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101番目の哿物語

作者:コバトン
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第十話。デート・ア・ミズエ 前編

本日の天気は晴天。
昨夜の雨が嘘のように、駆け抜ける爽やかな風、心地よいお日様の光。
それらを感じながら俺は月隠駅西口にある時計塔の真下にいる。
通りすがりの人々が楽しそうに笑いあいながら歩く姿や腕を組む男女の姿を見て思う。
せっかくの休みに、男女で出かけるのはそんなに良いことなのか、と。
しかし、今の俺を他人が見たらデートの待ち合わせをしている奴とか思われてるよな。
一之江とはそんな関係じゃないのだが……やはりデートっぽいよなー。
なんで、俺がそんなことを考えているかと言うと。
これから一之江のショッピングに同行しないとならんのだ。

事の始まりは理亜を寝かしつけた後。
一之江に連絡を取った事から始まった。

「あー、もしもし、俺だが」

『もしもし私よ。実は寝ていたの。だから死ね』

「いきなり物騒な返事をするな!」

『なんですか。私の睡眠を妨げるほどの用件ですか? もし、大したことのない用件だった場合は、電話から貴方の耳にところてんを流しこみます』

「地味に嫌な嫌がらせだな、それは」

『そして、貴方は”ところてんワンの百物語,,に』

「ならないからな⁉︎」

『ちょっとワンコっぽくって可愛いじゃないですか。今の貴方より可愛げがありますよ? どうですか是非』

「是非じゃねえ! ランチに誘うみたいなノリで気軽に誘うな!」

『全くもう、賑やかですね。ふー』

「賑やかにしたのはお前だろう?
……まあ、いい。実は相談があるんだが……」

『お金なら……トサンで貸しますよ?』

「お前の実家は闇金か⁉︎」

「むぅ……トサンでは不満ですか。ならトゴでも」

10日で5割とか、どこの闇金(ウシジマくん)だよ!

