英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第18話
エステル達と一端別行動にしたリフィア達はエヴリーヌの希望通りアンテローゼで食事をした後、何かやることがないか聞くためにギルドに戻った。
~遊撃士協会・ボース支部~
「おや、メンフィルの嬢ちゃん達じゃないか。エステル達と市長に会いにいったんじゃないのか?」
受付で事務作業をしていたルグランは戻って来たリフィア達に気付き、なぜ戻って来たのかわからず聞いた。
「はい。そのことなんですが………あの後市長殿に会って事情を聞い後、エステルさん達はモルガン将軍に一度面会をすることになりましたので、私達の正体を知っている将軍と
会う訳には行きませんのでエステルさん達とは一端別行動にしました。それでエステルさん達を待っている間になにかやることはないか聞きに来たんです。」
ルグランの疑問にプリネが順番に事情を話して説明した。
「確かにそうじゃな……おお、そうじゃ。実はお嬢ちゃん達に伝えることがあっての。」
「?なんでしょうか?」
「実は……」
疑問符を浮かべているプリネ達にルグランは先ほどロレント支部から掛ってきたプリネ達の依頼に弱冠の変更があることを伝えた。
「………ということじゃ。悪いと思うが、変更を受け入れてもらえんかのう?」
実はエステル達を見送った後、アイナはあることに気付きそのことについて依頼人であるリウイと相談し依頼内容の変更をしてもらったのだ。それは基本的にはエステル達と行動するがエステル達が受ける全ての仕事は手伝わず、ほかの遊撃士達の仕事もプリネ達が手伝うことだった。
「確かに私達がエステルさん達の仕事を全て手伝ってしまえば、エステルさん達の実力が上がらない可能性が出てきますね……私はいいですけど、お姉様方はいかがでしょう?」
依頼内容変更の理由を聞いたプリネは少しの間、考えて納得し2人に聞いた。
「エヴリーヌはどっちでもいいよ~」
「余も構わん!エステル達の成長を余達が妨げるわけにもいかんからの!それに基本的にはエステル達と行動を共にするのじゃからそれほど気にすることでもないしな!」
「おお、ありがたい。すまんの、こちらの都合で依頼内容を変えてしまって。」
依頼内容の変更をあっさり受け入れたリフィア達を見てルグランは安心し、お礼を言った。
「気にしないで下さい。元々私達の無茶な依頼を受けてもらったのですから、これぐらいは当り前です。……とりあえずエステルさん達が帰って来るまで何をすればいいでしょう?」
「ふむ……何をしてもらおうかの……?」
プリネの言葉にルグランはエステル達が戻ってくるまでの間、何をしてもらうか考えていた所、ギルドの扉が開かれボース所属の2人の遊撃士達が帰って来た。
「たっだいま~!ルグラン爺さん!」
「こっちも終わったぜ。」
「………こっちもだ。」
ギルドに依頼完了の報告をしに来たのは明るい性格に見える女性遊撃士――アネラスとエステルやリフィア達がボースへ行く途中で出会った遊撃士――グラッツとリベールの遊撃士の中でも数少ないC級である正遊撃士、アガットであった。
「おお、アネラスにグラッツか。それにアガットも。ちょうどいいところに戻ってきたようじゃな。戻って早々で悪いが少し頼みごとをしていいじゃろうか?」
「別にいいが……もしかして、そこにいる3人をどこかへ護衛するのか?」
ルグランの頼みに頷いたグラッツはリフィア達に気付いて、聞いた。
「いや、この3人の戦闘技能を3人がそれぞれ確かめてほしいのじゃ。ちょうど3人いることじゃしな。」
「え?」
アネラスはルグランの言った言葉の意味がわからず、思わず呆け
「は?なんだそりゃ?爺さん、なんのために一般人の戦闘技能を調べる必要があるんだ?」
