| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  タユタマ ~走る、止める、戦う~



「ふははははははははははははははははッ!走れ風の如く!」


妙な声を上げながら、蒔風が全力疾走で街を駆け抜ける。
速い速い。とにかく速い。


こら、指を指しちゃいけません。


ともあれ、彼は一体何故に走ってるのか。
それは・・・・


「おまえいつまで着いてくんだよー!?」

なにか得体の知れない動物に追っかけられていたからである。



------------------------------------------------------------

「さて、どーんなせっかいかな?」

今回の蒔風世界旅行。今、彼は山にいます。

どうも、神社の裏手にいるらしい。


ここからの展開を、失礼ながら簡単に説明させていただこう。


神社に出る

なんかあったらしい

誰か二人が駆け出した

ゲート先の神社にいたなら主要人物?

追いかける

「なにか」を止めてる?

その「なにか」が蒔風に気付く

追っかけてきた



こういう訳で、蒔風は冒頭で言った通りに走っている。


「走んのは嫌いじゃないから構わないけど!飽きた!蒔風は飽きたわ!」

止まろうと、後ろに迫るそのなにかを見る。

流れてきた情報によるとあれは太転依(たゆたい)という、妖怪みたいなやつらしい。


彼を追いかけてるのは。まるで猿みたいな太転依。
とはいえ、色が黄色を基調としたカラフルな体毛をしているが。

手に持っているバナナは先ほどの二人の言葉を盗み聞きしたところ、どうやら盗んだものらしい。
あの二人は太転依の問題解決のコンビなのだろうか?


《・・・・せ~ん》

「ん?」

《・・みませ~ん。すみませーん!聞こえますか?》

「なんだなんだ!?」

《いまテレパシーで貴方に話し掛けています》

「ああ、なるほどね。さっきの人ね」

《はい》

「唐突な自己紹介ターイム!オレ、蒔風舜。Are You name?」

《み、泉戸裕理です》

「おお、それで泉戸青年。あいつ盗っ人なん?」

《え?は、はい》

「捕まえんの?」

《そうですが・・・あなたはこのまま走って来て下さい!決して手を出さないで下さい!》

「うーん。そう言われると手を出したくなるのが人の性」

《待って下さい!危険です!》

「大丈夫。手加減・・・・」

《あれはそんなことしません!》

「いや、オレがする方」

《は?》

「早く来てね」

《待っ(プツン)》



ズシャ、ザザッ!


蒔風が止まり、太転依が突っ込んで来る。

「猿相手なら彼が一番かな?」


蒔風が意識すると、手の中で淡く何かが光り、そこに鉄扇が現れ出てきた。

「ハクオロさん、力借りますよっ。せいっ!」

パカァン!