「何で相談事が金銭絡みだと思われてるんだ⁉︎」

『金欠だろうなー、と』

ああ、金欠だよ。
前の世界なら出てたベレッタ社からの奨学金とかもないから、金欠だ。
主にロア関連でな。

「確かに金欠だが、内容はそっちじゃない」

『あー、なるほど。なんとなく解りました。
北140 西80の辺りですよ。そこに『しるし』があります』

「何の話だ?」

『ん? もしかしてサイズが違うバージョンですか? そしたら北70の西40です』

「……もしかしなくても何かのネタバレだよな、それ」

『それでは頑張って下さいね。ふぁー。おやすみなさい』

「ちょ、ちょっと待て!」

『なんですか、まだ解らないんですか? 攻略サイトを見て下さいよ』

「ゲームのネタバレじゃねえよ! 何でこのタイミングでゲーム攻略の相談しないといけないんだよ⁉︎」

『好きかなあ、と思いまして』

「まあ、嫌いじゃないが……って、それはともかく。深刻な悩みがあるんだ」

『ああ、髪の悩みですか?』

「ハゲてねえよ⁉︎ もっと深刻な悩みがあるだろう⁉︎」

『私は私の睡眠以上に深刻なものなどありません』

「いい切りやがったな、コイツ……」

『ですが……ふむ。お昼も結構過ぎた時間のようですね。そろそろ起きてもいいでしょう。
ふぁーあ……で、何ですか?』

「だから相談に乗って欲しいんだが……」

『貴方の相談相手=キリカさんでは?』

「そ、そうかもしれんが、キリカはまだ本調子じゃないからな」

『まあ、それもそうですね。仕方ありません。休日の午後という貴重な時間を貴方に割いてあげるのも、ごくたまにはいいのかもしれませんね』

「お、ありがとうな」

『どうせ妹関連でしょう? 面倒なので今すぐ月隠駅西口、時計塔広場に来てください。
本日はショッピングと外食の予定だったので、それに付き合うのならいいですよ』

「あー、そうか。悪いな」

俺の都合で一之江の予定を変えるのは悪いと思い、そう返事すると。

『さあ、私達の戦争(デート)を始めましょう!』

一之江はそう言い放ち電話を切った。






「お待たせしました」

「いや、俺も今来たとこ……え?」

待ち合わせをした少女の声がしたので、そちらを振り返ってみると。そこには愛らしい、清楚でお洒落な私服に身を包んだ一之江がいた。
普段、蒼青(そうせい)学園の制服姿しか見たことがなかったせいか、可憐で優雅なその立ち振る舞いとそのファッションサンスの高さに驚いてしまう。
清楚な私服が一之江には似合うと普段から思っていたが、まさかこれほどとは……。
そんな内心を感じていると、一之江は。

「どうしました。私の私服姿があまりに美しくて言葉を失ったみたいな顔をして」

まるで、人の心が読めるかのように、核心を突いてくる。

「って、なんで解んだよ⁉︎」

「貴方の思っていることくらい、解るといつも言っているではありませんか。ほら、ボケた顔しないで、とっとと行きますよ」

俺に背を向けるようにして、一之江はスタスタと先に歩き始めてしまう。
一之江の後ろ手にはポシェットが握られていて、それもまた可愛いらしくて、普段、殺伐とした世界を生きる一之江に……年相応なお洒落好きな面があることが解ってなんだか安心してしまった。

「貴方もそれなりの格好をしていますね」

「まあ、それなりには」

「大変いい心がけです」

本当はどんな服を着ればいいか、よく解んかったので。今朝まで着ていた服をそのまま着てくるつもりだったんだが、朝風呂に入って着替えようとしたら、今まで着ていた服はリサに洗われていて。この服が用意されていたから着ただけだ。
メイドがいると、こういう時便利だよな。

「で、まずはどこに行くんだ?」


「百貨店のブティックからです」


先に行く一之江の後を追いかけて、その横に並ぶ。
途端、いい香りが漂ってくるのが解る。

「なんかいい香りがするな」

鼻が効く俺には、それが香水の匂いだとすぐに解った。

「会って早々、女の子の匂いを嗅ぐとか流石の変態ですね」

「そんなんじゃねえよ⁉︎」

プイッと、顔を背けてスタスタと一之江は先を歩いて行ってしまうが。
あいつ、普段から外出の時はこんな感じなのか?
それとも、俺と出かけるから……。

「って、流石にそれはないな」

一之江に限ってそんなはずはない。
理子が言うところの。
永久凍土(ツンドラ)少女。いや、一之江の場合。ナイフで刺すからツングサだな。
ツンツングサグサはあっても、ツンツンデレデレはない。
一之江と過ごした中で解ったが一之江にはデレはない。
デレないツングサ少女。
それが一之江だ。
そんな彼女が俺の為にわざわざお洒落や化粧をするはずがない。
そう結論付けて俺は彼女の後を追った。






百貨店に並んで入ると、一之江はまるで俺なんかいないかのように自由気儘に店内を歩き回り。気になる店があれば立ち止まり。ウィンドウを眺めていると思ったら、別の店に入って行ったりとその行動は先が読めない。
だけど、服を見ている時の一之江の横顔や、小物を物色している時の楽しそうな表情なんかを見ていると出かけて良かったと思ってしまった。
あっちのモードじゃないのに、そんな風に思ってしまうなんて……。
俺は……一之江の事が……。

「モンジ」

「っ⁉︎ ……なんだ?」

一之江に突然名前を呼ばれてテンパってしまう。
まさか、今のも読まれたのか?

「……不埒な事を一人でムフフとか、考え込んでいるのは構いませんが、そんなことより」

「不埒な事なんて考え込んでないからな!
……で、どうした?」

さらっとモンジ呼ばわりされてるが、もういい。突っ込むのも疲れた。

「ちょっと質問なんですが」

「ん?」

「この汚れを知らない乙女のような白いワンピースと、返り血に染まった戦乙女のような赤いワンピース。どっちがいいですか?」

一之江は両手に色違いますワンピースを持って俺に尋ねてきた。その行為そのものはまるでデート中のカップルがやりそうな事で、俺達くらいの年齢の男女がしてもおかしくはないのだが、いかんせん表現がおかしくないか?

