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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第2章:埋もれし過去の産物
  第29話「秘められし過去」

 
前書き
キャラが多すぎると動かすのが大変ですね。
動かすのを少しでも怠れば影が薄く...。

...っと、今回は司(当時)の視点から始まります。
 

 






   ―――■■■!!

   ―――■■■...?どうして、戻ってきたのですか...?
   ―――せっかく、他の騎士に頼んで遠い所へ行ってもらったのに....。

   ―――これは...一体どういうことですか!?

   ―――...人の身に余る力を身に付けた、その代償です。

   ―――代償...?■■■、まさか....!

   ―――...はい。あの時、私の体に取り込まれた結晶です。

   ―――バカな...!あれは既に■■■が封印したはず...!

   ―――...できてなかったんですよ。人間には、無理だったんです...。

   ―――そんな....!?

   ―――...日に日に、力を抑える封印が解けて行くのが分かりました。
   ―――いつか、この力が暴走してしまうと私は悟りました。
   ―――だから私は、貴女だけでも逃がしたかった。

   ―――っ...他の、騎士達は....?

   ―――私を止めようとしました。...だけど、無駄だった。

   ―――そんな...!あの屈強な騎士達が...!?

   ―――隣国からも、辺境からも騎士はやってきました。
   ―――皆皆、私を止めようとしました。...だけど、それも無駄だった。

   ―――っ......。

   ―――それを分かっていたからこそ、■■■、貴女だけでも逃がしたかった...。

   ―――■■■.....。

   ―――でも、貴女は戻ってきてしまった。
   ―――今からでも遅くない。どうか、逃げて....。

   ―――...見くびらないでください!!

   ―――っ....!?

   ―――逃げる?私は■■■の騎士だ!主である■■■から逃げるなど、言語道断!!
   ―――暴走?それがどうしました?そんなの、私が止めればいいだけ!!

   ―――っ、ダメなんです!これは、人間に抑えられる物じゃ...!

   ―――そんなの!やってみなくては分かりません!
   ―――それともなんですか!?私の...貴女の騎士の力が信じられないと!?

   ―――....だからって....。

   ―――私は貴女を止めてみせる。...例え、幾千の時が流れようとも!!











       =司side=



「....ごめんね?」

  シュラインの穂先で、切り裂く。

「母、さん.....。」

  フェイトちゃん...その偽物が瓦解し、消えて行く。

「...偽物で弱体化してるとはいえ、これはちょっと厳しいかな...?」

  クロノ君から聞いた限りだと、大規模で張った結界内のどこにでも偽物は出現するらしい。
  ...正しくは、出現する範囲に結界を張ったんだけどね。

「その内、群れで攻めてくるとかないよね?」

  ただでさえ、偽物とはいえ知り合いが暗くなってるんだ。
  精神的にも少し辛い...。

〈マスター。〉

「...っと、言ってる傍からまた....。」

  魔力を持つ誰かが佇んでいるのをシュラインが感知する。また誰かの偽物だ。
  この辺りは私に任せられたから他の皆はいないはずだしね。

「あれは...奏ちゃん?」

〈バリアジャケットも纏っていない....病院の患者が着る病衣を着ていますね。〉

「んー...どういうことだろう?」

  今まで出会った偽物は皆バリアジャケットを着ていた。
  まぁ、偽物が皆魔導師や騎士だから仕方ないんだけど...。
  ....でも、奏ちゃんも魔導師なはず。なのに、どうしてバリアジャケットを纏わないどころか、病衣なんて着て浮いているんだろう?...偽物だとしても気になる。

「....ここ、どこ?」

「(上空...って答えればいいのかな?この質問は。)」

  どこか現実を見れていないような表情でそう呟く奏ちゃんの偽物。

「....?髪が白い?...おかしい、私って、茶髪だったはず...。」

「えっ....?」

  何かが食い違っている。まるでそんな風に聞こえたため、つい声を出してしまった。

「...誰...?」

「えっ...と.....。」

  今までの偽物とは違う気がして、少しどもってしまう。

「っ....今、貴女は夢を見ているようなものなの。だから....!」

「っ!?」

     ―――ギィイン!

