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真田十勇士

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巻ノ三十 昌幸の智略その十四

「しかしその武田家が滅んだ今はな」
「最早ですか」
「無念であったがその時に決めたのじゃ」
「真田は真田でやっていくと」
「大名として生きるとな」
「左様でしたか」
「織田家に従うにしても」 
 織田家の天下になると思ったからだ、本能寺の変までは。
「大名としてな」
「従われるおつもりでしたか」
「上田の地でな」
「ではあの時前右府殿が今の徳川家の様なことを言われていれば」
「その時はな」
「やはり今の様に」
「していたやもな、とにかくじゃ」
 今はと言うのだった。
「わしはこの家を守る」
「そうされますか」
「大名家としてな」
「ですか、それでは」
「うむ、上田の城まで敵を引き寄せ」
 昌幸はあらためてこれからの戦の仕方を述べた。
「そこからじゃ」
「反撃ですな」
「徹底的に叩き上田から追い出す」
 徳川の軍勢、彼等をというのだ。
「よいな」
「そして二度とこの上田に攻めて来ぬ様にしますか」
「そうする、では皆あらためてそれzれの持ち場につくのじゃ」
 全ての家臣達に強い言葉で告げた。
「決める時が来ようとしておる」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「我等それぞれの場に戻り」
「死力を尽くして戦いまする」
 家臣達も応えた、そしてだった。
 昌幸は全ての者をそれぞれの場に置き徳川の軍勢を待ち受けた、上田の城はいよいよその周りを騒がしくさせていた。
 その中でだ、幸村は己の屋敷において赤い具足に具足を身に着けその具足と同じ色の陣羽織を羽織ってだった。鹿の角が生えた兜を持ち。
 十人の家臣達にだ、強い声で言った。
「これより徳川家との決戦じゃ」
「上田の城において」
「いよいよですな」
「この度は徹底的に戦いな」
 そしてと言うのだった、家臣達に。
「城を囲むのを解かせてな」
「そしてそこからも追い」
「上田から追い出す」
「そうするのですな」
「そうじゃ、父上はその様にお考えじゃ」
 昌幸の考えもだ、幸村は話した。
「この上田に二度と攻めようと思えぬまでにな」
「とことんまで、ですな」
「徳川殿の軍勢を攻める」
「そして上田から追い出す」
「それが大殿のお考えなのですな」
「そうじゃ、間違いなく激しい戦になる」
 このこともだ、幸村は家臣達に告げた。
「戦は常にそうじゃが命を落とすやも知れぬ」
「我等のうち誰かが」
「そうなることもですな」
「有り得る」
「そう仰るのですな」
「拙者もじゃ」
 語る幸村自身もというのだ。 
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