グラッツも意味がわからなかったため、ルグランに理由を聞いた。
「はあ?おい、爺。ついにボケたか。」
アガットも一瞬呆けた後、ルグランの言ったことが本当か確認した。
「まだ、そんな年じゃないわい……実はこの嬢ちゃん達はメンフィルのとある貴族のご令嬢でな。なんでも将来就く仕事のために民間人の生活を知る必要があっての。そのために民間人に接することが多い仕事――遊撃士のサポートをして学びたいそうなのじゃ。」
ルグランはリフィア達の正体を隠して話をした。
「へ~………じゃあ、あなた達って異世界の人なんだ!私はアネラス!こう見えても正遊撃士だよ。え~と………貴族のあなた達はなんて呼べばいいのかな?」
アネラスはリフィア達が異世界人――メンフィル人であることを知ると興味深そうに一人づつ順番にリフィア達を見た。
「はい。プリネ・ルーハンスと申します。気軽にプリネと呼んでもらって構いません。どうぞよろしくお願いします。」
「私……エヴリーヌ……」
「余はリフィア・ルーハンスじゃ!余やエヴリーヌもプリネのように気軽に接してもらって構わん。今は貴族の娘ではなく、遊撃士のサポーターの一人だからな。まあ、余達は無礼云々で目くじらを立てるような心が狭い貴族共とは違うから、安心してよいぞ。」
「そっか~。じゃあ、私も普段通りの態度でいかせてもらうね!それにしても、みんな可愛いね!抱きしめていいかな!?」
3人の気さくな態度にアネラスは笑顔で打解けた。
「はぁ~………そこの嬢ちゃん達があの異世界の国の貴族なのか。てっきり、エレボニアのようにプライドが高くて気難しい奴らかと思ったが、あんなに気さくな態度をとってくるとは意外だな。けど、爺さん。いいのか?もし、怪我とかしたらちょっと厄介なことにならねえか?」
グラッツはアネラスと談笑をし始めたリフィア達を以外そうな目で見た後、あることに気付きルグランに聞いた。
「ああ、そこは心配しなくてもよい。両親からも彼女達が怪我等しても責任を負わせるつもりはないと言質をとっておるから安心してくれい。」
ルグランはグラッツの心配を苦笑しながら否定した。
「…………おい、爺。あの小娘共が俺達のサポーターをやるっていうのはマジで依頼なのか?見た所ガキも混じっているぞ。」
好意的な目で見ているアネラスやグラッツと違って、アネラスと談笑しているリフィア達を一人一人睨んでいたアガットはルグランに聞いた。
「お主はもう少しその口の悪さはなんとかならんのか……嬢ちゃん達は気にしないと思うが、下手したら大事になってもおかしくないぞ……」
ルグランはアガットの口の悪さに溜息をついて注意した。
「んなことは今は関係ねえ。それで、どうなんだ?」
「もちろん依頼じゃ。すでに依頼料も渡されているし協会本部も、このことを依頼と認めておる。それにこの依頼はすでにお前達とはほかの遊撃士が受けておる。」
「ん?ほかの遊撃士が受けているのにいいのか?」
グラッツはルグランの言葉に引っ掛かり聞いた。
「うむ………この依頼は少々特殊での。彼女達は基本、すでに依頼を受けている準遊撃士と共に行動することになっているのじゃが、彼女達の実力は明らかに依頼を受けた準遊撃士の実力を上回っていての。ずっと彼女達を準遊撃士のサポーターにつけていたら準遊撃士の実力が上がらなくなる恐れも出てくるから、依頼者にも許可を取ってほかの遊撃士達の仕事も手伝ってもらうことにしたのじゃ。報酬はこの依頼を直接受けた準遊撃士が依頼終了をした時にお主たちにも別依頼扱いの報酬として支払われるから安心していいぞ。」
「さすがに貴族だけあって、羽振りがいいな……ん?今、依頼を受けた遊撃士より明らかに実力が上回っていると言っていたよな?………あいつら、見かけによらず強いのか?」
グラッツはリフィア達の実力に興味が沸き聞いた。