  心苦しいというか、明らかに非人道的なやり方だけど、奏ちゃんの偽物を倒すため、シュラインを振う。...けど、それは偽物の手首辺りから生えた剣に防がれた。

「ハンドソニック...!」

「っ、いきなり...なにするの...!?」

「ごめんなさい!でも、こうするしか...!」

  再び、シュラインを振う。

「あぐっ....!?」

  一度はまた防がれたけど、シュラインを回転させ、柄の方でお腹を殴る。

「....ごめんね。」

〈“Holy Smasher(ホーリースマッシャー)”〉

  怯んだ隙にバインドで拘束し、砲撃魔法で撃ち抜く。

「そんな....まだ、()()()にお礼を...言えてない.....の..に.....!」

「..........。」

  そんな悲痛な言葉と共に、奏ちゃんの偽物は消えて行った。

「“あの人”....って、織崎君の事じゃないよね?」

〈おそらくは。〉

「(...もしかして、転生する前の奏ちゃん...なのかな...?)」

  そんな事を考えながら、私は原因究明の探索に戻ろうとした。

〈マスター!二時の方向にて、魔力反応が!〉

「っ、本当だ。.....戦闘?」

〈はい。一つと...恐らく二つの魔力反応がぶつかりあってます。〉

  結構離れてるのに感じ取れるって、相当な魔力だよね....。

「...行こう。シュライン。」

〈はい。マスター。〉

  ぶつかり合うって事は、片方は確実に偽物じゃないはず。
  もしかしたら、追い詰められてるかもしれない!だったら、助けないと...!











   ―――時は少し遡り...





       =優輝side=



「...ん?あれは...?」

  飛行中、視界の奥の方に何かを見つける。

「緋雪、見えるか?」

「んー....なんか....靄みたいなのが見えるよ?」

  靄?なんでそんなものが..って、ただの靄じゃないか。

「とりあえず、警戒しつつも近づいてみよう。」

「うん。」





「....なんだ、これ....?」

「き、気味が悪いよ...。」

  近づくと、そこには黒い靄のようなものが中心から吹き出ていた。
  魔力も感じ取れるが、緋雪の言う通り気味が悪い。

「っ、あれは.....司、さん....?」

「えっ!?ど、どうして....!?」

  靄の中心地点には、司さんらしき姿が見えた。
  バリアジャケットも以前見た事があるものだし、間違いないはず。

「......偽物...ではあるはず。」

「に、偽物だからってこうなるの!?」

「さ、さぁ...?なるんじゃないの?」

  解析魔法を使ってみるが、靄の魔力に妨害されて分かりづらい。一応、司さん本人の波長とは少し違うとは分かったけど...。

「―――ごめんなさい....。」

「えっ.....?」

  暗く、響くように声が聞こえた。...司さんの声だ。

「ごめんなさい....ごめんなさい.....。」

「司...さん.....?」

  何かを深く後悔するような、そんな謝罪の声に、僕は戸惑う。

「お、お兄ちゃん...どうしたら...。」

「(倒すのは変わりない。けど、何かおかしい...。)」

  それに、不用意に攻撃するのは....。
  そう考えていた僕の耳に、また司さんの言葉が聞こえてきた。

「ごめんなさい....お母さん、お父さん...。病気が治ってしまって、ごめんなさい....。」

「(病気...?治る....?)」

()()のせいで巻き込んでしまって....ごめんなさい、優輝君.....。」

「え.......?」

  “お母さんお父さん”“病気が治る”....そして、僕の名前。
  この三つのキーワードに、思わず耳を疑った。

「.....聖司....?」

「っ......!?」

「え?お兄ちゃん?」

  思わず呟いたその名前に、司さんの偽物が動揺したのが見えた。
  同時に、黒い靄も揺らめく。...司さんとリンクしてるのか....。

「優輝君....?優輝君なの.....?」

「まさか...本当に聖司なのか...?」

  TS転生者だとは、ステータスを視た時にとっくに知っていた。
  だけど、前世の名前とかまでは見られなかった。
  まさか、あの日実の母親に殺された聖司だなんて.....!?

