ロックマンゼロ~救世主達~
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第61話 人間の集落
前書き
エリア・ゼロの人間の集落へ
三人のミッションの終了の報せを受けたアリアは素早く端末を操作しながら口を開く。
「転送完了まで…2…1…転送!!」
トレーラーの転送室に転送されたゼロ、エックス、ルインの三人がトランスサーバーに出現し、アリアとシエルが労いの言葉をかける。
「お疲れ様、エックス君、ゼロ君。どうやら、あのエリアのボスそのものが粒子砲の動力炉だったみたい。徐々に粒子砲の威力と射程距離が落ちてきている…これであの粒子砲がエリア・ゼロに届くこともないと思う…本当にお疲れ様。」
アリアが明るくゼロとエックスを労うが、シエルは少し表情が暗い。
「シエル?どうしたの?」
シエルの表情が暗いことに気付いたルインは疑問符を浮かべながらシエルに尋ねる。
「このエリアのボスが…あのファントムの部下だったなんて…ファントムもまた、私達との戦いで 命を落として行ったのよね…やっぱり、私達が戦うと悲しむ人が増えてしまうのかしら…」
「シエル…」
驚くと共に、悲しげに言うシエルに目を見開くルイン。
かつてはレジスタンスの敵として自分達の前に立ちはだかり、エリアXにてゼロと死闘を繰り広げ、コピーエックスを守るために散っていった四天王ファントム。
クラーケンはファントムの仇を討つ為に、バイルに手を貸した。
そのクラーケンの姿に、自分達の戦いによって招いた今のネオ・アルカディアや人間達の現状を重ねたのだろう。
ルインが慰めようと語りかけようとした時であった。
「ん?あれ?通信が来てる。レジスタンスのトレーラーからだね。はいはーい、どうしたのさルージュちゃん?」
端末を操作すると、モニターにルージュの姿が映るが、アリアの言葉に彼女は一瞬硬直した。
『ルージュちゃん…いいかもしれません…ではなくて!皆さん、エリア・ゼロに多数のレプリロイドの反応が出現!バイル軍のレプリロイドが人間の集落へと向かっています!!』
その言葉に全員が目を見開く。
まさか、バイル軍に人間の集落が見つかったというのか?
「うえ!?それマジで!?」
「何ですって!集落が見つかってしまったの!?」
『集落にて戦闘が開始されました!レプリロイド部隊、更に進軍して行きます!!」
「…チッ!おい、集落へ転送しろ…!!」
「OK、任せて…速攻で座標の入力を開始するから!あ、エックス君はここで待機ね。人間達に正体がバレたら面倒だからね」
「……了解…」
人間に正体がバレる可能性を危惧して、アリアはエックスに待機するように言うと、エックスは少し間を置いて頷いた。
「ゼロ…!お願い…人間の集落を守って…」
「ルイン、気をつけてくれ。」
「大丈夫だよエックス。心配しないで」
「二人共!転送準備が整ったよ。早くトランスサーバーに乗り込んで!!」
「…ああ、転送を頼む」
アリアに急かされた二人は中央のトランスサーバーに乗り込み、転送を促す。
「よし…転送準備完了…転送!!」
転送の光に包まれた二人はエリア・ゼロの人間の集落へと転送されるのだった。
「ゼロ……」
「大丈夫だよ、シエル。ゼロとルインなら必ず帰ってくる。信じよう」
「ええ、そうね…」
人間の集落付近に転送されたゼロとルインにアリアからの通信が入る。
『集落の人間達はいくつかの部屋に追い込まれたようだよ。また、集落で多数の火災を確認。ゼロ君とルインちゃんは人間達の救出、ならびに火災の消火をお願い』
それだけ言うとアリアは通信を切り、二人は人間の集落に向かってダッシュで駆けつける。
途中で立ちはだかるバリアント、メカニロイドをゼロがZセイバーで斬り伏せ、ルインがZXバスターで撃ち抜きながら水上の足場を飛び移り、そして人間の集落に辿り着くと集落のテントや周りが燃えていた。
「酷い…ようやくここまで蘇った自然を…」
せっかく蘇った自然の酷い状況にルインは思わず表情を歪める。
