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接客騒動

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2部分:第二章


第二章

 それでだ。その炭を見て言うのだった。
「炭焼きか。これで焼くと美味いんだよな」
「ああ、肉なんか特にな」
「じゃあこれで焼いてな」
「たらふく食うか」
「言うまでもないがここにある肉は食っていいからな」 
 曹長の方もわかっていてだ。彼等にこう話す。
「思う存分な」
「有り難うございます、それでは」
「今から焼かせてもらいます」
「民間のお客様の為にもどんどん焼いてくれ」
 二番目に言うのだった。メインのことを。
「わかったな」
「じゃあどんどん焼きますんで」
「炭も入れておきますね」
「調味料に塩と胡椒も忘れるなよ」
 曹長はこのことを言うことも忘れない。
「いいな、絶対にな」
「わかってます。醤油はこっちですね」
「ソースや焼き肉のたれもありますね」
「お客様のものはもう部屋に置いてあるからな」
 見ればテーブルの上に全部揃っている。そうした用意はちゃんとしている。 
 皿と箸もあった。皿は銀の厚いアルミのものが大小それぞれかなりの数があった。箸は割り箸がだ。束になって用意されていた。
 そうした整った状況の中でだ。彼等は調理にかかるのだった。
 炭を下に置いた網の上に肉や野菜をどんどん置く。塩と胡椒をかけそしてひっくり返したりしながらだ。彼等はその肉や野菜を次々に手にしている皿に入れていく。
 そしてだ。その肉をおもむろに食うのだった。
 それぞれの皿にはもうソースやたれ、醤油がある。それにつけてだ。
 食うそれは美味くだ。彼等は満面の笑みで言うのだった。
「美味いな、本当に」
「全くだぜ。やっぱり肉だぜ」
「肉たらふく食わないと動けないからな」
「命の保養だぜ」
 こう言いながら食う。その肉の焼き方はというと。
 半分生焼けだったり焼き過ぎて焦げていたりしている。かなり雑だ。だがその肉達を彼等は実に美味そうに食うのである。
 曹長もだ。監督をしながら彼等が差し出す肉を食う。そして言うことは。
「お客様にも焼いているな」
「はい、しっかりと焼いてます」
「安心して下さい」
「とにかくどんどん焼いてくれ」
 大事なのは量だというのだ。
「いいな、お客様にもたらふく食ってもらうからな」
「わかってますよ。焼いてますから」
「ほら、もうこんなに」
 見ればだ。もうだった。
 銀の大きな皿にだ。肉がうず高く積まれている。それを見てだ。
 曹長も満足した顔になりだ。こう言うのだった。
「いい感じだな。それでいい」
「はい、じゃあこれ出してですね」
「そうしていいですね」
「まずはそれだけだ。しかしな」
 それでもだと。曹長は今度はビールの缶を空けながら話す。
「それだけで終わりじゃないからな」
「あればあるだけですよね」
「とにかく」
「そういうことだ。とにかく食わないとな」
 曹長の考えにはあることが決定的に欠けていた。それは作業の者達も同じだった。 
 高草と田村もだ。こう言うのだった。
「とにかくどかどか焼いてたらふく食ってもらってな」
「ビールも飲んでもらってな」
「ああ、そうしてもらうか」
「しっかりとな」
 とにかく量だった。何もかもが。
 そしてソーセージを食べる。焼いたそれにはちゃんと黒い焦げめがある。
 それに焼き肉の甘口のたれをつけてかじりだ。高草が言う。
「美味いな、このソーセージも」
「だよな。いい肉使ってるのかね」
 田村はウスターソースだ。それをつけての言葉だ。
「このソーセージ」
「みたいだな。美味いぜこれ」
「お客さんも満足してるだろうな」
 こう言ってだ。彼等はビールも飲む。彼等の顔は次第に赤くなってきていた。
 彼等は酔いながらもどんどん焼いていく。食うことを第一にしてだ。尚これは一応味見ということにはなってはいるようだ。
 だがそれでもだ。肝心の客達はというとだった。
 
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