「お兄ちゃん、“聖司”って一体....?」

「....前世の、親友の一人だ。」

「嘘..!?じゃあ、司さんってもしかして...!?」

  僕自身も驚いている。まさか、聖司が転生していたなんて...。

「そんな.....ボクのせいだ....ボクが巻き込んだから....。」

「聖司....お前は...。」

「こないでっ!!」

  瞬間、僕と緋雪は咄嗟にその場から飛び退く。
  すると、次の瞬間には靄が先程までいた場所を薙ぎ払っていた。

「ボクと関わったから、ボクなんかがいたから....!優輝君を巻き込んでしまったんだ!だから転生なんて....死んでしまう目にも遭ってしまったんだ!!」

「.......。」

「全部、全部....ボクの...せいで....。」

  悲しみを吐露するように司さんの...聖司の闇の欠片は涙を流す。

「....緋雪、下がってて。」

「えっ?お兄ちゃん?」

「...これは、僕が倒す。」

  緋雪を下がらせ、僕は臨戦態勢に入る。

「....親友として、僕がやらなきゃいけないんだ。」

「お兄ちゃん....うん、わかったよ。助けが必要ならいつでも呼んで!」

  しかし、不用意に接近するには嫌な予感しかしない。
  なので、最初は様子見で....。

「っ、こないでってば!!」

「っ!」

  また靄が薙ぎ払われたので、躱す。

「....やっばい威力だな。受け流せるのか?」

  躱す際に設置型の防御魔法を置いたのだが、いとも容易く破られた。

「黒い靄....。司さんの能力は祈りを実現する能力.....。」

  そう、つまり感情によって左右されたりもする能力だ。

「っ....!(まさか、負の感情が漏れ出ているのか...!?)」

  黒い靄の正体がそうだとしたら、相当やばいな...。

「(けど、結局は魔力の塊に他ならない。なら、魔力を纏わせれば切り裂く事は可能だな。)」

  解析魔法をかけた結果、靄からは強い...というか、ドロッとした感覚の魔力が感じ取れた。つまり、概念とかそんな感じじゃないって訳だ。

「“ドルヒボーレンベシースング”!」

     ―――バシュゥッ!!

「...なるほど。」

  砲撃魔法を離れた所から放つが、靄によって阻まれる。

「(今の所自己防衛でした靄は動いていない。...攻めるなら...今っ!!)」

  少し間合いを離して攻撃を受けないようにしていたが、一気に間合いを詰める!

「いやっ!!」

「っ、リヒト!」

〈“Aufblitzen(アォフブリッツェン)”〉

  振るわれた靄を一閃し、切り裂く。

「(よし!通じる!)...って、うわっと!」

  しかし、切り裂いても際限なく靄は迫ってくる。
  それをなんとか回避し続けるも、数が多すぎる....!

『お兄ちゃん!』

「『大丈夫だ!』」

  緋雪の心配する声が聞こえてくる。
  大丈夫だと答えたけどこれは.....。

「....まさか、取り囲むとはね....。」

「...お願い、ボクを、ほっといて....!」

「それなら、取り囲むのやめてほしいんだけどね....。」

  黒い靄は僕と聖司の闇の欠片を包み込むように広がっていた。
  おそらく、緋雪から見れば僕は取り込まれたように見えるのだろう。

「ボクなんかと関わったらまた....!」

「....そうは言ってるけどさ、本当は助けてほしいんだろ?」

「っ.....!」

  自分を卑下して、何もかも自分が悪いように言っているけど、本当は違う。

「助けてほしい、救ってほしい、安心させてほしい。...本当はそれを願っているんだろ?」

「っ....違うっ!!そんなの、ボクなんかが求める資格なんてないっ!!」

  言葉に出ていなくても、雰囲気やそこら辺で分かる。
  ....本当は、幸せになりたいんだ。でも、前世の最期が赦してくれなかった。

  僕は知っている。聖司が死ぬ時、どんな気持ちだったのか。
  どんな家庭環境だったのか、聖司がどんなに追い詰められていたのか....。
  僕が聖司を助けられなかったあの悔しさと共に、僕は知ったんだ。

