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独裁者二匹

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2部分:第二章


第二章

「とりあえず今は御飯は」
「猫まんまとワンちゃんには」
「肉か魚の残りと御飯でいいだろ」
「そうね」
 その話はすぐに決まった。
「時々ドッグフードかキャットフードも用意してね」
「それでいいか」
「そうね。ただワンちゃんには小屋も用意しないとね」
「それはもう注文しておいたから」
「そう、じゃあいいわね」 
 こうして家に犬と猫が出て来たのであった。犬の名前はワン、猫の名前はカミナリになった。名付けたのは意外にも昌哉であった。
「僕でいいの?」
「ええ、いいわよ」
「御前が名付けなさい」
 両親は我が子に対して笑顔で告げた。
「二匹の名前をね。考えてみて」
「さあ、何がいいんだ?」
「うん、じゃあ」
 こうしてだった。彼は何となくイメージで名付けたのだった。それで犬の名前はワン、そして猫の名前をカミナリとしたのである。
 後でそれぞれの血統書が来たがそれはもうどうでもよかった。何はともあれ犬と猫の名前は決まった。ワンとカミナリで決定だった。
 二匹は家族になった。しかしその彼等はだ。非常に問題があった。
「あっ、こら!」
「ニャン!?」
 カミナリを叱る。彼はテーブルの上にまるでスフィンクスの様に寝そべっていたのだ。その寝方も顔立ちもさながら王者の様である。
「テーブルの上に寝るんじゃない」
「ニャンニャン」
「ニャンニャンじゃない」
 叱るとすぐにテーブルの上から逃げ去る。しかしであった。
 すぐに柱で爪を研ぐ。昌哉にわざと見えるようにだ。
「またか。こら!」
「ニャーーーーーッ」
 彼に叱られるとすぐに駆け去る。そうしてそのうえで物陰から覗く。悪いことをしていると明らかにわかっている、それが丸わかりであった。
「猫ってこんなに悪いものなの?」
「悪い?悪くないわよね」
「そうだよな」
 しかし両親はだ。カミナリが何をしても怒らない。それどころか甘やかし放題という始末であった。彼の顔を見れば笑顔になっている。
 そしてだ。悪いのはカミナリだけではなかった。
 ワンもだ。まさにやりたい放題であった。
「ワン、ワン」
「ああ、わかったよ」
 家の外からの鳴き声に応える昌哉だった。
 そしてだ。父が買った縄を出してである。家の外に出た。そうしてそのうえで彼を散歩に連れて行くのであった。
「スコップとビニール持った?」
「持ってるよ」
 家の中からの母の言葉に応える。
「ちゃんとね」
「そう、じゃあ散歩御願いね」
「わかってるよ」
「御飯用意しておくから」
 母はすぐにこうも言ってきた。
「それじゃあ御願いね」
「わかったよ。じゃあね」
 こうしてワンの前に行く。するとそのワンはだ。
「フンフンフン」
「だから寄り付くなって」
 いきなり昌哉にまとわりついてきたのだ。まるでさかっているようである。
 昌哉はそれを何とかどけながらだ。そのうえで言うのだった。
「行くぞ、早くな」
「ワンワン」
 こうして彼を散歩に連れていく。しかし力は強い。身体は小さい犬だがそれでもだ。力は昌哉が思っていた以上のものがあった。
「こら、そっち行くなっての」
「ワン、ワン!」
「だからこっちだって」
 手綱を握るだけでも必死だ。とにかく自分の好きなコースに行きたがるワンを無理にでも決まったコースに行かせる。それだけでも難しい。
 
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