英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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外伝~夕暮れの惨劇~後篇
レン対特務兵達。一人のレンに対して数が圧倒的に勝る特務兵達の優勢かと思われたが、実際はその逆だった。幼いながらもプリネ達のように賊の討伐軍やブレア―ド迷宮探索軍に参加し、兵達に見せた強さは強者揃いのメンフィル兵士達も畏怖を持つ強さで、その強さで特務兵達を圧倒していた。
~ロレント郊外・エリーズ街道・夕方~
「ウフフフフフフフ!!」
「「「「グワァッ!?」」」」
同時に襲いかかって来た特務兵達をレンは大鎌を振り回して、周囲の敵を攻撃するクラフト――ブラッドサークルを放って、特務兵達を再度吹き飛ばした。
「クッ……これならどうだっ!」
「「喰らえっ!」」
接近戦では敵わないと感じた特務兵の一人が銃でレンを攻撃した。また、他の特務兵達も仲間に続くように銃でレンを攻撃した。
「無駄よ。」
しかしレンは武器を持っていない方の片手から簡易結界を作り出して、襲いかかる銃弾を防いだ。
「クッ……行けっ!」
「「「「オン!!」」」」
レンの強さに顔を歪めた隊長は軍用犬である狼の魔獣にレンを襲うよう、指示した。指示された魔獣達はレンに襲いかかろうとしたが
「凍てつけ!!凍結!!」
「「「「………!?」」」」
レンの放った冷却魔術が魔獣達の周囲に吹雪が発生して、吹雪がやむと魔獣達は氷漬けにされていた。
「大地の刃よ、我が敵を貫け!岩槍!!」
「「「「ガッ……!?」」」」
レンはさらに地の魔術を続けて放った!レンが放った魔術は氷漬けにされている魔獣達の足元から魔力によってできた岩の槍が何本も生えて来て、魔獣達を串刺しにした!
「燃え尽きなさい!熱風!!」
「「「「ガァァァァァ!!…………」」」」
そして止めに放ったレンの火炎魔術によって、魔獣達は炎の竜巻の中で断末魔を上げながら、消滅した。
「バカなっ!?」
「そ、そんな………軍用犬達があんなにあっさりやられるなんて………!」
自慢の軍用犬達が子供であるレン一人に殺された事に隊長は信じられない表情をし、特務兵達はうろたえた。
「ウフフ………こんな弱い犬を軍用犬にしているなんて、貴方達の上司も大した事ないわね。」
「こ、小娘がっ!!ぬくぬくと育って来た貴様ごときが大佐を愚弄するなーー!」
レンの挑発に隊長は顔を真っ赤にして、怒った。
「大佐……ねえ?リベールで大佐で思い当たるとしたら、リシャール大佐しか思い浮かばないわねえ?」
「!!」
隊長の言葉から特務兵達の上司を推測したレンを見て、隊長はうっかり口を滑らした事に気付き、顔を青褪めさせた。
「グッ………そこまで知られたからにはただですむと思うな!!我等どころか大佐まで愚弄した事……後悔するがいい!総員、死力を尽くしてあの小娘を撃破、そして確保しろっ!」
「イエス、サー!!」
隊長の号令を聞き、特務兵達は殺気立ってそれぞれの武器を構えた!
「「「喰らえっ!」」」
銃を持った特務兵達はレンの足を狙って撃とうとしたが
「させないわ!………虚構の鎌撃!!」
「「「グワッ!?」」」
レンが放った衝撃波で攻撃動作を妨害するクラフト――虚構の鎌撃を受けて、銃を取り落とした。
「「「クッ………このっ!」」」
仲間の攻撃が成功しなかった事に顔を歪めた近距離型の特務兵達は攻撃を仕掛けたが
「うふふ……死んじゃえ!玄武の鎌撃!!」
「「「「「ギャアッ!?」」」」」
レンが放った地を這う斬撃の衝撃波のクラフト――玄武の鎌撃を喰らい、攻撃を受けた部分から大量の血が噴出し、地面に倒れた。
「クッ………小娘が……!」
「調子に乗るなよ………!」
「我等に逆らった事、後悔させてやる!」
「闇よ、我が仇名す者達に絶望を!……黒の闇界!!」
そしてレンは銃を構え直した特務兵達に暗黒魔術を放った!
「「「ギャァァァッ!?」」」
魔術に命中した特務兵達は悲鳴をあげて、地面に倒れた。
「落ちよ!……落雷!!」
さらにレンは雷を落とす電撃魔術を地面に倒れている特務兵達に放った!
