| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ三十一 上田城の戦いその九

「準備は整っているというしな」
「そしてですな」
「それに死ぬ時は共にと誓っておるな」
「はい、義兄弟として」
「それならばじゃ」
 是非にと言うのだった。
「御主達は共に行け」
「そう言われますか」
「わしも一緒じゃがな」
「兄上もそう言われるのなら」
 幸村は深く考える顔になってだった、そしてだった。
 そのうえでだ、十人にこう言った。
「わかった、ではな」
「はい、有り難うございます」
「それではです」
「共に参りましょう」
「徳川殿の本陣まで」
「うむ、やはり我等は常に共にいることになるな」
 今は微笑んでだ、幸村は言った。
「そうした運命の様じゃな」
「そうですな、やはり」
「我等は共に生きる運命にあります」
「常に共にあり」
「そして戦いの場に赴く」
「それが我等ですな」
「その様じゃな、では行こうぞ」
 こうしてだった、幸村は十人の家臣達を連れて兄と共に徳川家の本陣に向かった。その徳川の陣を見るとだ。
 黄色の旗が立ち黄色の具足の兵達がいた。その彼等を見てだ。
 十人は確かな笑みを浮かべてだ、こう言った。
「見事ですな」
「徳川家の黄色は何時見てもいいですな」
「何処でも映えまする」
「よい色です」
「そうじゃな、黄色は土の色じゃが」
 幸村は五行思想から話した。
「その土がじゃ」
「我等の前に来ておりますな」
「赤の我等に」
「その前に」
「火は土に負ける」
 ここでも五行思想から言う幸村だった。
「そうなっておる、しかしな」
「それでもですな」
「それは覆せる」
「左様ですな」
「そうじゃ、しかも拙者も火の気を持つ様じゃが」
 幸村は自分のことからまた話した。
「御主達はそれぞれの気がある」
「それがし達もですか」
「それぞれですか」
「気がありますか」
「うむ、佐助と鎌之助は木じゃな」
 まずはこの二人のことからだ、幸村は話した。
「山での戦を得手としておるしな」
「確かに。それがし達は」
「言われるとそうですな」
「才蔵と海野六郎は水じゃ」 
 この二人はこちらだというのだ。
「才蔵は霧を使いこちらの六郎は水での戦が大の得意であるからな」
「言われてみれば」
「左様ですな」
 二人も納得する、そして。
 幸村はさらにだ。今度は穴山と筧に言った。
「小助と甚八は金か」
「鉄砲を使うから」
「雷も使うからですな」
「そうじゃ、御主達はな」
 まさにというのだ、そして次は。
「伊佐と望月六郎は火か」
「確かに。拙僧気だけでなく火の術も得意です」
「拳に火も使いますぞ」
「だからな、そして最後はな」
 幸村は残った清海と筧に言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