「お兄ちゃん…」
「お前は…」
こちらに駆け寄ってくる少年の姿にゼロは僅かに目を見開く。
確か名前はティフォンと言ったか。
「どうしたの?」
ルインは肩で息するティフォンの背を撫でながら言葉を促す。
優しい態度に安心したのか、ティフォンは二人を見上げる。
「お願いだよお兄ちゃん、お姉ちゃん。みんなを助けてよ!!」
「大丈夫、集落の人達は私達が助けるから、君は安全な場所に避難していて」
ルインとゼロはティフォンが安全な場所に行ったのを確認すると、集落の中に入る。
「ルイン、集落の中の人間は俺が救出する。お前は集落の外に逃げた人間達を救出しろ」
「分かった。気をつけてゼロ」
集落の中はゼロに任せて、ルインは集落の外を探す。
しばらくは集落の外に逃げた人間達を救出するルインだが、助けらた人間からは嫌悪の視線を向けられ、思わず溜め息を吐いたが、構わず奥の方に向かう。
『ルイン』
「ゼロ?どうしたの?」
突然通信を繋げてきたゼロに驚きながらも応対するルイン。
『集落の中の人間は全員助けたがネージュの姿が見えない。こちらも探してみるが、そちらも探してみてくれ。特徴は…』
ゼロからネージュの特徴を伝えると通信を切った。
ルインは周囲を探すが、ネージュらしき姿は見えない。
奥の方に高エネルギーを感知してそちらに向かうと、一体のレプリロイドがいた。
「…ここにも彼女はいなかったか」
「あなたはここで何をしているの?」
「っ!お前は…」
レプリロイドはルインの声に反応し、こちらに振り返る。
「あなたは何者なの?まさかここを襲撃したバイル軍の隊長さんかな?」
「俺の名はクラフト…ネオ・アルカディア…いや、バイル様に仕える戦士だ。なるほど…お前達がエリア・ゼロを守ろうとしたのはこの集落があったからか…」
「さっきネオ・アルカディアって言ったけど、あなたも元々はハルピュイア達と同じように人間を守るために戦ってきた戦士なんでしょう?人間のために戦ってきたあなたが、バイルの命令なんかに従って人間の集落を襲うというの?」
少なくともクラフトの目は正気そのもので、とてもバイルのような男に従うようなレプリロイドには見えない。
「……そうだ。今やバイル様は全てのエネルギーと資源をその手に握っている。人間も…レプリロイドも…最早バイル様の元でしか生きることは出来ない。だが、それを理解出来ない愚か者達が我々に勝ち目のない戦いを挑んでくる…。お前やここの人間達が抵抗を続ける限り、犠牲者は無くならないのだ!!」
バイルの元で生きていくしかない。
それは今のネオ・アルカディアの現状を見て、クラフトが悩み苦しみながら出した結論であった。
「そのために永い年月をかけてここまで蘇った自然を傷付けることがあなたの正義なら私は真っ向からそれを否定させてもらうよ」
ルインはZXセイバーを抜き、それに対してクラフトはマルチランチャーを構えた。
最初に動いたのはルインであった。
ダッシュでクラフトとの距離を詰めると、セイバーで斬り掛かるが、クラフトはバックステップしてかわすと分裂する爆弾を投げる。
「おっと!!」
バスターに切り替えるのと同時にチャージショットを放ち、爆弾を撃ち抜くと、再びセイバーに切り替えて、再度クラフトとの距離を詰めた。
武器の関係上、近接戦は不得手と見たのだが、それは大きな間違いであった。
「甘いぞ!!」
ランチャーの銃口から大型ブレードが出現し、咄嗟にセイバーの腹でそれを受け止めるが、ブレードが射出されたことでルインはそのまま岩に叩きつけられた。
「うっ!!」
「当たれ!!」
ランチャーを構え、大出力レーザーを放つ。
咄嗟にHXアーマーに換装してレーザーを回避すると急降下して、ダブルセイバーを振るう。
攻撃する瞬間のみオーバードライブを発動してエネルギーの消耗を抑える。
今までタイミングを掴めなかったが、ようやく物に出来た。
「ぐっ!!」
電気属性の斬撃を喰らい、感電したのか動きが鈍くなる。
「えいっ!ふっ!やあっ!!」