「だから、それを今からお主たちに確かめてもらうのじゃよ。わしも彼女達の実力はまだよく知らんが彼女達は”闇夜の眷属”であると言えば実力はある程度わかるじゃろ?」
「!なるほど………それは興味深いな………!」
噂でしか聞いたことのない闇夜の眷属の実力が見れることにグラッツは不敵な笑顔を浮かべた。
「爺、さっき準遊撃士が受けていると言っていたが、なんでひよっこがこんなややこしい依頼を受けれるんだ?明らかにひよっこ共が受けれるレベルじゃねえだろ。こんなややこしい依頼、ランクは相当高いんじゃねえのか?」
「そのことか……本部で見積もりした最低依頼ランクはCじゃ。」
「はあ!?どう考えてもひよっこ共が受けれるレベルじゃねえだろ!?協会は何考えているんだ!?」
アガットはルグランの言葉を聞いて机を叩いて怒鳴った。
「ちゃんと説明してやるからそう、かっかするでない。………実はこの依頼は依頼者――彼女達の両親から依頼を受ける遊撃士が指名されていたのじゃ。そして指名された遊撃士が準遊撃士であった。それだけじゃ。」
「……おい、爺。いつから依頼者の選り好みで受ける遊撃士を決めれるようになったんだ?普通はそんなふざけたこと、許されねえんじゃねえのか?」
ルグランから理由を聞いたアガットは目を細めてルグランを睨んで聞いた。
「お主のいう通り、確かに通常なら許されないが依頼者がメンフィルの皇帝とも縁ある大貴族での。ほかの国と違って事件があった際素早く連携してくれるメンフィルとは協会としても細かいことであまり向こうと争いたくないのじゃ。協会本部で将来的にメンフィルの本国に支部を作る話も出ていての。これを機に異世界にも遊撃士協会を置く事をメンフィルに考えてもらうためにも、依頼者のある程度の要望を受けたのじゃ。」
「チッ……!そう言うことかよ……!中立の立場を謳っている遊撃士協会が聞いて呆れるぜ……!」
協会本部の意向を知ったアガットは舌打ちをした。
「お主はどうしてそう斜に構えるのじゃ。この依頼はある意味メンフィルの好意に近い依頼なのじゃよ?もう少し、素直に好意を受けてみればいいじゃないか。」
「余計なお世話だよ。……まあいい、爺の言う通り実力を見てからこの素人共が俺達、ブレイサーのサポートをできるか判断してやるよ。で?俺は誰の実力を見ればいいんだ?」
気を取り直したアガットはルグランにリフィア達3人の誰と組むかを聞いた。
「ふむ……お主としては希望はないか?」
「希望か……おい、ガキ共。てめえらの中で一番弱いのは誰だ?俺がテメエらの中で一番マシな強さになるよう叩き直してやるから正直に答えな。」
質問を返されたアガットはアネラスと談笑していたリフィア達に近づき聞いた。
「が、ガキじゃと!?余を子供扱いするでない!どいつもこいつも見てくれで判断しおってからに!ぬぬぬぬっ……!実力があるのなら少しは目を凝らさぬか!」
アガットの言葉にリフィアは怒り、わずかでありながら全身に覇気を覆った。
「はっ!ガキがナマいって………!?」
リフィアの言葉をアガットは鼻で笑おうとしたがリフィアの覇気と小さな身体に収められているであろう何かの”気配”に気付き息を飲んだ。また、横で話を聞いていたグラッツやアネラスもアガットの様子をおかしく思い、リフィアをよく見て息を飲んだ。
(な……!この俺が気圧されるだと……!?何者だ、このガキ……!!)
アガットは自分が気圧されたことに驚き、驚愕の表情でリフィアを見た。
(わぁ~……ほかの2人もわずかだけど、”強者”の気配がもれているね。やっぱり可愛いのは正義だね!うん!うん!)
アネラスはプリネやエヴリーヌが無意識に出している何かの”気配”にも気付き、リフィア達の容姿を見て見当違いな答えで納得した。
(なるほどな……噂は本当だったようだな……俺はぜひ、あの嬢ちゃんの実力を見たいもんだね……!)
