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隣は魔女

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第六章

「サバトとかも出ていないよ」
「じゃあ好きなものは?」
「好きな食べものは?」
「趣味はお風呂らしくてね」
 それでとだ、ヴォルフガングはまた答えた。
「ザッハトルテ好きだよ」
「意外と普通だね」
「魔女でもね」
「普通の人なんだ」
「悪魔が家に来たりとかないんだ」
「全然ないよ、交通ルールだってしっかりと守るし」
 法律は細かいところまで守るというのだ。
「全然ね」
「そうなんだ」
「普通の人なの」
「魔女でも」
「そうなんだ」
「そうだよ、そこまで気になるのならね」
 それならとだ、また言ったカテローゼっだった。
「一回行ってみたらいいよ」
「魔女のお婆さんのところに」
「それでなんだ」
「実際にその目で見てみればいい」
「そうなんだね」
「うん、そうしたらいいよ」
 話を聞くよりもその目で見て、というのだ。そして実際にだった。
 皆はカテローゼの家に行ってみた、もっと言えば彼女の店にだ。すると彼女は。
 子供達を迎えてだ、笑顔で言った。
「これはこれは。よく来てくれたのじゃ」
「魔女のお婆さんだね」
「そうだね」
「魔法を使うっていう」
「その人だよね」
「左様、わしは魔女じゃよ」
 その通りだとだ、魔女は笑って子供達に答えた。店の中は暗く装飾されていておどろおどろしくそれでいて何処かコミカルな感じだ。店の中には様々な魔女の品が売られている。
「箒に乗って空も飛べるぞ」
「それで魔法の品を売ってるんですよね」
「魔女が調合したお薬も」
「使い魔もいて」
「箒でお空を飛んで」
「そうじゃよ、どれもやってみると楽しいぞ」
 その口をひょっひょっひょっ、と笑わせての言葉だ。
「実にのう」
「魔法は、ですか」
「楽しいんですね」
「そうなんですね」
「けれど悪魔に魂を売るとか」
「そうしたことは」
 皆言うことはヴォルフガングと同じだった、ただ彼等はわかっていて言っている。そこがヴォルフガングとは違う。
「ないですよね」
「別に」
「ないぞ、学ぶものじゃよ」
「勉強してですね」
「身に着けるものなんですね」
「左様、ここに来たからにはな」
 ここでだ、カテローゼは思わせぶりに企む様に笑って言った。
「魔法の品を買っておいてくれよ、例えばな」
「例えば?」
「例えばっていいますと」
「これとかじゃ」
 こう言って差し出したのは黒い飴がかなり入ったガラスの箱だった。カテローゼは子供達にその飴を見せつつ言った。
「わしが作った飴じゃよ」
「その飴もなんだ」
「魔法が使われてるんだ」
「そうなんだ」
「そうじゃよ、これを舐めれば」
 そうすればというのだ。
「喉のいがいがが治るのじゃ」
「へえ、お薬みたいに」
「そうなるんだ」
「そうした飴なんだ」
「そうじゃ、風邪薬なのじゃ」
 そうでもある飴であるというのだ。
「安いぞ、どうじゃ」
「甘いの?」
 子供の一人がカテローゼに尋ねた、店のカウンターに黒猫を膝の上に置いて座っている彼女に対して。 
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