「......そう、か......っ!」

  取り囲んでいた靄が一斉に僕に襲い掛かる。
  ....これ以上、問答を続けても意味はないようだな。

「なら、楽にしてやる....!」

  リヒトを双剣にして、魔力を纏わせる。もちろん、身体強化もしておく。

「はぁあああっ!!」

「っ.....!?」

  襲い掛かってきた靄の一点....聖司の闇の欠片目掛けてリヒトを振う。
  後ろから迫りくる靄は“創造”した剣で切り裂き、防ぐ。

「.....安心しろ。幸せになる資格なんていらない。...お前は、幸せになっていいんだ。」

「ぁ......。」

  闇の欠片の懐まで僕は斬りこみ、リヒトで思いっきり闇の欠片の腹を貫く。

「夢から醒めろ、聖司。いつかまた、“聖司(親友)”として会おうぜ。」

「優...輝.....君........。」

  靄と共に、聖司の...司さんの闇の欠片は消えてゆく。

「.........。」

  刺したリヒトを払い、僕は戦闘態勢を解いた。

「お兄ちゃん!」

「緋雪....。」

  緋雪が僕に駆け寄ってくる。

「(.....闇の欠片は、素体とした人物の負の面を強くする。だから、司さんは....いや、聖司はあんな状態になった。....あまり、不用意に触れるべきじゃないなこれは。)」

  未来に戻ったら司さんとこの事について話し合おうと思ったが、やめておく。
  下手に藪をつついて蛇を出したら堪ったもんじゃない。

「(いつか、司さん自身が向き合う時が来る。その時は、助けになろう。)」

「...お兄ちゃん?」

  ...っと、思考に浸ってたからか、緋雪に心配されたようだ。

「緋雪、さっきの事は、僕らだけの秘密だ。」

「えっ?どうして....?」

「....聖司の親友として、頼むよ。」

「......分かった。」

  さすがに空気を読んで了承してくれる緋雪。
  ....これは、僕か司さん自身しか介入できない問題だからな。

「....報告しておくか。この一件で、闇の欠片は負の面の感情が強い場合があると分かった。」

「椿さんと葵さん、大丈夫かな?」

「大丈夫だろう。僕らより戦闘経験は多いんだから。」

  しかも、今ならユニゾン中限定とはいえ空も飛べるようになっているしね。
  そう言いつつ、僕は葵と念話を繋げる。

「『また一つ報告。偽物...闇の欠片はその人物の負の感情を強化している時があるから、気を付けて。』」

『りょーかい!こっちは妖の偽物が頻繁に発生するから面倒だよ!』

「『あはは...頑張ってね。』」

『優ちゃん達こそ!』

  そして、また出現した闇の欠片と戦いに行ったのか、念話が切れる。

「妖....地上だからかな?空を飛んだら出現しないんじゃ...?」

  いや、そんなの関係ないかもな。というか、飛べる妖もいるし。
  それに、記憶を再現しているのなら、さっきの司さんも僕の記憶にはないし。...いや、聖司自体は知ってるけど、あそこまで思い詰めていたのは記憶になかった。