グラッツはリフィアがただ者ではないと気付き、不敵に笑いリフィアの実力を自らの目で見たくなった。
「どうやら余の偉大さがわかったようじゃな?これにこりたら余を二度と子供扱いするでない!よいな?」
驚愕しているアガットの様子に満足したリフィアは杖をアガット達には見えない速度でアガットの顔の寸前で突きつけ警告した。
「グッ……ああ、わかったよ………(クッ……動作が速すぎて反応ができねえ……!)」
リフィアの牽制攻撃に反応できなかったアガットは悔しそうな表情で頷いた。リフィアはその様子を見て突きつけるのをやめた。
「アガット、これにこりたらもう少し丁寧な対応で嬢ちゃん達と話すんじゃぞ?………さて2人は誰の戦闘技能を見たいか希望はあるか?」
ルグランは一連の流れを冷や汗をかいて見ていたがリフィアの機嫌が直ったことに安心してアガットを注意し、アネラスやグラッツに誰を選ぶか聞いた。
「じゃあ、俺はリフィアだな。さっきのアガットへの牽制攻撃……見事なもんだったぜ。実戦はどうやって戦うのかも見て見たいしな。」
「ほう、グラッツとやら、中々見所があるようだな!よかろう!余はグラッツに余の強さを見せてやろうぞ!」
グラッツの言葉に機嫌が良くなったリフィアはグラッツに見てもらうことを宣言した。
「じゃあ、私はエヴリーヌちゃんかな?なんてったってこの中で一番気になるし!」
「なんで、エヴリーヌ……?」
アネラスの言葉にエヴリーヌは首を傾げた。
「それはもちろん美人と可愛さを両立させているからに決まっているよ!普通、可愛さと美人は両立させられないのにエヴリーヌちゃんはそれを両立させているんだもん!」
「なんか良くわかんないけど、エヴリーヌを誉めているんならまあ、いいよ~。アネラスだっけ?エヴリーヌの強さを見せてもっと驚かせてあげる♪」
アネラスの理論を理解できなかったエヴリーヌだったが、自分が誉められていることには気付いていたので特に気にせずアネラスに見てもらうことにした。
「フフ、では余り者の私はアガットさんに見てもらうということですね。ある意味アガットさんの希望通りになりましたね。」
プリネは上品に笑いながら最後の一人は自分であることを名乗り出た。
「あん?どういう意味だ?」
プリネの言葉の意味がわからなかったアガットは聞き返した。
「言葉通りの意味ですよ。私がこの中で最年少で実戦経験も一番少ないからですよ。」
「テメエが………?まあいい、ブレイサーが素人に務まるのがどれだけ難しいか叩きこんでやる。」
3人の中で最年長と思っていたプリネが最年少であることに眉を潜めたアガットだったが、気を取り直していつものように厳しい態度で接した。
「フフ、お手柔らかにお願いしますね。」
アガットの脅しに近い言葉をプリネは上品に笑って答えた。
「どうやら決まったようじゃの。試験方法じゃが、ちょうど3種類の手配魔獣が確認されたからそれぞれ手配魔獣と戦ってもらうつもりだから、それで判断してくれ。一人で戦わすもよし、共に戦って確かめるのもよし。それぞれの判断に任せるわい。」
ルグランはそう言って手配魔獣の姿や生息場所を書いた依頼書をアガット達、正遊撃士にそれぞれ配った。
「どれどれ……私とエヴリーヌちゃんは東ボース街道か。」
「俺とリフィアはアンセル新道か。」
「……俺は西ボース街道か。」
依頼書を受け取った遊撃士達はそれぞれの相手に手配魔獣の特徴や生息場所の詳細な情報を伝え、それぞれギルドを出ようとした時、エヴリーヌがあることに気付きアネラスに聞いた。
「ん……?この東ボース街道ってエヴリーヌ達、一度通ったよ……?」
「え……?あ、そうか。エヴリーヌちゃん達ってメンフィル大使館があるロレントから飛行艇を使わず歩いて来たんだよね?だったらこの道は一度通っている筈だよ。」
アネラスはエヴリーヌの疑問に丁寧に答えた。
「ふ~ん……そっか。いいこと考えた。リフィア、プリネ。一番ノリは貰うよ。」
「それはどうかの?……肝心の魔獣を見つけなければ意味はないぞ?お主と余、どっちが一番最初に見つけるか競争だ!」
「キャハッ♪その競争、のった♪エヴリーヌ、負けないよ?」
「フフ、私はお姉様達を待たせないよう精一杯がんばりますね。」
「?おい、お前等何の話をしているんだ?」
エヴリーヌ達の会話の意味がわからなかったアガットは声をかけた。
