世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
うたわれるもの ~暗躍する者~
今、蒔風舜はエルルゥの乗ったウマを追いかけている。
しかし、森の中とはいえかなりの速度だ。
このウォプタルという動物の機動力は相当な者らしいが、それにしても速い。
それだけに、ハクオロという人の人望の大きさがわかるというものだが。
「・・・・・・(じ~)」
彼等の少し後方を走る蒔風の顔が、少し居づらそうに苦い顔になる。
アルルゥがこっちを見ている。
ちなみに彼が追いかけている、ということは勝手な行動だ。
完全な部外者の蒔風は、まだ世界の説明もできていないし、連れてってくれ、とも言おうにもまだ信頼も何もないのだ。
結局はこうやってついてくしかない。
やだなぁ
ストーカーみたい。
ともかく、森の母とはすごいもので、こっそりつけてるはずの蒔風の方を何度かじ~っ、と見ている。
多分アルルゥが乗っている大きな白い毛の虎、ムックルが感づいて教えてるのだろう。
さっきアルルゥに教えてもらったときに知ったのだが、ムックルは森の主(ムティカパ)と呼ばれる者で、小さな頃にアルルゥに拾われたらしい。
だからあんなに懐いてんだなぁ、と感心しながら、先に進む。
そう考え事をしながら走ってると、大きな都が見えてきた。
ここがこのトゥスクルの皇都らしい。
エルルゥたちがいかにも宮殿、みたいな建物に入って行く。
こうしている内にも「奴」が何するかわかったものではないため、蒔風は内部に侵入しようと周囲を見まわる。
「ふぅっ、土惺」
ボコッ
土惺の力を使い、地面に穴を開け、潜っていく。
城壁を越え、大きな木の根っこが見えたので、そこで地上にあがる。
「ふぅ~い、よっこいしょういちっと。あ、よっこいしょういちって言っちゃった」
・・・・・・・バカなことやってないで行こう。
衛兵の監視をかい潜り、宮殿の中に入っていく。
「一番でかい部屋に行けば、いいのかな~」
そうつぶやいて、蒔風は宮殿の中心を目指した。
実は蒔風という男は、派手な戦闘好きで得意な一方、一番の得意はこういう隠密行動なのだ。
エルルゥの声が聞こえる。
蒔風がいるのは天井の梁の上。なにやら話し合ってるらしい。
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接見の間
今ここにかつてのハクオロの仲間たちが集まっていた。
エルルゥとアルルゥ
ハクオロと義兄弟の契りを結び、旅に出ていたオボロとその舎弟のドリィ、グラァ
ハクオロの後を継ぎ、トゥスクルの皇であるベナウィ、その右腕のクロウ
調停者、外交特使であるウルトリィとカミュの姉妹
ハクオロの腹心の部下であったカルラとトウカ
彼等が勢揃いしていた。
最初にエルルゥが口を開く
「ハクオロさんが蘇るって本当ですか?」
「まだ、わかりません。しかし、可能性は大きいです」
それにベナウィが答える。
「聖上にまたあえるのですね!?」
「でもそんな簡単に信じていいんですの?怪しい方と聞いてますが」
トウカとカルラがさらに聞く。
「うーん、確かに怪しい人だったけど・・・・」
「私たちの知らない術を使うこともたしか。彼が言うには、違う世界の力だそうですが・・・」
それには法術に秀でたカミュ、ウルトリィが答える。
「だけど・・・ハクオロさんが封印を望んだ理由が・・・それを無視して・・・」
「そうですわね。主様の意志を考えると、このままの方が・・・」
「確かに、聖上は自分がこの世に下手な力で干渉しないように、己の半身と共に眠りつづけることを選択しました。そうなると・・・・」
エルルゥ、カルラ、ベナウィが難色を示していると、そこに声がした。
「大丈夫ですよ」
「あ、あなたは・・・」
「ベナウィさん、あの人が?」
「ええ、聖上を復活させると言っていた人物です・・・・・なにが大丈夫なのですか?」
「ふふふ、あなた方の主、ハクオロ皇の事情はわかっています。空蝉、でしたかな?その邪悪なる半身を消滅させ、ハクオロ皇を復活させる。そうすれば問題ないでしょう?」
「なぜ、あなたがそんなことを・・・」
「言ったでしょう。違う世界の力だと。それと・・・・・はははははは!賊がいます!私の邪魔をする、ハクオロ皇の復活を妨げる者が!そこにいます!」
「奴」が天井に潜む蒔風を正確に指差す。
蒔風の額を汗がつたり、直後に怒声が響いた。
「ドリィ、グラァ!」
「はい!若様!」
オボロが弓兵である二人に命令し、矢が放たれる。
それは蒔風を追いやり、その姿をあらわにさせた。
ヒヒュン、ガガッ!
