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『夢の中の現実』

作者:零那
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『密会』



いつも通り出勤前に1万円渡して出る時、父さんが初めて一緒に出るって言った。

『一緒に出るわ。今日はチョット散歩でもしてみよ思て』

無理がある...
雨降ってるし。

『...昔、雨の中、傘さして手ぇ繋いで歌うたって歩いたん覚えてるんやっけ?』

『当たり前や。零那との大事な思い出は忘れた日が無い!』

『そっか、良かった♪』

交差点でバイバイした。

零那は絶対したらあかん事をした。
父さんをストーカーした。
バレたら誤魔化しようが無い。
不安になってストーカーしたって言うしかない。
すぐそこのコンビニの前で誰か待ってる様子。
来たのは、あの借金取り達。
普通に話してる。

零那は、その場をすぐ離れた。
え、なんで?
まさかのグル?
イヤイヤ有り得ん!!
ほななんで?

冷静にならなあかん事に限って何故か冷静になれん。
『なんで?』
其の言葉だけが頭の中をグルグル廻り続ける。

ただただ謎で、不安で怖くて...真っ直ぐ父さんの目を見れるかどうか心配だった。

此の日の仕事は散々だった。
怒られた。
お客さんにも店長にも。
コース時間間違えてタイマーセットしたり、お客さんの部屋間違えたり、普通なら絶対に無い馬鹿なミスばっかり。

此の日の晩御飯は、お好み焼き。

父さんが、ホットプレートでメッチャクチャ美味しいの作ってくれた。
もしかして此が最後の、一緒の食事になるん?
もしかしてバイバイせなあかん?
だから思い出作り的な感じ?
そんなんホンマ嫌やし勘弁して...

そんなことばっか考えてたから涙だぁだぁ流れてて、自分でも解ってなくて、父さんの声で我に返った。
『零那、零那?零那!!』
何回も呼んでたらしい。

涙が流れてる事に気付いた零那は、咄嗟に服の袖で拭った。
其れを見て見ぬフリする父さん。
そして早く食べるようにと促されただけだった。

零那が不安になってるのは伝わってる筈。
でもフォローも言い訳も無いって事は、父さんが何をしようとしてるのか聞く権利すらないって事やんな...

少し目つき変わってるし雰囲気が組長に似てきてる。
今更現役時代の仕事する筈無い...いや、出来る筈無い...?

ほなホンマ何を企んでんの?

取り立て屋に聞くしかない。
聞いても教えてくれんやろうけど。

メールしてみる。
翌日、返済+話がしたいと持ちかけた。
向こうも零那に聞きたいことが在るらしい。


 
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