「「「ガァァァァァッ!?」」」
地面で呻いていた特務兵達は雷に直撃し、悲鳴を上げた。
「ウフフ……消えちゃえっ!」
そしてレンは止めに自分の指先に物質を消滅させるほどの光をともらせて放つ純粋魔術――死線を雷によって黒焦げになっている特務兵達に放った!
「「「ウギャアアアアアッ……………」」」
身体中が麻痺して黒焦げになっている特務兵達は避ける事もできず、レンの魔術によって鎧は焼けこげさせて、絶命した。
「そ、そんな………!」
仲間の絶命を見て、血を流して倒れている特務兵の一人が信じられない表情で驚き、やがてレンを睨んだ。
「貴様ーーー!よくも我等が同士を!」
「ウフフ……すぐにお仲間の所に送ってあげるわ♪裁きの光よ、罪人に光の罰を!……裁きの十字架!!」
特務兵の叫びをレンは凶悪な笑顔で答えた後、神聖魔術を放った!
「「「「「なっ………!?」」」」」
レンの神聖魔術によって特務兵達は突如異空間より現れた光の十字架にそれぞれ貼り付けられた!そして十字架は光を走らせた後、爆発を起こした!
「「「「「グワァァァァッ!?」」」」」
「うふふ、逃げられないんだから!」
光の爆発によって特務兵達は断末魔を上げた。そしてそこに走りながら大鎌を構えたレンが落ちてくる特務兵達とすれ違う瞬間、死神が鎌を振るがごとく大鎌を震った!その技は敵陣を駆け抜け、すれ違う命を摘み取る”殲滅天使”の処刑技!その名は……!
「そ~れっ!レ・ラナンデス!!」
「「「「「ガッ!!…………………」」」」」
レンのSクラフト――レ・ラナンデスによって特務兵達は身体を2つに分かれさせられ、絶命した!
「あ、ああっ…………!」
一方レンの魔術やクラフトを受けてなく、唯一無事だった隊長は恐怖でその場から動けなかった。
「さて……と。後は貴方を殺せば、殲滅完了ね♪イリーナお姉さんも心配しているだろうし、さっさと済ませてレンが無事だった事を知らせてあげないとね♪」
「ば、化け物が……!貴様は人間ではない!悪魔だっ!」
凶悪な笑みを浮かべて自分を見るレンに隊長は叫んだ。
「失礼な人ね。レンはお姫様なんだから民には優しいわよ?この力は祖国メンフィルと民を苦しめる悪い人達をやっつけるためにしか使っていないんだから。……ま、軍人の貴方には関係ない話だけどね♪」
「ク、クソーーー!リベールに、大佐の未来に永遠の栄光あれっ!」
そして隊長は自暴自棄になって、懐から爆弾を取り出して自決しようとしたが
「うふふ……そうはさせないわ!」
「ギャアッ!?」
レンは持っている大鎌を放擲するクラフト――カラミティスロウで爆弾を持っている手ごと地面に落とした。そして放擲された大鎌はブーメランのように戻って来て、レンの手に戻った。
「ウギャアアアッ!?手が、手が……!」
片手がなくなった隊長はもう片方の片手でなくなった部分から飛び出てくる大量の血を抑えて、悲鳴をあげた。
「うふふ……冥途の土産にレンが開発した魔術の最初の体験者としてその身に味わえる事……光栄に思いなさい!」
そしてレンは自分自身で開発した大魔術の詠唱を始めた!
「炎よ!氷よ!雷よ!大地よ!光よ!闇よ!今ここに全て具現せよ!」
レンが詠唱を終えると、レンの背後の空間が歪み、炎の玉、氷の剣、雷、岩の槍、光の矢、漆黒の霧がそれぞれ無数に現れた!
「ヒ、ヒィィィィッ!!??」
自分に向けられるさまざまな自然現象や武器の形をした属性を見て、隊長は痛みも忘れて、レンに背中を向けて逃げようとしたが
「さあ!お茶会の始まりよ!…………虹のお茶会(レインボー・パーティー)!!」
時既に遅し、レンは隊長に向かって大魔術を放った!炎の玉や雷は隊長の身体を焼き尽くし、氷の剣や岩の槍、光の矢はそれぞれ身体の到るところを貫き、そして漆黒の霧は地獄の苦痛を与えた!
「ギャァァァ!?グフッ!?ウギャァァァァァッ!?」
レンの魔術によるSクラフト――レインボー・パーティーをその身に受けた隊長は大量の血を流し、そして到るところを火傷しながら、断末魔を上げた!
「ふふ……これで終わりよっ!」
パチン!
