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真田十勇士

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巻ノ三十六 直江兼続その九

「難攻不落じゃ」
「ははは、それは何よりですな」
 その幸村達のところにだ、兼続が来て言って来た。
「この城は確かに難攻不落です」
「その通りですな」
「はい、そうおいそれとはです」
「攻め落とせぬ城ですな」
「しかし」
 それでもというのだ。
「山城ですので」
「政にはですな」
「あまり向きませぬ」
 ここで兼続は少し残念な顔で言ったのだった。
「そのことはもうご存知ですか」
「はい、山城は戦の為の城です」
 幸村は兼続にすぐに答えた。
「守る為の城、ですが」
「政を見るにはです」
「不便ですな」
「行き来が楽ではないので」
 こう言うのだった。
「政には向きませぬ」
「お見事です、ですから」
「今はですか」
「この城がいささか不便になっております」
「左様ですか」
「はい、これからの城は山城ではなく平城」
「そして平山城ですな」
 幸村は強い声でだ、兼続に言ったのだった。
「あの城ですな」
「そうです、平山城なら」
 それならというのだった。
「守りに強く」
「そしてですな」
「政にも向いています」
「だからいいですな」
「安土城等です」
 幸村はこの城の名を出した。
「山にありますが」
「それでいて平城の要素も入れた」
「そうした城がよいでしょう」
「平城は段がないので」
 つまり高さがとだ、兼続は言った。
「攻められると守ることは難しいです」
「しかしそこに段を備えた平山城ならば」
「守ることも適している」
「そういうことですな」
「そうです、大坂城は」
 兼続はこの城の名前を出した。
「先程源四郎殿が出された安土城よりもです」
「見事な城であり」
「政によく」
「しかも攻めるに難い」
「そうした見事な城ですな」
「まさに」
「あの城を攻め落とすことはです」
 兼続は強い声のまま言った。
「不可能に近いです」
「はい、まさに」
「相当な大軍で攻めなければです」
「攻め落とせませんな、それに」
 さらに言うのだった。
「南から攻めねば」
「あの城の」
「それは出来ませぬ」
 到底というのだ。
「攻め落とすことは」
「南ですか」
「あの城は北、東、西は川が入り組みそこに堀が築かれております」
 水の多い大坂の地形を上手に使って築いたのだ。
「それ故に三方から攻めてもです」
「攻め落とすことは出来ない」
「はい、しかしです」
「南からだとですか」
「あの方角は開けています」
「そこに大軍を置いて」
「そのうえで攻めればかなりです」
 いいというのだ。 
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