英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第29話
早速新たに起こった強盗事件の調査を開始したエステル達だったが民家等はすでに軍による事情聴取があったのでできなかったので、すで軍が調査をし終えている武器屋やオーブメント工房を周った。その際、ナイアル達と再会して聞いた空賊達が現れた場所の近くには市長邸やマーケットがあるにも関わらず民家に押し入ったことを聞き、首を傾げたが気を取り直し調査を続行するために一端工房を出た。
~ボース南街区~
「おい、お前たち!」
兵を率いる士官がエステル達を見つけ呼び止めた。
「ん、どうしたの?」
「一言、忠告しようと思ってな。いくら市長の代理とはいえ、お前たちはあくまで民間人だ。我々が調査している最中にウロウロしないでもらおうか。」
「あ、あんですって~!?」
「忠告というよりも、警告ですね。」
士官の物言いにエステルはムッとし、ヨシュアは呆れた表情をした。
「分をわきまえろと言っている。そんなに調べたいのだったら、我々が引き上げた後にするんだな。あまりワガママが過ぎると、また牢屋に招待させてもらうぞ?」
そんなエステル達を見て鼻をならした士官はエステル達を脅した。
「むっ……」
士官の物言いにエステルは士官を睨んだ。
「気にしないの、エステル。どうせ何もできやしないわ。」
「フッ、虎の威を借る狐とはよくぞ言ったものだね。」
「な、なにぃ!?」
シェラザードの冷ややかな物言いとオリビエのからかいの言葉に士官は顔を真っ赤にした。
「ほう………余達を牢屋に招待か……面白い冗談を言うな……」
「キャハッ♪逆にそっちが牢屋行きになるんじゃない♪」
「リ、リフィアお姉様!エヴリーヌお姉様も何も知らない方に挑発をするのはちょっと……」
さらに士官の脅しにリフィアは不敵に笑い、エヴリーヌは話を合わせるように士官をからかった。一方リフィア達の態度に冷や汗をかいたプリネはリフィア達を諌めた。
「なんだと?何を寝ぼけたことを言ってる。我らがお前達を捕えて牢屋行きだと?ハッ!民間人の分際で大口を叩いてくれる!どうやら公務執行妨害で逮捕されたいようだな……?」
士官が兵士達にエステル達を拘束する命令をしようとした時、
「……何をやっているのかね」
士官たちの後ろから黒服の軍人がやって来た。
「こ、これは大佐どの!?」
黒服の軍人を見た士官は焦って敬礼した。
「栄えある王国軍の軍人が善良な一般市民を脅す上、無実の罪を着せて拘束しようなどとは……。まったく、恥を知りたまえ。」
「で、ですがこいつらはただの民間人ではありません。ギルドの遊撃士どもです!」
黒服の軍人に注意された士官は慌てて言い訳を言った。
「ほう、そうだったのか……。だったら尚更だろう。軍とギルドは協力関係にある。対立を煽ってどうするのだ?」
しかし黒服の軍人は士官の言ったことを気にせず、さらに注意をした。
「し、しかし自分は将軍閣下の意を汲みまして……」
「………付け加えて言うなら彼らを拘束してしまったら君達は良くて牢屋行き、悪くて処刑になるぞ?」
「なっ!?それはどういう意味ですか!!」
黒服の軍人の言葉に士官は焦って聞いた。また、士官につき従っている部下の兵士達も黒服の軍人の言葉にうろたえた。
「私は君達のためにも言っている。……モルガン将軍にも困ったものだ。ここは私が引き受けよう。君は部下を連れて撤収したまえ。」
「し、しかし……」
黒服の軍人の言葉に士官は納得がいかない様子を見せた。
「早朝から始めているのだ。もう充分に調査しただろう。将軍閣下には後で私が執り成しておく。それでも文句があるのかな?」
「りょ、了解しました……撤収!ハーケン門に戻るぞ!」
黒服の軍人の言葉に士官は戸惑ったが部下を連れてその場を去った。
「さて、と……遊撃士の諸君。軍の人間が失礼をしたね。謝罪をさせてもらうよ。」
士官達を見送った黒服の軍人はエステル達に向き直り謝罪をした。
「これは、どうもご丁寧に。ま、こちらも挑発的だったし、お互い様としておきましょう。」
黒服の軍人の言葉にシェラザードは意外そうな表情をした後、気にしていないことを言った。
「そう言ってくれると助かるよ。………先程も言ったように軍とギルドは協力関係にある。互いに欠けている部分を補い合うべき存在だと思うのだ。今回の、一連の事件に関しても君たちの働きには期待している。」
「フフ、失望させないようせいぜい頑張らさせてもらうわ。」
黒服の軍人の言葉にシェラザードは微笑みながら答えた。
(な、なんか……すごくマトモそうな人ね)
(うん……誰なんだろう?)