「返り血ってお前な」

「貴方の血管を切り裂いた時に目立たないかな、と思いまして」

「やっぱり俺のかよ!」

「ですが、ほら。白いワンピースが貴方の血の色で染まるのもそれはそれで」

「どれがどれだ⁉︎ ってか結局俺はグッサリされんのかよ!」

「まあ、それが貴方ですし」

「さらりと嫌な存在認定するな!」

「まあ、軽く人間辞めてる貴方なら素手でナイフを受け止めるなり。相手がナイフを抜く前に倒すなり出来るのでいいではないですか。それはそうと。えーと」

一之江は何故か迷うように斜め上を見て。

「……どっちが私に似合うと思いますか?」

いい辛そうにそう口にした。
えっと。
なんだこれ?
これはどういった状況なんだ。
やっぱりデート的なアレだったのか?
実は一之江は俺のことを……みたいな?
いや、待て。早まるな!
これはアレだ。
これは偽デレ。女が標的を仕留める常套手段。ハニートラップという奴だ。
騙されるな。
武偵の弱点を忘れるな。
金、毒、女。
それらは武偵が堕ち易い弱点だ。
だから騙されるな!

「ほら、ニセデレしているのですから早く乗かって下さい」

「やっぱりニセデレかよ!」

ふぅ、危なかった。早まらなくて良かったぜ。

「当たり前じゃないですか。今はせっかくこういう状況だから試しにそれっぽいことをしているだけで、別に、貴方ノコトナンカ!」

「何で棒読みな上にカタゴトなんだ!
どうせ言うならそれっぽく言えよな」

「嫌ですよめんどくさい」

心底面倒くさそうに言う一之江。
こういう反応を見ると、安心する。
これでこそ一之江だな。

「それで……どっち、ですか?」

手に持ったままの白いワンピースと赤いワンピースを見せてくる。
そんなに俺を切り裂きたいのか!
まあ、切り裂く云々は冗談だとして……冗談だよな? 冗談だったとして。
どっちがいいかと言われても、女性の服なんてよく解らん。
なので。

「どっちでもいいさ。お前はお前だろ?」

お得意の生返事を返す。

「それより、一之江。
今日はありがとうな。わざわざ休みの日に会ってくれて」

からの……話題逸らし。

「貴方から感謝の言葉を聞かされても気持ち悪いだけですよ。本当に貴方は真性のバカなのですね、全く……」

プイっと顔を逸らす一之江。
真性のバカ。
初めて会った時から言われてるな、それ。

「何笑ってるんですか。気持ち悪いです。デュフフとかそんな風に笑ってないで、次行きますよ」

「デュフフなんて笑ってないよな⁉︎」

俺の抗議をスルーして一之江はスタスタ先を歩いてしまう。
全く、本当に。何を考えてるのか解らん奴だな。





「ほら、早く来なさい」

一之江の後を追うと、彼女は様々な店の中に入って、出たりを繰り返していた。

「歩くの遅いですよ、モンジ。次の店はお気に入りなんですから早く来なさい」

へいへい。今行きますよ。
しかし、次行くと言うが何件回る気だ?
女の買い物は長いとは聞くが……まさか、本当だったとは。
もうどこでもいいから早く入ろうぜ。
そう思った俺の視界に、猫のマークのカフェが目に入る。
猫の図柄のマーク……どこかで見たことがあるような気がする店なのだが……姉妹店とかだろうな。その店の隣はセレクトショップとなっていて、店内を覗くと森をイメージしてるのか、棚やケースが全部木製だった。
疲れたし、俺は隣のカフェでひと休みするかー。
そう思ったその時。

