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艦これ バッドエンド風味

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 「提督、だーいすきなのです!」
 「ははっ、ありがとうな、(いなずま)。」
 
 
 私の大好きな提督さんはそう言って、私の頭を撫でてくれました。
 それが嬉しくて、思わず笑みがこぼれます。
 
 
 「じゃあ、資源輸送任務よろしく頼むよ。」
 「はい!なのです!!」
 
 
 私は笑顔で出撃しました。
 
 
 
 
 
 
 
 ~遠征中~
 
 
 
 「そう言えば知ってる?」
 「何がですか、叢雲さん。」
 
 
 資源を輸送する船を護衛中にペアの叢雲さんが話しかけてきました。
 
 
 「提督って、好きな艦娘(ひと)がいるらしいのよ。」
 「へ、へぇ~。」
 
 
 内心ドキッとしました。
 
 
 (まさか、私の事を好きなのかな?)
 
 
 私の淡い予想はすぐに外れました。
 
 
 「提督って、あの加賀さんが好きらしいのよ。」
 「え!?」
 
 
 予想もしない名前、あの何事にも無関心そうな加賀さん…。
 なんで提督がそんな人の事を好きになったのでしょう…。
 意を決して聞いてみました。
 
 
 「提督さんはなんで加賀さんを好きになったのですか?」
 「青葉の話だから信憑性はないんだけど、前に提督と前線に出たことがあったじゃない?」
 
 
 そう、今から半年前。
 深海棲艦(しんかいせいかん)の拠点が見つかったのです。
 提督はすぐに攻撃を決意、持てる戦力すべてをその攻略戦につぎ込んだのです。
 勿論私、電もその攻略戦で敵駆逐艦5隻を沈める活躍をしました。
 
 
 「あの時、提督の乗っている軽巡洋艦が敵の戦艦の砲撃を立て続けに喰らって、轟沈したじゃない?」
 「はい。」
 
 
 そう、あまりに戦局がこちらの思惑通りに進んだ事が私たちの慢心につながったのでしょう、敵の戦艦三隻が提督の乗る軽巡洋艦の右舷側に出現、それに気が付いた提督はすぐに戦艦から離れましたが敵の方が早く提督の乗る(ふね)は大破して、提督も大けがを負ってしまいました。
 それでも提督は攻略戦を続行、無事にその戦艦も撃沈させ、私たちは鎮守府に帰還したのでした。
 
 
 「あの後、床に臥せった提督の看病をしていたのが当時の秘書艦(ひしょかん)の加賀さんだった訳。それ以来、あの二人は意識しあっているのよ。」
 「そ、そうなのですか。」
 
 
 「意識しあっている(・・・・・・・)」、その言葉を聞いた時、私の心に黒い靄が出てきました。
 
 
 「ちょっと電!?手から血が出てるわよ!」
 「え?」
 
 
 叢雲さんに指摘され、私ははっと自分の手を見やりました。
 掌に爪が食い込んで、少量の血が筋を作っていました。
 
 
 「どうしたの?」
 
 
 心配そうに私の顔を覗いてくる叢雲さん、なんだか今の私にはうっとおしく感じたのでした。
 でも、私はそんな事を感じさせないように無理やり笑顔を作りました。
 
 
 「何でもないのです。」
 「そう…。」
 
 
 提督さん、加賀さんが好きなんて嘘ですよね?
 ワタシハコンナニテイトクサンノコトガダイスキナノニ。
 
 
 
 
 
 
 ~遠征終了~
 
 
 
 
 遠征を終えた私は提督さんの姿を探して、鎮守府を走り回っていました。
 しばらく走っていると、見慣れた後姿を見付けました。
 提督さんです。
 提督さんはあまり使わない倉庫に入っていきました。
 扉が少し開いていたので中を覗いてみました。
 そこに私にとって信じられない光景が広がっていたのです。
 
 
 「加賀…。」
 「んっ、…提督。」
 
 
 何度も口づけを交わす二人の姿がありました。
 そして、提督さんは加賀さんの服を脱がし始めたところで私は逃げ出しました。
 私はショックだったのと、提督さんや加賀さんに対しての怒りが心に積もっていきました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 それから数か月後。
 
 
 
 「加賀、俺と結婚してくれないか?」
 「はい、喜んで…」
 
 
 幸せそうに見つめあう二人。
 提督は懐から小さな箱を取り出すと、中から指輪を取り出した。
 それを加賀の左手の薬指にはめる。
 本当に幸せそうに見つめあう、だがその幸せもすぐに壊れてしまう。
 
 
 「私……感情表現が……その……。提督、私、これでも今……とっても幸せなのですけれど……」
 「ああ、君を絶対に幸せにする」


 そう言って、二人は抱き合う。
 そして、どちらからとも無く唇を合わせると、微笑みあった。
 次の瞬間、加賀と提督の表情が一変する。


 「ぐ、が…」
 「あ、ぐ…」


 それもそうだろう、二人の腹部には一振りの日本刀が刺さっていたのだから。


 「こんばんは、なのです」


 二人を刺した(犯人)は張り付いた様な笑みを浮かべながら、痛みに呻く二人に声を掛けた。


 「いな、づまっ!おま、え!何をしているのか、分かっているのか!」


 痛みに耐えながら、提督は電を睨む。


 「分かっているのです。提督は電のものにならない……。だから………」


 そう言った電の目が怪しく光る。


 「まさかっ、深海棲艦化!!?」


 提督の表情が恐怖に彩られる。
 そして、それが提督の最後の言葉となった。
 異変に気がついた憲兵隊が現場に到着すると、そこには一組の男女の死体が転がっていた。
 上半身は吹き飛ばされ、辺り一面に血や肉、骨片が散らばっており、死体を見慣れていない新人憲兵は夕飯を戻した。
 ベテランの憲兵ですら、顔をしかめるような惨状の真ん中に犯人()は立っていた。
 電は目の前の死体を見ながら、ケタケタと笑い転げていた。
 それを目にした憲兵は戦艦『武蔵』、『長門』、『霧島』に応援を要請。
 戦艦三人がかりで電を押さえつけ、拘束。
 拘束された電は全てを自供し、雷撃処分となった。
 
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