ダブルセイバーによる三連撃とソニックブームを喰らわせる。
ソニックブームをまともに喰らったクラフトは吹き飛ばされるが、クラフトも簡単にはやられてはくれず、膝から爆弾を発射する。
「(まるでVAVAみたい)」
体に武器を内蔵した人型レプリロイドは少ないため、ルインはかつての強敵のVAVAを思い出す。
爆弾を回避して地面に着地すると、クラフトは高くジャンプしてランチャーをルインに向けていた。
「これで終わりだ!メガビームスウィーブ!!」
斜め下にレーザーポインターを出した後、レーザーを発射しながら孤を描くように突進。
着地直後だったために回避は出来ないとクラフトは勝利を確信したが…。
「甘いよ」
背後からPXアーマーを纏ったルインが十字手裏剣を構えていた。
「なっ!?」
「十字手裏剣!!」
クラフトに向けて勢いよく手裏剣を投擲した。
咄嗟に身を捻って手裏剣の直撃は避けたが、クラフトは脇腹に深い傷を負う。
「強いな…これが英雄のゼロと並び称された強さか…」
「あなたは何を迷っているの、クラフト…」
「…何だと?」
「あなたの攻撃には迷いが見える…本気で私を倒そうとしていない。集落を襲うのとは別の目的があるようだね」
戦いを通じて、クラフトの心に迷いがあるのを感じ取り、更に別の目的があるとまで悟ったルイン。
それは歴戦の戦士が成せる業か。
「そんな物はない…今も昔も…俺は人間のために戦ってきた!エリア・ゼロとこの集落は平和のための生け贄となってもらう。バイル様に逆らうことの愚かさを…人間達に知らしめるために!!」
「ふざけないで、そんな理由で…」
「…もう止めてっ!!」
「え?あなたは?」
二人の間に割り込んできた女性に一瞬、ルインは目を見開いたが、特徴がゼロから聞いたものと完全に一致するためにこの女性がネージュなのだろう。
「何が平和のため!?何が人間のため!?このボロボロになった集落や自然を見ても、まだそんな事が言えるの!?長い時間をかけてここまで回復した自然を…静かに暮らす人間達を…人間が生きられる世界を、踏みにじっているのはあなた達でしょう!!いくら正義を振りかざしても…やってる事は二人共、同じ戦争じゃない!!」
ネオ・アルカディアにいた頃のようにとまではいかないまでも、不便ではあるが、集落でささやかに暮らしていた人間達だが、バイル軍の襲撃によって、またしてもその平穏は踏みにじられた。
争いも何もない平穏な日常が明日も続いて欲しいのは誰もが抱く願い。
そんな願いは、バイル軍によって完全に打ち砕かれた。
一度は失った居場所を取り戻そうと、仲間達と必死に築いてきた集落を破壊されたネージュの怒りの深さは計り知れない。
「…ネージュ…やはりここに居たのか…」
「クラフト…どうしてバイルなんかに従ってるの…?初めて取材した時のあなたは…もっと誇り高い戦士だった…。ネオ・アルカディアの戦士として世界を平和にしてみせるって…人間を守ってみせるって…私に約束したでしょう?」
かつて理想を語り合った二人。
当時の二人はまさかこんな形で再会することになるとはネージュもクラフトも思わなかっただろう。
「…ああ、確かに約束した。だから俺はこうして君を守りにきたんだ」
「きゃ…っ!?」
クラフトがネージュを捕まえたのと同時に二人は転送された。
「あ…っ!!」
止めようとしたが、間に合わず伸ばした手が空を掴む。
「くそ…っ」
「ルイン…」
「ごめんなさい、ゼロ。ネージュさんが…」
「ああ、分かっている」
落ち込むルインの頭に手を置く。
昔、ハンター時代に任務で失敗した時もこうしてくれたことを思い出し、ルインは苦笑した。
『ゼロ、ルイン。聞こえる?レプリロイド達の反応が集落から離れていくわ…集落を守りきったのね』
シエルから通信が来たので、即座にゼロはネージュがクラフトに連れ去られたことを伝える。
「…シエル、ネージュがクラフトに連れ去られた。反応を追えるか?」
『何ですって!?分かったわ…すぐに調べてみるわね』
