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手長足長

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第四章

「わしにも考えがあるぞ」
「わし等をやっつけてか」
「村に来るというのか」
「気が向けばじゃがな」
 それでもというのです。
「御主達をやっつけてな」
「ではじゃ」
「わし等が御主を退ける」
「今ここでな」
「そうするぞ」
 どうしてもとです、二人で熊に言います。
「それでもよいか」
「力づくでもな」
「ふん、御主達で勝てるのか」
 熊も負けていません、二人を睨み返して言い返しました。
「わしに」
「そうしてみせるわ」
「二人でな」
「ならやってみろ、わしは強いぞ」
 熊はその巨大な身体と爪、それに牙を誇示してもきました。
「力づくなら相手になるわ」
「そこまで言うのなら仕方ない」
「やってやるわ」
 こう言ってでした、そのうえで。
 二人は熊との戦いに入りました、熊はその巨大な身体で二人に向かいますが。
 まずは足長がです、そのの脛を前から蹴りました、するとです。 
 脛を蹴られて思いきり痛かった熊はです、思わず動きを止めました。その熊の脳天にです。
 今度は手長が拳を浴びせました、今度の一撃も痛くて。
 熊は完全に動きを止めてしまいました、そのそれぞれの一撃を浴びせてからです。
 そしてです、二人は熊に言いました。
「まだやるか?」
「何ならまだ相手になるぞ」
「さあ、どうする」
「やるのか」
「いや、参った」 
 脛と脳天をやられた熊はです、痛みに必死に耐えながら二人に答えました。
「わしが攻める前に攻めて来るなんてな」
「わし等の手脚の長さを甘く見るな」
「こんなことは普通だ」
「わし等にとってはな」
「これ位は出来るわ」
「二人でそこまで手足が長いと」
 それこそと言う熊でした。
「どうしようもないわ」
「若し村に来るのならな」
「こうしてわし等が相手になってやる」
「それが嫌なら来るな」
「わかったな」
「ああ、わかった」
 熊もこう応えてでした、そのうえで。
 ほうほうの体で逃げていきました、こうして村は守られました。
 村人達は二人が熊を退けてくれたことに心から感謝しました、ですが二人は村の人達にここでもこう言うのでした。
「いや、わし等一人一人だとな」
「あの熊にも勝てなかった」
「肩車で大きくなってな」
「それぞれ手足が同時に使えたからだ」
「だからあの熊にも勝てたんだ」
「そうだったからな」
 それでというのです。
「わし等は大したことはないさ」
「二人でないとちっぽけなものだからな」
「そう言うんだな」
「御前さん達はやっぱり二人で力を出すのか」
「万全に」
「そうなんだな」
 村の人達はこの時にでした。
 ようやくそのことを理解してでです、あらためて言いました。
「それじゃあな」
「これからも二人で頑張ってくれよ」
「二人でな」
「そうするさ」
「これからもな」
 二人もこう答えるのでした。そして実際にです。
 二人はいつも一緒に何でもしていくのでした、それこそずっと。二人が一緒に極楽に行くまでそして極楽でも一緒にいるのでした。何時までも何時までも。


手長足長   完


                       2015・10・25 
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