蒔風がその鉄扇を開き、太転依の頭を面で叩く。


すると、キキュ!?と悲鳴を上げる猿。
反撃されるとは、まったく思ってなかったのだろう。

「これは帰してもらいましょ」


鉄扇を纏め、手の甲に当てる。
太転依はバナナを落とし、蒔風が拾う。


キィ!キ?キーキーキー!と、甲高い声を上げて太転依が騒ぐ。
どうやらバナナを奪われたことに怒っているらしい。

「こらこら、もの盗っちゃだめでしょー?」

蒔風が優しく諌める。
しかし、太転依は暴れ続けるのをやめない。

頭を一発叩いただけなので、さしたるダメージもないのだろう。
その場で跳ね、地面を叩き、猛烈に抗議する猿。


「いや、言わんとすることはわかるがね。都会でそういうのはしちゃいけんのよ?」

「ウキャァー!!」


聞いてくれない。
いや、これが当然の反応なのだろうが、だからと言ってこれではきりがない。

それに、このままではいずれ周りに被害がでるだろう。


と、

「やめろって。お前さんだって、バナナ一本で傷つきたくはないだろ?」

蒔風が、顕現させずに龍虎雀武、獅子天麟の気配を放って見せた。
するとその凄まじい気当たりに、太転依は暴れるのをやめ、萎縮しておとなしくなってしまう。


「よーしよしよし。おとなしくなったね」

蒔風が優しく猿を撫でる。


「あなた・・・・今何をしたのですか??」

「んん?」


振り返ると、そこには蒔風が見かけた二人がいた。


「オレ?あー、睨みつけただけだよ」

「本当に・・・ですか?」

「その声は・・・泉戸裕理?」

「あ、はい。泉戸裕理です」

「ほう・・・・ほうほうほうほう」

「な、なんですか?」


情報が来た。
彼が泉戸裕理。この世界の最主要人物だ。

「あなたが最主要人物ですか!!」

「はい?」

「あ、とりあえずこの子よろしくお願いします」

「は、はい。ましろ、よろしく」

「はい、ありがとうございます。それであなたは・・・・」

「ん?オレさん?まあ、正義の味方ってところかな。ある奴を追ってきてるんだが、ちょっとお話いいですか?」

「え?はい・・・・・」


自己紹介も簡単に済ませ、世界から与えられた情報を軽く整理しながら、蒔風が二人を促す。
そうして、三人はとりあえず立ち話もなんだと言うことで神社に戻っていった。


----------------------------------------------------------------


「この世界の人間じゃない・・・ですか?」

「そう。で、泉戸君の・・・紛らわしいから裕理でいいかな?」

「いいよ」

「ん。で、裕理の身が危ないから、オレが守りまっせ、ということ」

「さすが!裕理さんはやっぱりすごい人なんですね!」

「ははは、実感ないなぁ」



今、三人は泉戸裕理の家でもある神社に来ている。
そこで蒔風が事の顛末を話して、何とか納得をしてもらう。

十五天帝だとかを見せれば一発、ということを最近知った蒔風であった。



(なるほど・・・太転依と人間の共存する世界、ね)

裕理の隣にいる女性は泉戸ましろ、という名前だそうだ。


彼女の出生、そして太転依という生物のことの顛末を簡単にすると・・・・・


なんでも裕理とその友人たちが、多くの太転依を封じていた遺跡を壊してしまい溢れてきてしまったそうだ。

そして壊れた遺跡から、それらの太転依を封じていた綺久羅美守毘売(きくらみかみのひめ)という太転依が現れ、何とかしてほしいと言い残したらしい。
そしてその綺久羅美守毘売の生まれ変わりとして誕生したのがましろさんだそうだ。

当初の大きな問題を片付け、いまは裕理や他の太転依とともに、人間と太転依の共存に向けて頑張ってるらしい。



「そして二人は仲睦まじく、ってことね」

「ま、まあそうですね」

「と、なると・・・裕理さん。応龍たちにも知らせたほうがいいですね」

「応龍?たち?」

「ましろの他にも、三強という大きな力をもつ太転依がいて、知り合いなんですよ」

「四天王みたいな?」

「ええ。今から呼んでみましょうか・・・・」



--------------------------------------------------------------------

数分後、なんと五人もの人間が(うち二人は太転依らしい)集まった。


白いスーツ姿のホストのような風貌の応龍。
小さな女の子の姿をした、着物姿の鵺。

この二人が太転依三強の内の二人らしい。



そして何だか大きめのひよ子?を頭の上に乗っけてる小鳥遊ゆみな。
如何にもお嬢様みたいな雰囲気の如月美冬。
あとは元気っこっぽい河合アメリ。


この五人である。


「三強って聞いたんだけど、五人いるぜ?」

「ああ、三強なのは・・・」

「俺、応龍と」

「鵺であるわしと」

「ゆみなさんの頭の上に乗っている鳳凰です」

「フゥン、そのひよこが・・・・それって、あの応竜に鳳凰?」

自己紹介に、ふと蒔風が素朴な疑問を投げかける。

それに対してましろが語ってくれたところによると、過去実際に暴れた彼等に、過去の人間がそう名付けただけらしい。
つまり「それである」と言う評価をうけるほどの力を持っているが、名前通りの幻獣の大元ではないらしい。