黒服の軍人の態度にエステルは目を丸くしてヨシュアと小声で会話をしていた。
「大佐……そろそろ定刻ですが。」
軍人の後ろに控えていた女性士官が軍人に言った。
「おお、そうか。だが、その前にやることがある。……カノーネ君。」
「ハッ。」
軍人と女性士官――カノーネはリフィア達の正面に立ち、その場で跪き頭を下げて謝罪をした。
「……部下達の教育がなってなく申し訳ありません。リフィア殿下、プリネ姫、エヴリーヌ殿。」
「申し訳ありません。」
「……顔を上げて立って構わん。ここでは人目につきやすい。」
自分達の正体を言いあてられたリフィアは本来の皇族としての態度で言った。
「ハッ。」
リフィアに言われた軍人とカノーネは跪くのをやめて立った。
「お前達の名は。」
「名乗り出るのが遅くなり申し訳ありません。王国軍大佐、リシャールと申します。」
「同じく王国軍大尉、カノーネと申します。リシャール大佐の副官を務めております。」
(……この方が「情報部」の……)
(……………………………)
自分達の名を名乗ったリシャールをプリネはナイアルから聞いた情報を思い出し、エヴリーヌは何かの違和感を感じ、探るような視線でリシャール達を見た。
「リシャールにカノーネか。……ん?リシャールとやら、お前の顔はどこかで見たことがあるのだが余の気のせいか?」
「ハッ。以前の女王陛下とリウイ皇帝陛下との会談の際に若輩の身ながら女王陛下のお傍に控えさせていただきました。」
リフィアの質問にリシャールは敬意を持って答えた。
「………思い出したぞ。あの時、モルガンやカシウスと共にアリシア陛下の傍にいた者か。それで余達に何のようだ?余達も忙しい身でな、あまりお前達に構っておられんのだ。」
「ハッ。先ほどの部下達の不手際、またモルガン将軍の不手際を重ねて謝罪させてもらうために、どうか殿下達の大切なお時間を少しだけいただいてもよろしいでしょうか?」
「そのことか。よい、もうその件は余達の要求をあの老将軍が呑んだ時点で解決した。先ほどの件もあまり気にしておらぬ。関係のないお前達が謝る必要などない。」
リシャールの言葉にリフィアは気にしていないことを言った。
「いえ、リベールとメンフィルが同盟国同士として、末永く付き合って行くためにも謝罪はさせていただきたいのです。また貴国と密接な関係であり国教でもあるアーライナ教や、イーリュン教ともさらなる密接な関係を結ばせていただくためにも、殿下達のご不満をこの場で絶っておきたいのです。」
「………アーライナ教が我が祖国メンフィルと密接な関係であることはわかるのですが、なぜそこでイーリュン教も出てくるのでしょうか?イーリュン教はメンフィルを含めて、どの国に対しても公平な態度を取っていますが?」
リシャールの言葉に疑問を持ったプリネは尋ねた。
「独自で調べた我が軍の情報ではかの『癒しの聖女』殿がリウイ皇帝陛下のご息女であり、プリネ姫や現皇帝、シルヴァン陛下の姉君だという情報がありますので、勝手ながら推測をさせていただきました。」
「ほう。まさかティア殿と我らの関係まで調べていたとはな……なかなかやるではないか。」
リフィアはリシャール達が叔母であるティアとメンフィルの関係まで調べ上げていることに弱冠の驚きを隠せず、リシャール達を評価した。
「ハッ。お褒めの言葉をあずかり、光栄です。」
「ただこれだけは言っておく。ティア殿は確かに我がマーシルン家の者だが、あの方は一信者としてイーリュンの教えを全うしている。よって余達の機嫌を取っても無駄だぞ。」
「わかりました。殿下の大切なお言葉、心に留めさせておきます。」
「やれやれ……モルガンとは違った堅物だな……それよりそこのカノーネとやらも言っていたが時間があまりないのであろう?部下達を困らせないためにも行ってやれ。余達はもう気にしておらぬ。」
「ハッ!それでは失礼いたします!……おっと、言い忘れる所だった。遊撃士諸君、何かあったら連絡してくれたまえ。私でよかったら相談に乗ろう。」
「……失礼いたします。」
