イエ
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第六章
「確かに美味いぞ」
「ルーマニアワインいいぞ」
「料理も美味いが」
「ハンガリーにも負けていない」
「いいワインだ」
料理も人気になっていた、これまでは吸血鬼一辺倒だったが。
そうしたところも注目されだした、それでだった。
ゲオルゲは店が終わった後でだ、共に後片付けをするエレナに笑顔でこう言った。
「いいことだな」
「そうね、あのフェスタからね」
エレナも笑顔で応える。
「明らかに変わったわね」
「観光客の目当てがな」
「吸血鬼がメインにしても」
「それだけじゃなくなったな」
「完全にね」
「音楽に料理にな」
「ワインにね」
そうしたもに全てがというのだ。
「お目当てにされてきているわね」
「本当にね」
「それでだけれど」
エレナは夫に自分から話を出した。
「イエもね」
「あの服もか」
「凄く注目されているそうよ」
「そうか、あの服もか」
「それでだけれど」
ここからが本題だった。
「うちのお店でもウェイトレスの娘にね」
「イエを着てもらうか」
「そうしたらどうかしら」
「いいな、それは」
夫は妻のその提案に目を輝かせて言った。
「あれが一番注目されてるしな」
「ワインよりもね」
「あれで観光客の目を引いたしな」
「それだとよ」
「うちの店でもやるか」
「普通の服だとね」
店の娘達が着る服、それがだ。
「今一つ愛想ないでしょ」
「他の国と同じじゃな」
「だからね」
「ここは、だな」
「うちのお店もイエを出しましょう」
「わかった、じゃあそうするか」
「これからはね」
ゲオルゲはエレナの言葉に頷いた、そしてだった。
すぐに女の子達の服をイエにした、エレナのその読みは当たってだった。
店はイエに注目した観光客達それにルーマニア人達でさらに繁盛した。それでゲオルゲはエレナに仕事前に言った。
「正解だったな」
「そうね」
「いや、イエは本当にいいな」
「そうね、民族衣装のお陰で我が国のイメージが変わって」
そしてと言うのだった、妻も。
「うちのお店も繁盛してるし」
「本当によかったな」
「我が国は吸血鬼だけじゃない」
「イエもあるし音楽もお料理もワインもある」
「そのことが他の国にも知られてね」
「イメージも変わって観光客も増えた」
「本当にいいこと尽くめよ」
こう笑顔でだ、二人で話すのだった。
そしてだ、妻は夫に笑顔のままで言った。
「じゃあ今日もね」
「頑張って働くか」
「繁盛してるなら繁盛してるだけね」
「頑張ろうな」
二人で笑顔で話すのだった、そして今日も仕事に励むのだった。ルーマニアのイメージを変えてくれたその服と共に。
イエ 完
2016・2・27
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