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真田十勇士

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巻ノ三十八 双槍その十一

「では機会があれば」
「弟にですな」
「お会いしたいですな」
 微笑んで言うのだった。
「是非」
「そして、ですな」
「手合わせをしたいですな」
「そう言われますか」
「そう思いました」
「半蔵は西国でもです」
 榊原が信之にこの服部のことを話す。
「屈指の忍であり伊賀者達もです」
「甲賀、雑賀と並び」
「その中でもですな」
「西の伊賀、東の風魔です」
 こうもだ、榊原は信之に言った。
「そこまで言われる者達です」
「そしてその伊賀の棟梁がですな」
「この者です」
 服部を見ての言葉だ。」
「徳川家が誇る忍の者です」
「そう言われて恥じぬ様に務めております」
 服部も微笑んで言う。
「それがしも家臣の者達も」
「そうなのですな」
「そのつもりです」
 服部は穏やかにだ、信之に言った。
「どの者も」
「我等四天王を含めた十六神将にです」
 また言う榊原だった。
「伊賀者達に多くの三河武士がいてです」
「徳川家はですな」
「殿を支えております」
「それがし達も殿にはです」
 服部がまた言った。
「忠義を感じております」
「強くですな」
「はい」
 まさにというのだ。
「それは誓って言います」
「そうですか、徳川殿は果報者ですな」
「人は城ですな」
 こうも言った榊原だった。
「まさに」
「信玄公のお言葉ですな」
「それはです」
「徳川家も同じ」
「左様です」
 まさにというのだった。
「それがしも半蔵もです」
「そう考えています」
 服部も言った。
「忍の者として」
「まさに」
「そうなのです」
「忠義ですか」
「徳川家の家臣ならば殆どの者が強く持っております」
「その忠義のお心を」
「それは誓って言えます」
 こう信之にも言うのだった。
「何があろうとも」
「ですな、徳川家程まとまった家はありませぬ」
 信之も言う。
「それがしも深く強く感じ取っています」
「そうですか、源三郎殿も」
「その忠義の心も学びたいです」
「そう言われるか」
 榊原は信之のその言葉を聞いて感じ入った声で頷いてだ、そうして彼にあらためて言った。
「では当家の全てを見て下され」
「その全てを」
「さすればおわかりになります」
「そうですか、では」
「そして学ばれよ」 
 こう言うのだった。そして信之は実際に徳川家の全てを見ていった。そうしてこの家の心特に忠義も学ぶのだった。


巻ノ三十八   完


                         2015・12・23 
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