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真田十勇士

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巻ノ三十二 会見その十

 しかし二の丸彼等が今から攻めるそこはだった。
「二の丸にはな」
「旗がかなり少ないですぞ」
「それだけ兵が少ないか」
「その様です」
「この石垣も壁も高く険しいが」 
 鳥居は二の丸の石垣も高く険しいことは認めた、だがだった。
 それでもとだ、こう言ったのだった。
「門から攻めるよりもよいか」
「それではですな」
「ここは、ですな」
「石垣と壁を越えて」
「そして攻めますか」
「そうするか、ではな」
 鳥居はあらためて言った。
「石垣を登れ、そして壁まで越えよ」
「はい、では」
「その様に」
 足軽達も答えた、そして六文銭の旗が少ないその二の丸を攻める為にだ。
 石垣に向かった、それを本丸の櫓から見てだった。
 昌幸は確かな声でだ、こう言った。
「よし、これもじゃ」
「読み通りですな」
「この状況も」
「うむ、よい」
 まさにと言うのだった。
「まさに読み通りじゃ」
「ですか、では」
「後は源三郎様と源四郎様がですな」
「やってくれますな」
「必ずな、そしてじゃ」
 さらに言う昌幸だった。
「敵を城から追い出しても終わりではないぞ」
「ですな、そのうえで」
「後は容赦なくてですな」
「その用意の確認をしようぞ」
 こう言ってだった、昌幸は。
 今は櫓で戦の状況を見守っていた、そして。
 徳川の兵達が二の丸の石垣に張り付いたその時にだった、信之は壁の向こうに隠れていた兵達に告げた。
「よし、今じゃ」
「はい、これよりですな」
「攻めますか」
「我等も」
「鉄砲を撃て」
 まずはこれだった。
「弓矢を放ちな」
「そして、ですな」
「石も丸太も投げ」
「徹底的にやりますか」
「そうせよ」
 まさにと言うのだった。
「容赦なくな」
「はい、わかりました」
「それではです」
「これより攻めましょうぞ」
「一気に」
「敵を引き付ける」
 信之は強い顔で言った。
「そしてそのうえでな」
「一気にですな」
「敵の動きが止まったところで攻める」
「そうするのですな」
「この上田城の石垣は忍の者でも越えることが難しい」
 忍の術を身に着けている信之でもだ、無論幸村達も同じだ。
「それでじゃ」
「まさにですな」
「敵が石垣に着いた時」
「その時こそですな」
「そうじゃ」
 まさにと言うのだった。 
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