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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第74話

一方ミント達はティータを守りながら、エステル達が向かった紅蓮の塔についた。



~紅蓮の塔~



「2人とも、ここが『紅蓮の塔』だよ。」

「あれ?ミント、この建物に似たような形をしている建物を見た事があるよ?」

「2人は確かルーアンに住んでいたんだよね?多分『紺碧の塔』だと思うよ。グランセル以外のリベールの都市の周辺でこの『紅蓮の塔』みたいな建物があるから。」

「ふわぁ~……こんな大きな建物がルーアンやツァイス以外でもあるんだ……」

ティータの説明を聞きながら、ミントは『紅蓮の塔』を見上げて呟いた。

「!2人とも気を付けて!何か来るよ!」

「!!」

「ふ、ふええ~!?」

敵の気配を感じて鞘から刀を抜いて警告したツーヤの言葉にミントは剣を構えて、いつでも戦闘に入れるようにし、ティータは慌てながらも導力砲を構えた。そして森の奥からトラッド平原でドロシーを襲おうとした狼型の魔獣が唸りをあげながら現れた。

「「「グルルル…………」」」

「あ!この魔獣達、ドロシーさんを襲った魔獣だよ!?」

「ミントちゃんも戦った事があるんだ……あたしもフィニリィさんを助けるために戦ったよ。」

見覚えのある魔獣を見て、ミントは声をあげ、それを聞いたツーヤも頷いた。

「お祖父ちゃんを助けるのを邪魔しないで!……ええい!」

「「「ギャン!?」」」

ティータは導力砲から強力な煙幕弾で攻撃するクラフト――スモークカノンを放った。クラフトによって魔獣達は傷を負うと同時に視界が見えなくなり、うろたえた。

「ツーヤちゃん!」

「うん!」

隙だらけの魔獣達を一気に倒すためにミントはツーヤに声をかけ、ツーヤと同時に攻撃を仕掛けた!

「やぁっ!」

「はっ!そこっ!」

「貫いちゃえ!……アイスニードル!」

「ガッ!?」

ミントが剣で斬りつけた後、ツーヤが刀で素早く2回斬りるクラフト――飛翔剣舞を放った後、ミントは足元から氷を出して敵を貫通させる水の魔術――アイスニードルで一匹に止めを刺した。

「えいっ!」

「「オン!?」」

そしてティータは導力砲で残った2匹を同時に攻撃した。

「当ったれ~……!ストーンフォール!」

そこにすかさず、ミントは魔術で攻撃し

「行きます……ハァァァッ!」

「「ギャン!?」」

ツーヤは魔獣達の中心に飛び込み、刀で回転斬りをして攻撃するクラフト――円舞で止めを刺した。



「ふええ~……ド、ドキドキしちゃった~……」

戦闘が終わり、ティータは安堵の溜息を吐いた。

「………………」

「ツーヤちゃん、どうしたの?」

考え込んでいるツーヤにミントは首を傾げて、尋ねた。

「うん。以前ご主人様が言ってたんだけどこの魔獣、クローネ峠にも出たんだって。ルーアンの魔獣がどうしてツァイスにいるのかなって思ったの。」

「そうなんだ。でもとりあえず、考えるのは後にして今は博士を助けるのを優先しよ!」

「……そうだね。じゃあ、行こうか。」

ミントの言葉にツーヤは考えるのをやめて、塔の中に入った。そして3人は襲いかかって来る魔獣を協力して倒し、塔の頂上へ続く階段に着き、頂上が見えそうになるとツーヤが進むのを止め3人は少しだけ顔を出し頂上の様子を窺った。そこにはエステル達と飛行船を塔の頂上につけ、博士に銃をつけエステル達が邪魔をしないように牽制しているテレサ達を襲った強盗に似た姿をした誘拐犯達がいた。

(!……あの人達は先生達を襲った人達……!)