「(...聖司、ごめんな。気づいてやれなくて...。)」

  もう過ぎた事とは言え、僕は心の中で後悔せずにはいられなかった。
  僕の思っていた以上に、聖司の心が追い詰められていたなんて...。

「.....行こう。早く、この事件を解決しよう。」

「...そうだね。」

  決意を改め、再び探索に戻ろうとする。

〈っ、マスター!九時の方向から誰か来ます!これは....司様です!〉

「九時....あっちか。」

「えっ!?こ、このタイミングで?」

  明らかに間の悪いタイミングなんだが....。

「う、嘘っ!?志導君達!?ど、どうして...!?」

「...あ、今の私達と司さんって、あまり親しくなってなかったね。」

「...忘れてたのか。緋雪。」

  とりあえず戸惑っている司さん(過去)をどうにかしないと...。

「あーっと...とにかく、情報が欲しいんだけど...。」

「え、えっ?そ、それよりもどうして二人が魔法を!?」

  って、やっぱりそこから説明しなきゃならんか。

「家に帰って嫌な予感がしたら上空に飛ばされた!以上!」

「そんな説明じゃ分からないよ!?」

  いや、とりあえず大まかな部分を教えて落ち着かせようと思って...。

「で、魔法が使えるのは...デバイスを持ってるからだね。」

「え、あ、そっか。デバイスあったら、魔法の一つぐらい、使ってもおかしくないもんね...。」

  リヒトとの出会いとか説明したら長くなるし、簡単に説明しておく。

「(....今気づいたが、この時の事件の記憶はどうなっている?今この場で司さんに出会ったなら、未来での司さんも僕らについて知っているはずだ。どうして...?)」

  多分、だいぶ忘れてしまった“原作知識”で分かるのだろうけど...。
  ....待てよ?確か司さんは....。

   ―――...どこか、既視感があったの。

「(既視感...つまり、見た事がある気がした。でも記憶にない...。記憶が消されている?)」

  確かに、未来から来た人物が関わる事件なんて、記録どころか記憶にも残しておけない。僕は過去に遡る事さえ一つの流れだと言ったけど、それでも未来の事を覚えっぱなしは危険だ。

「(...いや、待て!そうなると僕と緋雪の戦う事で既視感を感じ、司さんがあそこまで嫌な予感がしたって言うのなら―――!!)」

〈マスター!上空に転移反応!これは...マスターの時と同じです!〉

「っ....!」

  思考を中断させられ、リヒトの言うとおり上を見る。
  司さんと緋雪も転移反応を感じ取ったのか、同じ方向を見る。



「―――ぇえええええええーーっ!!?」

  突然、叫び声が聞こえる。...まぁ、いきなり上空に転移は驚くな。事故なら。

「お兄ちゃん!空から女の子が!」

「うん、声で分かった。というか...。」

〈魔力反応は二つ。二人いますね。〉

  僕にも薄っすらと見えるようになる....っと、一応受け止めるか。

「空を飛べるとも限らないし、受け止めるぞ!」

「うん!分かった!変な事しないでね!」

「しねーよ!?普段からしないから!?」

  そんなラッキースケベな展開はハーレム系主人公だけでいいです!

