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真田十勇士

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巻ノ三十 昌幸の智略その十二

「そこでも戦うぞ」
「わかり申した、では今はです」
「このまま攻め続け」
「そして最後はですな」
「城に戻る」
「そうしますな」
「そして城から追い払った後はな」 
 それからのこともだ、幸村は話した。
「上田を出るまでな」
「攻め続けますか」
「逃げる敵を追いますか」
「そうする、では暫くは攻め続けるぞ」
 こう言ってだった、幸村は自身も含めて家臣達にも敵を攻め続けさせた。そうして徳川の軍勢を心から疲れさせていた。
 その攻撃を受けてだ、鳥居もだった。
 苦い顔でだ、常に攻められ疲れを見せている兵達を見て言った。
「日増しに疲れが溜まっておるな」
「昼も夜も攻められていますから」
「それで常に警戒していますから」
「どうしてもです」
「疲れは」
「そうじゃな、物陰や山から昼も夜も来る」
 真田の攻撃がというのだ。
「散発的なものであるがな」
「それでもです」
「いつも攻められております」
「手裏剣や鉄砲、石や炮烙等が来ます」
「特に音が」
 鉄砲や炮烙のそれがというのだ。
「夜に響きまして」
「兵達が起きてしまいます」
「そして寝れなくなり」
「余計に疲れてしまっています」
「嫌な攻め方じゃな」 
 苦い顔のままだ、鳥居は言った。
「これでは上田の城を囲んでもな」
「囲むのがやっとですな」
「攻めるなぞとてもです」
「出来ません」
「疲れが溜まり」
「そうじゃな、では城を囲めばな」 
 その時はとだ、鳥居は周りの旗本達に言った。
「そこで攻めずにな」
「城に使者を送りますか」
「そして降る様に言いますか」
「真田殿に」
「そうされますか」
「そうする、そしてすぐに話を収めてな」
 そしてというのだ。
「ここから去るぞ」
「兵は攻められていますが大きな戦をしていないので」
 旗本の一人が言って来た。
「殆ど減っていません」
「飯もあるしな」
「はい」 
 鳥居が厳重に守らせているからだ、守りが堅固なので幸村にしても迂闊には攻められずこちらは大丈夫なのだ。
「そちらは」
「その二つはある、だからな」
「城をその大軍で囲み」
「一気に話をする」
「そうしますか」
「うむ、そしてじゃ」
「何としてもですな」
「真田殿には降ってもらいじゃ」
 徳川家にというのだ。
「信濃の殆ども徳川家のものとする」
「甲斐と同じく」
「そうしますな」
「十万石は大きいですからな」
「何といっても」
「うむ、十万と一口に言うが」
 その十万石がというのだ。
「実に大きいからな」
「大名としても結構ですな」
「もう一角です」
「ですから上田十万石」
「何としても欲しいですな」
「さすれば今後も違う」
 十万石が加わればというのだ、徳川家に。 
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