「ほら、あそこにある猫のマークのカフェ。あのカフェの隣にあるこの店は『シャトンbb(ベーベー)』というのですが。最近、この街に出来た私のお気に入りの店の一つです」

一之江はそう言うやいなや、店の中を我が物顔でスタスタ歩いて行ってしまう。
見慣れているのか、店員さんも「いらっしゃーい、今日は新作入荷してますよ」などと和かに接客してくる。

「ほら、モンジも来なさい」

店員さんは「おー?今日はカレシさん連れですか?」などと、一之江に尋ねるが。

「いいえ、ただの下僕です」

下僕ってお前な。

「ふふっ、仲がよろしいのですね? お兄さん、頑張って下さいね。
今日は彼女さんにどーん、とプレゼントを送って好感度を上げましょう!」

いや、違うんですって。

「そうですね、たまには貢がせてやりましょう」

一之江は店員さんの言葉でノリノリになる。
悪ノリに直ぐに乗る辺り、一之江は一之江だな。

「……なんだかとても失礼な事を考えられた気がします。
殺しますよ?」

「一之江様は清楚で優しく、大変可憐なお人です!」

……やっぱり心読めるんだな。

「まあ、いいでしょう。
店員さん、今日はアノ日ですよね?」

……アノ日?

「はい、本日は『シャトンbb月隠店&シャトンカフェ月隠店合同イベント☆シャトン・コール☆
優勝者にはお買い上げの商品全額無料引き換えキャンペーン! モフモフナデナデにゃんにゃにゃー』……の日となっております」

……どこから突っ込めばいいんだ。
というか、そのイベント。
よく思い出したら大阪でレキに服買ってやった店がやっていたイベントそのまんまじゃねえかー⁉︎ というかまんま系列店じゃねえかー⁉︎
何でこの世界にあるんだよ‼︎

「15時からの開始となっております」

店員さんに言われ時計を確認すると、後30分ほどある。

「参加しますよ、モンジ」

一之江の目が怖い。マジだ。
標的を狙う狩人の目になってる。







イベントまで少し時間があるので、その間に買いたい商品を選ぶ一之江と別れ、店内を物色した後、隣接するカフェでコーヒーを飲むことにしたのだが……何でこうなる?

「いかがですか?」

さっきの店員に連れて行かれた一之江が戻ってきたので振り返ると。
コーヒーを飲んでいた俺は「ぷはぁーっ」と噴き出してしまった。
というのもそれは______


よ、幼稚園児の、制服……!
それを着こなす。
ミズエちゃん5歳♡が目の前に立っていたからだ!

「な、なんだよそれー」

紙ナプキンで口周りを拭きながら、俺はイスごと後ずさる。
黄色い園児帽を被り、水色スモックを着て大人しく立っている一之江は、ご丁寧に胸に「さくらぐみ ミズエ」という名札を付けている。
い、いや、それより何より……おみ足が、凄い事になってるぞ。
丈だけ園児服なのか、驚愕のミニっぷりだ?股下1㎝を切ってる……絶対領域(スカートの中)が見えてるし。
な、なんてもん着てんだよ⁉︎
いかん、ヒスる⁉︎
動揺した俺の横で店員さんが。

「お客様大変お似合いですよー!」

大変お似合いですよ……じゃねーよ!
地雷だよ、誤爆だよ。
放送事故だよ。
世に出しちゃいけないもんだよ!