「ま、そりゃそっか。鳳凰って、その二羽のこと?」

「はい。鳳凰さんは鳳と凰っていう二羽で一組なんです。で、ここに今いるのは鳳さんで」


「あー、そういう鳳凰の解釈か。で、後のお三方は?」

「ゆみなは、お兄ちゃんの義妹です」

小鳥遊ゆみな
一時期、泉戸家に預けられてたらしく、裕理の妹同然の少女。
鳳凰に気に入られ、こうして常に片方は必ず彼女のそばにいるらしい。


「なるほど、身内」

「で、あたしはユウの幼馴染で、こいつの監視役」

河合アメリは昔から裕理と知り合いであるらしく、応龍とコンビみたいなものらしい。



「わたしは、鵺の保護者だ」

如月美冬は鵺を預かっている、裕理の友人。
最初こそ太転依の存在を否定していたらしいが、いまっではこの通り鵺にべったりのお母さんである。


「なるほどねー。なんだ、うまく共存できてんじゃないですか。ここにいるのは各種の太転依の長なんでしょ?」

「でも、なかなかむずかしくて・・・」

「オレは綺久羅美の考えに完全に賛同したわけじゃねえからな」

「もう、ヨリトモ!!」

「ヨリトモ?」

「応龍のあだ名」

「ふーん。で、さっき説明したとおり、身の回りにおかしなことが起きたら、自分でなんとかせずに、オレに連絡してくださいな」

「はん」

簡単な自己紹介の後、蒔風がとりあえず「奴」が現れた時の警告をしておく。
なまじ力がある分、挑みかかって返り討ちにされる可能性があるからだ。

だが、この言い方では当然応竜の反感を買う。

「てめえが俺たちより強いかどうかもわかんねえのに、そうですかと頼れるかよ」

「それに八衢(やちまた)はそう簡単に死ぬようなからだではないぞ?」

「八衢?なんだ?そりゃ」

「僕の持つ「退魔の霊能」の正体。僕には生まれつき、太転依などの力を撃ち消してしまう能力があるんだ」

「まろまろと付き合いだしてから、すごく強くなったんだよね?」

「そうそう。で、ましろを消してしまいそうになったり・・・」

「おいおい・・・・」

どうやら裕理の家系は特別なものらしく、かつては八衢と呼ばれた霊能者であったらしい。
その時代では、太転依の事件を解決していたのだそうだ。

長らく眠っていた才能だったが、裕理はその力に目覚めて以来、普通の人間とはちょっと違った体つきになっている。


「大丈夫なのかよ」

「今は平気です。僕自身の体をそういった神通力を扱える身体に変換して、コントロールできるようになりましたから」

「それじゃあ、つまり・・・」

「今僕は太転依と人間との中間の存在ですね。ましろもそんな感じですし」

「まて。太転依は永遠といってもいい時間を生きるものだ。お前は不老不死なのか?」

蒔風が厳しい表情を浮かべる。
その視線に一瞬ひるむが、裕理は億さず話す。


「え?いいえ。確かに不老ではありますが、怪我などをすれば死ぬこともありますよ。死ににくくはありますが、不死とはいえないですね」

「ふぅん。ま、死ぬ余地があるなら十分人間じゃね?」

「は、はぁ・・・・」


「でも蒔風さん。もう裕理さんに勝てるような存在は、いないといってもいいくらいに強いんですよ」

「で、だ。俺としちゃあ、てめえの力がどんくらいか計っておきたいんだよ」

「へえ。オレの力を測る・・・か。大きくでたな」

「ああん?」

「それじゃまるでオレが弱いみたいじゃない?なあ裕理君」

「えっと・・・僕に言われても」

意味不明気味に裕理へといきなり話題を振る蒔風。
それに対し、応竜が少し呆れ気味に聞いてきた。


「・・・お前、どんくらい強いつもりだ?」

「世界最強」

それに対し、スパッと答える蒔風。
まるで、聞かれたから反射的に応えているかのようだ。

だがそれは応竜を挑発するには、十分すぎる効果を持っていたようで

「・・・いいぜぇ。三強が一、この応龍が相手してやる。綺久羅美ぃ!結界張っとけ!!」

