう言われた。
「チーフ最近お口臭いです」
「ちゃんと歯を磨いてますか?」
「磨いてるよ」
 すぐにこう答えた。客商売なのでそれは気をつけている。
「一日二回ね」
「それでも臭いですよ」
「ええ、本当に」
「身体が悪いとか?」
「別にそれは」
 それはなかった。すぐに否定できた。
「ないけれど」
「嘘ですよ、だって最近物凄く息臭いですから」
「何か急に」
「本当にね」
「そうかな」
 言われてもだ。首を傾げるばかりだった。
「そんなに臭いかな」
「はい、何かが腐ったみたいな」
「物凄く酷いですよ」
「身体どこか悪いとしか」
「そんなのはないけれど」
 こう返す彼だった。
「別にね」
「じゃあ歯を磨いてないとか?」
「うわ、それ最悪ですよ」
 実に女子高生らしい言葉であった。
「そんなのって」
「そうよね。有り得ないし」
「歯は磨いてますよね」
「当たり前じゃないか」
 何と言っているんだといった口調だった。
「そんなの。ちゃんとしないと健康にも悪いよ」
「はい、歯が命ですから」
「そうそう」
「何気に古い言葉知ってるね」
 秀吉は二人が昔のCMのことを話に出してきたので思わずこう言った。
「君達が生まれた頃のCMだったんじゃ」
「ああ、そうでしたっけ」
「何か覚えてるんですよ」
「覚えてるんだ」
「とにかく。お口凄く臭いですから」
「奥さんにも嫌われますよ」
 こんなことを言われた。そしてであった。
 
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