ミントは見覚えのある黒装束の男達を見て、剣を握る手を思わず強く握った。

(落ち着いて、ミントちゃん!エステルさん達が動かない所を見ると、多分チャンスを狙っているんだと思う。だからエステルさん達が動くと同時にあたし達も攻撃を仕掛けよう!)

(うん、わかった!ティータちゃんもい……い?)

ツーヤの提案に頷いたミントはティータにも言おうとしたが、ティータが居ない事に気付いた。

「あれ!?ティータちゃん、どこに行ったの!?」

「とにかく探そう、ミントちゃん!」

ティータがいないことに気付いたミントとツーヤはは慌てて階段から降り、周りを見回したがいなかった。

「もしかして……!ミントちゃん、頂上に行くよ!」

「う、うん!」

嫌な予感がしたツーヤはミントと共に急いで階段を上り、頂上に上がった。そこには飛行船を導力砲で攻撃しているティータに銃を向け、それに気付いたティータが砲撃を止め硬直している状態だった。そして一人の黒装束の男がティータに向けて銃弾を放った。



「ティータ!」

「「ティータちゃん!」」

「……チィィィィッ!」

咄嗟の判断でアガットはティータをその場からどけ、自ら銃弾を受けた。

「アガット!?」

「アガットさん!?」

「ツーヤちゃん!とりあえずアガットさんの傷の手当てを!」

「うん!」

それを見てエステルとヨシュアは慌てて、駆け寄った。また、ミントやツーヤもアガットに駆け寄り、ツーヤは回復魔術をアガットにかけ始めた。

「ミント!?それにツーヤも!貴方達も来ていたの!」

「ごめんなさい、ママ……」

ミントとツーヤに気付いたエステルは驚いた声を出し、ミントはシュンとした表情で謝った。

「お、おい!子供を撃とうとするヤツがいるか!」

「しかもそいつはテスト用の……!」

「す、すまん……。船が落とされると思って……」

一方男達は銃を撃った仲間を非難し、非難された男はバツが悪そうに言った。

「まあいい、このまま撤収するぞ!」

気を取り直した黒装束の男の内の一人の声で男たちがラッセル博士を抱え込んで、飛行艇に乗った。

「させないんだから!落っちろ~……!ムグ!」

男達に向かって魔術を放とうとしたミントだったが、回復魔術をアガットにかけていたツーヤに口を抑えられた。

「待って、ミントちゃん!博士にも当たっちゃうよ!」

「あ………」

ツーヤの言葉にミントは魔術を放つのをやめた。

「では、我々はこれで失礼する。」

「あっ……!ま、待ちなさいよ!」

去ろうとする男達にエステルは声を荒げたが、意味がなく飛行艇は去って行った。

「お、おじいちゃああああん!」

そして飛行船はその場からいなくなり、ティータの叫びは空しく塔に響いた。


その後ティータはずっと泣き続けていた。

「うっ、うううう……お祖父ちゃん………」

「ティータ……」

「「ティータちゃん………」」

それを見てエステルとミント、ツーヤは悲しそうな顔をした。

「とりあえず……いったんツァイスに戻ろう。あの飛行艇のことをギルドに報告しなくちゃ……」

ヨシュアはつらそうな顔をしながらもこれからの方針を決めるための提案をした。

「ティータ……つらいとは思うけど……」

見かねたエステルがティータに話しかけた。

「………どうして、おじいちゃんが……ひどい……ひどいよぉ……」

エステルに話しかけられても泣き続けているティータにアガットは静かな声で話しかけた。

「おい、チビ。」

「……?」



パン!