リフィア達とエステル達にリシャールとカノーネは軽く会釈した後、その場を去った。
「リシャール大佐って……どこかで聞いたことあるような。」
去って行くリシャールの後ろ姿を見てエステルは呟いた。
「ナイアルさんが言ってた人だね。王国軍情報部を率いるキレ者の若手将校だっていう。」
「あ、そうだった♪うーん、軍人にしてはけっこう話が判るヒトだったね。」
ヨシュアの言葉で完全に思い出したエステルはリシャールの自分達に対する態度を思い出し、感心した。
「ふむ、歳は30半ばくらい、ルックスも悪くないと来たか……。軍人より政治家に向いていそうね。」
シェラザードは自分なりにリシャールを解釈した。
「おーい、お前さんたち。今の黒服の軍人、誰なんだ?なんか見覚えがあるんだが……」
そこにナイアルが工房から出て来て首を傾げながらエステル達に尋ねた。
「なんだ、顔は知らないんだ。ナイアルが言ってた、情報部のリシャール大佐だってさ。」
「な、なにーーーーっ?おいおい、そりゃホントか?」
エステルの答えに驚いたナイアルは聞き返した。
「う、うん……。」
「本人がそう名乗っていたから間違いないと思いますけど……」
ナイアルの様子にエステルはたじろぎ、ヨシュアは丁寧に答えた。
「まさかこんなところで噂の人物に出くわすとは……。こうしちゃいられん!ドロシー、追いかけるぞっ!」
「アイアイサー!よくわかりませんけど~」
エステル達の答えを聞いたナイアルはドロシーと共にリシャールを探すために走り去った。
「は、張り切ってるわね~。インタビューでもするのかな?」
「ふふ、確かに記事にしたら受けそうな人物ではあるわね。」
ナイアル達の様子を見て呟いたエステルの言葉にシェラザードは笑って答えた。
「……ふむ………」
「ん、どうしたの?珍しく真剣な顔しちゃって。」
オリビエの真剣な表情を珍しく思ったエステルは声をかけた。
「いや、今の大佐なんだが……。なかなかの男ぶりであるのはボクも認めるに吝かではない……。しかし……」
「しかし……なんですか?」
続きが気になり、何かあると思ったヨシュアはオリビエに尋ねた。
「ボクのライバルとなるにはまだまだ役者不足だと言えよう。より一層の精進を期待したいね。」
「聞くんじゃなかった……」
「その自信がどこから湧いてくるのか不思議ですね。」
しかし次に出たオリビエの言葉が全てを台無しにし、エステルとヨシュアは疲れた表情をした。
「そう言えば……さっき大佐達が言ってたけど、イーリュン教で有名でプリネのお母さんと同じ『聖女』の『癒しの聖女』さんがメンフィルの皇族というのは本当なのかい?」
話を変えるためにヨシュアはリシャールが言っていたある事をリフィア達は否定せず、認めたことが気になって聞いた。
「ん?ティア殿のことか?さっきも言ったがティア殿は余の叔母上であり、プリネや父にとっては腹違いの姉になるぞ。」
「おや?確か『癒しの聖女』の名前は『ティア・パリエ』だったと思うのだが……?」
「よく知ってるわね~」
オリビエがティアのフルネームを言った時、エステルは怪しい者を見る目付きでオリビエを見た。
「フッ……そう誉めないでくれ。照れるじゃないか。」
「誉めてなんていないわよ!どうせあんたの事だから、『癒しの聖女』っていう人も美人だから覚えていただけでしょーが。」
「ありえそうね……私も一度だけたまたま『癒しの聖女』がメンフィル大使のところに帰省した時、見たことがあるけど、師匠やメンフィルの武官達と並んでもおかしくない容姿はしていたからね……」
「ハハ………それでどうして『癒しの聖女』さんはリフィア達の名前を使わないんだい?」
エステル達とオリビエのやり取りに苦笑したヨシュアは本題を戻した。
「ティアお姉様は同じイーリュンの信者であったお母様の遺志を継ぐ意味でお母様の名前で名乗っているんです。それにマーシルンの名はどちらの世界でも有名すぎますから………もちろん必要と思った場面では私達の名前を使っているそうですから、多分リシャール大佐達はその時の情報を手に入れたんでしょうね……」