シエルがネージュの行方を探し始めた時、複数の足音が聞こえ、そちらに振り返る。
「あの女…ネオ・アルカディアのレプリロイドと知り合いだったのか…俺達に協力する振りをして、ずっと黙ってやがったんだな」
「あんたも…あのレジスタンスのレプリロイド…ゼロだったとはな、何が伝説のレプリロイドだ。さっきの奴も人間のためにとか言っておきながら、俺達の集落をこんなにしやがって…」
忌々しそうに吐き捨てる集落のリーダーのラファール。
ティフォンは連れ去られたネージュをどうするのか尋ねる。
「ねえ、ネージュお姉ちゃんを助けにいかないの?」
「あ、ああ…あの女はレプリロイドの仲間だったんだ、危険を冒してまで助ける必要なんかないんだよ…」
「え…そんな…酷いよ…」
それを聞いて顔を顰めるのはルインだった。
「ネージュさんを見捨てるの?あなた達とこの集落のために私達との戦いに体を張って止めに入ったのに?」
「…ああ、それがどうした!あの女を助けたらまた集落が襲われるかもしれないだろう!!」
「…あなた達って最低だね」
トルナードの言葉にルインは表情を顰めながら吐き捨てる。
「仲間を助けようともせずに、ただのうのうと集落の中で生きるだけなら、ネオ・アルカディアに残った人間達と何も変わりはないと思うがな…」
「な、何だと!」
「…ならお前達は、何のために危険を冒してまでネオ・アルカディアを抜け出してこの集落を作ったんだ?」
ゼロは態度は横柄だが、大抵は的確で的を射た正論を吐くため、トルナード達は狼狽える。
「そ、それは…」
「ゼロさん!ルインさん!!」
集落でゼロ達に駆け寄る人間の栗色の髪と翡翠の瞳の少女、確かアリア達の拠点にいた少女…。
「お前は…」
「あ、すみません。ゼロさんとは自己紹介がまだでしたね。私はアイリス。ネオ・アルカディアに所属していた…ああ、今はそんなの関係ないか。とにかくあなた方の味方です」
「アイ…リス…?」
一瞬ゼロの脳裏に目の前の少女に似た人物が脳裏を過ぎる。
ネオ・アルカディアに所属していたと聞いた集落の人間達は顔を顰めた。
「あんた、人間なんだろ?何でレプリロイドなんかと仲良く話してるんだよ?」
「何で私が会話をする相手のことをとやかく言われないといけないの?」
「分かってるのか?こいつらのせいでネオ・アルカディアが…」
「だから何?」
トルナードと会話する度に段々と彼女の表情から感情が無くなっていく。
「え?」
「私からすれば今のネオ・アルカディアもあの“エックス”が統治していたネオ・アルカディアも大して変わりがないわ。精々理不尽な理由で殺されるのがレプリロイドだけじゃなく、人間も入ったくらいね。別に大して昔と変わらないんじゃない?まあ、あなた達はそれに気付いてなかったみたいだけど」
絶句する集落の人間に対して、アイリスの目つきは鋭くなる。
「あなた達はレプリロイドが憎い憎いって言ってるけど…今まであなた達がネオ・アルカディアでのうのうと生きていられたのは誰のおかげ?食べる物にも仕事にも住む場所にも困らなかったのは誰のおかげ?全部全部、あなた達が嫌いなネオ・アルカディアにいたレプリロイドのおかげよ」
それだけ言うと、アイリスはゼロとルインに向き直る。
「お二人共、アリア博士達が待っています。急ぎましょう」
「は、はい…」
アイリスの悲しみに揺れる目を見たルインは、もしかしたら彼女には大切なレプリロイドがいたのではないかと思ったが、聞かないでおくことにした。
「お兄ちゃん…お姉ちゃん…ネージュお姉ちゃんを助けてあげて…」
「ああ…お前達にもう一度言わせてもらう。仲間を助けようともせずに、ただのうのうと集落の中で生きるだけなら、お前達もネオ・アルカディアに残った人間達と何も変わりはない」
それだけ言うと、ゼロ達は転送の光に包まれ、転送されるのだった。
後書き
オリキャラ大活躍…かな?
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