「く、クリス!浮遊制御!」

「っ、待ってください!下から誰か来ます!」

  受け止めに行くと、向こうもこちらに気付いたらしい。

「っと...。」

「ほいっとね。」

「ふえっ!?」

「はわっ!」

  僕は碧銀の髪の少女を。緋雪が金髪の少女を受け止める。
  ...落下防止はできたみたいだけど勢いで受け止めちまった。

「ふ、二人とも行動が早いね...。まぁ、助かったんだけど...。」

  一瞬遅れて司さんも追いついてくる。

「えっ....?緋雪お姉ちゃん....?」

「「「........えっ?」」」

  金髪の少女が言った言葉に、僕と緋雪と司さんが固まる。

「お、お兄ちゃん!私に妹っていたっけ!?」

「お、落ち着け。なんでそうなる。」

  なお、いなかったはずである。

「も、もしかして優輝さん....ですか?」

「えっ、僕の事知ってるの?」

  僕が抱えている碧銀髪の子にそう言われる。

「(...まさか、未来から来たのか...?)」

  思い当たる節がないので、それが妥当な考えだろう。

「と、とりあえず飛べるから降ろして~!」

「え、あ、うん。」

「わ、私も降ろしてください。」

「あ、ごめんごめん。」

  二人共降ろすと、デバイスらしき小さな兎と..猫?のぬいぐるみが出てきて浮遊魔法を二人に掛ける。...飛行魔法ではないのか。

「え~っと...話が掴めないんだけど...。」

「もしかして司ママ!?」

「え....ま、ママ!?」

  おおう...この子、どんどん爆弾発言を...。

「落ち着け。とにかく情報整理だ。つかs...聖奈さんも、それでいいか?」

「....パパ、だよね?」

「ふぁっ!?」

  さすがに驚いた。まさか緋雪や司さんだけでなく、僕にも特殊な呼び方があったなんて...。

「あー...とにかく!あそこらへんの屋上に行って情報整理!全員オーケー!?」

  このままでは埒が明かないので一喝して屋上に短距離転移で連れて行く。

「(...葵たちとも合流するか。)『葵、大至急椿と一緒に僕らの所に来て。』」

『...?よくわからないけど、了解!』

  僕らの居場所は魔力とかで分かるだろう。

「しばらくしたら僕らの仲間も来る。少し待っててくれ。」

  椿と葵が来るまで待つことにする。
  ...二人は混乱しているからな。落ち着ける意味でもちょうどいい。



「優輝!いきなり呼んでどうしたのよ?」

「お、早いな。ちょっと色々あったからね。」

「....色々あったってのは分かったわ今ユニゾン解くから。」

  飛んで来るためにユニゾンしていた椿がユニゾンを解く。
  勾玉が椿の胸辺りから出てきて、それが葵になる。....全員揃ったか。

「つ、椿お姉ちゃんに葵お姉ちゃんまで...!」

「....どういう事かしら?」

「...今から説明するから待ってくれ。」

  さすがに司さんも固まっている。
  椿たちもこのままだと混乱するだろうから、さっさと説明に移るか。

「....あー、混乱してるだろうから、僕が一応推理して整理した状況を教える。二人もそれでいいな?」

「...今の状況が分からないから賛成です。」

  何とか受け答えするぐらいには落ち着いた碧銀の子が答える。
  ...金髪の子はまだ混乱してるっぽいけど。

「まず、ここは第97管理外“地球”の海鳴市。暦は新暦...66年だっけ?」

〈合ってますよ。〉

  西暦とは違うので不安だったが、合ってたようだ。よかった...。

「...で、月日は2月5日。リヒト、ちなみに現在時刻は?」

〈22時45分です。〉

「...だ、そうだ。」

  ざっと聞いてから疑問とかを聞くつもりなのか、皆黙って聞いている。
  さすがに時間が違うからか二人は驚いているみたいだけど...。
  ...まぁ、話しやすくて助かるな。

「...で、つかs...聖奈さんはこの時間の住人で、僕らは同じ年の6月2日から飛ばされ、二人はもっと未来から飛ばされてきた...って程度かな?」

  今分かっているのはこの程度だ。闇の欠片とかは今は関係ないし。

「み、未来から飛ばされてきたって....。」

「事実だ。実際、僕らは家で変な光の歪みに取り込まれて上空に転移した。」

「あ、私も同じだよ!」

  ようやく頭の中が整理しきれたのか、金髪の子も返事する。
  ...いや、これは整理しきれなかったからとりあえず目の前の事に集中した感じだな。

「ちなみに二人はいつぐらいから来た?」

「えっと、新暦79年からです。」

  この時間からだと13年も先か...。

「....まぁ、未来から来たって言っても早々信じられるような事でもないし...。」

「...いや、信じるよ。未来から...って訳じゃないけど、明らかにおかしい次元渡航者がいたから。それに、志導君はこんな事で嘘つくような人じゃないし。」

  そう言って信じてくれる司さん。

「(...それにしても、安易に未来の人と接触するのは間違いだったかな...?)」

  こうなる事も分かってただろうに...。なにやってんだろ、僕。









   ―――この時、僕は忘れていた。

   ―――過去に来る前、司さんが言っていた“既視感”の本当の危険性を....。









 
 

 
後書き
今回はここまでです。

一人称での“僕”と“ボク”は肉体の性別によって区別しています。(男なら総じて“僕”、女なら“ボク”)

若干サブタイトル詐欺になりましたが許容してください!(ぜ、前半は合ってるし、いいよね..?) 
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