「アアアアア!………………」
そしてレンは指を鳴らした!すると純粋属性の爆発が隊長の中心で起こり、また近くに落ちていた爆弾も誘爆し、隊長の断末魔をも掻き消して辺りを響き渡らす轟音を上げた!そして爆発の煙が晴れると隊長がいた場所はクレーターとなっており、何も残っていなかった。
「ウフフ……殲滅完了ね♪みなさん、御機嫌よう♪」
特務兵の全滅を確認したレンは大鎌を異空間に仕舞って、淑女の動作で勝利を宣言した。
「…………どうやら俺達の手は必要なかったようだな。」
「お見事です、レン様。マーシルンの名に恥じない素晴らしい戦いでしたわ。」
そこに一部隊を率いたリウイとファーミシルスがレンに近付いて来た。
「パパ!ファーミシルスお姉さんも!イリーナお姉さん、無事に知らせれたようね!」
リウイ達を見たレンは笑顔で答えた。
「ああ。……お前を残して、自分だけ逃げれてしまった事をずいぶん気にしていたようだ。早く大使館に帰って、無事な姿を見せて安心させるといい。……ここの処理は俺達が済ませておく。」
「はーい!………あ、そうだ!」
リウイに答えたレンは大使館に帰ろうとしたが、立ち止まってリウイを見た。
「イリーナお姉さん、いつになったらイリーナママになるの?」
「………………どういう意味だ?」
レンの言葉を聞いたリウイは驚いたが表情に出さず、レンの真意を尋ねた。
「え?だってイリーナお姉さんがパパ達が探していた”イリーナ様”なんでしょう?レン、早く弟か妹が欲しいもの!」
「…………今のイリーナは俺達が求めるイリーナではない。だから今は現状維持だ。」
「ふ~ん……大人って色々と難しいのね。ま、いいわ!イリーナお姉さんがイリーナママになる日を楽しみに待っているね!」
「…………………」
笑顔で大使館に帰って行くレンをリウイは黙って見ていた。そしてリウイは兵士達に特務兵達の遺体の処理や戦いによって荒れた街道の整備を指示した。
「それにしてもまさか、レン様がイリーナ殿の正体に気付いているとは思いませんでしたね……」
兵士達が作業をしている所を見守っているファーミシルスは自分と同じく見守っている主君に言った。
「………まあ、俺達の真の目的を知り、イリーナの肖像画を見たら大体の察しはつくだろうからな。レンは知っていても問題はあるまい。」
「ハッ。………話は変わりますがレン様には驚かされますね。全属性の魔術を扱い、そして自分だけの魔術を完成させるとは………それにあの年齢で戦場に出ても、動じない優秀な戦士の上、軍略も中々のものを考える方になったのですから。……フフ、ルース以来の教えがいのある人物ですわ。レン様が人間でなかったら、”大将軍”の後継者として鍛えていたかもしれませんわ。」
「そうだな。……………そういえば、確かユイドラ領主にリフィアが依頼した武器は届いていたな?」
ファーミシルスの言葉に頷いたリウイは少しの間考えた後、ファーミシルスに尋ねた。
「ハッ。確かリフィア様が件の遊撃士達が正遊撃士になった際に祝い代わりに贈る予定だった棒と双剣ですね。昨日届きました。………件の武器を見させて頂きましたが、リフィア様が送られた莫大な依頼料に見合う以上の素晴らしい武器です。それがどうかしましたか?」
「……先ほどリフィアから連絡があってな。できれば、今日か明日に件の遊撃士達に渡してほしいそうだ。」
「…………なるほど。それらが必要になるほど、件の遊撃士達にとって強大な相手と思い、リフィア様はそう判断されたのですね。」
リフィアの突然の心変わりをリウイから聞いたファーミシルスは現在のリベールの状況を考えて、察しがついた。
「それで、できればお前に例の武器を渡す役目をしてほしいのだが。」
「私に……ですか?」
リウイの頼みにファーミシルスは驚いた。
「ああ。現在の状況では正攻法では届けられんからな。………届けた後はすぐに帰って来なくてもいいぞ。最近は大した戦がないから、腕がなまっているだろうしな。」
「なるほど。現在の王都は厳戒態勢に入って、正攻法では届けられませんからね。……フフ、届けた後はお言葉に甘えて私の判断で本当に王都に留まってもよろしいのでしょうか?」
リウイの遠回しの言い方に特務兵達と戦って来て良い事を理解したファーミシルスは不敵な笑みを浮かべた。
「構わん。力を貸した所で得はあっても、損はあるまい。……本来なら契約を破った報いとして、軍を差し向けてもいいぐらいなのだからな。」
「ハッ。では明日にでも出発させて頂きます。」
その後リウイ達は兵士達に混じって、戦闘後の処理をした後、何事もなかったかのように大使館に帰還した………………
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