「……ねえ。話を聞いてて思ったんだけどさ。プリネのお父さんって聖女様を含めて何人奥さんがいるの?今までの話から考えると少なくとも3人はいるよね?」
プリネの説明を聞いていたエステルはある事に気付き聞いた。
「お父様の側室の数ですか?え~と……何人でしたっけ、お姉様?」
「正式に認められているのはアーライナ神官長ペテレーネ、闇剣士カーリアン、近衛騎士団長シルフィア、イーリュンの神官ティナに各王公領の姫君であった、セルノ王女ラピス、バルジア王女リン、スリージ王女セリエル、フレスラント王女リオーネだからリウイの側室は8人だな!」
次々とリウイの側室の名前を言うリフィアの言葉にエステルは一瞬、夜空の様な長く美しい黒髪をなびかせる女性と、その女性の横に並ぶように肩まで切りそろえた陽の光の様な輝く金髪の女性の後ろ姿が頭に浮かんだ。
(……え……?今、頭に浮かんだ2人は誰?何だろう?2人が自分のように思えるのはなんで………??)
リフィアが口に出して言ったリウイの側室であり”幻燐戦争”の英雄達の知らないはずのある名前を聞き、頭に浮かんだ女性達の後ろ姿にエステルは何かが心に引っかかり、無造作に胸を抑え俯いた。
「8人って……いくら大国の皇帝とはいえ凄い数だね……」
一方ヨシュアはエステルの様子に気付かず、リウイの側室の数に驚いた。
「それがリウイの器の大きさよ!世継ぎである子供を作るのも王としての務めだからな!」
「だからと言って限度があるでしょうに……よく後継者争いとかにならなかったわね?」
リウイのことを誇っているリフィアを見てシェラザードは溜息をつき呟いた。そしてシェラザードの言葉にプリネは微笑みながら答えた。
「フフ……確かに普通ならそう思いますが、お父様はああ見えて家族を大切にする方ですからお兄様方や側室の方々を誰一人ないがしろにせず、家族として大事に接してきました。また、側室の方同士仲がよかったですから。そのおかげで私を含めてお兄様方はみんな仲がいいですし、それぞれの側室の方々の中には領主、あるいはその親族である方もいらっしゃいましたから、その方々のご子息やご息女は自分の母親の領を継ぎましたし、中には兄妹同士で結婚した方々もいらっしゃいますよ。」
「ほう……半分とはいえ血が繋がっている兄妹同士が結ばれるとはこちらでは考えられないことだけど、それも異世界特有の文化かい?」
兄妹同士が結婚した事に驚きを隠せていないオリビエはプリネに聞いた。
「……まあほとんどの神殿では兄妹同士の結婚は禁じられていますが、メンフィルと友好的な神殿では特に禁じられている訳ではありませんから。」
「ふむ……しかし夫婦の絆でもある子供は生まれるのかね?兄妹同士では生まれないと聞いたことがあるよ?」
「その心配は無用です。すでにその証拠はオリビエさんの目の前にいますよ?」
「ほう。どういうことかね?」
プリネの言葉にオリビエは首を傾げて聞いた。そしてオリビエの様子を見てリフィアは胸をはって答えた。
「その証拠とは余だ!」
「リフィアが?」
高らかに言ったリフィアをヨシュアは不思議そうな表情で見た。
「うむ!余の父――シルヴァンはリウイと側室の一人であり近衛騎士団長であったシルフィアの息子で、同じく母――カミ―リはリウイと同じ側室のカーリアンの娘だ!」
「へえ………エステル?どうしたんだい?」
弱冠驚いたヨシュアは先ほどから黙って俯いているエステルの様子がおかしいと思い、声をかけた。
「へ!何??」
ヨシュアに呼ばれたエステルは驚いて顔を上げた。
「いや、エステルがさっきから黙っているからどうしたのかと思って。」
「ちょっと考え事よ!それより、リフィアのお父さんが今のメンフィル皇帝だっけ?」
「うむ、それがどうかしたか?」
「さっきの話を聞くとリフィアのお父さん達のお母さんって側室なんだよね?」
「……ああ。」
エステルの言葉に何かあると思ったリフィアは真面目な表情をして先を促した。
