手長足長
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第二章
「一人だけだと大したことはないんだ」
「手が長い、足が長いだけで」
「それだけでな」
「何でもないんだよ」
「そういうものか」
「御前さん達自身が言うには」
村人達は二人の言葉を聞いて考える顔で言いました。
「それぞれ手足が長いだけ」
「それだけか」
「じゃあ二人になれば」
「その時にか」
「そうだ、本当にな」
「色々なことが出来るんだよ」
まさにその時にというのです。
「わし等は」
「そういうものなんだよ」
「だからいつも一緒にいてな」
「力を合わせて何でもやっているんだ」
それこそというのです。
「魚や果物を採ることも」
「畑仕事だってな」
「いつもなんだよ」
「二人でしてるんだよ」
そしてです、その具体的なやり方も言うのでした。
「わしが足長に背負われて」
「わしが手長を背負って」
「そうしてな」
「二人で何でもしているんだ」
「ああ、そうしてるな確かに」
「それでいつも凄く大きく見えるな」
「ひょろ長い巨人だな」
二人が一緒になったその姿はというのです。
「まさにな」
「そんな感じになってるな」
「そう、二人でな」
「わし等は巨人なんだよ」
「それこそ一人だと限られてるさ」
「ただ手か足が長いだけだよ」
そうしたことに過ぎないというのです、そして二人はこの時からもでした。
二人で何でも一緒にやっていきました、畑仕事も漁も狩りも果物を採ることもです。
全部二人で、でした。その中で。
村人達が慌ただしくなりました、村の近くに熊が出て来たからです。
「大層大きな熊らしいな」
「ああ、木よりずっと大きいぞ」
「あんな熊は見たことがない」
「鬼熊か」
熊が妖怪になったものだというのです。
「とにかく大きいぞ」
「しかもえらく凶暴じゃ」
「目についた生きものは何でも喰らおうとする」
「あんな熊が村に来たら大変じゃぞ」
「蓄えも牛も馬も喰われる」
「わし等もじゃ」
襲われて食べられてしまうというのです。
村はそのとても大きな熊のことで気が気でありませんでした、ですが。
手長と足長がです、村の人達に言いました。
「じゃあわし等がな」
「その熊を退治してやる」
「この村には近寄せぬ」
「何ならやっつけてやるぞ」
こう言うのでした、ですが。
村の人達は二人の言葉を聞いてもです、こう言うのでした。
「いや、あの熊はな」
「あまりにも大きいぞ」
「どんな木よりも大きいんだぞ」
「だから御前さん達でもな」
「相手にならん」
「無理じゃ、無理じゃ」
二人を止めようとします、ですが。
手長も足長もです、村の皆に笑って言いました。
「いやいや、わし等が揃ったらな」
「その熊でも何とかなる」
「むしろ何とかしてみせる」
「だから安心してくれ」
こう皆に言います。
「わし等の力でな」
「そうするからな」
「皆は待っていてくれ」
「わし等が熊をどうにかするのをな」
「そう言うのか」
「では本当にか」
「熊を何とかしてくれるのか」
村人達は首を傾げさせながら二人に言葉を返しました。
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