「……とりあえず、モンジ殺す」

「何故⁉︎」

「殺す」

「すまん!」

殺されるのは勘弁だ。
っていうか、お前もホイホイ着るなよ、そんなもん。

「……まさか買うのか、それ」

「……」

「……」

「……」

「……え、マジで⁉︎」

この間って……まさか⁉︎

「冗談ですよ」

ダ、ダヨナー。
本当に買う気ならドン引きもんだ。

「小さい頃着れなかったので、着てみたかっただけです」

ああ、一之江の家は金持ちだからな。
きっと海外暮らしとか、家庭教師が付いたりとかで、幼稚園に行ってなかったんだな。

「本命はコチラです」

一之江が指パッチンすると。
執事服の男が現れ、一之江に服を渡す。
……どこにいたんだ?
突然現れる黒服の男とか、なんか都市伝説っぽいな。
服を渡された一之江は試着室の中に入っていき。
シャラッ、とカーテンが開かれた向こうから、白いミュールの足が出てきた。
スタスタ、と店内を歩いてきた一之江に……。
店員、シャトン・カフェの客、俺、皆が視線を釘付けにした。
薄化粧され、梳い直した髪、白を基調としたノースリーブのワンピースを着た一之江は______

(き、キレイ……だな)

素直に、そう思ってしまう。
そもそも一之江の私服姿を見ること自体が新鮮なんだが。
それを差し引いても、やはり一之江は美少女だ。
元々人形のような端正な顔立ちに、清楚な服の組み合わせはよく似合う。

「どうです? 似合いますか?」

微笑んだ一之江の顔はとても綺麗だった。









一之江に確認すると、やはりシャトン・コールとは前にレキと体験したイベントで。
カフェの中にいる猫を自分達のテーブルに何匹呼び寄せられるかを競うものだった。
制限時間は1分。席を立ったら失格。手で掴むのもNG。
参加資格はカップルの男女。
カップルに間違わられるのは死ぬほど恥ずかしいのだが、背に腹は代えられない。
誤解されてる事を逆手に取って、カップルの振りで商品を無料でGETしてやろう。

『参加カップル名。疾風・瑞江』……と俺は震える手で黒板に名前を書く。

イベント参加者の名前を書く黒板を見る度に恥ずかしくなるのだが……。
一之江は俺の向かい側で平然と紅茶を飲んでいる。
優雅に、気品良く。
コイツには恥ずかしさとか、羞恥心はないのだろうか?
(しかし……猫を呼び寄せる、か……)

勝算は低いな。俺、動物に好かれないし。
昔、青海で迷子の子猫を見つけた時も爪で引っ掻かかれたくらいだし。

「はーい、準備はよろしいでしょうか?
はい、始め!」

そんな俺の心境を他所に、カフェの店員さんが開始の宣言をしてしまう。
店内にいた他のお客さんは、一斉に「おいで、おいで」しているが。
猫は寄り付かない。
それもそのはず。
猫は警戒心の強い生き物だ。
店内をウロウロするだけでは、寄り付かない。

「ほ、ほら、こっちにおいでー」

俺も近くにいた猫に手招きするが______フンッと、そっぽを向かれてしまう。
やはり、簡単にはいかないか。

「動物を従わせるレキやリサもいないしな……何とかしないと」

代金を支払う羽目になる。
さっき、店内を見て回ったが、置かれている商品は全て諭吉さんクラスを最低でも数枚支払わないといけない値段だった。
見かけとは違い高級店のようで。
庶民の俺では払えない。
何とかしないと財布がヤバイ……。
と、焦る俺の横にしゃがみ込み奴がいた。
一之江だ。
一之江は______猫に一度視線を向けると、猫達とは別の方に背を向けて。
一言。

「にゃーん」

と、言った。


……
……
……に……
……『にゃーん』……だ、と……?
聞き間違いじゃない。あの(・・)一之江が間違いなくそう言った。
絶対に言わないであろう言葉・ベスト3に入りそうな台詞の言葉。
それを言った。
っていうか……何でにゃーん?
鳴き真似のつもりか?
そんなことで猫が近寄るはずは……あれ?
て、店内の猫達が近寄って来ちゃったよ!

「なッ……?」

何故だ?

「当然です。猫すらも振り向かせることが出来る。
それが私『月隠のメリーズドール』ですから」

あー……これはあれだ。
さっきの鳴き真似。
きっとあれは……「来なさい。来ないとひどいですよ。来ないと振り向かせて殺しますよ?」的なものだったんだろうな。
一之江、怖い奴だな。 
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