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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第49話:グランバニアに吹く次世代の風

(グランバニア城)
マリーSIDE

学校が終わり家(城)に帰ると城内が騒然としてる事に気が付く。
リューノ・リューラ・アローと顔を見合わせてから近くの兵士に事情を尋ねる。
すると兵士から「アルル様がご出産なさいました!」と満面の笑みで報告を受ける。

私達は慌ててアルルさんの下へとダッシュする。
途中で私達が王家の者だと知らない兵士から「城内を走らない様に!」と叱咤されるが、プライベートエリアを警備してるのは近衛兵達だったので、叱られる事無くアルルさんの部屋まで行けた。

でもアルルさんの部屋に勢いよく入った為(ノック無し)、流石にお父さんに叱られた。
大きな音を出したら生まれたばかりの赤ちゃんを驚かしちゃうよね……
ゴメンね赤ちゃん。

さてさて……一体どんなイケメンが生まれたのかと思い、ベッドに上半身を起こして赤ちゃんを抱くアルルさんに近付く。
そしてお目当ての物体に近付くと……女の子だったー!

生まれたてだけど少し生えてる髪の毛はアルルさんと同じ黒。
チラッとだけど見えた目の色は、お兄ちゃんと同じ青。
この家系に産まれてきたので、将来はかなりの美女になる事が約束されている。

女の子だし、コイツもファザコン……もとい、グランファザコンになるのかな?
それとも世の中の男共を手玉に取る女になるのかな?
父親が誰か判らない子供が沢山生まれたりして(笑)

「ところで名前は決まったんですか殿下?」
あぁそっか……生まれた赤ちゃんには名前を考えなきゃならないんだよね。
よくぞ気付いたアローよ!

「うん。ずっと考えてたんだけど……僕には思い浮かばなくてね。アルルに聞いても考えてなかったみたいだし……先程皆で考えてたら、父さんが考え付いてくれたんだ」
ほほ~う……珍しい。今まで自分の子供に名付けた事が無いのに。

「で、どんな名前なんですか?」
「うん。アルルとティミーの間に生まれた女の子だし、“アルティミア”ってのは如何かなって言ったんだ。まぁ長いから“アミー”って呼ぶ様にしてさ」
あら良い名前! そんなセンスがあったんだ。

「でも残念ね。男の子じゃ無いから王位継承権が後回しになる」
つまりは私の王位継承権は動かないって事ね。
まぁ別に、王位なんて受け継ぐ気は無いから如何でも良い事なんだけどね。

「何で? 別に女王が誕生しても良いじゃん。つーか誰が王様やっても良いんだしさ」
「え!? じゃぁお兄ちゃんの次はアミーちゃんが王様になるの? お兄ちゃんに男の子が生まれたら譲らないの?」
男子継承が基本じゃないの?

「やりたいヤツがやれば良いんだよ。アミーがやりたくないと言い、次の子が男だろうが女だろうがやりたいと言えば、その子に王様をやらせる。やりたいってヤツが複数人居たり、誰も居ない場合は継承権の高位なヤツが強制的に王様になる」

はぁ~……それなりに考えてはいるみたいだけど、何だか混乱が起きそうな気がするわ。
今は良い……お兄ちゃんの代でも大丈夫……その先は如何なるだろうか?
ウルフが簒奪しちゃえば良いのに……そう思いチラッと彼に視線を向ける。

「ふざけんな、俺は絶対にヤダぞ! この国の最高権力者なんて、そんな重責は背負えない。王家の人間が貧乏クジだと諦めて勤めろ!」
王位が貧乏クジって凄い国ね。

……にしても大人しい赤ちゃんね。
別に寝てるわけじゃないのだけれど、泣く事なく辺りに視線を動かしている。
生まれたては視力が弱く、そんなに遠くは見えないのだろうけど、何を見詰めてるんだろう?

そんな事を思い私も皆と同じように赤ちゃんに顔を近づけた。
するとアミーちゃんは初めて現れた私に、小さな手を伸ばす。
思わず私も手を差し出し、そして彼女は私の人差し指を握る。

思いの外力強い。
グッと握られた指に戸惑ってると、アミーちゃんは私の目をジッと見詰めてくる。
まるで命令されてるかの様な力強い視線……何、この赤ちゃんの目力!?

