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真田十勇士

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巻ノ三十六 直江兼続その七

「それは難しい」
「はい、戦国の世は裏切りが常」
「それ故にですな」
「義を貫くことは難しい」
「今は特にですな」
「そうじゃ、だから謙信公は凄い」
 その戦国の世で義を最後まで貫いて生きた彼はというのだ。
「かつて武田家と長く争ってきた方じゃがな」
「ですな、しかし殿」
 猿飛は謙信が信玄と争ってきたことを踏まえてこう言った。
「謙信公は信玄公と長い間争ってきましたが」
「それでもじゃな」
「文では書いていても」
「うむ、どうもな」 
 幸村も言うのだった。
「謙信公は信玄公をお嫌いではなかった様じゃ」
「そういえば確かに」
 伊佐も言う。
「謙信公は信玄公を何処かお好きな感じでしたな」
「そう思うな、伊佐も」
「拙僧もそんな気がします」
「武田と上杉は川中島で幾度も戦い」
 海野はこのことから述べた。
「多くの将兵を失いもしましたが」
「双方な」
「それでもですな」
「確かにのう」
 清海も袖の中で腕を組みつつ言う。
「これはお二人共な」
「信玄公もじゃな」
「はい、お嫌いではなかった様で」
「信玄公も謙信公も」
 由利は二人のことを合わせて言った。
「互いにお嫌いではなく」
「むしろな」
「情を感じていましたか」
「敵でありながら認め合う」
 穴山も考える顔で言う。
「そうした間柄ですか」
「お二人はな」
「不思議な間柄ですな」
「しかしよき関係かと」
 根津はこう考えた、二人の間柄を。
「それもまた絆でありましょう」
「敵同士でも人と人じゃかなら」
「絆が出来ますな」
「敵でありながら友であった」
 こう言ったのは望月だった。
「そうした間柄ですか」
「うむ、言うならな」
「ですか、そうしたものだったのですな」
「つまりですな」 
 霧隠も言う。
「お二人は共に同じだけの器の方々だったのですな」
「友であったからにはな」
「ですな、友は釣り合うものでなければなりませぬからな」
「その謙信公だからこそ」
 筧は謙信が信玄に匹敵する者だということから述べた。
「義を貫けた」
「そういうこであるな」
「左様でありますな」
「そういうことじゃ、あの方だからこそ」
 幸村はまた言った。
「それが出来たのじゃ」
「ですな、あれだけの方だからこそ」
「最後の最後まで義を貫けた」
「そして天下に名を残された」
「そうなったのですな」
「戦国の世は裏切りが常であるからな」 
 全ては生きる為だ、その為にそれが必要なのだ。 
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