「気になったんだけど……プリネのお父さん――リウイって人だっけ?のえ~と……正室の子供はいないの?」
「!!」
エステルの言葉にリフィアは目を大きく開いて驚き
「………………」
エヴリーヌは複雑そうな表情をし
「…………………それは…………」
プリネは悲しそうな表情で呟いた。
「え?え?何?あたしなにかマズイこと言った??」
リフィア達の空気が凍ったことに気付いたエステルは慌てて聞いた。
(どうしたんでしょう、リフィア達。)
(私にもわかんないわよ……ただ、以前師匠にもメンフィル大使の正室の方はどんな方か聞いたことがあるんだけど、いつもはぐらかされるのよね……)
(ふむ……何か深い理由がありそうだね。)
リフィア達の様子がいつもと違う事にヨシュア達は小声で会話をしていた。
「えっと……お父様の正室の方ですね。実は正室の方は若くして子を残さず死去されたのです。」
「あ………ゴメン……もしかしてあたしかなりマズイことを言ったみたいだね………」
気を取り直したプリネの言葉にエステルは気不味そうな表情をして謝った。
「いえ、気にしない下さい。知らなかったのですから仕方ありません。……お父様と正妃様の出会いは決していいものではありませんでしたが、お互い惹かれ、愛し合い、周囲の者達が羨むような仲睦まじい夫婦で、誰もがお父様達の子を期待したのですが正妃様は若くして無念の死を遂げられたのです……」
「そう……だったんだ……病気か何か?」
「………まあ、そのようなものだ。ちなみにプリネの母であるペテレーネは当時、リウイと正妃様の傍で世話をする侍女として仕えていたのだ。」
「聖女様が………」
リウイの愛妻、イリーナの最後を誤魔化し話を変えたリフィアから聞いた、ペテレーネの以外な過去にエステルは驚いた。
「まあ、それは今でも変わっておらぬがな。プリネを産んで側室という位を得たにもかかわらず、未だにあ奴は臣下の態度を取り続けているからな……リウイはもちろんのこと、余やファーミシルス、同じ側室であるカーリアンも気軽な態度をとることを認めているというのに………」
リフィアはペテレーネのリウイに対する普段の態度を思い出し溜息をついた。
「まあ今まで仕えている人、しかも皇帝に臣下の態度をなくすなんて本人にとっては難しいことだと思うわよ。……さて、話はここまでにして調査の再開をしましょうか。」
「うん、そうだね。そういえばハーケン門でリフィア達がヴァレリア湖で何か気になることがあったて聞いたけど何なの?」
シェラザードの言葉に頷いたエステルは調査を再開しようと歩きかけた時、ある事を思い出しリフィア達に聞いた。
「おお、それを伝えるのをすっかり忘れていたな。」
エステルから聞かれたリフィアはエステル達がラヴィンヌ村に行き軍に拘束されている間に手に入れた情報を話した。それはヴァレリア湖で最近妖しい男女の2人組が現れ会話を
しているというものだった。そしてその内の女性が学生服を着ていたことをエステル達に伝えるとエステル達は驚いた。
「学生服って、まさか……」
「ジェニス王立学園かい!?」
リフィア達の情報にエステルは驚きヨシュアは確認した。
「余はそのジェニス王立学園とやらの制服は知らぬが少なくともその情報を持っていた者は、学生服を着ていたと言っていたぞ?」
「……決まりね。早速ヴァレリア湖に行きましょう。」
シェラザードはリフィアの言葉に頷き、エステル達に目的地であるヴァレリア湖に向かうよう促し歩き出した。エステル達が歩き出しリフィアとプリネが仲良く会話をしている姿を、オリビエはエステル達が見た事もない意味ありげな眼差しで後ろから見つめた。
「…………フッ………………(ボクとしたことが……らしくないことを考えてしまった。)」
口元に笑みを浮かべた後、すぐにいつもの表情に戻したオリビエはエステル達の会話に混ざり、エステル達と共にヴァレリア湖に向かった………
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