「すぐわかるよ……キャハッ♪アネラス、ちょっとこっち来て。」
「?うん。」
エヴリーヌに呼ばれたアネラスはエヴリーヌに近寄った。
「手、つないで。」
「いいよ~。ギュッとね!……わあ!エヴリーヌちゃんの手ってちっちゃくてすべすべしている!可愛い!」
「しっかり捕まってよね。……転移っと。」
エヴリーヌの手を握ってはしゃいでいるアネラスと共にエヴリーヌは印象が深いロレントとボースの街道を結ぶ関所前――ヴェルデ橋へ転移してその場から消えた。
「「「なっ!?」」」
それを見たルグラン達は驚愕した。
「では余も行くぞ!遅れるなよグラッツよ!フハハハハハハ―――!」
驚愕しているルグラン達を気にせずリフィアは元気よく入口の扉を開け、走り出した。
「おい待て!今のはなんだったんだ!?説明してくれ!ってもう、あんな所に!?クソッ……!俺も行ってくる!」
グラッツはリフィアの突飛な行動に驚き、リフィアに追いつくために全速力でリフィアを追った。そして後に残ったのは呆けている2人と装備の確認をしているプリネだった。
「さて、私達も行きましょうか。アガットさん。」
装備の確認をし終えたプリネはアガットに話しかけた。
「あ、ああ……って今のはなんだったんだよ!?」
プリネの言葉に無意識に反応したアガットだったが我に返りプリネに聞いた。
「今のといいますと………ああ、転移魔術のことですね。」
アガットの言葉を最初わからなかったプリネだったが、あることに思い当たり一人納得し、説明をした。
「転移魔術とはその名の通り、術者が思い浮かべた場所に瞬間移動することです。転移魔術は普通地面に魔法陣を書く必要があるのですが力が強い術者なら魔法陣なしで思い浮かべた場所ならどこでも飛べるんです。」
「瞬間移動までできるとは魔術とやらはなんでもありじゃな………わしが知っている範囲では威力がアーツより強力ということぐらいじゃったが……」
プリネの説明を聞いたルグランは魔術の凄さを改めて知り、溜息をついた。
「おい……確かお前等は”闇夜の眷属”らしいな?お前を含めてほかの奴らもさっきみたいなことができるのか?」
「まさか。先ほども申しました通り、転移魔術は数ある魔術の中でも最高レベルの魔術です。よほどの魔力と才能、そして適正がないと魔法陣なしではできません。エヴリーヌお姉様は”闇夜の眷属”の中でも最強の種族である”魔神”ですからできるのです。」
アガットの疑問にプリネは首を横に振って否定した。
「あん?”闇夜の眷属”ってのは全員同じ種族じゃないのか?」
プリネの言葉に疑問を抱いたアガットは聞き返した。
「………少し思い違いをしているようですね。”闇夜の眷属”とは複数の種族を総じて呼ぶ呼び方で、また彼らと共に生活をする人間の方達も呼ばれるのです。ですから”闇夜の眷属”は決してみなが人間ではないということではないんです。」
「ふん、なるほどな………で?”魔神”っていう種族はなんなんだ?さっきの口振りだとかなり強いようだが、本当に今の小娘が最強と呼ばれているのか?」
「”魔神”とは種族の中でも魔力、身体能力等全てにおいて”最強”を誇る種族です。貴方方にわかりやすい例えでいえばよく御伽話で”魔王”が出てきますよね?あれと同じものだと思ってもらって構いません。」
「なっ……あの小娘がか!?信じられねえ……」
「”闇夜の眷属”は見かけに騙されていては痛い目を見ると言うのは本当のようじゃな……」
魔神という種族を知ったアガットとルグランは驚愕した。
「付け加えて言うなら、私達の先祖の中で”魔神”の方がいらっしゃいましたのでリフィアお姉様や私にも弱冠ですが”魔神”の血が混じっています。ですから自慢をするみたいに聞こえて嫌なのですが、私も眷属の中ではある程度の力は持っています。」
「フン………どうやら先祖が強ければ自分も強いと勘違いしているようだな?貴族として不自由もなくぬくぬくと育ってきたテメエの言葉がどれだけ間違っているか教えてやる。……行くぞ。」
「クス、わかりました。では私達も行ってきますね。」
「う、うむ。気を付けてな。」
アガットの挑発とも取れる言葉をプリネは上品に笑って受け流し、ルグランに見送られアガット共にギルドを出た………
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