意外な人物に話しかけられ呆けるティータにアガットは近づいてティータの顔に平手打ちをした。

「……あ……」

「ちょ、ちょっと!」

アガットの行動にエステルは驚愕の顔で見た。だがアガットは周りを気にせず話しだした。

「言ったはずだぜ……足手まといは付いてくんなって。お前が邪魔したおかげで爺さんを助けるタイミングを逃しちまった……この責任……どう取るつもりだ?」

「あ……わたし……そ、そんなつもりじゃ……」

アガットの静かな怒りを持った言葉にティータは青褪めた。アガットは追い打ちをかけるように言葉をさらに重ねた。

「おまけに下手な脅しかまして命を危険にさらしやがって……俺はな、お前みたいに力も無いくせに出しゃばるガキがこの世で一番ムカつくんだよ。」

「ご……ごめ……ごめ……ん……なさ……ふえ……うえええん……」

さらに泣きだしたティータを見てエステルやミントはアガットに詰め寄った。

「ちょ、ちょっと!どうしてそんな酷いこと言うの!」

「そうだよ!ティータちゃん、家族が攫われて凄く悲しんでいるのに今の言葉は酷いよ!」

2人に詰め寄られたアガットは冷静に答えた。

「だから言ってるんだ。おい……チビ。泣いたままでいいから聞け。」

「うぐ……ひっく……?」

「お前、このままでいいのか?爺さんのことを助けないで諦めちまうのか?」

「うううううっ……」

アガットの言葉を否定するようにティータは泣きながら首を横に振った。

「だったら腑抜けてないでシャキッとしろ。泣いてもいい。喚いてもいい。まずは自分の足で立ち上がれ。てめえの面倒も見られねえヤツが人助けなんざできるわけねえだろ?」

「……あ……」

アガットの言葉にティータは泣き止んだ。

「それが出来ねえなら二度と俺達の邪魔をせず、ガキらしく家に帰ってメソメソするんだな。……フン、俺はその方が楽なんだがな……」

「ティータ……」

「「ティータちゃん……」」

「…………大丈夫だよ……お姉ちゃん、ミントちゃん、ツーヤちゃん……わたし、ひとりで立てるから……」

ティータは完全に泣き止み自分で立った。それを見てアガットは笑みを浮かべた。



「へっ……やれば出来るじゃねえか。」

「本当に……ごめんなさい。わ、わたしのせいであの人達に逃げられちゃって……ミントちゃんツーヤちゃんも私の我儘につきあわせて、ごめんなさい……」

ティータはその場にいる全員に謝った。

「バカ……謝ることなんてないわよ。」

「うん。ティータが無事でよかった。」

「ミントとツーヤちゃんはお友達のお願いを聞いただけだよ。だから謝らないで。」

「うん。それよりアガットさんに叩かれた頬は痛くない?痛いのなら治癒魔術をかけるけど。」

「大丈夫だよ、ツーヤちゃん……それよりありがとう……お姉ちゃん、お兄ちゃん、ミントちゃん、ツーヤちゃん。」

4人の言葉にティータは笑顔になった。そしてアガットにおどおどしながらも話した。

「あ、あの……アガットさん……」

「なんだ?文句なら受つけねえぞ?」

「えと……あ、ありがとーございます。危ない所を助けてくれて……」

ティータはアガットにお辞儀をした。

「それから……励ましてくれてありがとう……」

「は、励ましたわけじゃねえ!メソメソしてるガキに活を入れてやっただけだ!」

アガットはティータの言葉に焦った。それを見てティータは笑顔を見せた。

「ふふ……そーですね。」

「だ~から、泣いてたくせになんでそこで笑うんだよ!?ちょ、調子の狂うガキだな……」

それを見てエステルは溜息をついた。

「あんたねぇ、お礼くらい素直に受け取りなさいよ。」

「いや、アガットさん、単に照れてるだけじゃないかな。」

「なるほど……確かにそれは可愛いわね♪」

「そういえばアガットさんの顔、なんとなく緩んでいるね♪」

「クスクス……ミントちゃん、そういう事は本人の目の前で言ったら駄目だよ♪」

「そこ、うるせえぞ!」

4人からからかわれたアガットは照れ隠しに怒った。



そして6人はギルドへ報告し、これからの方針を決めるためにツァイスへの帰り道を戻っていった…… 
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