「あ、あの……私はマリーです……そ、その……宜しくお願いしますぅ」
思わず敬語で応じた私……それを見て納得したのかニコリと笑って指を離してくれた。
何この()~!? 生まれながらの女王気質? 生まれが貧相な私には、唯々従うしか出来ない。

マリーSIDE END



(グランバニア城)
ビアンカSIDE

今城内は凄い喧噪に包まれている。
皆が新しい王族の誕生に喜び湧いている。
私もお祖母ちゃんになっちゃった……

“お祖母ちゃん”かぁ……リュカは『絶対にお祖父ちゃんとは呼ばせない』って言ってたけど、お祖母ちゃんはお祖母ちゃんよねぇ……
凄くお目出たい事で嬉しいんだけど、複雑な気分ね(笑)

赤ちゃんとお母さんを休ませようって事になり、アミーちゃんとアルルちゃんを大勢の近衛兵達が警備する寝室に残して、新生パパのティミー共々グランバニア城の1階に降りてきた。
そして色んな人々に揉みくちゃにされる我が息子。

でも目尻が下がりっぱなし。
何この幸福感!?
思わずリュカに抱き付きたくなって彼の姿を探す。

見つけた先にはパトリモーニ・レガシー財務次官に酒を薦められてる姿だった。
こんなに目出度い日だし、快く薦めに従えば良いのにリュカは頑なに拒絶してる。
「お前、この酒に薬を仕込んでるんだろ!?」

凄い王様だ……普通だったら引くよ、こんな事言われたら。
でもねパトリモーニも負けてないのよ。
「バレましたか、やっぱり。下剤を仕込んで日頃の鬱憤を晴らそうと思ったんですけど!」

リュカが信頼するだけあって、メンタルが強い。
「何だとぅ、とんでもない悪党だなお前は!? そんなヤツにはこうだ、お前が全部飲め!」
そう言ってパトリモーニを羽交い締めにすると、手近にあった未開封の酒瓶を手にし、飲み口を手刀で開け彼の体内に送り込む。

「うわっ……あの酒“スピリタス”よ。死んじゃわない、彼?」
何時の間にか隣に来てたマリーが、異常に詳しい酒の知識を生かし、心配する。
そんなに強いお酒なの?

案の定パトリモーニはダウン。
死んではいないみたいだけど、事態に驚いたリュカは近くに居たピピンに彼を押し付け逃げ出した。
因みに、空気の読める我が息子は言われるまま酒を飲み、もうフラフラになってる。

私も酒は得意じゃないので、薦められる前に逃げだそうとリュカが逃げた方へと向かう。
グランバニア城1階の広場を抜けると、そこには先に逃げたリュカの姿が……
どうやら私が来るのを待ってたみたい。流石愛する夫……私の行動はお見通し♥

私の姿を見つけ直ぐに手を取ると、そのまま城外へ……
「今日の主役はティミー等だ。僕等は避難してよう」
そう言ってルーラを唱えるリュカ。

何処へ行くのかしら?

ビアンカSIDE END



(山奥の村)
ダンカンSIDE

日も暮れて夕飯を食べ終えた頃、急にリュカとビアンカが尋ねてきた。
もう少し早くに来れば一緒に食事出来たのに……
そう愚痴るとリュカが……

「すいませんお義父さん。食事はグランバニアで済ませました……なんせ今、お祭状態ですから(笑)」
「祭状態? 一体何が……」
グランバニア城で何が起きてるんだ?

「お父さん。遂に私にも孫が出来たのよ」
なんと……ティミーの子供が生まれたのか!?
「そ、そうか……ワシは曾爺さんって事だな」
アルルさんのお腹が大きくなってたのは、何度か尋ねてきてくれたから知ってたが、まさか今日生まれてたとは。

「で、ではこんな所に居てはダメだろうリュカ。孫の誕生なのだし、お前は王様だぞ」
「良いんッスよ、今日の主役はティミー達だから。僕は酒が嫌いだし、静かな温泉にでも浸かってビアンカとしんみり幸せを味わおうと思ってるんで」

相変わらずリュカは自由人だな。
一国の王が頻繁に来て良い場所ではないのだがなぁ……
そうリュカに言ってもムダだろう。

孫が出来たというのに、まだまだ若々しい二人は手を繋いでラブラブと温泉へと向かう。
まぁビアンカが幸せなら良いだろう。
そうだ……二人は今日泊まっていくはずだから、明日の帰宅時はワシも一緒に連れて行って貰おう。

是非とも曾孫の顔を見ておきたい。

ダンカンSIDE END



 
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