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マネージャーは大変

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9部分:第九章


第九章

「一回こっきりの名前だし」
「そういう名前って多いしね」
「ファンの人はすぐにわかっちゃうけれどね」
 祐美と有子もここで言う。
「それでもまあ。私じゃないってことで」
「子供には言えないけれど」
 母親の顔も出て来た。
「十代の女の子になるだけだったらいいけれどね」
「それでも演じる内容が問題なのよね」
「そうそう」
 表の仕事の話と裏の仕事の話が混ざり合っていた。
「旦那に言ったらどうなるかしら」
「夜凄くなりそうね」
「っていうかなったわよ」
「あら、そうなの」
 こんな話にもなる。今度は仕事と家庭が混ざり合っていた。その中で四人はそれぞれ話をしていく。顔は何やら少女めいたものにもなっていた。
 そしてその中で房江は静かにビールを飲んでいた。時折焼き鳥をつまむ。
 四人は彼女に気付いて。それで彼女に声をかけた。
「ねえマネージャー」
「マネージャーはどうなの?」
「どうなのって?」
 四人の言葉に対して顔を向けて問う。
「何か四人で色々仕事とか家庭の話してたけれど」
「いえ、マネージャーって声のお仕事に関わってて」
「どうなのかしら」
「それが聞きたいけれど」
「どうってどういうこともないわよ」
 ジョッキを置いてそのうえで述べるのだった。
「本当にね」
「あれっ、何もないの」
「別にどうもないの」
「ないわよ」
 素っ気無いまでにあっさりと答えた。
「本当にね」
「そうなの」
「私達ってかなり色々あるのにね」
「そうそう」
「私は声を出さないからね」
 理由はそれだという。確かに声優のマネージャーをしているが彼女自身が何かを喋るわけでもない。あくまで裏方で事務なのである。
「別にね。何も」
「そうなんだ。素っ気無いのね」
「そんな感じなの」
「そうよ。そんな感じよ」
 やはり素っ気無く答えはする。
 しかしここで。彼女はこうも言うのだった。
「ただね」
「ただ?」
「何かあるの?」
「こうして声の仕事に関わるのは楽しいわね」
 目を細めさせての言葉である。
「やりがいがあるわ」
「やりがいがあるの」
「マネージャーっていうのも」
「だって皆がそうして声のお仕事してるでしょ」
 その声優の仕事である。そのことを言うのだ。
 
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