「もう!応龍!待ちなさい!!」

「いいですよ、ましろさん」

「蒔風さん・・・」

「舜でいいっすよ。そっちは名前を呼ばせてくれてんのに、なんかねえ」

「舜さん、応龍は・・・・とても強いですよ」

「へーきへーき。伊達に世界を救ってないから」

「早くこいやぁ!!」





全員で神社の境内にでる。
ましろが結界を張り、神社を隔離する。
さらにその内部に、裕理が蒔風と応龍以外の皆を結界で包む。


準備は整った



「本気で来いよ!!!」

「こっちのセリフ、だ」




いまここに、蒔風VS応龍の戦いが始まる。



to be continued
 
 

 
後書き
・太転依
古くは神としても崇められた個体もある生物。
その発生は生殖によってよりも自然発生の方が多い(精霊に近い)

ただし発生すればそれは一つの命であることにかわりはない。
以前は一部の人間にしか見えなかったが、今では様々な人の目に留まるようになっている。

周囲の環境に影響されやすく、悪に染まるも善になるかも環境次第。


・綺久羅美守毘売
きくらみかみのひめ、と読む。

四足、すなわち獣系の太転依の長であり、太転依の中でも最強を誇っていた。
それゆえに、他の三強を従え大人しくさせていたのも彼女であった。

本来彼女は遺跡に三強共に封印されていたが、そこが学校となり、好奇心で掘り返した裕理たちによって封印が解かれる。
すでに三強を止めるには力至らず、そしてこの時代を新たにい来るとして、一つの魂に自らを転生させて後のことを裕理たちに託して消滅した。

転生し、その場に現れた少女こそが、のちに泉戸ましろとなる少女であった(もとが同一人物なため、ましろが応竜に綺久羅美と呼ばれるのはそのため)


・応竜
水棲生物や鱗を持つ生物を統べる長。

気性の荒い、凶暴な性格をしている。
とはいえ、今ではそれもなりを潜め、喧嘩っ早い程度には落ち着いた。
名前の通りの龍の姿が本来の姿で、人の姿は仮の物。

普段はアメリの家の庭にある池に住んでいる。
「ヨリトモ」という名も、アメリに与えられたのをそのまま使っている。


・鳳凰
言わずもがな、火の鳥である。
翼を持つ空の物を統べる。

鳳凰の姿には諸説があるが、この世界では「鳳」と「凰」という雌雄を合わせて「鳳凰」と呼んでいるらしい。

小鳥遊ゆみなになついているのは、実はオスの「鳳」が彼女に惚れてしまったため。
メスである「凰」からすれば、立派な不倫である。

鳳凰の当初のトラブルは、この痴話げんかの解決であった。
最も獣に近く、人型も人語も介さないが、意思疎通は可能らしい。


・鵺
ぬえ
節足の虫などを統べる。

キメラのような妖怪である鵺・・・ではなく、正体不明という意味で「鵺」と呼ばれる。

幻術によってさまざまな姿をとったことから、そう呼ばれたらしい。
本来の姿は黒い着物姿の幼女。
幼女、なんです。

大事なことなので二回言いました。
ぅゎょぅι゛ょっょぃ







ちなみにこのタユタマの世界は、ましろルート基盤ですが、いちおう他のルートも踏まえている、ということでお願いします

アリス
「CLLANNADのアニメにみたいな?」

そうそう

アリス
「タユタマのアニメって言えばいいじゃないですか」

アニメ版見てない・・・・
原作はFDまでやったのに・・・・

アリス
「ファンに殺されるぞ」

新月の夜は気をつけます
それから、後書きの最後に入れる言葉が出てこない

アリス
「本当に殺されますよ?」

誰か教えてー!!




アリス
「次回、勃発!蒔風対応龍!!やるのは蒔風かそれとも?」

ではまた次回






私はいつでも、どんな時でも、裕理さんの味方ですから
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