矢が正確に蒔風のいた位置を射抜く。
とっさに避けたため、ぐらり、と体制を崩して蒔風が落ちていく。
「おぅわっ!」
蒔風が驚きながらも着地すると、周りには二刀を構えるオボロ、弓を引くドリィ、グラァ、方術を構えるウルトリィ、カミュ、腰の刀に手を添えるトウカがいて、囲まれてしまった。
ちなみにクロウはベナウィの前に守るように立ち、エルルゥ、アルルゥはトウカの後ろに回っている。
「マイカゼさん!?」
「あん?さっきのあんちゃんじゃねーか。こんなところでなにやってる?」
「いや、そいつが・・・・」
「皆さん!やつは私の敵です!様々な世界を巡る私をいつも邪魔してるのです!」
「いやまぁそうだけどさ、一旦話を・・・」
「問答無用!!せぇりゃぁ!!」
オボロが業を煮やして切りかかってくる。
蒔風は天地陰陽の内二本を抜き、上下から迫る刃を受け止め、身体を回転させ離れる。
そこにドリィ、グラァの弓が放たれるが・・・・
「(ダンッ!)畳返し!!」
バコッ!!
いきなり蒔風を隠す程度の大きさに、床が跳ね上がって壁になり、その弓を防ぐ。
「なにっ!?」
「なんだその術は!?」
「術じゃなくて技です。柔術の畳返しを床だとか地面でやってるだけですよ。まあオレは足でやってますが」
蒔風はそう説明するが、柔術なんて言われてもこの世界には存在していないので、彼らはちんぷんかんぷんである。
「ハッ!!」
「っ!!(ギィン!!)」
さらにトウカが攻めてくる。
その流れるような攻撃を、それに合わせるかのようにかわしていく蒔風。
「くっそ!!なあ、どう思う?白虎」
蒔風が己の剣に話しかける。
白虎はその剣の状態で応答する。
-言葉じゃダメならもうやることは一つでしょ-
「だよなー・・・・・いいぜ!!こっちだ!!」
「ま、待て!!」
蒔風が一気にジャンプし向かってくるオボロを飛び越える。
空中で回転しながらドリィ、グラァの弓をはじき、外にでた。
外は広い演習場になっており、そこで軍隊の訓練などをしているのだが、今はいない。
「とうっ、と。へへ(クイクイ)」
「あの野郎舐めやがって!!」
「若様!!待ってください!!」
「私たちも行きましょう!!」
「うん、お姉さま!」
「某たちも行くぞ!!カルラ!!」
「いいですわよ、トウカ。骨のありそうな方じゃないの」
そう言って他の者も全員が演習場にでる。
「奴」の姿はもうそこにはなかった。
「観念しろよ・・・おまえ、兄者の復活を拒むたぁどういうことだ!!」
「だーかーら!!話を聞けっての!!まったく・・・やっぱしゃーなしだな」
仕方なし、といいながら頭をポリポリと掻き、蒔風が腰に手を回す。
その動さに警戒する彼らが、武器を構えて怒声を上げる。
「なにをするつもりだ!」
「えぇ?お前らと戦って、オレが勝ったら話聞いてもらうつもり!!」
「てめえが?俺たちに?寝言は寝て言えや!!」
「さあて、レッツ肉体言語タ~イム♪・・・力を借りるぜ!!」
そういうと、蒔風の腰に音叉が現れる。
蒔風はそれを構え、指ではじく。
ピィン、キィィィィィィィィィィィィィ・・・・・・・
そして額に持っていくと、蒔風が紫の炎に包まれる!!
「なに!!??」
「そんな・・・・マイカゼさん・・・」
「自殺した?」
しかしその炎の中で、蒔風が気合を込める!
「うーー・・・・・・・・・タァッ!!」
バァッ、ドンドン!!
そこに、炎をかき分け、鬼に変わった蒔風が立つ。
「仮面ライダー、響鬼」
音撃棒をクルクルと回し、両手に構え、蒔風は猛る。
「さ、始めましょーか、尋常に!!!!」
to be continued
後書き
・各世界での滞在時間
唐突な裏設定公開。
蒔風が「奴」を倒した後にその世界にいられる残り時間は限られていて、それは「奴」を倒すまでの時間に比例して長くなる。
・「奴」の世界計算
唐突な裏設定公開、その二。
「奴」は世界を喰らうために、その世界構成を計算してから事に当たる。
破壊された世界は、その瞬間から消滅していく。
そのわずかな時間の内に「奴」は世界を喰らわねばならないのだ。
寄って、その構築がわかっていないと破壊した世界のほとんどが消滅して喰える量が微々たるものになってしまう。
その計算時間は単純な世界ならともかく、幾つもの世界を内包した世界になると長くなる。
故に、「奴」の登場までの時間も長くなり、蒔風の滞在時間も長くなる。
アリス
「次回、響鬼に変身し、戦う蒔風。「奴」の目的は?」
ではまた次回
ハクオロ殿!後を、後を頼みまするぞ!!
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