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真田十勇士

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巻ノ三十九 天下人の耳その六

「羽柴家は攻めてか」
「九州で沙汰を下しですね」
 伊佐の声は静かなものだった、ここでは。
「天下のものとしますか」
「おそらく島津家は九州を統一してから従うにしても」
 ここで言ったのは筧だった。
「その前に天下人としてはか」
「そうであろうな」
 霧隠は筧に言った。
「沙汰を下したいのだろうな」
「では近いな」
 猿飛は戦がはじまることについて述べた。
「九州での戦は」
「そうであろう、だからな」
 幸村もあらためて言った。
「上洛の後はな」
「はい、出陣ですな」
「それの用意ですな」
「そしてそのうえで」
「九州にですな」
「行くぞ、そしてな」
 幸村は十勇士達に出陣してからのことも言った。
「わかっておるな」
「はい、我等全員ですな」
「生きて帰る」
「そうせよというのですな」
「武勲は挙げよ、しかしじゃ」
 それでもというのだ。
「死ぬな、絶対にな」
「生きてこそですな」
「戦である」
「だからこそ」
「人は死ぬ時は死ぬ」
 必ずだ、幸村はまた言った。
「しかしな」
「それでもですな」
「死すべき時に死ぬもので」
「今はまだ、ですな」
「死ぬものではないですな」
「それは」
「その通りじゃ、しかしな」
 それでもというのだった。
「それはおそらく九州ではない」
「では何時になるでしょうか」
「我等が死ぬ時は」
「その時は」
「それはわからぬ、戦の場は常に命を賭けるものであるが」
 それでもというのだ。
「おそらくそれは九州ではなく」
「さらに後」
「後の戦ですか」
「そうじゃ、しかしその時も」
 死すべき様な時もというのだ。
「やはり拙者は御主達に言う」
「生きよと」
「必ず」
「死ぬ時は潔くじゃが生きられるならな」
 その可能性が僅かでも残っていればというのだ。
「生きるべきじゃ」
「絶対に」
「何があっても」
「そしてですな」
「また戦う」
「そうあるべきですな」
「首が飛んでも生きよ」
 こうまで言うのだった。
「そのつもりでいよ」
「わかり申した」
「では何としてもです」
「我等殿と共に生きます」
「殿が仰る様に」
「我等十一人、生きるも死ぬも同じぞ」
 幸村は十勇士達にまた言った。 
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